【レポート&インタビュー】WATWING、熱狂のパシフィコ横浜で初の武道館公演も発表「今日という日を僕らは忘れません」

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photo by Ryoji Yamaguchi

WATWINGが、自身最大規模となるワンマンライブ<WATWING First Full Album One Man LIVE “Where to Forward”>を、パシフィコ横浜大ホールで開催した。詰めかけた4500人のWindy(WATWINGファンの愛称)を、今夏の酷暑よりもアツいパフォーマンスで魅了した。結成から約5年の歳月をかけ、名実ともにステップアップしてきた6人が織りなす上質のライブパフォーマンスをレポートしてお届けしたいと思う。

なお、BARKSは終演後、蒸気立ち上る状態の6人に独自インタビューを敢行。ライブ終了直後の感想から、8月30日にリリースされるメジャー1stフルアルバム『Where』についてや、アルバムを携えて11月11日の新潟LOTSから始まる全国ツアー、さらに、このライブで発表された、全国ツアーの締めくくりとして行われる2024年2月8日のWATWING初の日本武道館公演<WATWING Let’s get on the beat Tour Special Edition in 武道館>への意気込みについて語ってもらったので次ページも是非チェックしてほしい。

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3階席までぎっしりつまった観客の視線は、ただ一点、ステージにかかる紗幕に注がれていた。暗転し、ビートが会場に轟くと、6人のシルエットが幕を通して浮かび上がるとともに、場内をつんざくような歓声が沸き起こった。あたかも闘いへの雄たけびのように聴こえる力強い第一声から始まった1曲目「Runway」では、赤と黒のコントラストが印象的なライティングの中、パワフルに6人が躍動。古幡亮の力強い「行くぜ!」の声に合わせて、幕が落ちると、ますます熱狂の度合いは加速していった。

photo by Daiki Tateyama

八村倫太郎が「みんな、声出して盛り上がっていくぜ!」と、Windyを鼓舞し、HIP HOPマナーの自己紹介ソング「WATW“ing”」へなだれ込んだ。黒光りする拡声器を手に、各メンバーが自分のパートを披露すると、Windyもそれに合わせて合いの手を入れるのもライブならではの楽しさだ。ライブ映えするこの曲ができたとき、メンバー全員がとても喜んでいたっけ。彼らは、この日の光景をそのときすでに予感していたのかもしれない…ふとそんな気がした。

photo by Daiki Tateyama

メロウでスムースなサウンドに乗せ、少し内気な恋心を歌う「The Practice of Love」では、シャープで洗練された振り付けで、サウンドの世界観を体現してみせた。かと思えば、「アガれ、横浜!」の声に誘われ突っ込んだ「BREAK OUT」では、ハンドクラップのようなビートに合わせてピュアホワイトのペンライトが小刻みに揺れた。目まぐるしく変化するフォーメーションにあわせて、6人は有機的な一つの生命体のように接近したり離れたりしながら、美しい演舞を魅せていく。そんな彼らの額や首筋には早くも汗が浮かび、それがますます彼らの顔を輝やかせていた。

ノンストップで4曲を駆け抜けた後、息を上げる様子もなく爽やかに「皆さん、こんばんは。WATWINGです!」と挨拶。そして、「飛ばす気満々です。イヤモニぶち抜いて、みんなの声が聞こえてきて最高です!」と八村がMCの口火を切った。クールな年少組の桑山隆太は「このまま最後まで盛り上がっていきましょう」と呼びかけ、一方、おちゃめで天然な年長組を代表する髙橋颯は自分の順番が来てもマイペースに水を飲む姿がビジョンに映し出され、笑いを誘っていた。古幡が、「最後まで楽しんで」と再び盛り上げたかと思えば、鈴木曉はいつものほんわかとした調子で「おばんです、曉です」と挨拶。「生きざま見てよ! 見てくれるかな?」の無茶ぶりに、すかさず「いいとも!」と答えるWindyの優しさに思わずほっこりした。

