【レポート】<SATANIC CARNIVAL>Hi-STANDARD、「またハイスタをつくってくるからね、じっくりじっくり」

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Hi-STANDARDの登場を待ちわびる手拍子が幕張メッセに鳴り響く。メンバーの名前を呼ぶ声が聞こえる。今年の<SATANIC CARNIVAL>はいろんな意味で特別だった。久しぶりに幕張に帰ってきたこと、ライヴ鑑賞にまつわる規制がなくなったこと、そして、恒岡章の逝去後、初めてHi-STANDARDがステージに立つこと。

◆Hi-STANDARD 画像

誰がドラムを叩くかなんて誰も知らない。でも、それはある意味では大きな問題ではなかった。いや、自分がそれを気にしていなかっただけなのかもしれない。彼らがステージに立つという事実だけで十分だった。


……とまあ、冷静でいられたのはここまで。恒岡章の……いや、ツネさんのハイスタ結成時からの写真がスクリーンに次々と映し出されていくうちに、涙が止まらなくなってしまった。ハイスタの音楽に触れている以上、どんな人にもツネさんとの思い出があるはずだ。もちろん、自分にだってある。それが濃いか薄いかなんて関係ない。だからこそ、冒頭の映像は皆の心を猛烈に刺激した。正直、あれだけ全身で爆音を浴びていても、最初の数曲は体が動かず、その分心で全力で受け止めた。

「START TODAY」「STAY GOLD」「FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL」「CLOSE TO ME」「I'M A RAT」を叩いたのはKen YokoyamaのEKKUN。

「よっしゃ、今日はツネちゃんが悔しがるぐらい思いっきり歌って暴れて帰れよ! 一曲一曲じっくりやるから」──難波章浩

「怪我するなよ、ベテランども」──横山健



という言葉のあと、一曲一曲噛みしめるように音を鳴らしていった。多くの観客の注目が集まる中、難波と横山とともにステージに立つだけでもとんでもない度胸がいるはず。しかも、あのふたりとともにハイスタの曲をやるなんて想像するだけでも身震いがする。そんな重要な役目に対し、EKKUNは真っ先に名乗りを挙げたという。その行動だけで本当に惚れる。もちろん、ツネさんがいない状況でもステージに立つことを決めたふたりの決断はすごい。でも、そんな彼らの想いを正面から受け止めたEKKUNのことは一生尊敬できる。彼はとにかくハートが強い。「すごいよ!」とEKKUNを称える難波に対して、「痩せちゃったよ!」と笑いながら冗談で返す彼のメンタルはどうなっているんだろう。自分が担当する曲をすべて叩き終えたあと、何度も飛び跳ねながら大喜びするEKKUNの笑顔はこれまでで一番輝いていた。






同様のことはEKKUNのあとにステージに現れたThe BONEZのZAXとマキシマム ザ ホルモンのナヲにも言える。

ZAXは「ANOTHER STARTING LINE」「MY HEART FEELS SO FREE」「The Gift」「BRAND NEW SUNSET」を担当。「ZAX、気分はどう?」と横山から問われた彼は「最高!」と返す。最後は「ツネさん、愛してます!」と言い残してステージを去っていった。彼もまた鮮烈な印象を残した。The BONEZのインタビューで会ったときも強さを感じさせる人間だと思っていたが、そのときに得た感覚は間違えていなかった。





一方、横山が「Lovin’ You」を弾き語っている間にステージに登場したナヲは、最初から涙を流していた。ツネさんの逝去が発表されたときの彼女の悲痛なツイートは今でも強く印象に残っている。泣きながらも「すごくゲボが出そう。ずっと胃が痛いです。お陰でストレスでこんなに太りました」と冗談ぽく言っていたが、その心中を思うだけでこっちまで胃が痛くなりそうだった。

しかし、彼女もまた強烈だった。「CAN’T HELP FALLING IN LOVE」「NEW LIFE」「MAXIMUM OVERDRIVE」「DEAR MY FRIEND」を圧倒的なドラミングで完走した。





さて、現場にいなかった人は気になっているだろう。果たしてツネさんのいないハイスタはどうだったのか、と。大観衆の中には“こんなのハイスタじゃねえ”と思っていた人ももしかしたらいたかもしれない。その気持ちもわからんではない。自分だってハイスタの音楽、ツネさんのドラムには思い入れがある。だけどね、ハイスタだったんだよ。驚くぐらいハイスタだった。

