【インタビュー】岡野昭仁(ポルノグラフィティ) 、ソロプロジェクトの収穫「もっと本来の、より純な自分が出せるようになった」

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ポルノグラフィティの岡野昭仁が様々なジャンルのアーティストと一緒に音楽を探訪する「歌を抱えて、歩いていく」プロジェクト初のアルバム『Walkin' with a song』が、8月23日にリリースされる。

全10曲からなる今作は、岡野昭仁×井口理(King Gnu)×BREIMENによる強力なコラボが話題になった「MELODY (prod.by BREIMEN)」をはじめ、「光あれ」「Shaft of Light」「その先の光へ」という既発曲4曲はもちろんのこと、柳沢亮太(SUPER BEAVER)作詞・作曲による「指針」、n-buna(ヨルシカ)作詞・作曲による「インスタント」、小原綾斗(Tempalay)作詞・作曲による「芽吹け」、ポルノグラフィティのライヴやレコーディングで多くの楽曲のベースを担当している山口寛雄作曲、様々なアーティストに作詞曲を提供している市川喜康作詞による「GLORY」を収録。そして10曲目には、岡野昭仁作詞・作曲による「歌を抱えて」が収録された充実の1枚である。

今回BARKSでは、ライターもりひでゆき氏が岡野昭仁に、「歌を抱えて、歩いていく」プロジェクトの道程や、各コラボアーティストとの制作秘話、さらに、3年間にわたるこのソロプロジェクトによりボーカリストとして得たことについて訊いた書き分けインタビューを掲載する。

  ◆  ◆  ◆

■ これだけフレッシュに気楽な気持ちで制作ができるのは今回だけかもしれない

──ソロとしての初アルバムが遂に完成しましたね。

岡野昭仁:はい。マスタリングが先週ぐらいに終わったばかりなので、けっこうできたてホヤホヤな感じ(取材は7月末に実施)。先行配信された「指針」の反応はいろいろ届き始めていますけど、またアルバムが出ればいろいろな声が聴こえてくると思うんでね、それがすごく楽しみです。自分としてはソロプロジェクトを存分に楽しめたし、それによって出来上がったアルバムなので、「すごくいい作品になったな」「いい曲ばかりのアルバムになったな」っていう感想に尽きる感じです。

──「歌を抱えて、歩いていく」というテーマを掲げてスタートしたソロプロジェクトは、様々なクリエイターとのコラボを通して、あらためて歌に向き合うという大きな意味合いがあったわけですよね。

▲アルバム『Walkin' with a song』初回生産限定盤ジャケット


岡野:そうですね。様々なアーティストやクリエイターの方々にかっこいい楽曲、クオリティの高い楽曲を書いていただいた上で、僕自身は徹底的に歌にフォーカスするというのがソロプロジェクトのテーマでした。とは言え、テーマというほど大それた話でもなく、単純に僕がいいと思った方々に岡野昭仁というボーカリストを上手く料理してもらいたいなっていう感覚だったところもあって。そこは僕の無責任なところでもあるんだけど(笑)、コラボしていただいた方々の音楽性への信頼にお任せして、ある意味、どこか気楽にやらせてもらったところもあったんですよね。もちろん、すべてにおいて全力で真剣に向き合ってはいるんだけど。

──そのスタンスはソロならではの醍醐味かもしれないですよね。

岡野:うん。特に今回は初めてのソロアルバムですしね。例えば2作目を作るとなった場合、1stの実績を踏まえて、「前回よりもいいものを」みたいなことを考えちゃうと思うんですよ。そうなると今回ほどフレッシュな気持ちで向き合うことが難しくなる可能性もあるわけじゃないですか。そういう意味では、これだけフレッシュに、気楽な気持ちで制作ができるのは今回だけかもしれない。だからこそ、より思いきり楽しめたところはあったと思いますね。

──アルバムには21年にリリースされた「光あれ」「Shaft of Light」「その先の光へ」と、22年リリースの「MELODY(prod.by BREIMEN)」も収録されています。それらの曲に関して、あらためてどんな思いがありますか?

