【ライブレポート】B'z、何が起ころうとも変わらぬ誠実さと誉れ高きプロ意識

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遡ること約1年、<B'z LIVE-GYM 2022 -Highway X->のファイナルを飾った2022年11月27日@神奈川・ぴあアリーナMMのステージで、稲葉浩志は「ライブって尊いものです」と語った。まだまだcovid-19の影響によって声出しには制限があり、すべての観客がマスクを着用しタオルを振ることも禁止されていたライブだった。タオルを回したくなる「ギリギリchop」が敢えてセットリストに入っていなかったのも、彼らならではの気遣いだったのだろうと思いを馳せてしまうような、まだまだ本来の姿を取り戻していなかった時期だった。

◆B'z 画像

「一本のライブ、一本のLIVE-GYMを無事に演れるということは、ほんとに奇跡なんだなと気付きました。皆さんが普段こういう状況で我慢をして、予定も立てて、そのために工夫もして頑張って、やっと今日ここにたどり着いてくれているわけですよね。そうやってこの奇跡を現実にしている。皆さん、凄いです」「当たり前のようにライブをしていますけれど、我々バンドが集まって音を出して、寝ないで働いてくれるスタッフがいて、会場を用意してくれて、最後にこの客席を皆さんが埋めてくれて、それでやっとひとつのコンサートが完成するわけです。そんなの当たり前ですけど、このツアーを演って今までよりさらに強く強く感じました。ライブって尊いものです」──稲葉浩志 (2022年11月27日<B'z LIVE-GYM 2022 -Highway X->のMCより)

振り返れば、<B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI->では喘息が稲葉浩志を襲い、呼吸困難の中でステージを走り叫び歌い続けるという、生きること=ライブという等身大の姿をオーディエンスの前にさらけ出した。そのドキュメンタリーのようなB'zの様子は、見守るファンとの契をより強固なものに刷新する感動の瞬間を放出し続けた。



今回も幾度となく彼らは、人生は奇跡の連続であることを身をもって表してきた。台風6号による公演中止、落雷/線状降水帯発生によるコンサートの中断、最終日の前日のステージで稲葉浩志が左足を負傷し走ることがままならない…想定外の出来事は勃発し、避けられぬトラブルにも見舞われ続ける。安寧の日々は突如牙を剥き、均衡を保とうとするも世の摂理によってエントロピーは増大し続けていく。

それでも彼らは、変わらぬ誠実さと誉れ高きプロ意識をもってステージに立ち続けた。<LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS->の最終日、5万人が見守るヤンマースタジアム長居で、「何があってもそれが人生」と稲葉浩志は語っている。

また、covid-19の猛威はすべてのアーティストに影響を与えたが、B'zにとってももちろん例外ではなかった。当たり前が当たり前じゃなくなったことは、B'zのふたりのファンに対する感謝の気持ちを猛烈に加速させ、ひとつひとつの瞬間を「奇跡」と語った。

いま、彼らはいくつもの奇跡を重ね続け、謙虚にデビュー35年の年月を刻んだ。長きにわたる活動の中でサポートメンバーもその構成も様々な形を見せてきた。もちろんスタッフも変わり、B'zファミリーはその規模も動き方も大きく変貌を遂げていったわけだが、その裏には「変化や進化を恐れない」という松本孝弘と稲葉浩志の信念=B'zというロックバンドの至極シンプルなアイデンティティが核にある。揺るぐことのないその信念は、時代を超えて激しく新陳代謝を繰り返させた。これこそが他に例を見ないモンスターバンドとなったエネルギーの源である。



2023年9月24日、ヤンマースタジアム長居で行われた<LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS->千秋楽は、35年という年月をもってして、「最新のB'zが最高のB'z」であり、最強のモンスターであることを激しく印象づけるものとなった。過去を否定せず、過去にすがらず、常に未来に向け今を全力で取り組んできたB'zは、この節目にして35年を振り返り自らの作品を咀嚼し直したのではないか。日本人離れした美しいファルセットを聴かせた「イチブトゼンブ」のソウルフルなアコースティックアレンジも、かなりハードな味付けを伴った「LADY NAVIGATION」も、35年間の作品を2023年のコンサートパッケージにリニューアルさせたものとなっていた。

そしてこの日は、covid-19の制約から完全脱却した本来のライブ・エンターテイメントとして、掛け合いやシンガロング、いつもの振り付け、会場一体となってみんなが一斉にはしゃぎ踊り叫び歌い続けることのできる楽曲が数多くセレクトされていた。会場がシンクロする「恋心 (KOI-GOKORO)」や「NATIVE DANCE」の振り付け、あの巨大な会場でマイクを通さずに生声でシャウトし、「この声が聞こえるかい」と5万人が会場を震えさせた「Calling」、ハンドクラップで気持ちが重なる「太陽のKomachi Angel」、皆と一緒に歌いたくて作ったという「YES YES YES」での大合唱、そして「オーディエンスこそが主役なんだ」と大きなスクリーンに笑顔で歌い踊る客席の姿がたびたび映し出された「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」の会場全力歌唱…と、会場を埋めたひとりひとりがB'zというロック/エンターテイメントの構成員となり、誰もが輝きエネルギーを放ち続けるシーンを描き続けた。



