ファンの夢を叶える<ドリカムワンダーランド2023>、終幕

ツイート


4年に一度の大規模ライヴ<史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2023>(以下、DWL)が9月1日(金)、2日(土)の東京ドーム2デイズでフィナーレを迎えた。前回から4年、コロナ禍の期間を乗り越えて9回目の開催となるDWLは、DWLらしさを存分に詰め込んだ、ファンの夢を叶えるためのライヴだった。







まず来場したオーディエンスを迎えたのが、会場の中に入った瞬間一目で遊園地とわかる巨大メリーゴーラウンドを模したセンターステージだ。サークル状のステージから4本の花道が十字に延びている。圧倒的な規模で日本のライヴ・エンタテインメントの常識を覆してきたDWLは始まる前から我々を非日常空間へと誘ってくれる。

暗転し、雷鳴の轟く音が聴こえる。「A Theme of the WONDERLAND」が会場を包むとアリーナ正面に延びた花道の先端に中村正人が姿を現した。そして驚きの入り混じった大歓声が向けられた先は、巨大メリーゴーラウンドの屋根の上に立つ吉田美和だ。アリーナレベルから約20メートルはある高さの場所でオープニングナンバー「次のせ〜の!で - ON THE GREEN HILL - DCT VERSION」を歌唱する姿は神々しくすらあった。そして、次の瞬間、飛んだ。





DWLではあまりにも有名な吉田美和の3Dフライングだ。今回、すべての会場が全国のドームだったのは、このフライングのもっとも効果的な見せ方にこだわったからだった。ステージ最頂部から花道の先端でベースをプレイする中村の元へ飛び込むように急降下したかと思えば、スタンド最上段に急上昇、そしてぐるりとドームを何周も旋回した。思いもよらないフライングの見せ方だった。まさかいきなり飛ぶとは。しかもステージの一番高いところに現れて、そこから急降下するとは。DWLらしさをDWLでしかできないやり方で超えていく── それが今回のDWL最大の見どころだ。

もうひとつ、DWLの最大の特徴は、セットリストがファンのリクエストに基づいて構成されているということだ。だから必然的に大ヒット曲が惜しげもなく投入される神セトリとなるわけだが、なかにはかなり渋めのレア楽曲がリクエストランキング上位に食い込んでくることもあって、それがまた良いスパイスを加えている。照明を落とした仄暗い静謐な世界観で魅せた「LOVE LOVE LOVE」の直後に披露した「ヒの字」がその代表的なものにあたる。“あなた”への切ない想いを体全体で表したこの曲のかわいさを吉田美和がステージに設けられたアヒル型のコースターに乗って表現。全長75メートルに及ぶコースターがまさか本当に稼働するものだったとは。改めてDWLが見せる本気の遊びに驚かされた。



「やさしいキスをして」「LAT.43°N 〜forty-three degrees north latitude〜」「WINTER SONG 〜DANCING SNOWFLEAKS VERSION」、この3曲では真夏に冬の世界を現出してみせた。雪が降りしきる中でのパフォーマンスは幻想的で、DWLが描き出す世界観のディテールへのあくなき追求が感じられた。このシーンを含め吉田美和が衣装をガラリとチェンジするタイミングが何度かあった。衣装を手掛けたのは日本を代表するデザイナーである久保嘉男、丸山敬太、ミハラヤスヒロの3人。このトップデザイナー3人がDWLで共演したのはもちろん初めてのことであり、ひとつのショーで3人の豪華デザイナーが共演することはこれまでも、そしてこれからもないと言えるほど貴重なものだ。



この“冬の世界”のように、今回のDWLではセットリストのブロックごとにストーリーを紡いでいくという手法がとられた。例えば、「G」「YES AND NO」「羽を持つ恋人 - DCT Version -」では、コロナ禍のあいだにリリースした楽曲で描いたメッセージを伝え、「未来予想図」「未来予想図Ⅱ」「ア·イ·シ·テ·ルのサイン 〜わたしたちの未来予想図〜」では、まるで映画のようにひとつのストーリーで魅せた。



本編最後のブロックは、DWLの(あえて言うが)実は真骨頂のファンキーグルーヴ全開のバンドサウンドで5万人超のオーディエンスで満員となった会場を踊らせた。その中にあって、ロックとヒップホップの要素をミクスチャーした超攻撃型の彼らの最新曲「スピリラ」のステージパフォーマンスは圧巻だった。何より、彼らがバンドの始まりから一貫して大事にしてきた、音楽的な野心や探究心というものが、このもっとも新しい曲が入ることでわかりやすく伝わったのではないかと思った。ライヴも終盤に差し掛かってさらにエンジンがかかったようにパフォーマーとバチバチに踊る吉田美和の姿に、ドリカムが最強のライヴバンドであることを改めて思い知らされた。

本編ラストに披露した「あの夏の花火」では、曲間に「みんなで一緒に花火見よっか」と吉田美和が言うと、ステージ全体からいくつもの花火が打ち上げられた。ここがドーム(屋内)だということを忘れてしまいそうなほど盛大な演出だった。

アンコールは、ドラマ『救命病棟24時』でドリカムが手掛けてきた主題歌5曲「朝がまた来る」「いつのまに」「何度でも」「その先へ」「さぁ鐘を鳴らせ」をまとめて全部披露するというスペシャルなものだった。今伝えなければいけないメッセージとして響く言葉に彩られたメロディが最後に心に染み渡った。

「また次に会えるまで、一緒に鐘を鳴らしていくからねー!」(吉田)

夏の夜の夢を描いた<史上最強の移動遊園地 DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2023>。4年後は10回目の開催となる。今からもう待ち遠しい。

文:谷岡正浩
撮影:藤井 拓

  ◆  ◆  ◆

この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス