【インタビュー】横山剣がルーキーの気分で取り組んだ“シン・クレイジーケンバンド”によるアルバム『世界』
2023年でデビュー25周年を迎えた東洋一のサウンド・マシーンこと、クレイジーケンバンド(以下、CKB)。ソウルサウンドを中心に、ファンクやジャズからボサノヴァ、果ては歌謡曲まで、様々なジャンルを縦横無尽にヌルッと掛け巡る全方向型スタイルで、ファンのココロとカラダをグッと離さない彼ら。ちょっとしたリニューアルを経て、リーダーでセクシーヴォイスの持ち主、横山剣を筆頭に約11名(!)のメンバー編成となり、“シン・クレイジーケンバンド”へとシン形態に変化させたという彼らが、通算23枚目となるアルバム『世界』を2023年9月6日にリリースする。ニューアルバム『世界』のお話を中心に、シン・クレイジーケンバンドなるものの世界について、横山剣にたっぷりどっぷりと訊いたインタビューをお贈りする。
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■「大御所にならないぞ!」みたいな
──デビュー25周年目を迎えたということで、まずはおめでとうございます! 前回のBARKSでのインタビューが2017年10月で、あれから約5年もの月日が流れました。まずは25年を迎えてどんなお気持ちでしょうか?
横山剣:あの時は、2017年が結成20周年で、2018年でデビュー20周年ということで、2年連続で周年が続きましたよね。それで2022年が結成25周年ということなんですけれど、結成した時にすでに37歳とかで高齢でデビューしていますから…(笑)。
──20周年の時は、「まだまだ先輩がいるのでチンピラでいられます!」というお言葉をいただきましたが。
横山:いや!それがまだ、みなさんいらっしゃるんですよね(笑)。しかも、矢沢永吉さんも70歳をすぎてまだまだ現役ですし、(山下)達郎さんもいるし、サザン(オールスターズ)もいる。本当に、僕らまだまだチンピラですよね。「このまま終わっちゃうのかな?」という不安もありますけれど(笑)。でも、そういう方たちが現役でいるうちは、まだこういうポジションでいられるので、自由度は高いですよね。「大御所にならないぞ!」みたいな、まぁ「なれないぞ!」のほうですけど(笑)、「なりたくない!」という気持ちも若干あります。
──9月6日にアルバム『世界』をリリースされますが、このアルバムについて「可愛さ余って憎さ100倍!」とコメントされていますね。どのあたりが“憎い”のでしょうか?
横山:もう好きすぎて、犬とかに「んにゃ!」って噛んじゃうみたいな。僕はチワワを飼っていますけれど、可愛すぎてギュッと抱きしめたくなるような、そういう感じです。憎くはないけれど、もはや憎さに近いというか、なんとも言えないような気持ちになっちゃうアルバムです。
──もともとは『クレイジーケンバンドの世界』というタイトルにしたかったとか。
横山:バンドメンバーがリニューアルしたこともあって、『シン・仮面ライダー』とか、『シン・ウルトラマン』、『シン・ゴジラ』のように、シン・クレイジーケンバンドみたいな感じなんです。だから気持ち的には、シン・クレイジーケンバンドのファーストアルバムなので、『クレイジーケンバンドの世界』としたかったのですが、タイトルがちょっと長すぎる。それに旅をしているようなアルバムなので、『世界』のほうがいろんな意味で幅広くていいかなと。あと、このジャケットの字体なんですけれど、“音霊”、“言霊”というのがありますけど、“文字霊”(もじだま)的にもいいなと思いました。
──今作では、サウンド・プロデューサー&アレンジャーとしてPark(gurasanpark)さんが起用されていますね。
横山:Parkくんは僕らのアルバムにもう6年ほど関与してくれているのですが、今作ではより中に入ってもらいました。彼は唯一「なんでこんなに分かるの?」ってくらい、音楽的な趣味とか、ボイシングとか、いろんな部分で僕の脳内にあるモノを自分以上に摘出してくれるドクターみたいな感じなんですよ。この6年間の経験も踏まえて、もう「間違いない!」いうことで、メンバークレジットには入っていませんが第12のメンバーとして内側に入ってもらいました。
──ドラマーには、新しく白川玄大さんが正式にメンバーになられました。
横山:白川くんは、僕も含めメンバーの潜在的なポテンシャルをやたら引き出せるプレイをしてくれるんです。そのおかげもあって、メンバー全員が生き生きして、水を得た魚のように演奏できたというのは大きいですね。昨年の8月にサポートでうちに来てもらったんですけれど、「もう逃さないぞ!」って(笑)。
──ジングルも含めて、渾身の全17曲が収録されています。
横山:3曲はジングルなので、純然たる楽曲は14曲です。作曲は僕が8曲、Park君が1曲、小野瀬さんが1曲、僕とPark君の共作が4曲となっていて、そのうち「SHHH!」「マンダリンパレス」の2曲については、予めParkくんが用意したデモ・トラック上に僕がメロディと歌詞をトッピングして、その音をCKBの生演奏にコンバートするというやり方です。
──それにしても曲のタイトルがあいかわらず秀逸ですね! 1曲目の「宇宙ダイバー」から、「なんだこりゃ!」って(笑)。
横山:「宇宙ダイバー」というタイトルは、僕の愛読書で中沢新一さんの名著『アースダイバー』に倣っての命名です。ロケットみたいに気分を宇宙に飛ばして、雁字搦めの日常から解放されるぞ、自由に泳ぐぞ、と。フィフス・ディメンションの「ビートでジャンプ(アップ・アップ・アンド・アウェイ)」がそうであるように、CKBはここから飛躍するぞ!という気持ちを込めて冒頭にもってきました。
──「Do it!世界は愛を求めている」は、マイケル・ジャクソンっぽかったり。
横山:そうですね。これはね、かなりマイケルですね! 大好きなので(笑)。特にジャクソンズの『トライアンフ』は20歳の頃から好きで、マイケルの影響は知らず知らずに入っていますよね。そこに90年代のUK的なストリングスアレンジを入れたのですが、この曲も、なんとなくぼんやり頭の中にあったものをParkくんが具体的にしてくれました。
──「Sweet Soul Train」は、いわゆるモータウンビートですよね。
横山:そうですね。フォートップスとか、そんなムードのコード使いです。これは、もうひとりのボーカリストのスモーキー・テツニに歌ってもらおうと思って。人に歌ってもらうことで作曲家気分が満たされるので、すごく嬉しいですよ。
◆インタビュー(2)へ
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