【ライブレポート】未だトップオブトップを邁進し続ける、グラハム・ボネットの威容

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レインボーやマイケル・シェンカー、アルカトラス等の活躍でハードロック、ヘヴィメタル界に歴史を刻み続けた孤高のシンガー、グラハム・ボネット。2022年にはグラハム・ボネット・バンド名義での新作『DAY OUT IN NOWHERE』もリリースされ、約4年ぶりとなる来日公演が開催された。

今回の来日メンバーは、グラハム・ボネット(Vo)を筆頭に、一時バンドを離脱していたコンラド・ペシナート(G)が戻り、ベスアミ・ヘヴンストーン(B)、トーマス・スレメンソン(Dr)、アレッサンドロ・ベルトーニ(Key)となっており、初見メンバーも楽しみだ。



白髪になってもオールバックとサングラス、スーツにネクタイ姿のトレードマークはそのままに、幻想的なイントロだけで鳥肌が立つ「Eyes of the World」から大興奮が始まる。グラハムのレンジの広さを最大限に味わえ、いつ聴いても緊張感と高揚感を与えてくれる。それに「All Night Long」が続くと、アルバム『Down to Earth』の収録順もなぜこの順にしなかったのだろうかと、実は昔から思っていたりする。



アルカトラスの代表曲「Too Young To Die, Too Drunk To Live」に続き、レインボー後にリリースしたグラハムのソロ作品『Line Up』から「S.O.S.」を披露。ラス・バラードによるキャッチーなこの曲は、当時から印象に残っていて今もセットインするのは非常に嬉しい。



レアな選曲で言えば前半の「Love's No Friend」だろう。ここでANTHEMから盟友である柴田直人がゲストで登場する。ベースではなくギターでの参加は事前告知もされていたとは言え、まるでリッチー・ブラックモアな黒衣装にストラトキャスターだなんて予想を超えた演出には歓喜した。コーラスも徹底していたし、この選曲は柴田氏ならではと思う。





キーボードソロからディープ・パープルの「Lazy」とは少々意外に思えたインストタイムは、若手のアレッサンドロ(Key)、トーマス(Dr)がコンラド(G)とアイコンタクトをしつつ、アグレッシブなプレイを披露していたのも印象的。バンドの紅一点、ベスアミ(B)は益々クールビューティーで華を添え、時折マイクを取り日本語も披露する。


グラハム・ボネット


コンラド・ペシナート(G)


ベスアミ・ヘヴンストーン(B)


アレッサンドロ・ベルトーニ(Key)


トーマス・スレメンソン(Dr)

M.S.G.(マイケル・シェンカー・グループ)時代の「Desert Song」では場内から手拍子も沸き、もちろん過去のカヴァーだけでなく、グラハム・ボネット・バンドの「Into the Night」、最新曲「Imposter」「Uncle Joe」も披露され、グラハムのキャリアを網羅した内容となっていた。中でもコンラドの曲である「Imposter」は、グラハムが老いに対する葛藤を歌詞にしたもので、MVでは若きし頃のグラハムが登場し、今のグラハムが鏡に向かっている。歌詞の"Who are you?"とは自分自身の事なのだそうだ。誰しも老いていくのは当然に受け入れてはいても、その葛藤を正直に書き下ろしてくれた新曲もグラハムも心底かっこいいと思う。


一旦袖に戻っていた柴田直人は後半の「Night Games」で再びステージへ。日本ではカヴァーした西城秀樹ヴァージョンもお馴染みだし、イングヴェイやジョー・スタンプでも聴いているが、また新バージョンが誕生したというわけだ。M.S.G.の痺れる名曲「Assault Attack」で本編が終了、何よりほとんどの曲をオリジナルキーで歌いきった御年75歳のグラハムには拍手しかない。前日の大阪公演では、膝の不調も見られたようだったが、東京公演は2日間とも一度も座る事なく乗り切ってくれた。やや残念だったのは、「Jet to Jet」がイントロとアウトロ部分のみだったこと。全観客が歌も聴きたかったと思うのだが。





ゲスト出演した柴田直人は、アンコールの2曲を含む最終的に4曲でギターを披露。ソロを含むメインパートもこなし時折グラハムとの絡みも見せながら終始笑顔で実に楽しそうにプレイしていた。ツインギターを合わせたのは当日のサウンドチェックのみだったとコンラド談。オーラスの「Lost In Hollywood」は本当に目頭が熱くなった。







東京公演2日目の6月30日は、ベスアミのバースデー当日だった事でステージにケーキも登場し、総じてレアな場面が満載なベスト・オブ・グラハム・ボネット公演は大盛況となった。欲を言えば、もう少しアルカトラスの曲が聴きたいところではあるが、彼のキャリアの中でも高音な楽曲が多い為か、フルでの演奏は実質1曲のみとなっていた。ハードロックではなくとも「Only One Woman」あたりがあっても良かったかもしれない、結局のところシンガー、グラハム・ボネットがみんな好きなのだから。



終演後に、「あの部分とこの部分のキーが出なかった」「僕は全員を満足させる事はできないんだ。だけど、来てくれた人をできるだけ満足させたい」とグラハム。やはりベテランが長年続けていられるのは過去の成功だけでなく、常に努力し続けているからこそなのだと改めて思えた。

そしてこの公演後に、11月に行われるANTHEMのツアー最終2公演にグラハムがゲスト出演する事が発表された。ANTHEMの「Hunting Time」を演りたかったとも言っていたので、そのお楽しみは11月になりそうだ。

文・写真◎Sweeet Rock / Aki
写真(with 柴田直人)◎Takumi Nakajima









<GRAHAM BONNET BAND ~ Japan Tour 2023 ~>

2023.6.29 &30 Duo MUSIC EXCHANGE
1.Eyes of the World
2.All Night Long
3.Too Young To Die, Too Drunk To Live
4.S.O.S.
5.Love's No Friend(with柴田直人)
6.Key. Solo~Lazy~Instrumental Jam
7.Imposter
8.Desert Song
9.Uncle Joe
10.Jet To Jet~Drum Solo
11.Into The Night
12.Night Games(with柴田直人)
13.Assault Atack
~Encore~
14.Since You Been Gone(with柴田直人)
15.Lost In Hollywood(with柴田直人)
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