難波が歌っていればハイスタになるなんて言わないし、横山のギターが鳴っていればハイスタになるなんてことも言うつもりはない。幕張メッセ内に鳴り響いた歓声が、大合唱が、熱気が、ステージに立つ3人をハイスタにしていた。これは嘘じゃない、本当なんだ。ライヴが進めば進むほど、その想いは強くなる。難波も「みんながいるから、みんなが歌ってくれるから(ハイスタになる)」と話していた。ああ、やっぱりそう感じるんだ。


難波も横山も気を張っていたところはもちろんあったと思う。だけど、ステージ上でのやりとりはいつものハイスタだった。彼らしい独特な表現で自分の想いを吐き出す難波に対して、すかさず「ナンちゃんのマインドのお話でした!」と横山がニヤニヤしながらツッコんだりしていたが、それは努めてそうしようとしているようには見えなかった。自然といつものハイスタになっているのである。

感傷的な空気は一切流れていなかった。それはなぜか。ふたりはすでにハイスタの未来を見据えていたからだ。難波が「またハイスタをつくってくるからね、じっくりじっくり」と約束し、横山は「また必ず戻ってくるよ」と宣言した。



ラストの「DEAR MY FRIEND」の中盤、難波は英詞ではなく、日本語訳でこう口にした。

愛って何? 幸せって何? 自分って何?
過去、現在、未来
人生は続く 人生は続く

空の向こうにいる友へ向けて歌われるこの曲は、1999年に発表した大名作『MAKING THE ROAD』の収録曲。スクリーンには笑顔のツネさんの写真が次々と映し出される。だから、これはツネさんへの追悼の意味を込めて最後に選ばれたのだと当然のように捉えていたが、これは未来へと続くHi-STANDARDの意志でもあるんだと難波の言葉を聞きながら思った。



すべての曲を演奏し終えたあと、EKKUNとZAXが再びステージに登場し、お互いの健闘を称え、5人で円陣を組むように抱き合った。このとき実際に5人が何を思っていたかなんて、本人に聞かない限りわかりっこない。だけど、なんとなくだけどわかるような気がした。あの場にいた人ならきっと同意してくれるんじゃないか。そう、ツネさんという存在を中心に、みんなと想いを共有できている気がしたんだ。それは、とても不思議だけど、心地よい感覚だった。

そうだ、これは書き残しておかないといけない。難波は言った「『俺の、私の青春が終わった』って言ってる人がいたら言って。俺たち、終わってないから。死んでも終わんない。ずっといてやるよ」と。Hi-STANDARDは続くんだ。かつてハイスタは自分たちにとってとんでもないヒーローだった。今もそのことに変わりはないけれど、ちょっとだけ近くなったように感じた。今日、“彼らと共に生きていく”という意識がさらに強くなったからだ。



いつの間にか涙は止まっていた。ビートに合わせて猛烈に頭を振っていた。そうしてくれたのはHi-STANDARDの音楽だった。ハイスタが再び、前を向かせてくれた。感動とか、興奮とか、なんというか、そんな簡単に表現できるライヴではなかった。5人がステージを降りて2時間が経った今もまだ、脳みそが、心が、激しく揺さぶられている。

取材・文◎阿刀大志
撮影◎岸田哲平/半田安政

■セットリスト

01. START TODAY
02. STAY GOLD
03. FIGHTING FISTS, ANGRY SOUL
04. CLOSE TO ME
05. I'M A RAT
06. ANOTHER STARTING LINE
07. MY HEART FEELS SO FREE
08. The Gift
09. BRAND NEW SUNSET
10. CAN'T HELP FALLING IN LOVE
11. NEW LIFE
12. MAXIMUM OVERDRIVE
13. DEAR MY FRIEND

■<SATANIC CARNIVAL 2023>

6月17日(土) 幕張メッセ国際展示場 9-11
6月18日(日) 幕張メッセ国際展示場 9-11

▼6月17日(土)出演者
AFJB
バックドロップシンデレラ
The BONEZ
Crossfaith
Dizzy Sunfist
Dragon Ash
ENTH
Fear, and Loathing in Las Vegas
FOMARE
ハルカミライ
HAWAIIAN6
Ken Yokoyama
locofrank
MONGOL800
ROTTENGRAFFTY
SHANK
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Survive Said The Prophet
Track's
WANIMA
Prompts (O.A.)

▼6月18日(日)出演者
04 Limited Sazabys
10-FEET
coldrain
Crystal Lake
dustbox
Fire EX.
GUMX
G-FREAK FACTORY
花冷え。
HEY-SMITH
LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS PLUS
マキシマム ザ ホルモン
NOISEMAKER
OVER ARM THROW
RAZORS EDGE
SAND
SHADOWS
SiM
Suspended 4th
Hi-STANDARD

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