【ライヴレポート】SUGIZO率いるSHAG主催イベント<WHAT IS JAM?>1周年記念公演で「This Is Jam!」
▲JAM SESSION
SUGIZO率いるSHAG主催イベント<WHAT IS JAM? Vol.8 “THE 1st ANNIVERSARY”>が山の日となる8月11日、神奈川・横浜ベイホールにて開催された。<WHAT IS JAM?>は、音楽の多様性に満ちたヴァイブラントなライヴジャムシリーズであり、その記念すべき1周年のアニヴァーサリーにして第8回目となる。同イベントのオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆<WHAT IS JAM?> 画像
「この前のSHAGのライヴはどうでした? 今、僕が一番やりたいのがこのバンドなんです!」──SUGIZOが私に向かって目を輝かせてこう言ったのは2022年1月のこと。2021年12月にSHAGのブルーノート東京公演に足を運んでから、1月後にお目にかかったときであった。そして「日本でジャムシーンをもっと盛り上げていきたい」とも。
そのSUGIZOの思いが形となったのが、音楽の多様性・可能性に満ちたヴァイブラントなライヴジャムシリーズ<WHAT IS JAM?>である。2022年8月11日にVol.1“New Dawn”と題して船出を切った同イベントは、東京のみならず神戸、京都、名古屋など各地で回を重ね、1年後の記念すべき同日8月11日、Vol.8 “THE 1st ANNIVERSARY”が開催された。
◆ ◆ ◆
▲MODULAR BOOTH
会場となった横浜ベイホールは、本来は2階のホールへとつながるエントランス部分もMODULAR BOOTHと題して、tatata5やYumi Iwaki、Kenichi Takagi、坪口昌恭、HATAKENが、それぞれユーロラックモジュラーシンセなどによる演奏を繰り広げる。また、2階のホールでも会場後方にDJ BOOTHのコーナーが設けられ、この日はGIVE UP GUYSが出演。このあたりも<WHAT IS JAM?>ならではの魅力である。
そのGIVE UP GUYSがビートの効いた音楽を場内に響き渡らせ、観客はすでにテンションが上がっている中、記念すべき1周年のステージにトップで登場してきたのは、SHAGでもキーボードを務める別所和洋率いる5人組、パジャマで海なんかいかない。ネオソウルやジャズをルーツとしながらも、エクスペリメントなサウンドを追求するグループだけあって、エレクトリックベースのHarunaとドラムのSeiyaの繰り出す抜群のグルーヴ、リーダーBessho(別所和洋)の洗練されたハーモニーの上、FiJAとChloeが張りのある歌声で6曲を披露。のっけからハイエナジーなパフォーマンスに魅了されまくる。
▲パジャマで海なんかいかない
▲Afro Begue
2番手は、セネガル人で打楽器ジャンベの達人オマール・ゲンデファル率いるAfro Begue。SHAGでベースも務めるKenKenが2020年から参加し、2022年にはキーボードにNaotoを新たに迎えてさらにパワーアップした。
それだけに強烈なアフログルーヴが繰り出され、そこにオマールのジャンベが炸裂するのだから、盛り上がらないはずがない。さらに2曲目からサプライズゲストでシアターブルックの佐藤タイジがギターで参戦、観客は大喜び。会場ごと揺れんばかりのノリノリ状態になっていた。
▲SHAG
3番手にいよいよSHAGが登場。1stアルバム『The Protest Jam』(2020年発表)収録の「Initiation of Rebellion」で幕を開けると、続いては完全インプロヴィゼーションによる演奏へ。類家心平の天空を突き刺すようなトランペットソロや、SUGIZOのアグレッシヴなギターソロが炸裂。結果、SHAGの持ち時間が切迫するほどの大熱演が展開され、演奏の最中にKenKenから「時間、大丈夫?」という言葉が飛び出すほどであった。
続いては、パジャマで海なんかいかないのChloeが加わり、1997年にリリースしたリミックス3部作のうちの『REPLICANT TRUTH?』収録曲「REPLICANT DELIVER...」を歌ったのだが、このヴァージョンをライヴで披露するのはこれが初めてということで、貴重極まりない。そして、ラストはChloeに替わってアルトサックスのパトリック・バートリーが加わり、KenKen作曲の「KAMOGAWA」へ。マイナー調のバラードから一転してファンキーな16ビートが交互に登場する構成が特徴で、聴衆をどっぷりと曲に引き込みながら、同時に乗せまくっていたのが実に印象的であった。
