【連載】中島卓偉の勝手に城マニア 第120回「丸岡城 (福井県) 卓偉が行ったことある回数 1回」

随分と久しぶりの城コラムである。tvkの城番組が終了した後、城に行く機会がなく、プライベートでもいくつか見学に行ったが紹介できるほどの城もなく、なかなかコラムが書けずにいた。

今回は私のファンクラブ旅行で金沢の旅を計画(その名も『中島卓偉せっかち！凝縮！1泊2日金沢の旅』)、この旅行の中身を色々と考えていた時に大きな地図を見たところ、“おいおい！ 石川県と福井県の県境に丸岡城があるじゃないか！”──これバス移動で何分か調べたところ1時間かからないという。“来た！ 石川・金沢の旅だけじゃなく福井県丸岡城も行ってしまおう！”って按配だ。城マニアの卓偉。丸岡城に一度も行けておらず。現存12天守の1つ。いつかは行きたいと思っていた“いつか”が叶う日が来たのである。そうなのだ、中島卓偉のファンクラブ旅行は私の独断と偏見で城見学というのが組み込まれてしまうのである。


築城は1576年で柴田氏から始まる。最終的には有馬氏 丸岡藩で幕末を迎えて廃城。柴田氏から色々城主が変わり17代で明治時代を迎える。この時に1871年、廃藩置県により天守以外の建造物は全て解体、破棄されたそうな。残念極まりない。大正、昭和の初期で少しずつ堀も埋められて行き、今に至る。天守の中に当時の模型があるのでわかるのだが、城は丘に建てられた平山城で、丘の真下には幅の広い五角形の堀に囲まれていた。これが丸岡城のデザインの魅力の一つなのだが今は姿形もない。当時の平面図や絵図を見ると見事なまでに4重、5重の堀に囲まれていたことがわかる。本丸と二の丸も石垣に囲まれており、これが全部解体されてしまったことは無念である。近年、その五角形の堀を発掘調査して復元する動きもあると聞く。いや〜、でもどうかなあ？ 観光の駐車場の場所がなくなるし、確実な発掘調査にして石垣も組み直してもらわないと、私みたいな城マニアは納得できないんすよねえ。いつかの城ロケで埼玉県の花園城に行った時、街の議員さんや地主の方、保存委員会の方々とお茶をしたのだが、「花園城の本丸に模擬天守でも建てたら観光客増えませんかね？」という話題が上がったので、「それだけはやめてくれ！ それはしなくていい！ 歴史マニア、城マニアはそれを望んでいません！」とマジでお願いしたことがあった。そうなのだ、歴史は嘘ばっかりで言ったもん勝ち。今回司会で参加してくれた芸人の上々軍団のさわやか五郎ちゃんも真面目な顔して、「卓偉さん、俺、こないだ熱海城行って来たんすよ〜」と言うので本当の城との違いを13分くらいガチで説明させてもらった。そうなのだ、わからない人、歴史や城に興味ない人にその真実を伝えることが一番意味を持つのである。


犬山城と同じく丸岡城は天守だけが綺麗に残り、他は跡形もない、このタイプになる。明治時代にも修復をし、昭和の福井大地震で70％破壊されてしまった天守であったが、技術に長けた世界一の日本人、見事に元の姿に修復したのが今の天守である。余談だがこの“天守”という文字を入力する度に“店主”と変換されるのがマジで苛立っている。昭和9年に当時の日本の国宝に認定されたが、戦後は国の重要文化財に留まっている。現存天守の中で犬山城と丸岡城のどちらが最古の天守なのかずっと争っている気がするが、デザイン的には丸岡城の作りの方が古くはある。シンプルな独立式天守は小天守も付櫓もなく潔い。木目のデザインをそのままにした1500年代の日本らしい建造物だ。天守台の石垣も高さがあり、本丸に到達した時は意外と小さい天守かなと思いきや、近くによると存在感が素晴らしい。どっしりとした天守台にそびえ立つ3層の天守は美しく言葉を失う。


丸岡城の本丸でファンクラブ旅行にご参加された皆様と集合写真を撮らせていただいたのだが、皆様お洒落な格好をされ過ぎていて、丸岡城に全くそぐわない集団になってしまった。本当は皆様との集合写真をここにアップしたかったが、この旅行に来ていただくために仕事場や家族にいろんな理由を付けて来られた方もいらっしゃるだろうし、さわやか五郎ももしかしたら世界的な指名手配をされている場合もあるかもしれないのでやめておく。


本丸でいくらか城の説明をさせてもらい、みんなで天守の中へ。この日はかなり暑い日であったが天守の中は風が吹き抜けとても涼しく過ごしやすかった。やはり木は直射日光を浴びても熱がこもらない。クーラーなどなくても生活できる。この作りに日本人として感動。昔の人、昔のデザインは本当に凄い。天守内には狭間や石落としもあり、戦国時代に建てられたことが垣間見れる。この時代の建造物のあるあるだが、とにかく階段が急である。スカートはまずい。登れても降りる時が危ない。よって登りと同じ体の向きで降りていただくようにアドバイス。下から見るとケツがゆっくり降りて来るのはケツ好きにはたまらない。最上階の風通し、眺めも最高だった。


今回の旅行は参加費と別に、壁ドン税込110円という企画をやっており、ここへ来て緊張感が緩み始めたファンの方々が僕に壁ドンを要求。僕の無駄にでかい声での「ドーン！」という声によっぽど集まってきた。観光客として来ていた外国人の方に話しかけられ、「これは今何をしているのだ？」と言うので、「Japanese traditionだ」と答えたら食い気味に「really?」と言われたので、僕も食い気味に「もちろんだ！」と返しておきました。「Where are you from？」と聞いたら「ジャーマニー」と彼。司会のさわやか五郎ちゃんに、「彼、ドイツから来たんだって」と伝えたら、「黒ビール奢ってくれるんすか？」と相変わらず内容のないライトな返しでドイツ人の彼を困らせていた。「ビートルズが好きだから、いつかハンブルグに行きたいんだ」と伝えたら、彼は、「僕の親戚が住んでいる」と言っていた。知らんけど。


1階で自分の靴を取る時に係のおばさまが、「ああ、あなたがたくみさん？ あなたのファンの方々みんな礼儀正しくて素晴らしいわね」と言われ、「ああどうも」と返した。それを聞いていたファンの方が、「たくみじゃなくて、たくいですよ」と訂正してくれたのが聞こえた。良いファンである。靴に履きかえ、玄関を出ようとするとそのおばさまが、「また是非、皆さんでいらしてくださいね、たくみさんね、本当にありがとうね」と言って来たので、「お母さんね、僕ね、たくみじゃなくて、たくい、なのね、たくい」「え？たくウィー？」。もうダメだと思った。

天守を降り、本丸を降り、お土産売り場で係の人に挨拶して帰ろうとすると館長さんらしき人が言った「なかじまたくみさん、本当にこの度はありがとうございました！」。スタッフでどんな名前の伝達しとんねん。

あぁ 丸岡城 また訪れたい…。