【コラム】Omoinotake、『彼女たちの犯罪』主題歌「渦幕」で魅せた“裏切り”。激情を切り取った歌詞とジャージードリル×J-POPという発明

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毎週木曜23:59から放送中、深川麻衣、石井杏奈、前田敦子が出演するドラマ『彼女たちの犯罪』。元乃木坂46、元AKB48、元E-girlsの3人に加えて、ゲスの極み乙女のドラマー・ほないこか(女優名義は「さとうほなみ」)がメインキャストとして登場する本作は、4人がそれぞれの幸せを手に入れるために「偽装自殺」を企てるといった内容のサスペンスドラマとなっている。


最新回の第5話にて、4人はついに実行を決断し、さとうほなみ演じる玉名翠が崖から身を投げた。残された3人は幸せな暮らしを思い描いていたはずだが、計画通りにいかないことを予感させる不穏な雰囲気で第5話は終了。計画の考案者である石井杏奈演じる熊沢理子は、どうやら何かを隠している様子。しかも前田敦子演じる神野由香里の過去もまだ明かされていない。そんなスリリングなストーリーを、インストバンド・JABBERLOOPによる劇伴が盛り立てている。さらに、毎回続きが気になる絶妙なタイミングで流れるのが、Omoinotakeによる主題歌の「渦幕」だ。

今回BARKSでは、主題歌を書き下ろしたOmoinotakeに話を聞くことができた。Omoinotakeのベーシストであり「渦幕」の歌詞を手がけた福島智朗(通称:エモアキ)いわく、「青い鳥症候群」が本作の歌詞を書く上でのキーワードとなった。

「このサスペンスと自分の心が重なる部分を探していたところ、『青い鳥症候群』という言葉を見つけました。今よりもっといい人が現れるとか、今よりもっといい仕事が見つかるとか、現実を直視せず、根拠のない青い鳥を探し続けることを言うそうです。これはすごくわかるなあと思って。自分の置かれた状況を卑屈に考えちゃうことが僕も多々あるなと思ったところから書き始めました」(エモアキ)

「卑屈に考えちゃうことがある」とエモアキは言うが、いつもOmoinotakeの歌詞における彼の言葉選びには、自分自身に対して謙虚であるがゆえに相手に大きなリスペクトがある、傲慢さのない深い愛が表出していると私は感じ取っている。曲が終わると聴き手も歌い手も一歩踏み出せるような綴り方になっているものもOmoinotakeには多いが、本作は激情の一瞬を鋭く切り取ったもの。「普段は『もっと優しい言葉はないかな』『誰も傷つけない方向はないかな』とか考えちゃったりするんですよね。この機会がないと、こんな強い言葉は使えなかった」とエモアキは語る。

そして、第5話まで放送されている時点ではまだ歌詞にいくつかの謎が残っている。たとえば《同じ罪を 重ねた 二人なのに》という歌詞の「二人」は、誰のことを指しているのだろうか。

「考察要素も散りばめたいと思っていたので、色々な受け取り方ができる部分があると思います。もちろんドラマを見てない人にとっても、歌詞を読んだ時にストーリーが想像できるようにということも大事にしました」(エモアキ)


「渦幕」はサウンドも非常にユニークだ。「渦幕」を表すジャンルとしては、ドリルミュージックとジャージークラブが融合した「ジャージードリル」の要素をJ-POPに落とし込んだもの、と表現するのが適切だろう。

ジャージークラブとは近年の世界的なトレンドで、Drakeが昨年出したアルバムの楽曲でも採用されたところから、Lil Uzi Vert「Just Wanna Rock」、NewJeans「Ditto」などのヒットソングでも用いられている。ドリルミュージックとはシカゴで誕生後、UKやニューヨークで発展したジャンルであり、重たいビートに乗せてドラッグやギャング、暴力、犯罪などについてラップするものでダークな雰囲気をまとう。



