【インタビュー】HADESの紗良、2ndソロアルバム『ROCK ON!!!』に幾多の顔「実は多重人格なのかも」

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■新しい私、いろんな顔
■その振り幅に自分でも驚いた


──それで思い出すのがスレイヤーのトム・アラヤ。トム・アラヤは昔、病院で働いていたことがあるんですよ。その経験が歌詞を書くときに役立ったというんです。というのも、いろんな患者の面倒を見ながら、様々な視点が備わったそうなんです。でも最終的に殺人鬼の心境とか、多重人格者のマインドなどを歌詞に落とし込んでいったんですけどね(笑)。

紗良:スレイヤーはもちろん知っていますけど、そうだったんですか。私も歌詞を考えるとき、自分自身のことをこうやって歌うというよりは、こういう視点で、こんな場面だったらこうかなって。歌詞に向かっているときはいろんな視点が確かに働いているかも(笑)。

──今回、作詞で悩んだのはどのあたりになってきますか?

紗良:悩みに悩んだのは8曲目「タイムリープ」なんです。今回の『ROCK ON!!!』の中ではちょっと異質な感じの曲で、少しR&Bのテイストもあるんです。これまで私のソロにはなかったタイプでもあったので、この感じの曲をまずどう歌ったらいいのか、全然思い浮かばなくて。普段、ソロでもバンドサウンドで曲やアレンジを作っているんですけど、「タイムリープ」は基本的に打ち込みがメインで、歌詞のイメージやストーリーも湧きにくかったです。

──この「タイムリープ」も“僕”目線のバラードですね。

紗良:はい。うまいこと情景を絞りに絞り出して(笑)。歌詞のストーリーを、どうしたら声でうまく表現できるか、サウンドに乗っかるリズム、声の質とかも苦労しました。表声よりはウイスパーボイスに近い感じのほうがサウンドには合うけど、単純なウイスパーボイスでは物足りないから。うまくエッジを利かせるにはどうしたらいいのかも悩みました。



▲「証」MVより

──過去にボーカルを誰かから教わった経験はありますか?

紗良:独学です。いろんなボーカリストの方と関わってきたので、悩みとか行き詰っているときにアドバイスをいただいたりとかはあります。

──昔、FM番組でinfixのメンバーと仕事もしていましたが?

紗良:はい。私がステージに立つうんぬんの前に、infixの長友仍世さんのラジオ番組のアシスタントをやらせていただいたんです。仍世さんは力強いボーカルスタイルの方で、あの声はどうやって出すんだろうとは思っていたんですけど、当時、音楽的な話はほとんどしたことなかったんですよね(笑)。infixの佐藤晃さんは、私が3ボーカルのグループをやっていたときにバンドのギターと、楽曲の総合プロデュースをしてくださってました。

──今では自分で意識しなくても、ソロ曲の歌詞の主人公になったり、場面に合った感情が湧き上がったりすることも?

紗良:そうですね。『魔界』での経験もすごく活きていると思います。『魔界』は激しいロックミュージカルなんですが、ボーカルトレーナーが付いているわけではないんです。演出家の方からも、歌う場面は任せてもらっていて。だから同じ曲を歌うにしても、舞台のストーリーに合わせて歌い方をけっこう変えたりしています。一緒に出演させていただいている榊原ゆいさんやNOVさんなどボーカリストの諸先輩方の舞台を間近に見させてもらいながら、いろいろ吸収させてもらって、表現者としての引き出しが『魔界』に出たことで、だいぶ増えたような気がしますね。この4年間で経験したことはかなり大きいと思うんです。表現者としての自分、アーティスティックな私を見せるというのも、ソロアルバムのひとつのテーマです。


▲舞台『魔界』より

──普段の真っ正直な紗良さんというのは、どの曲に投影されていますか?

