【ライブレポート】ウォレント、30年以上経ってもこんなに美味しいチェリーパイ

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LAメタルブームの中、1988年にデビューしたウォレントは、『Dirty Rotten Filthy Stinking Rich』『Cherry Pie』と2枚のアルバムで早々に人気を博すが、1990年代の時代背景では成功を収められなかったバンドのひとつである。

2000年代になるとメイン・フロントマンのジェイニー・レイン(Vo)が脱退や復活をしたが、最終的にはバンド側から解雇された数年後に他界。この時の心境は今でも覚えているが、ジェイニーはシンガーとしてだけでなく、優れたソングライターでもあったゆえに彼を完全に失ってウォレントが生き残れるとは正直思っていなかった。



ジェイニー不在時には、ブラック・アンド・ブルーのシンガー、ジェイミー・セント・ジェイムスが加入した事もあったが、2008年からはロバート・メイスン(Vo)が加入している。彼はリンチ・モブの2代目シンガーであり、以降は順調とは言えないまでも良きアメリカンロックのバンドとして活動できているようだ。この日は、ブレット・ボーイズ、リタ・フォードとのカップリングでウォレントはメインアクトとして登場した。

デビューアルバムからの曲の連発で始まるのだが、まず釘付けになるのはステージでのロバート・メイスン(Vo)の美貌と鍛え上げられた肉体に観客は魅了されるに違いない。そしてスタンドマイク、ハンドマイクとも巧みに操り、リズミカルにステージを駆け回る。ジェイニー・レインのいないウォレントを観ることに懐疑的でもあったが、彼らはとんでもないショウを見せてくれた。なんて素晴らしいシンガーを獲得したものだと思う。







エリック・ターナー(G)、ジョーイ・アレン(G)、ロビー・クレイン(B)、スティーブン・スウィート(Dr)も彼に触発されるかのように快活な初期の楽曲たちをストイックにリフとリズムを刻み、コーラスを重ね、フォーメーションを決めるパフォーマンスも実に若々しい。ロビーはブラック・スター・ライダースやラットのメンバーとしても活動したベーシストで、ジェリー・ディクソン(B)が休養している為のツアーメンバーのようだ。





パワーバラードも得意な彼らは「Blind Faith」「Sometime Cries」「I Saw Red」、そしてジェイニーへの想いも込められた「Heaven」を上手く散りばめたセットになっている。MCをほとんどしないメイスンは、バラードで甘く切なく観客たちを包み込み、いつの間にか場内は照らされたスマホライトで星空の光景になっていた。

初期の楽曲を現メンバーでアップグレードし、グランジ流行の時代に歩み寄った作品であった『DOG EAT DOG』からの「Machine Guns」がセットインした事も満足度が高まった。ブラックフットのカヴァーである「Train,Train」も、メイスンがよりマッチしているとも思えたし、彼はハーモニカやギターを手にする場面も幾度もあった。サポートのキーボーディストも参加していた事でサウンドにも活気が出ており、それを発散させるようなメンバーのパフォーマンスは想像以上。立ち位置から動かないイメージだったジョーイもギターソロを含め、非常にアグレッシブになっていて驚いたし、現時点での最新作である「Louder Harder Faster」を観客がこんなに好反応するなんてアメリカのファンには恐れ入った。

当時からバッドボーイズ系のバンドでは演奏力にも定評はあったが、何よりも今「彼女は僕のチェリーパイ」と歌えてしまうのも凄い。2020年に30周年を迎えた『Cherry Pie』アルバムのアニバーサリーツアーはコロナ禍で思うように出来なかったが、30年以上経ってもこんなに美味しいものはないと教えてくれるステージだった。









文・写真◎ Sweeet Rock / Aki

<Warrant LIVE>

2023.9.16 Brown Country Music Center, Nashville, Indianapolis, USA
1.So Down Pretty(Should be Against the Law)
2.Down Boys
3.Big Talk
4.32Pennies
5.Blind Faith
6.D.R.F.S.R.
7.Machine Guns
8.Sometime Cries
~Joey G solo~
9.Train,Train(Blackfoot cover)
10.Sure Feels Good to Me
11.I Saw Red
12.Louder Harder Faster
13.Thin Disguise
14.Heaven
15.Uncle Tom's Cabin
16.Cherry Pie
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