【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、アリーナツアー<NOAH no HAKOBUNE>「方舟に乗って荒波を乗り越えよう!」

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2023年、バンド結成10周年を迎えたMrs. GREEN APPLEが、メジャーデビュー記念日である7月8日、さいたまスーパーアリーナでアリーナツアー<NOAH no HAKOBUNE>をスタートさせた。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像

今回のアリーナツアーは、公式に“ネタバレ厳禁”が呼びかけられ、その解禁日をツアーファイナルとなる8月4日22時に設定。その期限を過ぎた今、おそらく大勢のファンが今回のアリーナツアーを振り返り、巨大なLEDビジョンとステージセットを効果的に駆使した“演劇&映画的パフォーマンス”あるいは“ロックエンターテインメントショー”とでも言うべき凝りに凝ったライブ演出について、あちらこちらで想い出話に花を咲かせていることだろう(話が脱線するが、若干のネタバレはあったのかもしれないが、筆者自身はこの1ヵ月間、SNS等でネタバレを一切目にせず、ミセスファンたちの周知徹底ぶりには感服した)。



“ネタバレ厳禁”とされたのには訳がある。フロントマンの大森元貴(Vo, G)はツアー前、「絶対に誰も想像できないようなびっくりするツアーになる」と公言。ツアー初日、そのコメントに心躍らせながら会場に向かうと、確かに彼の言葉通り、客席にいて音楽ライブを観ているのか、舞台や演劇の類のショーを観ているのか分からなくなる瞬間が幾度もあった。それはとても不思議な感覚であり、よく練り上げられたストーリー性、緻密に作り込まれたグラフィック映像、メンバーを含む演者全員の見事なパフォーマンスにより、観客たちを<NOAH no HAKOBUNE>という世界に没入させてくれた。そんなレベルの高いエンタテインメントを繰り広げてくれながら、Mrs. GREEN APPLEの3人が、誰よりもライブを心底楽しんでいた姿が、とても印象的だった。そのツアーを、改めて振り返ってみよう。

まず注目したいのは、今回のアリーナツアーは、直前に発売された最新アルバム『ANTENNA』のリリースツアーではなかったという点。一般的に、新作を完成させるとプロモーション目的で全国ツアーが組まれることが多い。それがいわゆる“リリースツアー”であり、その場合、当然ながらライブの世界観=アルバムの世界観であり、新譜収録曲を主軸としたセットリストが組まれるのが常識だ。ところが今回、フェーズ2では初めてとなるアリーナツアーでMrs. GREEN APPLEが見せてくれたのは、約3年前、彼らがフェーズ1を完結させるべく開催したアリーナツアー<EDEN no SONO>の続編とも言うべき<NOAH no HAKOBUNE>という世界観だ。


▲大森元貴(Vo, G)

その物語は、荒れ狂う海のシーンで幕を開ける。ステージは方舟の甲板となり、若井滉斗(G)がアコースティックギター、サポートベーシストの森夏彦はチェロを弾き、大森が「Viking」を歌い始め、ライブが始まった。そして激しい閃光が轟くと、サポートドラマー神田リョウが叩き出すアグレッシヴなビートの上で、クラシカルかつラジカルな藤澤涼架(Key)のピアノが響き渡り、「アウフヘーベン」へと続いていく。そして嵐が通り過ぎ、ステージが青空の映像に包まれた時、大森が声を発した。

「アリーナ、元気ですか!」

演劇色の強い怒涛の演奏に当初、観客はやや緊張気味であったが、笑顔で語りかけた大森のひと声で会場は一変。アリーナの空気感は、一気にいつものライブ色に塗り替えられた。そして始まった「CHEERS」で大森は、観客に「一緒に歌おう」と言わんとばかりに、何度もアリーナにマイクを向ける。

ここからMrs. GREEN APPLEは、曲によって“演劇色”と“ライブ色”の色合いを絶妙なバランス感覚で塗り分けていく。例えば、まるで月のように夜空に浮かぶ地球といった印象的な映像と共に歌われた「私」、ステージがカラフルな花のビジュアルに包まれた「ニュー・マイ・ノーマル」、クジラと共に大海原を旅するかのように演奏された「鯨の唄」などといった楽曲は演劇色が強めの演出で、一方、「私は最強」「StaRt」「青と夏」などのライブ大定番曲では思い切りライブ色に振り切ったパフォーマンスを展開。まさに観客は方舟に乗っているかのごとく、ある曲は激しく、またある曲では穏やかに身体が揺れるような感覚に心と身体を委ねながら、最後の最後まで方舟の“乗船”を楽しむことができた。