紗良:どれもわりと正直なんですよね。曲や歌詞ごとにいろんな顔がいるんですけど、どれも本当の私で。実は多重人格者なのかもしれない(笑)。でも私の中にないものは、出ていないです。音楽の中だけは正直でいられる自分。そこを見せられるのが、すごく楽しいっていうか。

──HADESの歌詞では、負けず嫌いのところだったり、みんなを引っ張っていくようなパワフルさだったり、強い女性像が全面に出ていますよ。ソロでは正直な自分ということは、けっこうかわいらしいところあるんですね。

紗良:ありがとうございます、でも照れますね(笑)。曲作りからそうなんですけど、曲からのインスピレーションを大事にしたいタイプなんです。HADESはガツンと来るものがあって、やっぱり強くなりますよね。

──しかも普段はハーレーのナイトトレインを乗り回しているから、明らかにロックゴデスなオーラで。失礼なこと言ったらビンタされるんじゃないかってぐらいに。

紗良:というふうに、みんな思ってますよね~(笑)。でもソロのほうでは、意外とこんな側面もあるのよってのが、やっぱり出ちゃっています。ギターの善明さんも見た目はゴリゴリのコワモテなのに、実体はゆるキャラのような感じで、繊細なギタープレイも得意なんですよ。そういうフレーズが引き金になって、私自身の弱い部分というか優しい部分。そういったところも引き出されちゃうんです。



▲with HARLEY-DAVIDSON

──ソロを作っていく過程で、自分でも意外に思う自分自身と出会えたことも?

紗良:けっこう気づかされたところもあります。私にはこういう感情もあったんだなとか(笑)。HADESでは、なぜか強気な男勝りなところばっかり出ちゃうんですよね(笑)。メンバーに影響されちゃっているのかなぁ。

──HADESのメンバーに怒られるよ(笑)。

紗良:かもしれない(笑)。でも、強気オラオラだけじゃなかったんだなって思って。音源を作ると、いろんな発見があるなってことも感じます。同時に表現者として、いろんな声色をもっと作りたいって欲求がさらに増しているんです。それが今後のHADESにも活きていくと思うし、HADESをやっていることで強い女というか、ストロングな表現力も付いたと感じていて。3曲目「BAD」や10曲目「Forget that!!」は、HADESでの経験が活きていると思います。

──あと4曲目「ONE TIME」では、おしゃれをすることで吹っ切れようとする自分。11曲目「The ONE」では愛に溺れる自分とかも描かれています。違った装いでも歌うソロの紗良さんを見たくなりましたね。

紗良:ありがとうございます。今までソロもロックシンガー然とした感じだったんですけど、それとは180度違うぞって曲とか、ハーレーじゃなくてベスパが似合いそうな曲があったり、いろんなバリエーションもあって、自分でもビックリしています。ここまで振り幅があったんだなって。ミュージックビデオになる2曲目「証」は、グランジっぽいところもあって、挑戦した曲です。私の中でこういう曲にしようってイメージが完璧にできていて、そこにバンドメンバーみんなで向かった曲でもあるんです。

──新たな発見ですね。

紗良:今回のアルバムは、新しい私、いろんな顔を持っているんだよってことを知ってもらえると思うので、ステージングも、みんなでワイワイする場面もあるけど、しっとり聴く、その温度も体感してもらったらいいなと思っています。ソロのツアーでは、どのステージも違う場面を見せていきたいですね。音源とアルバムもどっちも味わうことで、ひとつのストーリーが完成するような。

取材・文◎長谷川幸信
撮影◎Rie Shiina (舞台『魔界』)

■2ndソロアルバム『ROCK ON!!!』

2023年6月23日(金)発売
BLRC-00137 ¥3,520
Black-listed Records
01. dusty
02. 証
03. BAD
04. ONE TIME
05. satellite
06. Fighter
07. Deity
08. タイムリープ
09. High-Five
10. Forget that!!
11. The ONE


■TOUR<ROCK ON!!! ROCK YOU!!!>

6月24日(土) 神奈川・本厚木サンダースネイク
7月09日(日) 千葉・柏パルーザ
7月15日(土) 大阪・心斎橋ショベル
7月16日(日) 愛知・名古屋柴田アヒル
7月17日(月・祝) 東京・渋谷ギルティ



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