▲髙橋颯 photo by Daiki Tateyama

▲鈴木曉 photo by Ryoji Yamaguchi

さて、続くのは福澤希空。彼のトークも、髙橋とはまたベクトルの違う独自のふわふわな世界観がくせになる。人生初の大舞台にもかかわらず「この地球の中で、“希望の空”を見ているのは、ここだけです」と自分の名前にかけてシュールに自己紹介。あちこちのWindyから「かわいい♡」の声が上がる。こんなとっ散らかった(それもまた魅力だったりする)MCが許されるのも、とびきりの視野の広さと視座の高さのある八村がMCタイムのトリにいる安心感があるからだろう。その八村は、大学の入学式でパシフィコ横浜に訪れていたことをあかし、こうしてWATWINGとして凱旋したことを感慨深げに語った。

「最高の時間を作りに来ている」「横浜の大空に飛ぼうぜ!」と述べると、軽快でノリのいい「WAIT A MINUTE!」へと誘った。こうした晴れやかなナンバーでは特に、髙橋の太陽のような笑顔と歌声が似あう。つづく「Turn it up」では、クールな雰囲気に一変。3階建ての舞台セットを活かし、モノクロームな映像とリンクする6人のパフォーマンスは、アートのインスタレーションのような美しさが新鮮だった。

「みんな、大好きな曲。歌って踊ろう!」と呼びかけた「Sensation」や、スモークの中にあやしく光るレーザー光と性急なビートにいやおうなくテンションが上がる「Waves」など、黒を基調としたスタイリッシュな空間の中、1階から3階までを縦横無尽に駆けながらダイナミックなステップとしなやかに表情を変える手振りが光るダンスを披露する6人の圧倒的な運動量に驚かされる。そして、その運動量をつゆとも感じさせずに歌い続けるWATWINGのライブ体力のモンスターぶりには驚嘆するばかりだ。

photo by Ryoji Yamaguchi

photo by Daiki Tateyama

ここで前半の区切りを迎え、ビジョンには本ライブへの想いを一人ひとりが語る映像が映し出された。メンバーそれぞれのコメントにうなづいたり、歓喜したり、共感を示すWindyたち。彼らとの絆の深さを垣間見た気がした。

これまでがモノクロームでスタイリッシュなWATWINGだとしたら、後半はカラフルで親しみやすい普段着のWATWINGの魅力をたっぷりと堪能できるセクションだった。おしゃれ好きな6人の個性が伝わるようなカジュアルでカラフルな衣装を身に纏った彼らは、キャッチーなメロディと疾走感に心励まされる「HELLO WORLD」で、Windyと共に希望に満ちたコーラスを合唱し、心に明るい光を灯した。tofubeatsがWATWINGに書き下ろした「Let’s get on the beat」では、1音1音に呼応するかのようなダンスパフォーマンスにより音楽を身体で表現。ポップでレトロなサウンドが耳に新しいナンバーで、透明感ある鈴木の歌声が際立って響いていた。

▲photo by Ryoji Yamaguchi

▲古幡亮 photo by Daiki Tateyama

ここまで全力で激走してきたWATWINGだが、「ING」からはしっとりとしたナンバーが続いた。約3年前にリリースされたこの曲は、過去を回想するように6人が互いに歌いかけていた姿が印象的だった。歌詞の一節にある“見返してやりたいのは あの日の自分さ”という言葉のように、彼らはこの日のステージで、かつての自分に答えを出すことができただろうか。

▲photo by Daiki Tateyama

▲福澤希空 photo by Daiki Tateyama

彼らにとって初めてのバラード「Shooting Star」では、6人全員がメインヴォーカルをとれるWATWINGならではの個性が存分に伝わってきた。たとえば、低音部の深い響きが魅力で説得力ある歌声を持つ八村。伸びやかで張りのある素直な歌を持ち味とする桑山。甘さとほんのり艶っぽさも備えた福澤。ピュアな歌声ながらテクニカルな歌唱でグループに奥行きを与える鈴木。身体と魂の総てで歌を表現する表情豊かな髙橋。まっすぐさと力強さの中に温かみがにじむ古幡。この6人6様の歌声が綾なすハーモニーもまた、WATWINGのもっと知られていい魅力かもしれない。