▲若井滉斗(G)

個々の楽曲に深みを加えるこのような演出も素晴らしかったが、ライブ全体を見渡したとき、<NOAH no HAKOBUNE>という見事な物語性は巧なセットリストによって生み出されていることに気が付く。そこで、今回のツアーで演奏された楽曲を収録アルバムのリリース順にみてみよう。

メジャーデビュー盤となった3rdミニアルバム『Variety』(2015年)からは2曲、1stフルアルバム『TWELVE』(2016年)からは3曲、2ndフルアルバム『Mrs. GREEN APPLE』(2017年)が1曲、3rdフルアルバム『ENSEMBLE』(2018年)は2曲、4thフルアルバム『Attitude』(2019年)からは5曲、4thミニアルバム『Unity』(2022年)は2曲、そして5thフルアルバム『ANTENNA』からが8曲。このように、初期曲から最新作までがまんべんなく選曲されていた。

しかも、人気曲を集めたオールタイムベスト的な発想ではなく、あくまでも“今”を生きるMrs. GREEN APPLEとして、<EDEN no SONO>を経た<NOAH no HAKOBUNE>で表現したい世界観を雄弁に語ることができる楽曲を厳選している点が重要だ。


▲藤澤涼架(Key)

「みんなで方舟に乗って、みんなで荒波を乗り越えよう!」

ライブ中のMCでこうした言葉を度々発した大森。まさしく音楽シーンの大海原で10年間に渡って航海を続け、バンドの浮き沈みをリアルに体験してきた彼、そしてMrs. GREEN APPLEは、このアリーナツアーで荒波を乗り越えることで、<EDEN no SONO>と<NOAH no HAKOBUNE>、つまりはフェーズ1とフェーズ2の狭間を埋めようとしていたのではないだろうか。そんな妄想を抱いてしまうほどに、ライブ中盤、メジャーデビューを象徴する曲「StaRt」とフェーズ2の開幕を告げた「ニュー・マイ・ノーマル」を立て続けに歌ったシーンは、実に心憎い演出であった。


ただ現実的には、演奏された大半の曲は作った時期も違えば、制作時の年齢も、バンドのムードも、曲に込めた想いや感情もまったく異なったもの。言ってみれば、そうした一貫性のない楽曲を並べてひとつの物語性を編み出すことは、実際にはとても難しい。そこで重要な役割を果たしたのが、同じように特定のテーマを掲げずに、大森がその時々で感じたものを歌にして作り上げた最新作『ANTENNA』の楽曲たちだ。

「Blizzard」や「Loneliness」、「norn」、そしてライブ終盤を飾った「Magic」や、アンコール「Feeling」など、セットリストの要所で歌われた『ANTENNA』の楽曲があったからこそ、あらゆる時代のさまざまな音楽が有機的につながり、ストーリーを作り出していった。多種多様な楽曲が『ANTENNA』という“冠”によってひとつの作品(アルバム)となったように、今回のアリーナツアーも、≪NOAH no HAKOBUNE≫という“冠”によって、ひとつのライブ作品へと昇華し得たのだ。


「結成10周年というタイミングで、アリーナツアー<NOAH no HAKOBUNE>をまわることができて本当に嬉しいです。ステージから見る客席の景色も本当にすごいし、会場全体で、この方舟を一緒に楽しめているなと感じられて、嬉しかったし、楽しかった! ありがとう!」──若井

「いやぁ、楽しかったね。結構、懐かしい曲もやったじゃない? “この曲、いつかアリーナで演奏できたらいいね”ってメンバーで話していた曲もあって。今日、こうやって(それらの曲を)みんなが楽しんでくれている姿を見て、とても嬉しくなりました」──藤澤

「とにかく僕らは今、本当に楽しいんですよ。毎日、楽しいと思えることにやり甲斐を感じて向き合えている。この状況は、皆さんに作ってもらったという気がしていて。自由に表現させてもらって、ずっとなりたかったミュージシャンに、みなさんにならせてもらいました。本当に感謝しています」──大森


こうしてアリーナツアー<NOAH no HAKOBUNE>は、バンド結成以来、10年間という歳月を共に過ごし、音楽を奏で続けてきた大森、若井、藤澤の3人の“今”が、これまで以上に極めて濃密に表現されたライブとなった。そしてその“今”は、少し先の未来であるドーム公演<Atlantis>へ向けて、既に航海を進めている。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎田中聖太郎写真事務所

■<Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”>7月8日(土)@さいたまスーパーアリーナ SETLIST