岡野:アルバム曲を作っていく中で、はじめにできた4曲の素晴らしさ、すごさを改めて感じたところはありました。澤野(弘之)くんとの出会いは自分にとってすごく大きいものでしたし、「その先の光へ」で尊敬するスガシカオさんに歌詞を書いていただけたことも嬉しかったですね。その才能に魅力を感じていた(辻村)有記やn-bunaくん、井口(理:King Gnu)くんとのコラボレーションも、とにかく自分にとっては新鮮な素晴らしい経験で。本当にありがたい限りですよね。





──BREIMENは井口さんからの推薦でコラボが実現したそうですよね。

岡野:そうそう。そういう出会いも嬉しいですよね。BREIMENに関しては、レコーディングでの集中してる姿がとにかくすごくて。若い優秀な面々が、湯気が立つほどに命を燃やしながら音楽に向き合っている姿は、僕にとってものすごく刺激的な光景でした。で、そんなBREIMENとの出会いがあったことで、彼らと同世代のミュージシャンをいろいろ聴くようになって。その中の1組だったTempalayの(小原)綾斗くんにアルバムでは声をかけさせてもらったりもしたんですよね。

──では、さらに多彩な面々とコラボが実現しているアルバム曲についても伺いましょう。まず1曲目はn-bunaさんが作詞・作曲・アレンジを手掛けた「インスタント」です。

岡野:「光あれ」の作詞をお願いした段階で、n-bunaくんには曲も書いてもらいたいと思っていたんですよ。で、それを伝えたところ、すぐにこの曲を上げてくれて。デモは「MELODY」よりも前にもらっていたので、アルバム曲のレコーディングもこの曲からスタートした感じでしたね。

──ものすごく情景が浮かぶ曲ですよね。

岡野:そうですね。n-bunaくんとは制作の前にいろいろな話をさせてもらったんですけど、そのときにすごく明瞭な言葉で音楽に対する思いを伝えてくれたんですよ。それに対して、僕も自分のことを純粋に知ってもらいたかったからいろんなことを話させてもらって。その上で、僕の故郷である因島のイメージで曲を作ってもらえないですかっていうことで、この「インスタント」が生まれたんです。

──昭仁さんの得意なサウンド感でもあるんじゃないかなと思ったのですが。

岡野:うん、こういうバンドサウンドは大好きです。ポルノでもバンドサウンドの曲をやっているので、ソロではそこと差別化したもののほうがいいかなと最初は思ってたんですけど、やっていくうちに「気にしなくていいかな」と(笑)。n-bunaくんにギターを弾きまくってもらいました。

──続く「ハイファイ浪漫」は、ネットミュージックに出自を持つEveさんが作詞・作曲を手掛けています。なかなか意外性のあるコラボですよね。



岡野:Eveくんの存在はアニメ「呪術廻戦」のオープニングテーマ(「廻廻奇譚」)で知っていたんですけど、あらためていろいろな曲を聴かせてもらうと、マイナーな曲調で音符が詰まっている作風が自分と相性がよさそうだなと感じたんです。で、オファーを受けてくれたので、上がってくる曲をとにかく楽しみにしていたんですが、いざ上がってきた曲を聴いてみると、「これボク、歌える⁉」みたいな(笑)。

──昭仁さんにとっては相当新しいアプローチの曲になっていますもんね。

岡野:かなり。韻を踏んだ言葉選びとか、曲の中でテンポチェンジがあるとか、ラップっぽいパートがあるとか、すさまじい情報量がものすごく上手くまとめられている曲ですからね。最初はちょっとビビりましたよ(笑)。

──いやでも昭仁さんらしく見事に乗りこなせてると思いますよ。すごく気持ちよく聴けました。

岡野:家で何度も何度も歌い込んだ上でレコーディングに臨みましたからね。Eveくんの意図をちゃんと表現できるようにめちゃくちゃ頑張りました。Eveくんとはリモートでしかお会いできなかったので、今度ちゃんと会うことができたら、どんな発想からあんなおもしろい曲が生まれるのかをぜひ聞いてみたいですね。ちなみにアレンジをしてくれたNumaくんは以前、ポルノのレコーディングにも参加してくれたことがあって。そういう再会があったのもおもしろかったです。

──先行配信された「指針」の作詞・作曲はSUPER BEAVERの柳沢亮太さん、アレンジはトオミヨウさんによるものですね。

岡野:他の曲も基本的にそうだったんですけど、デモの仮歌は作曲した方が歌ってくれていたんですよ。この曲も柳沢くんが歌ってくれていたんだけど、その歌がとにかく衝撃的にすごすぎて。そこに込められた魂をしっかり受け取って、柳沢くんに勝たなければいけないという気持ちを持って、レコーディングには向き合いましたね。気合いを込めて歌っても、まだ足りていない気がして何度も歌い直しました。



──歌詞も素晴らしいですよね。

岡野:うん。いろんなことがあった過去を捨てるのではなく、そのすべてを大事に抱えて生きて行くっていう言葉にはすごく感銘を受けました。間違いなく自分の人生においての“指針”になり得る曲だと思います。

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