さらに、SHAGのステージが終了後、SUGIZOは1階エントランスのMODULAR BOOTHでHATAKENとコラボを展開し、ベースのKenKenもホール後方のDJ BOOTHでGIVE UP GUYSと一緒にプレイするなど、観客の目を釘付けにしてもいたのも見逃せなかった。
▲MODULAR BOOTH
▲SPECIAL OTHERS
その興奮冷めやらぬ中、4番手にステージに登場したのは、1995年結成、2006年のアルバムデビュー以来、日本のジャムシーンを牽引してきたSPECIAL OTHERSだ。SUGIZOは以前から同バンドに注目していて、今回の記念すべき“THE 1st ANNIVERSARY”出演へと至った。7月25日に配信されたばかりの「Falcon」からスタートすると、2023年5月25日に配信された「Bluelight」と6月25日に配信された「Bed of the Moon」と、新曲を軸にし、加えて、それらの合間にその場のインプロヴィゼーションがかなり展開されていたのは特筆に値する。
最後に人気曲「BEN」が飛び出したものの、スペアザをよく知るファンにとってはかなり新鮮なステージだったのではないだろうか。終演後にメンバー4人に聞いたら、やはり<WHAT IS JAM?>をかなり意識したとのことで、お互いにそれぞれの出方を見合いながら演奏をしていった、と口を揃えて言っていた。と同時に、スペアザのインプロヴァイズにおける底力を見せつけられたとも言え、非常に興味深いステージであった。加えて<WHAT IS JAM?>の持つ超が付くほどの重力…恐るべし。
▲JAM SESSION
SPECIAL OTHERSの演奏が終了すると、ステージにはこの日出演した4つのバンドのメンバー、それにゲスト陣も含めた全員が登場しての一大ジャムセッションへ。20人以上がところ狭しと一同に揃う眺めだけでも壮観だが、E7コード一発によるその場の完全インプロヴィゼーションの上で、それぞれがソロを回していく様も圧巻。同じドラムを4人のドラマーが代わる代わる叩き、キーボードにはバンドからの鍵盤奏者に加えてモジュラーシンセサイザーで出演していた坪口昌恭も参入。ヴォーカルの女性ふたりもその場で即興の歌詞を付けて歌い、場内は興奮の坩堝と化す。そして、なによりも出演している当事者たちが心からこのイヴェントを楽しんでいるのが伝わってくる象徴的なシーンでもあった。
これまでの<WHAT IS JAM?>シリーズでも、ステージ上でSUGIZOとKenKenが一貫して発してきた言葉「What Is Jam? This Is Jam!」の通り、出演者と観客とが一体となって音楽を楽しむ……これこそがまぎれもなくジャムだ。イベント終了後、SUGIZOは「ここ数年の間に<WHAT IS JAM?>でのフェスを実現したい!」と熱く語っていたが、その日が確実に近づいているのが感じられる、大盛り上がりのVol.8 “THE 1st ANNIVERSARY”であった。
取材・文◎石沢功治
撮影◎田辺佳子
■SHAG主催イベント<WHAT IS JAM? Vol.8 “THE 1st ANNIVERSARY”>2023年8月11日@神奈川・横浜ベイホール SETLIST
Dream Journey short
Trip
Let Me Know
Rain
Between the Lines
Electric
▼Afro Begue
Begue
Diogal Dawal
Khébaté
Boul bayi
▼SHAG
Initiation of Rebellion
free jam
REPLICANT DELIVER... featuring Chloe
KAMOGAWA featuring Patrick Bartley
▼SPECIAL OTHERS
Falcon
Bluelight
Bed of the Moon
BEN
■立川直樹プロデュース<SHAG meets カルメン・マキ「TIMELESS TRIP」>
https://hk-event.jp/event/ev_detail.php?ed_no=2329
■立川直樹プロデュース<SUGIZO×HATAKEN feat. Logic System(松武秀樹)「HEAVEN」>
https://hk-event.jp/event/ev_detail.php?ed_no=2328
■<メイカーズピアジャズフェスタNAGOYA 2023>
※SHAGの出演は9月17日(日)
https://www.jazzfesta-nagoya.com/
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