「渦幕」はドラマに合わせて「犯罪」などをテーマに重たく過激な雰囲気をまとわせて、ジャージードリルのビートや要素をJ-POPに混ぜ込むことに挑戦した楽曲だと言える。しかもそれを大胆にも、毎週地上波テレビから流れるドラマ主題歌でやってやろうという姿勢が、いつも爽やかな佇まいで上質な歌を聴かせるのにその奥で一捻りも二捻りしてくるOmoinotakeらしい。

「まさにおっしゃってもらったみたいに、ジャージークラブをJ-POPのフィールドやドラマの主題歌でやっちゃおうという気持ちがありました。ドリルのビートに出会ってからいつかやりたいなと思っていて、『彼女たちの犯罪』の小説とドラマの脚本を読ませてもらった時に、このサスペンスにハマりそうだと思ったところから作り始めました。もともとサビはよりジャージークラブっぽいストイックなものだったんですけど、ドラマのプロデューサーの方からもうちょっと華やかさが欲しいという意見をいただいて、スネアも広がる感じにしたりストリングスを加えたりしました。だからミックスがすごく大変でしたね。ジャージークラブをやりたいけど、ストリングスとかがいわゆるJ-POPな感じになってるから、リファレンスにできるものがなくて。だからこその面白さと難しさがあったような感じがします」(藤井怜央・Vo&Key・通称:レオ)

そうしてできあがった曲をレオは「僕の30年の音楽人生を詰め込んだ、集大成的な曲」と高らかに宣言する。ジャージークラブ/ジャージードリルに、日本人らしい哀愁漂うメロディと声を組み合わせたこともまた、まだどこにもなかった新たなサウンドの発明となっている。

「もともと中学生の頃にHAWAIIAN6とかメロコアの哀愁感あるメロディがすごく好きだったので。X JAPANとかも好きだったし。本当に、今までの自分の好きだった音楽のいろんな要素を詰め込むことができたと思っています」(レオ)

Omoinotakeは「裏切り」のバンドだ。歌やメロディの印象とアレンジの印象にギャップがあり、その組み合わせに驚かされるのはこの曲だけでない。人間的な中身だって、一枚の写真から伝わる印象を裏切ってくる。こうしてインタビューしている時も親しみやすさを感じさせてくれる。だが、音楽を聴けば、ライブを見れば、その奥にさまざまな葛藤やポジティブだけでない感情を抱えていることがわかる。「音楽があって、やっと内側のいろんな燃えたぎるものが出せる」とレオは自分たちのことを表現する。

そしてドラマ『彼女たちの犯罪』も、この先私たち視聴者をさらに裏切ってくるようだ。エモアキが「原作も面白いんですけど、ドラマは違うものになっている。最後まで目が離せません」と、この先の展開への興味を掻き立ててきた。


なお、Omoinotakeは9月6日に待望のメジャー1stアルバム『Ammolite』をリリース。その作品についても、BARKSでは本人たちの言葉を交えてお届けする。

▲アルバム『Ammolite』通常盤ジャケット

取材・文:矢島由佳子

  ◆  ◆  ◆

読売テレビ・日本テレビ系7月期プラチナイト木曜ドラマ『彼女たちの犯罪』

■原作
横関大『彼女たちの犯罪』(幻冬舎文庫)

■放送枠・放送日
プラチナイト木曜ドラマ
2023年7月20日(木)スタート
毎週木曜日23時59分~24時54分

■脚本
田辺茂範 (「オー!マイ・ボス恋は別冊で」「婚姻届に判を捺しただけですが」「美食探偵 明智五郎」) ほか
大林利江子 (「純愛ディソナンス」「Sister」「長閑の庭」) ほか
谷口純一郎 (「DCU~手錠を持ったダイバー~」「先生のおとりよせ」「犯罪症候群」) ほか

■監督
菊地健雄
(映画「ディア―ディア―」「望郷」ドラマ「ヒヤマケンタロウの妊娠」「生きるとか死ぬとか父親とか」) ほか    
高橋名月 (映画「左様なら今晩は」「正しいバスの見分けかた」ドラマ「ジャックフロスト」) ほか
      
