【インタビュー】川崎鷹也、アルバム『ぬくもり』完成「あなたに向けて曲を書いてきました」

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川崎鷹也が6月14日、3rdアルバム『ぬくもり』をリリースする。全9曲ながら、ずっしりとしたボリュームが感じられる作品の完成だ。「これまで一貫して“あなたに向けて”曲を書いてきました。そしてこのアルバムもまさにそう思いながら作りました」とは川崎鷹也のアルバムに対するコメントだ。

◆川崎鷹也 動画 / 画像

俳優デビュー作でもある映画『魔女の香水』主題歌「オレンジ」、Netflixシリーズ『君に届け』主題歌「愛の歌」、鈴木福と本田望結出演の『スーツのはるやま』CMソング「春がくる」といった書き下ろしタイアップソングに加え、「君の為のキミノウタ」など3曲の既発曲のリアレンジバージョンや、自身の子どもに贈る「4.11」といったパーソナルなエピソードを込めた楽曲などが揃い。そのどれもがリード曲のように華やかな存在感を放つ。彼はどんな思いのもと今作の制作に向き合ったのだろうか。タイトルに冠した『ぬくもり』の真意とは? 前アルバムから1年6ヵ月ぶりの3rdアルバムについて話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■見えないものをポジティヴに捉える
■それがすごく重要な気がしている


──3rdアルバム『ぬくもり』は、かなりゴージャスな作品に仕上がりましたね。

川崎:弾き語りが1曲もないので、全部の曲がメインディッシュみたいな、お腹いっぱいになるアルバムになりましたね(笑)。自分の芯が弾き語りであることは大前提として、今回のアルバムは全曲バンドアレンジで統一したかったんです。書き下ろさせていただいた映画やドラマの主題歌がありつつ、「4.11」みたいにすごくパーソナルな楽曲もあり、昔作った楽曲のリアレンジもしっかりスパイスとして効いているので。すごくバランスのいいアルバムなりましたね。

──3月から始まった全国ツアーのタイトルも<あなたとのぬくもり>でしたが、“ぬくもり”という言葉は川崎さんにとってそれだけ重要なキーワードだったのでしょうか?

川崎:「ぬくもり」という楽曲も、タイトルが先にあった上で作り始めたんですよね。コロナ禍に入って、みんな会いたい人にも家族にも会えない時期が続いて、僕もそれは例外ではなかった。人と会えない時間が長く続くなかで、“人と人とのぬくもりって一体なんだろう?”と考える時間が多くなっていったんです。会わなくてもお互いを思い合う気持ちや、相手のことを考えるだけで少しだけ幸せな気持ちになれることが、会わずとも感じられるぬくもりじゃないかなと思ったんですよね。


──そこから声でつながる電話をモチーフに制作を始め、「ぬくもり」という楽曲ができたということですね。

川崎:僕自身がよく電話をしていたこともあって、遠い人とつながる手段と言えば“電話”だったんです。文章を打ち込むより話したほうが早いと思っちゃうタイプだから。夜電話して5時間通話してたら、お互いそのまま寝ちゃって…みたいな。二十歳前後の頃はよくそういうことをしていましたね。

──大人になると朝まで長電話する機会もなくなるので、「ぬくもり」には少しノスタルジーも感じました。

川崎:そういう意味でも深夜に聴いてほしい楽曲になったなと思っています。夜中12時回った後の寂寥感というか。誰かに会いたくなったり、でもひとりの世界に没入したくもあり、それこそノスタルジーだったり、深夜はいろんな感情が入り交じる時間帯だと思っていて。そういう空気感を遠くの相手に伝える“電話”をモチーフにして書きたかったんですね。確かに、会って話すのもいいんですけど、電話じゃないと言えないこともあるだろうし、電話じゃないと感じ取れない温度みたいなのもあるので。電話、好きですね。

──川崎さんのコロナ禍での活動や生き方が、ぎゅっと詰まっているアルバムだと感じました。「魔法の絨毯」でSNSをきっかけにブレイクして以降、様々なタイアップソングを書き下ろしていますが、躍動感のある「愛の歌」はこれまでの川崎さんにありそうでなかった楽曲ではないでしょうか?