▲photo by Ryoji Yamaguchi

MCでも、初の試みに挑んでいたWATWING。終盤のセクションでは、3名ずつでMCを担当し、衣装チェンジの間もWindyを愉しませる取り組みが見られた。ここではもっぱら、この日に合わせて極秘裏に髪色を大胆に変えた八村と桑山のヘアスタイルについて、トークの花が開いた。明るい金髪の八村や、ブルーグリーンのカラーを施した桑山も、雰囲気が変わり素敵だったが、実はほかのメンバーもヘアスタイルをアップデートしていたことが判明。メンバーみんなの、この日への強い意気込みが感じられるものの、残念なことに鈴木と古幡が「気づいた?」と問いかけるもWindyの反応はいまひとつ(笑)。そんな観客との距離の近さも、彼らのライブの楽しさだろう。このMCでは小さなチャレンジがもう1つ。福澤がおもむろに、「おれ、つっこみができないんですけど、やってもいいですか?」と宣言。精一杯試みるものの、メンバーからは「それ、リアクションだよ」とたしなめられると、Windyはなんとも楽しそうな笑い声をあげていた。

さあ、楽屋感満載のトークはここまで。ここから先は、いよいよ怒涛の最終盤に突入だ。だが、軽やかな上昇感が心地よい「WINGS」のイントロが流れ、鈴木が伸びやかに歌いはじめた、その瞬間だった。曲紹介した八村が「曲の入り方、マニピュレーターさんの木下さん『天才か』って思う!」と感動のあまり喋り続けたため歌い出しとかぶってしまい、再度仕切り直しに。メンバーが笑い合いながらじゃれつつも、ライブを影で支えるスタッフへの愛をWindyにシェアしていたところもまた、彼らが多くの人に愛される理由なのかもしれない。

「この曲を聴かないと夏が始まらない」と言って歌い始めた「SHELLY」。大らかなミッドチューン「MAGIC」では、伸びやかに歌いしなやかに踊る6人にあわせて、Windyが“Woo…”と歌声で応えながら、ペンライトを稲穂のように横に揺らす光景が美しかった。続いて、「ラストスパート、あげてこうぜ!」と八村が叫び、「HERO」へ。ステージ上と客席でタオルを振り回しながら、この瞬間の一体感を味わい尽くした。「ついてきてくれてありがとう」という謝意を伝え、本編ラストに歌ったのは「With you」。この曲は、2021年1月にリリースされた希望あふれるナンバーで、“隣に居るだけで 輝くよ Today”という歌詞を誰もが実感したことだろう。

▲八村倫太郎 photo by Daiki Tateyama

▲photo by Daiki Tateyama

熱のこもったアンコールの声に誘われて、再び登場した6人が熱狂的に迎えられたことは言うまでもないだろう。そして、この日ラストのMCで、最大のサプライズは待ち受けていた。八村が「ここからは、一緒にする挑戦の話をします」と表情を引き締め、ビジョンには「重大発表」と映し出さると、パシフィコ横浜はどきどきとわくわくの感情に支配された。そこで、2024年2月8日の日本武道館公演決定が発表されるやいなや、この日一番の大きさでWindyの悲鳴にも近い歓声が会場を埋め尽くした。「WATWINGとWindyの挑戦です。一緒に乗り越えて、楽しんでいきましょう」と告げると、その場の空気がきゅっと密度が濃くなった気がした。

▲桑山隆太 photo by Ryoji Yamaguchi

▲photo by Ryoji Yamaguchi

アンコールでは、ライブ前日にダンスパフォーマンスビデオを公開したばかりで、大橋ちっぽけが手がけた「Falling for You」を披露。実は、この楽曲では古幡とともに福澤が振り付けに初挑戦したという。真心こめた渾身の一曲を、ライブを観る全ての人にギフトとして届けてくれたのだろう。オールラストは、キャッチーでスイートでハッピーなラブソング「Honey,You!」で大団円を迎えた。キャノン砲が放たれ、キラキラとした高揚感と多幸感に満ちた輝かしい瞬間だった。

▲八村倫太郎 photo by Ryoji Yamaguchi

▲photo by Daiki Tateyama

この後、ライブをすべて終えた彼らは、心からあふれ出る言葉をWindyの前で吐露した。その言葉からも、彼らの本ライブへの強い気持ちや、そこにたどり着くまでの道のりの長さを感じ、ぐっと迫るものを感じた人は少なくないだろう。八村がまず、「僕らのパフォーマンスは以上になります。最後、一人ひとりから挨拶させてください」と言い、それぞれがこんなふうに語り繋いでいった。

