【インタビュー】“やさしいリベンジ”を果たすSKY-HI。スプリットシングル「Sarracenia / Salvia」に寄せて

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SKY-HIがトラックプロデューサーにRyousuke“Dr.R“Sakaiを迎え、アニメ『範馬刃牙』地上最強の親子喧嘩編のために新曲2曲を書き下ろした。

◆撮り下ろし写真

アニメに合わせ、親子をコンセプトに制作した新曲は、父親である範馬勇次郎目線で作ったOPテーマ曲「Sarracenia」をSKY-HIが、息子である範馬刃牙目線で作ったEDテーマ曲「Salvia」をBE:FIRSTがそれぞれ歌い、これらを収録したCDを8月30日にSKY-HIとBE:FIRSTのスプリットシングルとしてリリースする。

ここではSKY-HIに、このアニメの勇次郎と刃牙親子の関係性を、SKY-HIと彼がプロデュースするBE:FIRSTの親子のような立ち位置にある2アーティストにどのように落とし込んでいったのかを聞いた。

   ◆   ◆   ◆

▪️無敵感って、人生をよくしますよね

──今回コラボしたアニメ『範馬刃牙』で、感銘を受けた部分をあげるとしたら?

SKY-HI:このシリーズは、人間が人間であろうとする姿が美しい気がするんです。美しい生き方をするには、1つの物事に対して自分の中に物差しを見つける必要があって。僕は勇次郎が好きなんだけど、勇次郎はアメリカと個人で対等な契約を結んだり、全速力で走るとGPSがずれたりするし……。

──地震も止めてしまうような人物ですよね。

SKY-HI:そうそうそう。人によっては極悪非道と捉えられかねないこともしちゃうんですけど、同時に勇次郎の中には通すべき筋、指針にすべきことがあって。それを個人でカスタマイズして、ちゃんと哲学として持っている。その生き方が美しいなと感じています。



──“カッコいい”ではなく“美しい”と形容するところがいいですね。哲学というよりも美学、といったほうがいいですかね。

SKY-HI:まさに。『刃牙』シリーズは、みんなが美学を持ってるんです。いまのマンガのブームにも通じることだけど、作者の都合で動かされる当て馬みたいなキャラクターがいない。

──モブがいないんですよね。

SKY-HI:『刃牙』シリーズは30年前からそのスタイルで、全キャラクターが生きる形で描かれ続けているマンガなんです。それって大事だと思うんですよ。マンガとして生み出したものとはいえ、作者はどのキャラクターの人生にも責任を負わなければいけない。そういう意味では、『刃牙』シリーズはどのキャラクターもリスペクトされて生まれてるなと思います。じつは作者の板垣恵介先生とお会いしたんですよ。そのときにそういう話をしたんですけど、ちゃんと伝えられたかどうか……。めちゃくちゃ緊張しました。

──先生はどんな方でした?

SKY-HI:『刃牙』シリーズはこういう人が描いてるんじゃないかなというのを想像してみて下さい。そのまんまの人です(笑)。素敵でした。いままでいろんな漫画家の先生にお会いしてきたけど、一番畏怖しましたね。細胞が危機を察したのかのように。

──そんな先生が描く作品とのタイアップが決まったときは、どんな心境だったんですか?

SKY-HI:アニメだから、タイアップが決まったのは1年半前くらいの話なんですよ。BE:FIRSTがデビューする前、まだ『THE FIRST』をやっていた頃のタイミングでアニメ『範馬刃牙』シリーズの親子喧嘩編のOPとEDテーマをお願いされまして。両方お願いされるというのは、いまの時代に珍しいタイプのオファーじゃないですか。当然、自分の人生でもいままで1度もなかったし。しかもそれを、SKY-HIと『THE FIRST』で、勇次郎目線と刃牙目線でどうですか? といいわれたので「おもしろい! やりましょう」と即答しましたね。

──先方からその発想がでてきたことが素晴らしいですよね。

SKY-HI:光栄という言葉に尽きますね。テンプレの言葉ではなく、心から。こちら側の『THE FIRST』やBMSGのことや活動を知ってくれてた上で、これなら『範馬刃牙』の世界に合うものを作ってくれると信じて頂けたことが非常に光栄で、こちらとしては身が引き締まる思いでした。

──『THE FIRST』出演メンバーがBE:FIRSTというグループ名でブレイクする前に、彼らの誕生ヒストリーとSKY-HIというアーティストとの関係性を察知した上で、これならハマると見込んでOPとED、セットでオファーしてきたところは、先見の明がありますよね。

SKY-HI:だから、ありがたいです。マジで。その結果として、刃牙のための2曲をスプリットシングルという形でリリースできたのはすごいよかったなと思ってます。

──しかも親子喧嘩編でなければ、SKY-HIとBE:FIRSTでスプリットシングルを作ろうという発想は……。

SKY-HI:ない。やらないと思う。この先もないんじゃないかな。自分が引退するときとか、記念にとかあるかもしれないけど(笑)。


──楽曲制作はどんな感じで進めていったんですか?