歌い、踊り、叫び、笑い、ときに泣きながら、心の交流を促し、同じ時間を同じ目線で共有する場面が幾度も訪れるこのセットリストが、戦略的なものなのか、意識せずともそのようにまとまっていったものなのかは分からない。だがそれはどっちでもいい。せっかくの奇跡の瞬間なのだから、ひとつでも一瞬でもできるだけたくさん共有しようよという、B'zからの問いかけであっただろうし、それに素直に反応してこそ、理屈を超えた興奮をより強く感じることができるというものだ。

アンコールで披露された最新曲「STARS」では普段のLIVE-GYMではあまり行われることのない演出への参加を観客に促した。スマートフォンのライトで心を交わし、そのライトはいつしか大きなウェーブを生み出していく。シナリオのない感情の波は完全にシンクロし、観客もステージ上の演者も、そして音響や照明、セキュリティや裏方のスタッフの人々に至るまで、そこの空間はすべてがつながって、その喜びを讃えるかのように大きな音玉と輝く花火が長居の夜空を彩った。空を見上げ、切なくも美しく輝く光の宴を浴びながら、誰もが多幸感に心を震わせたことだろう。



<LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS->のタイトルに付けられたキーワードでもある「STARS」は、誰もがキラキラと煌くスターなんだと、稲葉浩志は語った。

「35年間を振り返ったとき、一番最初に浮かんだ光景はステージから見てきた、皆さんのキラキラした星=STARSのような輝きでした。それが大きな希望になってきた。希望を与えられる人…そんな人がヒーローと思っています。ということは、皆さんが我々にとってものすごいヒーローなんです。僕たちに希望、勇気、エネルギーを与え続けてくれたことを本当に心の底から感謝しています」──稲葉浩志

「1988年9月21日にデビューしてからたくさんの変化がありましたが、35年後になってもなおB'zとしてこんな凄いステージに立っていられるとは夢にも思いませんでした。僕たちB'zの音楽を愛して応援してくれた皆さんのおかげだと思っています。感謝しています。本当にありがとうございます」──松本孝弘



素晴らしい音楽はたくさんある。魅力的なミュージシャンもたくさんいる。だが、奇跡を信じ、奇跡を生み出し、奇跡を共有させてくれることを信じさせてくれるアーティストがどれだけいるだろうか。誠実な35年間、ブレない35年間、歩みを止めない35年間、それでいて謙虚な35年間。B'zが紡いだ35年は、我々誰もが共鳴し、共感できる人生を謳歌する35年間の結晶だった。

そして、最も心に響いたMCに、「JAP THE RIPPER」の硬質なギターリフに入る前の、簡素ながらも彼らの本質をつく松本孝弘の言葉があった。

「これからもまた新しい作品を創って、ツアーを続けていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします」──松本孝弘

35年間で表してきたB'zのロックスピリットは今もなおブレることなく、色褪せることもない。当然のように途中経過に過ぎない35年であることを高らかに宣言する、きらめく宝石のような一言だった。

取材・文◎烏丸哲也 (JMN統括編集長)

   ◆   ◆   ◆

なお、ヤンマースタジアム長居で行われた<B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS->ファイナル公演の模様は、11月25日にWOWOWにて独占放送・配信される。

   ◆   ◆   ◆

■<LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS->2023年9月24日@ヤンマースタジアム長居 SETLIST

01. LOVE PHANTOM
02. FIREBALL
03. RUN
04. 夜にふられても
05. 恋心 (KOI-GOKORO)
06. イチブトゼンブ
07. NATIVE DANCE
08. GUITAR KIDS RHAPSODY
09. Calling
10. 太陽のKomachi Angel
11. LADY NAVIGATION
12. BIG
13. JAP THE RIPPER
14. YES YES YES
15. 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない
16. ultra soul ~ BAD COMMUNICATION ~ ultra soul
17. IT'S SHOWTIME!!
18. 君の中で踊りたい 2023
19. 兵、走る
encore
20. STARS
21. Pleasure 2023 ~人生の快楽~

■『B'z × WOWOW 35th Anniversary 特集』

▼『B'z LIVE-GYM Pleasure 2023 -STARS-』
11月25日(土)午後7:00 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後、12月8日(金)までWOWOWオンデマンドでアーカイブ配信
収録日:2023年9月24日
収録場所:大阪・ヤンマースタジアム長居

▼『B'z Music Video Show Vol.1』
10月06日(金)までWOWOWオンデマンドでアーカイブ配信
▼『B’z Music Video Show Vol.2』
10月14日(土)午後7:00 [WOWOWプライム][オンデマンド]
※放送終了後、10月27日(金)までWOWOWオンデマンドでアーカイブ配信

【プレゼント情報】
・B'z直筆サイン入り・シングル「STARS」ポスター(B2サイズ):3名様
応募期間:10月14日(土)午後9:45〜10月27日(金)午後11:59
https://www.wowow.co.jp/plusw/present.php?p_id=8061
・「B'z × WOWOW 35th Anniversary」オリジナルモバイルバッテリー
応募期間:9月24日(日)午後10:00〜11月10日(金)午後11:59
https://www.wowow.co.jp/plusw/present.php?p_id=8059

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