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鈴木「こんなめちゃくちゃでかい会場に来てくれてありがとう。みんなが声を出してくれて動いてくれて、そのおかげで俺はすごくパワーを感じれたし、それをもってこれから生きて行こうと思う。だから、まじでありがとう! 武道館も決まって、これからもずっとついてきてほしいです。よろしくお願いいたします」

福澤「希空です。見てくれてありがとうございます。武道館の発表がありました。これから先ずっと挑戦してきたいと思うし、こうやって素晴らしい方たちに支えられて、めちゃめちゃ最高です。ありがとうございます…(髪をかき上げながら、顔をくしゃくしゃにして涙)これからもついてきてください。よろしくお願いいたします」

古幡「ありがとうございます。言葉にできないくらいの感謝を、希空君もきっと感じてて。言葉にするのが難しいですが、この景色を大事にしたい。みんなをどこまでもつれていきたいと思います。俺たち6人、そしてWindyで、これからもっともっと最高の景色を観に行こう。みんな、愛してる! 今日はありがとうございました」

桑山「今日は本当にありがとうございました。デビューの時の……(ことばに詰まる)光景を思い出して、「forWard」で始まって、そのCDを見たときにすごくうれしくて。このゼロから始まったWATWINGが、こうしてたくさんの人の前にいることが夢みたいだし、こうやってたくさんのWindyに出会えたことが僕は嬉しいです。これからももっとたくさん歩んでいきましょう。そして、たくさんパワーを与え続けます、これからもよろしく!」

髙橋「今日は本当にありがとう。たくさんの声を聴かせてくれてありがとうございました。みんなの声が聴けて、俺、すごく嬉しいよ! ずっとこれからも、その声、俺らに聴かせてね(満面の笑み)ありがとう!(隆太と抱き合う。隆太、号泣。)」

八村「会場が明るくなって、みんなの顔がよく見えます。(言葉に詰まり、メンバーからの「泣くのか?」の突っ込みに)泣かねーよ(と強がりつつ、泣いている)。やっぱ活動してたらさ、生きてたらさ、人間、嫌なことだってあるよ。つらいことだってあると思う。俺だってあるし、みんなあると思う。俺らはそれをよく知りません。でも、ここにこうして元気に来てくれるだけでいい。俺らもこれからも無事でいるし、6人でステージに立ちつづけます。みんなの笑った顔が忘れられないからさ、どんどん頑張るからさ、どんどん大きな景色を一緒に見に行きましょう。これからもWATWINGをよろしくお願いします。(深々と頭を下げながら、嗚咽する八村)。みんなと会えてしあわせです! ありがとう」

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最後の最後は、いつもの八村に戻り、「今日という日を僕らは忘れません」と、礼儀正しく謝意を伝えた後、「“以上、Windyでした”をやってみたいという声がちらほらあります。それで締めたいと思います」と、提案。WATWING全員で声を合わせて、「以上、WATWINGでした。そして、…」と呼びかけると、会場の4500人が「以上、Windyでした!」と声をそろえた。こんなに温かでHappyな光景は、そうないのではないだろうか。そう思うほど、多幸感に溢れた瞬間で、WATWINGは自身最大級のチャレンジを締めくくったのだった。

▲photo by Ryoji Yamaguchi

先にも述べたように、WATWINGは、8月30日にメジャー1stフルアルバム『Where』をリリースするが、そこにはメンバーが作詞・作曲に参加した楽曲も含まれるという。さらには、フェスやイベント出演などを続けながら、勢いそのままに11月からの全国ツアーへとなだれ込むことだろう。それらの経験を1つずつ糧にして、彼らはクリエイティビティをさらにアップデートし、進化/深化していくに違いない。そう考えると、少し気は早いが、来年2月の日本武道館公演で、きっとこのステージにふさわしいアーティスト性をさらに磨いたパフォーマンスを魅せてくれるに違いない。日々、自らを超えていくWATWINGの一挙手一投足から、ますます目が離せなくなりそうだ。

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