【ライブレポート】ディジー・ミズ・リジー、7年ぶりのジャパン・ツアー開幕

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9月16日、川崎CLUB CITTA’にて、実に7年ぶりとなるディジー・ミズ・リジーのジャパン・ツアーが幕を開けた。

◆ディジー・ミズ・リジー 画像

それ自体が<-THE ALTER ECHO- JAPAN TOUR 2023>と銘打たれていることからも明らかなように、今回のツアーは2020年3月に発売された現時点での最新オリジナル・アルバム『オルター・エコー』を主題とするもの。そもそもは同年4月に同作発表に伴う日本公演が実施されるはずだったが、全世界的なコロナ禍ゆえにその機会が失われてしまっていた。一度は解散を経ているとはいえ、1994年のデビュー以来、日本の音楽ファンとの親密な関係を育み続けてきた彼らが、7年間もこの国に上陸できずにいたこと自体が異例ともいえるわけだが、それだけにバンドとファンの双方がこの機会に向けて期待感を極限まで高めてきたことは想像に難くない。そして実際、ツアー初日となるこの日の公演は極上の音楽的興奮を堪能できる濃密なひとときとなった。


この先の公演に足を運ぶ予定の方々のためにも、具体的な演奏曲目をこの場に記すことは控えておきたい。ただ、とにかくそのセットリスト自体が驚きを伴うものだった。『オルター・エコー』を軸とする構成になることは想定できていたし、21日に渋谷クラブクアトロで行なわれる追加公演が同作の完全再現を含む特別なプログラムによるものであることが明かされているだけに、ある程度それとの差別化も図られているであろうことも予想できていた。しかし、1曲目のイントロが聴こえてきた瞬間に場内に起きたどよめきは、オーディエンスの驚きを物語っていた。実際、筆者自身も“まさかそう来るとは!”と思わず声をあげそうになったほどだった。彼らは『オルター・エコー』をテーマとしつつ、その完全再現ライヴとは絶対に印象の被ることがないオープニングを用意してきたのだ。

衝撃のオープニング以降も、ステージは『オルター・エコー』のダークかつ美しいトーンを基調としつつ、『ディジー・ミズ・リジー』(1994年)、『ローテイター』(1996年)、『フォワード・イン・リヴァース』(2016年)といった過去の作品からのキラー・チューンの数々も万遍なく網羅しながら進んでいった。背景には『オルター・エコー』のアートワークが描かれた巨大なバックドロップが吊られているものの、これといった演出が伴っているわけでもなければ、メンバーたちがステージ狭しと動き回るわけでもない。ティム・クリステンセン(G, Vo)、マーティン・ニールセン(B)、ソレン・フリス(Dr)の演奏ぶりはあくまで淡々としたもので、キーボード担当のサポート・メンバー、アンダス(バッキング・ヴォーカルも担当。楽曲によっては演奏に不参加)の存在くらいしか目新しさはない。ただ、その真摯で丁寧な歌唱と演奏自体から伝わってくる“主役はあくまで楽曲”という彼らの姿勢、そして当然ながら楽曲そのものの魅力が、観る者を魅了し、釘付けにするのだ。


メンバーたちはまさに普段着そのままのいでたちだし、ティムは何度もオーディエンスに日本への帰還の喜びとオーディエンスへの感謝を口にしていたものの、芝居がかった楽曲紹介などをすることも一切ない。ただ、そうした“地に足の着いた、普段のままの3人”が繰り広げる演奏がもたらす独特の緊張感を伴う興奮は、ある意味、聴く者を非日常的な空間へと誘ってくれる。そして曲間のふとした瞬間の表情や振る舞いから、彼らの人間的な魅力が伝わってくる。そんなライヴに触れながら、このバンドが愛される理由を改めて確認させられたようにも思う。約100分間に及ぶすべての演奏終了後、深々とお辞儀をしてステージから去るその姿からも、彼らの人柄がうかがえる気がした。

そして重要なのは、一度触れるとまた観たいと思わずにいられなくなるのが彼らのライヴだということ。この先の各公演で演奏内容がどのように変化していくことになるのかも含め、注目したいところだ。同時に、ディジー・ミズ・リジーのライヴ・パフォーマンスを体験したことのない音楽ファンにも、この機会を逃して欲しくない。彼らの生演奏に触れることで、きっとその先の音楽生活に新鮮な変化が訪れることになるはずだから。


余談ながら最後にひとつだけ付け加えておくと、この日、開演前の場内には、ティムのお気に入りの日本のバンド、MONOの楽曲がずっと流れていた。シューゲイザーとオーケストラの融合のようなこのインストゥルメンタル・バンドの音楽について、ティムは以前、「両極端の要素があって、エクストリームでありつつメロディックで、とても美しい。聴いていて“このまま永遠に続いていくのか?”、“果たしてこの先、どこに行こうとしているんだ?”と思わされるような魅力がある」と語っている。そして言うまでもなく、ディジー・ミズ・リジーの音楽にも、どんどん深みに嵌まっていくような抜け出せない感覚と、閉塞感とは真逆のものが同居している。この先、彼らの音楽がどこに連れて行ってくれるのかを楽しみにしながら、筆者もまた公演会場に足を運ぶつもりだ。

取材・文◎増田勇一
撮影:Terumi Fukano

■DIZZY MIZZ LIZZY<-THE ALTER ECHO- JAPAN TOUR 2023>

9月16日(土) 川崎CLUB CITTA’ ※公演終了
9月17日(日) 川崎CLUB CITTA’
9月19日(火) 大阪BIG CAT
9月20日(水) 名古屋ElectricLadyLand
9月21日(木) 渋谷クラブクアトロ

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