SKY-HI:悩みましたね。勇次郎目線で書いて、でも俺の歌としても成立するという距離感はどこら辺にあるんだろうとか。BE:FIRSTとはグループと個ですし。あと、勇次郎と刃牙は愛憎入り混じったリアルな親子だけど、自分とBE:FIRSTの関係をそのまま出してしまったら刃牙と勇次郎の親子関係はではなくなってしまう。刃牙の歌であり勇次郎の歌であり、そして自分やBE:FIRSTの歌であるためにはどうすればいいんだろうというところはすごく悩みました。その上で、勇次郎を書く上でまずテーマとなったのは“食う”というところ。

──あ! だから、毒やデザート、バイキング、超高級なフルコースまで出てくるんですね。

SKY-HI:そうです。食にうるさい、こだわる勇次郎感を出したくて。それで食虫植物の名前からとって、「Sarracenia」というタイトルにしました。普通の人間は、勇次郎ほど食を生きる糧として意識してない。食虫植物は自分の生命活動と生き物を殺すこと=命を食らうということがダイレクトですよね。サラセニアに“風変わり”という花言葉があるのもいいなと思って。勇次郎が風変わりなのか、勇次郎が美学を貫いているから世の中が風変わりに見えるのか。

──そこはSKY-HIと世の中というところにも通じる部分ですね。

SKY-HI:そうです。だから、サラセニアというワードが浮かんで、全部がうまくくっついた感じです。

──サラセニアはご存知だったんですか?

SKY-HI:こんな食虫植物があることは知ってて。調べたら、その名前がサラセニアだったんです。BE:FIRSTを「Salvia」にしたかったから、それとセットになったとき、気持ちいいところに落とした感じ。

──BE:FIRSTの楽曲タイトルを「Salvia」にしたかった理由は?

SKY-HI:尊敬、家族愛という花言葉が綺麗で、その純粋さがぴったりだと思って。サルビアは日本の歌詞にもいろいろ出てくるから、サラセニアと並ぶことで刃牙っぽくなる感じ。

──「Salvia」のテーマは?
SKY-HI:当時まだ彼らはデビュー前後だったから、歌詞は憧憬の念みたいなものを書いてて。ここでは、二人称が何にでも置き換えられる形にしたかったんですよ。



──そこはめちゃくちゃプロデューサー視点なんですね。

SKY-HI:他のタイアップをBE:FIRSTでやらせてもらうときもそうですけど、アニメのためだけの曲を歌ってもいいことはないんですよ。彼らの歌としても機能させなきゃいけない。そのためには“二人称”がめちゃくちゃ重要で。

──ほう。

SKY-HI:アニメエンディングテーマとしては刃牙の勇次郎に対する思いに見えないといけないんだけど、そうじゃないときはBE:FIRSTと目上の人、もしくは存在感が上の人、異性愛も含めての誰かに対する憧憬の念に聴こえる歌詞を書こうと思って。当時はまだ一番年下のRYUHEIが14歳だったんで、RYUHEIの雰囲気を据えて作っていったらこうなりました。

──メンバーの1人を据えて書くって、そこもプロデューサーならではの発想ですよね?

SKY-HI: BE:FIRSTの曲は毎回誰かをイメージしていますよ。もちろん7人で歌うんですけど、これはRYUHEI 、これはLEOとか。

──LEOさんを据えて書いたのは?

SKY-HI:「Bye-Good-Bye」ですね。JUNONは「Smile Again」、「Message」はMANATOとか。

──そうやってメンバーの誰かを据えたほうが作りやすいんですか?

SKY-HI:据えなくても作れるんでしょうけど、そうするとBE:FIRSTが歌わなくてもいい曲になっちゃう。そうなったら意味がないんで。

──ちなみに、「この曲は誰々にあてて作った」ということはメンバーに伝えるんですか?