■出演
深川麻衣 石井杏奈 毎熊克哉 さとうほなみ / 野間口徹 / 前田敦子

■スタッフ
チーフプロデューサー:前西和成
プロデューサー:中山喬詞、矢部誠人、河野美里(ホリプロ)

■制作プロダクション
ホリプロ

■制作著作
読売テレビ

■番組公式サイト
https://www.ytv.co.jp/kanojohanzai/

メジャー1st ALBUM『Ammolite』

https://omoinotake.lnk.to/GvE394
◆リリース日
2023年9月6日(水)

◆収録形態・仕様・価格
・完全生産限定盤/ CD+BD/ AIC7-10〜11/5,500円(税込)
デジパック+三方背スリーブケース付き 付属物:ネーム入り完全生産限定スペシャルブックレット
・初回生産限定盤/CD+BD/ AICL-4420〜4421/5,500円(税込)
デジパック+三方背スリーブケース付き 付属物:初回生産限定スペシャルブックレット
・通常盤/CD/AICL-4422 / 3,300円(税込)

◆CD収録曲 
M1. Blessing
M2. EVERBLUE(TVアニメ『ブルーピリオド』オープニングテーマ)
M3. One Day
M4. Ammonite
M5. 空蝉 
M6. 渦幕(読売テレビ・日本テレビ系 7月期プラチナイト木曜ドラマ「彼女たちの犯罪」主題歌)
M7. モラトリアム(劇場アニメ『囀る鳥は羽ばたかない The clouds gather』主題歌)
M8. トートロジー
M9. 心音(映画『チェリまほ THE MOVIE』主題歌)
M10. 幸せ(TVアニメ『ホリミヤ -piece-』オープニングテーマ)
M11. オーダーメイド(NHK松江放送局 開局90周年記念テーマソング)

◆Blu-ray収録予定内容 *完全生産限定盤/初回生産限定盤
Omoinotake SPECIAL LIVE 2023 “SUEHIROGARI” 2023.4.28 @Zepp DiverCity (TOKYO)
1. EVERBLUE
2. So Far So Good
3. 産声
4. 心音
5. One Day
6. 彼方
7. By My Side
8. 空蝉
9. 雨と喪失
10. モラトリアム
11. Blanco
12. 惑星
13. Stand Alone
14. トロイメライ
15. Never Let You Go
16. オーダーメイド
17. トニカ

New Single「幸せ」

https://omoinotake.lnk.to/hoYDOi
◆リリース日
2023年9月6日(水)

◆収録形態・仕様・価格
初回仕様限定盤 /CD/AICL-4423/1,430円(税込)
アニメ絵柄書き下ろしジャケット+スリーブケース

◆収録曲
「幸せ」(TVアニメ『ホリミヤ -piece-』オープニングテーマ)
「幸せ (instrumental)」
「夏の魔法のせいじゃない」

<Omoinotake ONE MAN TOUR 2023 “Ammolite”>

9月22日(金)愛知・Zepp Nagoya  開場/開演:18:00/19:00
9月23日(土)大阪・Zepp Osaka Bayside 開場/開演:16:00/17:00
9月30日(土)福岡・Zepp Fukuoka 開場/開演:16:00/17:00
10月6日(金)東京・Zepp DiverCity(TOKYO) 開場/開演:18:00/19:00
10月14日(土)北海道・Zepp Sapporo 開場/開演:16:00/17:00
10月28日(土)島根・松江テルサホール 開場/開演:16:00/17:00

【券種・チケット料金】
全席指定(一般) 5,500円(税込/ドリンク代別)
全席指定(学割) 4,500円(税込/ドリンク代別)※オフィシャル先行のみ取扱い

※3歳以上有料
※学割チケットをご購入の方は、入場時に学生証を確認致します。
(特に高校生、大学生、専門学生の方は、学生証を忘れた場合は、一般料金との差額をいただく場合がございます。予めご了承ください。)
※お一人様1公演につき4枚まで申込み可
※松江公演のみドリンク代徴収なし

◇チケット購入
URL:https://w.pia.jp/t/omoinotake23/

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