【インタビュー】⼼之助、EP『SCARLET』で多彩な作風発揮「リアルであるのは、ずっと大事にしている」

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■「止まない雨はないよ」みたいな
■綺麗な言葉が好きなんです


──「泣きな晴れ」も、⼼之助さんの生き方が伝わってくる曲ですね。《前進よりも⼤事なのは 下に下に根を張る事》は、心に響くものを感じるリスナーがいると思います。

⼼之助:「目に見える結果が全てじゃないよ。努力する中で下に下に根は張っているし、いつか花が咲く。雨にも風にも負けない花が咲くための今なんだよ」って、ライブの時によく言うんです。そういうMCがきっかけで生まれた曲が「泣きな晴れ」です。過去にシングルで出したんですけど、そんなに知られていないんですよ。自分にとっても大事な曲だし、改めて聴いた時に「もっといろんな人に届くべきだな」と思ったので、今回のEPに収録しました。



──改めてレコーディングしたんですか?

⼼之助:新録ではないです。ミックスは、ちょっと調整していますけど、前にシングルで出した時とほぼ同じですね。

──流す涙を自分の糧にしていく姿も描いていますが、こういう人生を歩んできたんですか?

⼼之助:僕は「止まない雨はないよ」みたいな綺麗な言葉が好きなんです。何事に対しても自分にとってポジティブな受け止め方をしてしまえばいいと思っているので。《涙が下に落ちようとすんのは 根っこに光宿すため》も、そういうことですね。「逆境には乗っかっていけばいいんだよ」とか言ったりしつつ、実際はつらかったりすることも多いですけど(笑)。この曲で歌っているようなことは、そんな自分に対する応援歌みたいな意味もあります。

──こういう曲を歌うことによって力強く生きられる感じもあるんじゃないですか?

⼼之助:ほんとそうですね。バイトもクビになってばかりでしたし。面接も7、8回とか連続で落ちました(笑)。そんな僕にとって音楽は翼みたいな存在で、自分を強くしてくれています。

──今作に収録されているラブソングは、3曲それぞれの切り口ですね。まず、2月に配信リリースした「Love Letter」は、手紙を題材にしているのが印象的です。



⼼之助:手紙は読み返すことができるし、タイムカプセルみたいだなとふと思ったのが、この曲を作ったきっかけです。

──これも実体験を反映していますよね?

⼼之助:はい。

──《下⼿くそな⼿書き ちょっと丸⽂字で》と歌っていますが、丸文字なんですか?

⼼之助:そうなんです。

ES-PLANT:小学生の女の子の文字みたいです(笑)。

⼼之助:この曲のMVの最後のところで、僕の丸文字が出てきますよ。ちょっと恥ずかしい(笑)。

──(笑)。《消し切れてない鉛筆の下書きに 可愛いってまた笑うお前》も、微笑ましいエピソードです。

⼼之助:奥さんと出会ったばかりの頃に書いた手紙のことです。僕は鉛筆で下書きしてからボールペンで書くんですよ。

ES-PLANT:真面目だな。

⼼之助:間違いたくないので。跡が残っていたのをつっこまれて恥ずかしかったことがあるんです。「可愛い」って言われるのを若干狙った部分もあったかもしれないけど(笑)。

──(笑)。自分も関係している様々な詳細が曲になっていくことに関して、奥さんは何かおっしゃっていますか?

⼼之助:特に抵抗はないみたいです。奥さんのお母さんからは「またこういうことを曲にして、好印象を狙ってるんでしょ?」とか言われて、いじられたりしていますけど(笑)。

──(笑)。曲を作り続けることで、人生の記録を形にできている面もありますよね?

⼼之助:はい。音楽も手紙と同じで、タイムカプセルみたいなところがあるんだと思います。

──人生をリアルに曲に刻むのが作風の主軸でありつつも、時々「漂う夜に」みたいなフィクションも作りますよね?

⼼之助:はい。「漂う夜に」はおっしゃる通り、どっちかというとフィクションです。メルセデス・ベンツのGLCクーペという車を買った時、「自分が車で聴きたい曲を作ろう」って思ったのがきっかけでした。ベンツは夢だったので、買った時の浮かれていた気持ちも入っていますね。“君を連れ去る”みたいな描写をしていますけど、僕の昔の曲の「507」の曲の中でもそういう描写をしているんです。あの曲で女の子を連れ去った時の車の中で流れているのが「漂う夜に」だというニュアンスですね。

──“俺と一緒にいれば君の心にある寂しさ、わだかまりは解きほぐされるよ”ということを《まるで知恵の輪》と描写しているのが目を引きます。

⼼之助:そこ、自分でも気に入っています。

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