【ライブレポート】ウィンガー、観る側に一瞬の隙も与えない完璧な35周年のステージ

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デビュー35周年を迎えたキップ・ウィンガー(Vo, B)率いるウィンガーが、9年ぶりのリリースとなるニューアルバム『SEVEN』を引っ提げ、2017年の<LOUD PARK>出演以来となる約6年ぶりの来日公演を行った。

1988年デビューの彼らは『WINGER』『IN THE HEART OF THE YOUNG』と2枚の大ヒットアルバムで高い評価を得たが、3rdアルバム『PULL』でのツアー後に一度解散。2001年の再結成後は、活動休止等も含め断続的ではあるものの、新作リリースやツアーも行い、バンドは存続してきた。



2023年5月にリリースされた最新アルバム『SEVEN』は、これまでのウィンガーから更にアダルトな雰囲気を持ち、聴いていて実に"丁度良い"心地良さがある快作。新作からの選曲も楽しみだ。



日本公演は、オリジナルメンバーであるキップ・ウィンガー(Vo, B)、レブ・ビーチ(G)、ロッド・モーゲンスタイン(Dr)、ポール・テイラー(G, Key)に加えて、今夏から秋までのツアーには不参加となったジョン・ロス(G)に代わりハウイー・サイモン(G)が務めた。

いきなりのトリプルギターで始まった新作からの「Stick the Knife in and Twist」。キーボードのポール・テイラー(G, Key)もギターを奏で、何とも豪華なスタート。最近のキップ・ウィンガー(Vo, B)は再びスペクターベースを使用、「Seventeen」から続く「Can't Get Enuff」では場内からの「Hey,Hey!」との掛け声が一斉に上がると両手を広げて受け止めるキップの姿は目眩がするほどに決まっている。歌声も相変わらず力強く、歳を重ねて更に魅惑的に感じる。













初期の煌びやかな2枚のアルバムからの選曲が盛り上がるのはもちろんだが、『PULL』からの「Down Incognito」のようなミドルテンポでややダークな楽曲でありながらも、病みつきになるメロディがしっかりとあるところは彼らの真髄に思う。レブ(G)のハーモニカも、ハウイー(G)とのツインのハモリも見せ場となっている。

「ニューアルバムからのシングルだよ」と紹介された「Proud Desperado」は、2023年のベストチューンと言ってもいいほどのキラー曲。そのテンポや雰囲気を完璧な演奏で見せていく。この曲でレスポールに持ち替えたレブ・ビーチ、これは非常に珍しいのではないか。東京2日目の公演では、スペシャルゲストとして日本のバンドSAISEIGAからベースのKatsukiが飛び入りし、キップは歌だけに専念したレアな場面もあった。


35周年の感謝を伝えるこのバンドが、2023年にオリジナルメンバーでツアーをしている事は非常に感慨深く、メンバーも久しぶりの単独公演で満員の観客へ終始笑顔を見せている。

2018年にバンドへ復帰したポール・テイラー(G, Key)作の「Miles Away」はメンバーコーラスと観客の歌声が一体に。ポールが離脱した当時、またいつか一緒に演って欲しいと願っていた夢が現実になっている。名曲「Rainbow in the Rose」でのレブが歌うパートも際立っており、ドラマティックな曲展開は当時から彼らの成熟ぶりが伺え、ライブは益々高揚感に包まれていく。



ジョン・ロス(G)の代役であるハウイー・サイモン(G)は日本でもよく知られているが、レブがホワイトスネイクのツアーに参加していた際もレブの代役としてウィンガーのサポートをしてきた。もともと器用なギタリストであるが、今回のウィンガーはポールを含む3人のギタリストがとにかく素晴らしい仕事をしている。レブはソロタイムに続き、自身のソロアルバム収録の「Black Magic」まで披露とは驚いた。フラッシーで複雑なメロディと独特のタッピング、これぞレブの代表曲を生で観れるとは嬉しいサプライズだ。そしてハウイーはキップに代わりベースもプレイし、リッケンバッカー形のキップのスペクターベースは、"キッペンバッカー"と呼んでいた(笑)。

キップが12弦を手に歌う雄大な「Who's the One」、この頃からソロでも活躍できるアーティストである事は証明されていたのだなと思うし、アルバム『PULL』は30周年でもあり「Blind Revolution Mad」までも披露。ダイナミックで緊張感あるバンドサウンドに心底魅力され、ロッドのソロタイムはバックのインスト音源に合わせたプログレッシブなテイストも思わせるプレイ。もう御年70歳とは信じられないほどに圧巻であった。



終盤のベストヒット連発は「Headed for a Heartbreak」から、キップが嬉しそうにスマホで場内をぐるりと撮影した「Easy Come Easy Go」、観客からの掛け声とともに始まった「Madalaine」まで、観る側に一瞬の隙も与えない完璧なショー。本編ラストのインストタイムでトリプルギターがソロを回していく様も鳥肌ものの締めくくりとなった。

アンコールではお待ちかねの『KARMA』から2曲がセットインし、一層増した歓声の中で幕を閉じた。本当に素晴らしい35周年ツアーだった。

ただ、再結成以降の『IV』『BETTER DAYS COMIN'』アルバムからの選曲が1曲もないのは何故なのだろう?と思っていたのは自分だけではないはず。セットリストはキップが決めるようだが、初期ウィンガーは当時MTVでもよく流れていたゆえ、もちろんライブにも足を運んだ。そして再結成後の彼らを強く意識したのは2006年だったか、ラットとカップリングで来日した際だった。その時の新作が『IV』で、ライブを観て改めてウィンガーを再評価したものだ。懐かしいだけのバンドではなく、未だにこれだけ支持されているバンドなのだと再確認もできたからこそ、遠くないうちに『SEVEN』ツアーとして、また今回セットに入らなかった曲も再考して来てくれないだろうかと早くも次の期待をしてしまう。

文◎ Sweeet Rock / Aki
写真◎ ShimaZi

<WINGER ~35th Anniversary Japan Tour~>

2023.9.5 Shibuya Stream Hall
2023.9.6 EX Theatre Roppongi
1.Stick the Knife in and Twist
2.Seventeen
3.Can't Get Enuff
4.Hungry
5.Down Incognito
~ Howie Simon Guitar Solo ~
6.Proud Desperado
7.Junkyard Dog(Tears on Stone)
8.Miles Away
9.Rainbow in the Rose
~ Reb Beach Guitar Solo ~
10.Black Magic
11.Who's the One
12.Time to Surrender
13.Blind Revolution Mad
~ Drums Solo ~
14.Headed for a Heartbreak
15.Easy Come Easy Go
16.Madalaine
~Saints Solo~
Encore
17.Duel With the Devil
18.Pull Me Under
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