【インタビュー】アジカン、15年越し『サーフ ブンガク カマクラ (完全版)』に成長と“らしさ”「やっと清書できたわ!みたいな」

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■ 僕は桑田さんに会わなきゃいけない宿命にあるんじゃないか

──そして次の「柳小路パラレルユニバース」もパワーポップへのオマージュが詰まっています。これも早めに録った曲であると。

後藤:うん。これはグランジも入れつつ、ですね。カート・コバーンはたぶんパワーポップが好きだったと思います。で、これはもうウィーザーですね。ほんとに。

──そう、歌詞であったり、リフであったり。

後藤:そうですね、<I don‘t care>とかは「バディ・ホリー」からのばっちり引用なので。メアリー・タイラー・ムーアなんて、まさにそのまま。こういう歌詞とかも、自分たちの青春のキーワードも出しながら書いてますね。かと言って……若作りして作ってる青春の歌じゃないようにしようかな、と思って。

──若作りではなく、むしろとても正直な気がします。この時のレコーディングの雰囲気はどうでした?

喜多:ひさしぶりにその藤沢のスタジオに行けたから、楽しくて。今回は一発録りじゃないんだけど、すぐ終わった気がする。

伊地知:うん、もう「1回か2回で終わらせる」というのはあったね。音にはこだわってるですけど、「フレッシュさは残しながら録りたいな」って。



喜多:「柳小路」はいい音で録れたよね、という話をみんなでしましたね。

──3つ目の新曲は、5曲目の「西方コーストストーリー」です。これはサザンオールスターズや桑田佳祐へのオマージュ、というか……。

後藤:パロディに近いかもしれない(笑)。「稲村ヶ崎ジェーン」も含めてね。俺、桑田さんに向けて、秋波はずっと送ってるんですけどね(笑)。

喜多:(笑)まだキャッチしてもらえてないんだ?

後藤:そう。歌詞の<あの人の幻を見てみたい>というのは桑田さんのことなんです。でも、いないよね? さすがにあのあたりに、桑田さんは(笑)。これは曲を作ってて、最初に、♪烏帽子岩(えぼしいわ)~、って出てきちゃったんです。だったらもう、サザンのことを書かざるをえないよね(笑)。

──はい。これと「稲村ヶ崎ジェーン」とで、ゴッチはサザンのことがかなり好きなんだろうなと思います。

後藤:うちのお父さんとお母さんがサザンの大ファンなので、僕、小学校の時ずっとサザン聴いてたんですよ。その中でも『KAMAKURA』(1985年)という、そんなに単純じゃないアルバムを自分が好きだったのが謎で。

──CDでも2枚組の超大作の『KAMAKURA』ね。日本のポップ・ミュージック史上に残る作品ですよ。

後藤:あのアルバム、めちゃくちゃ好きなんですよね~……当時、すごく聴きました。そして今、こうして『サーフ』というアルバムを作ってるから、僕は桑田さんに会わなきゃいけない宿命にあるんじゃないかと思ってるんですけどね(笑)。だからBARKSさんでも桑田さんに会える席を用意してくれるんだったら、ぜひ!という感じなんです。

──(笑)この秋波が届いて、ほんとに桑田さんとお話できるといいですね。


後藤:あと、この「西方コーストストーリー」は、ギターはダブルじゃないとなと思って、もう1本足したり。それから途中で潔が「タンバリン振りたい」って言うから……あれ? 俺が振ってくれって言ったのか。

伊地知:そう。ゴッチが「どうしてもタンバリン入れてほしい」って言うから。

喜多:山ちゃんだけはデモの段階から「この曲、リード曲にいいんじゃない?」って言ってたんですよ。予言してた。また。

後藤:おおー! 山田リライト貴洋! ほんとのプロデューサーだからね。本当の意味での。

喜多:俺と潔は「石上ヒルズ」推しだったんですよ。山ちゃんは「西方」とかいいんじゃない?と言ってて。さすがだな、と思って。

山田:(笑)新しい5曲の中では、湘南っぽさを一番感じたからね。これがリードだったらわかりやすいかなと思ったんですよ。伝わってほしいから。せっかく鎌倉をテーマにした作品だしね。

後藤:「石上ヒルズ」はちょっとふざけすぎというかね。「出た出た出た! アジカン、またやってるよ」ってなっちゃうからね(笑)。

喜多:でも今まで、こういう曲がリードになったことないもんね? いわゆる、いい曲というかね。

後藤:そうそう。あと、この曲、大滝(詠一)さんのことも意識して作ってます。<空に聞いてそんなこと/風に聞いてそんなこと>のあたりとか。

喜多:うん。ギターソロも、ちょっとオマージュ的なメロディにしたりね。



──で、オマージュと言えば、8曲目の「日坂ダウンヒル」も非常にわかりやすくて。

後藤:そうですね、これは『SLAM DUNK』と岡村(靖幸)ちゃんです。<青春って123/でも ジャンプなんてできない>っていうね(笑)。名曲ですよね、あれは。

──「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」ですね。

後藤:これはギターで弾いてて、<134飛び越えて>って唄い出してて、「あ、これはバスケの歌なんだな」と思って。それで<ダンクシュートだってできちゃうかも>とまで出てきたから、もう岡村ちゃんだなと。

喜多:これも『SLAM DUNK』の映画がブレイクする前にもうできてたよね?

山田:予言……!(笑)

後藤:そうそう! だから、ほんとはこれになったんじゃないの? あの映画の主題歌は?っていう(笑)。

──日坂は鎌倉高校前駅付近の古い地名なんですね。それで岡村ちゃんもあって、バスケつながりであると。

後藤:そうです! みんな、若かりし頃の岡村ちゃんの動画とかインタビューを全部見たほうがいいですよ。最高すぎる!マジで、ロックスターってこういう人のことなんだ!って思うな。俺はできないけど、いいなって思う。


──できないですか? やってみてくださいよ、あえて。

後藤:いやいやいや! こういう曲を作ってる時点でダメでしょ(笑)。

──それからこのイントロの咳払いは、もしやオアシスの「ワンダーウォール」を意識してるのかな?と思ったんですが。

後藤:いや、あれは俺がほんとに咳払いしてたら、エンジニアが面白がって入れたっていうだけです。「ワンダーウォール」、たしかに入ってますよね。ノエルの咳が。

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