川崎:ストリングスが広がっていくサウンドスケープとか、音圧や展開の作り方もすごく華やかですよね。やっぱりアレンジによって歌い方もガラッと変わってくるので、新鮮に感じていただけたのかなと思います。


──「愛の歌」はNetflixシリーズ『君に届け』主題歌に書き下ろした楽曲ですが、作品との親和性もとても高いです。

川崎:漫画の『君に届け』は高校生の頃からよく読んでいて、まさかそのドラマ主題歌をやらせていただくことになるとは…。好きでよく読んできたぶん、“『君に届け』にはいいシーンがありすぎて、どのシーンを切り取ったらいいんだろう?”と悩みました。やっぱり高校時代の僕は、ふたりの主人公の“ふたりの間にしか生まれない空気感”というか、他の人じゃ成り立たない関係性にすごく憧れていたんですよね。自分がこういう青春を送れなかったからこそ、憧れを詰め込みました。

──「愛の歌」を筆頭に、アルバム『ぬくもり』収録曲の歌詞には“風”という言葉が多いことも特徴だと思いました。

川崎:やっぱり僕は“風景”や“風”、“匂い”といったものが好きなんでしょうね、たぶん(笑)。特に風や匂いは目に見えないのに、風が運んでくる匂いや空気で気分や行動が変わってくる。そういうものが潜在的に好きなんだと思います。強風は好きじゃないけど、無意識のうちに出てきちゃうワードかもしれない。

──“風”然り、遠距離で感じる“ぬくもり”然り。川崎さんは、見えないものにロマンを感じるのかもしれませんね。

川崎:ああ、そうかもしれない。見えないものって自分の都合のいいように解釈できるじゃないですか(笑)。“どう感じるかはその人次第”っていうものに、僕はすごくしっくりくるんです。僕は日々の生活で感じたことを音楽に活かして、自分の人生がどう豊かになるかしか考えていないし。自分と家族の幸せがどこにあるのかを感じるためにも、見えないものをどれぐらいポジティヴに捉えられるのかということが、すごく重要な気がしているんです。だから見えないものが好きなんだと思います。



──映画『魔女の香水』主題歌として書き下ろした「オレンジ」も、映画と同じく香りの要素が楽曲に反映されています。

川崎:音楽の現場はこれ、プライベートではこれ、違う現場だったらこれ…というふうに僕は、香水を使い分けて自分のスイッチを切り替えるタイプなんです。自分が大事にしているものがテーマとなる映画の主題歌を担当させていただくだけでなく、出演までできてとてもうれしかったです。あと「オレンジ」は現場の空気を実際に感じたから書けた曲だと思っていて。映画撮影時の前室とか、その現場に身を置いたなかで作った曲なんです。

──役者として出演なさったからこそできるレアケースですね。直感的な制作だったんでしょうか?

川崎:空き時間にギターを出して、“この映画のエンディングにこんな曲が流れたら、いち視聴者としてテンションが上がるな”と想像しながら書いていって。めちゃめちゃいい経験をさせてもらいましたね。現場を見ないと書けない曲があることを「オレンジ」で学んだので、今後もしドラマや映画の主題歌のオファーが来た場合は、可能な限り現場を見学したいと思いました。

──演技の経験は作曲に影響していますか?

川崎:いや、もう難しいことと、わかんないことだらけで(笑)。でも音楽と役者業は完全に切り離して考えていますね。シンガーソングライターとしての自分と、演技をしている自分はまったく別なんです。でも演技の現場はすごく新鮮で、今までに感じたことのない緊張感と達成感に毎回包まれています。すごく楽しいです。後々、演技経験から生まれる表現力や間や言葉の使い方、表情を音楽に落とし込んでステージに活かせればいいなとは思っていて。わからないなりに頑張っているところですね。

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