HEESEY、還暦を迎えキーワードは“RED”

2023年、HEESEYのキーワードは“RED”である。もちろんそれは1963年4月19日生まれの彼が、今年、還暦を迎えているからに他ならない。こうしてひとつテーマをみつけると、それにとことんこだわるのが彼の面白さのひとつでもある。

10月4日には『RED COLORED CELEBRATION』と題されたライヴ映像作品が発売を迎える。赤く彩られた祝祭、とでも訳すべきこの言葉が意味するのも、当然ながら還暦。彼は、60回目のバースデイの直後にあたる去る4月24日には恵比寿リキッドルームにて＜PAINT IT RED!!!!!!＞と銘打ちながらの誕生日記念ライヴを、さらに6月18日には赤羽ReNY Alphaにて『60th Anniversary Special』との言葉を掲げつつ＜HEESEY WITH DUDES 20th Anniversary Live with TYO YEARS ’23＞を実施している。還暦祝いのライヴを2回もやるところも彼らしいが、前者が彼自身の生誕60周年祭だったのとは異なり、後者は時を同じくして20周年の節目を迎えたHEESEY WITH DUDESのアニヴァ―サリー、そして同バンドとTYOの双方で彼とともに活動してきた6月6日生まれの盟友、大内“MAD”貴雅(Dr)の還暦祝いも兼ねていたのだった。


筆者は双方のライヴに足を運んできたが、どちらもHEESEYならではのサービス精神たっぷりのエンターテインメント性に溢れたもので、良い意味での“やり過ぎ感”が印象的な夜となった。4月のライヴではあくまで赤にこだわりながら何度も衣装を変え、なおかつその場で「PAINT IT RED」なる新曲を披露。しかもその場で彼が弾いていたベースは、その1年前に手に入れて赤くペイントされたものだった。そして6月のライヴには、彼の音楽人生においてソロ活動とHEESEY WITH DUDES、TYOはそれぞれ異なるものでありながら、同時にすべて繋がっているのだということを実感させるようなタイムレス／ボーダレス感があった。


今回登場の映像作品『RED COLORED CELEBRATION』には、楽しさ満載だった双方のライヴの模様がたっぷりと収められ、しかも撮りおろしのインタビューも随所に挿入されていて、ライヴ・パフォーマンスのみならずHEESEY自身のバンド観や人生観といったものを感じられるものになっている。実はそのインタビューを担当しているのは筆者自身なのだが、その取材現場も真っ赤に彩られた場所。しかし彼が語っていたのは真っ赤な嘘ではなく、ある種の赤裸々さも伴った真実だった。


そればかりではない。この『RED COLORED CELEBRATION』と時を同じくして、ライヴで先行披露されていた「PAINT IT RED」が配信リリースされるのだ。しかも配信でありながらカップリング的に「TANGO DE CERO」「HOMETOWN」という2曲の新曲も同時に世に放たれることになる。



彼自身にとって2023年のテーマソングともいうべき「PAINT IT RED」の音源については、去る9月9日、新宿歌舞伎町のLOFT Plus Oneで開催された今回の映像作品発売を記念しての＜RED COLORED NINE-NINE＞(上映会＋トークショー)でも先行公開されているが、まさに一度聴いた途端に愛着の湧くロック・チューンに仕上げられている。そのタイトルからは条件反射的にザ・ローリング・ストーンズの「黒くぬれ！（Paint It Black）」を連想させられるが、そのストーンズに対するオマージュも随所に感じられる。

この映像作品と新曲のリリースを経て、いよいよ10月13日には＜RED COLORED WEEKEND＞と題された全国ツアーも開始される。文字通り週末に各地を巡るこのツアーのファイナル公演の会場は、江戸っ子の彼に似つかわしい神田明神ホールだ。HEESEY WITH DUDESの代表曲のひとつである「OLD CHILD」の歌詞には“不老長寿”や“不良中年”、さらには“年喰うほど若返る”なんて言葉もちりばめられていたが、60代に突入した彼はまさにそれを実証しているかのようだ。この秋、老いも若きも、ともに週末を赤く塗りつぶそうではないか！

文◎増田勇一