SKY-HI:いや。わざわざは言わないです。でも、BE:FIRSTで活動し始める前に、7人均等平等では中庸凡庸なので、この曲はこの人を据えて書くという作り方をしたほうがみんなのためには絶対にいいと思う、と伝えました。事実、「Bye-Good-Bye」のサビはJUNON、「Milli-Billi」のサビはSHUNTOしか歌ってないんだけど、他の人たちが映えるパートは作るよう頑張るんで、こういうスタイルで作ってくねという話はしてますね。

──なるほど。では作品のほうの話にまた戻しまして。歌詞のなかのメッセージとして一番書きたかったことは?

SKY-HI:板垣先生が、勇次郎が笑っちゃうくらい強いことを表現するために、全速力で走ると人工衛星がブレてGPSが狂ってしまうところを描いたとおっしゃってて。それほどに強い勇次郎にはなれないとしても、誰しも勇次郎モードになることはできるので、「Sarracenia」ではそれを書きたかったというのはありますね。無敵感って、人生をよくしますよね?

──そうですね。「Sarracenia」を聴いていると、鼓舞されてめっちゃ強くなった気分になりましたから。

SKY-HI:無敵モード、勇次郎モードになりたいときは、これを聴いて、ハイヒールはいて、赤いグロス入れて、アイラインで目尻をぐっとあげた強めメイクをして下さい(笑)。まあそれは置いといて、圧倒的自己肯定感というのは「Sarrasenia」を書くときに一番意識しましたね。書いてから、自分も自己肯定感が上がったので、そういう効果はあると思います。

──“夢を超えろ”というフレーズは最初からあったんですか?

SKY-HI:ありました。ちなみに全然意識してなかったんですけど、これの後に作った「Bye-Good-Bye」にも“夢を超えて”というフレーズがあるんですよ。後からかぶりに気づくこともあるんですけど、それは自分のなかでは“あり”にしていて。普段喋ってる言葉と曲で使う言葉に差がなければないだけいいという考えなので。

──なるほど。

SKY-HI:でもあのフックは、“夢を超えろ”という歌詞よりも、そこを吠えて歌ってることのほうが大事。珍しいかもしれないです。メロディーでも歌詞でもなくて“歌い方”が一番大事っていうサビは。


──ここまでSKY-HIが吠えてる曲は、これまでになかったですよね。

SKY-HI:吠えてるだけですからね。自分でラウドロックかと思ったもん(笑)。フックのライン作ったとき「(キーが)高ぇな」と思って。この高いところをめっちゃシャウトして歌ったら、この曲のパッションが出るんじゃないってことで、レコーディングは吠えて歌いましたね。楽しかったです。大きい声出したらストレスが飛んだ(笑)。

──あのシャウトで、圧倒的強さがこの曲に宿りますもんね。

SKY-HI:これが決まった後は、声の処理とか、このシャウト感をどう演出するかというところに傾倒していきました。

──さらにいうと、「Sarracenia」と「Salvia」、同じボイスサンプルを使うことで、アニメの親子と同じように、両曲に同じ血が流れていることを表現したのはさすだなと感じました。

SKY-HI:最初は同じ楽器を使おうと思ってたんですけど、全く同じボイスサンプルを使うのは恣意的でいいかも思って。BE:FIRSTのほうはBPMを落として使ってます。曲自体は、この時期、Aile The Shotaの新曲(TVアニメ『AIの遺電子』OPテーマ曲「No Frontier(Prod.Ryosuke”Dr.R”Sakai)」)も並行して作ってたんで、Sakaiさんとそのときに話していた80‘s感を感じさせるダンスビートの解釈を入れて。

──その頃、ザ・ウィークエンドをはじめ、80‘s感のダンスビートが流行りましたもんね。

SKY-HI:そう! トレンドは押さえつつ、どう1年半前に作った感を出さないようにするかっていうのを考えながら「No Frontier」や「Salvia」は作っていきました。「Sarracenia」は流行とか関係ない曲だからよかったんだけど。



──なるほど。MVの見どころはどんなところになりそうですか?

SKY-HI:「Salvia」はいまのところ撮る予定はないんですが、「Sarracenia」は相当面白いですよ。究極の味噌汁を作るというのをテーマに撮影しまして(笑)。範馬刃牙といえば味噌汁ですから。大変だったけど、めちゃくちゃいいMVになりました。いまBMSGの急務として映像チームのクオリティーアップを課題に掲げていて。とにかくクオリティの高い映像を作り続けないことには、日本でいいMVが偶然以外で生まれることはないんですよ。だから、頑張りどころだなと思ってます。日本の制作会社が頑張って日本のMVのレベルを上げないことには未来はないと思うんで。

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