01. Viking
02. アウフヘーベン
03. CHEERS
04. 私は最強
05. VIP
06. Blizzard
07. Hug
08. 私
09. StaRt
10. ニュー・マイ・ノーマル
11. Loneliness
12. インフェルノ
13. Love me, Love you
14. scenario by Siip
15. HeLLo
16. ダンスホール
17. Folktale
18. norn
19. 鯨の唄
20. 青と夏
21. Magic
22. Soranji
23. ケセラセラ
encore
24. Feeling

▼Tour Schedule
7月08日(土) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
7月09日(日) 埼玉・さいたまスーパーアリーナ
7月15日(土) 大阪・大阪城ホール
7月16日(日) 大阪・大阪城ホール
8月03日(木) 愛知・Aichi Sky Expo
8月04日(金) 愛知・Aichi Sky Expo

■<Mrs. GREEN APPLE DOME LIVE 2023 “Atlantis”>

8月12日(土) 埼玉・ベルーナドーム (西武ドーム)
open16:00 / start18:00
8月13日(日) 埼玉・ベルーナドーム (西武ドーム)
open16:00 / start18:00
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999



■WOWOWプラス番組『Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”』

2023年9月放送
収録日:2023年7月9日
収録場所:埼玉・さいたまスーパーアリーナ
※詳細は順次公式WEBサイトで公開いたします
https://www.wowowplus.jp/info/mrsgreenapple/

▼スカパー!番組配信
配信番組:『Mrs. GREEN APPLE ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”』
配信日時:2023年9月予定
視聴条件:スカパー!放送サービスで、WOWOWプラスをご契約の方
※スマホ・タブレット・PCなどお好きなデバイスで番組をお楽しみいただけます
https://streaming.skyperfectv.co.jp/channel-770561

■5thオリジナルフルアルバム『ANTENNA』

2023年7月5日(水)発売
予約:https://lnk.to/MGA_ANTENNAec


▲ジャケットビジュアル

01. ANTENNA
02. Magic
 コカ・コーラCoke STUDIOキャンペーンソング(2023.6.13 Release Digital Single)
03. 私は最強
 映画『ONE PIECE FILM RED』提供曲セルフカバー(2022.11.09 Release 10th Singleカップリング曲)
04. Blizzard
05. ケセラセラ
 ABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』主題歌(2023.4.25 Release Digital Single)
06. Soranji
 映画『ラーゲリより愛を込めて』主題歌(2022.11.09 Release 10th Singleタイトル曲)
07. アンラブレス
08. Loneliness
09. norn
10. 橙
11. Doodl
 花王『メリットシャンプー』CMソング
12. BFF
13. Feeling

【FC会員受注生産限定 “JAM'S BOX”(CD + Blu-ray + GOODS 8種)】
PRON-1061 ¥20,000+税  
▼GOODS
・オリジナルワイドTシャツ(フリーサイズ)
・フィルム風クリアステッカー
 大森元貴監修:フロントポケットミニショルダーバッグ
 若井滉斗監修:シューレース(2ペア) & ソックス セット
 藤澤涼架監修:チェンジングマグカップ
・万年カレンダー
・スライドミラーキーホルダー
・スマホショルダーストラップ

【完全生産限定BOX(CD + Blu-ray + GOODS 2種)】
UPCH-29458 ¥8,000+税
▼GOODS
・オリジナルワイドTシャツ(フリーサイズ)
・フィルム風クリアステッカー

【初回限定盤(CD + DVD)】
UPCH-29459¥3,990+税

【通常盤(CD)】
UPCH-20655¥3,000+税

※GOODSのうち、オリジナルワイドTシャツ(フリーサイズ)とフィルム風クリアステッカーは同一の製品となります。
※特典映像のBlu-rayとDVDの収録内容は同一となります。

■チェーン別オリジナル特典■
・UNIVERSAL MUSIC STORE:アクリルカラビナ
・Amazon.co.jp:エコバッグ
・HMV全店(オンライン含む/一部店舗除く) :大判ポストカード
・セブンネットショッピング:コットントートバッグ
・TOWER RECORDS全店(オンライン含む/一部店舗除く) :B4クリアポスター
・TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/TSUTAYAオンラインショッピング:B2ポスター
・楽天ブックス:ドリンクホルダー
・応援店:ポストカード
※応援店特典は、オリジナル特典が付く店舗、オンラインショップは対象外となります。
※特典は先着となり数に限りがございます。
※特典は一部取り扱いのない店舗がございます。ご予約の際ご確認ください。


▲アルバム『ANTENNA』チェーン別オリジナル特典

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