【ライブレポート】好きでい続ける理由しか見当たらない、aikoのライブの魔法

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9月28日NHKホール。全国19箇所30公演を回って辿り着いたホールツアー<Love Like Pop vol.23>の千秋楽は、aikoというアーティストが愛される理由を改めて再確認させられた時間だった。

◆ライブ写真

ゆったりとしたオープニングSEが会場を包み込むと、オーディエンスは待ち侘びた瞬間を歓声と大きな拍手に変え、一斉に立ち上がった。「荒れた唇は恋を失くす」のイントロが弾ける様にフロアに広がった瞬間にドレープたっぷりの赤い幕が一気に落とされると、総勢10人のサポートメンバーとステージ中央でステップを踏むaikoの姿が露わになった。

フロアからは悲鳴にも似た歓声と更に温度が上がった拍手が湧き上がり、次の瞬間、その拍手はリズムに合わせたクラップへと変わっていく。4,000人近いオーディエンスの息の合ったクラップは楽曲に厚みを与え、aikoはクラップの加わったサウンドにライブならではの歌声をのせて歌った。


「みなさん、こんばんはー! 今日はよろしくお願いします!」

思わず、“こちらこそー!”と叫びたくなる程に、aikoは常に聴く者の目線に立ってくれる。2曲目に届けられた「さらば!」ではクラップが勢いを増し、aikoはその上でツーステップを踏みながら歌を届けていった。ゆったりとした楽曲ながらもメロディの上下が激しく難解なaiko節を、楽々と、そしてのびのびと歌い上げていくaiko。間髪入れずにテンポを上げたナンバー「雲は白リンゴは赤」へと繋ぐと、aikoは曲中にいつもの“男子〜!”“女子〜!”“そうでない人〜!”“全員〜!”というコール&レスポンスを挟み込み、オーディエンスをライブの内側へと引き寄せたのだった。

メインビジョンにイラストで描かれた大粒な雨の雫が映し出されると、それをバックにミディアムチューンの「夢のダンス」が届けられる。少し物憂げなホーンの音に包まれながら、そばにいたいと願う切なさをaikoは実にリアルに歌い上げていったのだ。続けて届けられた「果てしない二人」「磁石」では、歌詞に描かれた、恋をしている2人の何気ない瞬間や仕草や、体温や匂いまでも伝わってきそうな状況や、部屋の中の様子などを思い浮かべ、それぞれの身近な景色をそこに重ねるように体を揺らしていたオーディエンス。会場中がaikoが描き出す不思議な魔法に揺らされた。そんな引力を確実に感じ取ることが出来た瞬間でもあった。

「最終日ですけど、みんな! 記憶にも記録にも残るライブを一緒に作りましょう!」

全力で煽りながらも、“最終日という実感が無い!”とステージの床に倒れ込みながら、駄々っ子の様に最終日という現実に抵抗するaikoの姿に客席からは笑いが起こる。会場内の至る所からaikoを呼ぶ声が飛び交い、aikoはその全てに返事をするといった距離感は、ずっと変わることのない景色でもある。そんなaikoを呼ぶ声の声色で、aikoが老若男女幅広い年齢層から愛されていることが伝わってきた。aikoは不偏。aikoは不滅。こんなにも万人に愛される人間はそうそう居ない。そう。アーティストとして支持されていることはもちろんなのだが、隣に居る友達に話しかける様にオーディエンスと対話しながらライブを進めていく姿を観る度に、もはやaikoはアーティストという存在を超え、“aikoという人間”として心底愛されていることを実感させられるのだ。


2階、3階のオーディエンスにも届く様にと大きめなジェスチャーで客席とコミュニケーションを取って話したaikoは、「ぶどうじゅーす」から中盤戦へ。このブロックで届けた「ワンツースリー」では、曲の後半でサックスとのセッションを魅せ、高音のフェイクで釘付けにしたのだった。

独特な節回しで独自の世界観を築き上げ、デビューからJ -POPシーンを牽引してきたaikoの活動歴も25周年に突入。この日、aikoはJ- POPという枠を超越した、音楽人としての音楽性の高さを見せつけてくれた。

「のぼせ」と「ハニーメモリー」を弾き語りで届けたブロックは、鍵盤の上に指を滑らせアドリブを加え、“この日だけの歌”として届けられたのだった。鍵盤の音だけに乗った歌声は透明度を増し、真っ直ぐに聴き手の胸の奥へと運ばれていく。そんなaikoの歌声に吸い込まれた客席は、さっきまでの盛り上がりが嘘の様に静まり返っていた。歌詞に置き換えた恋愛心理に共感し、頷きながら聴き入る“女子”。“こんな風に真っ直ぐに愛されたい”と羨みながら聴き入る“男子”。両者の想いに深く共感しながら聴き入る“そうでない人”。その場に居たaikoを愛する“全員” が、aikoの綴った想いに自らの思い出を重ねていた瞬間を見た気がした。

“最初に自分が曲を生み出すピアノとボーカルだけの状態を聴いてくれるみんなに届けたいという想いから弾き語りという形で曲を届けている”のだと語ったaiko。弾き語りは緊張するから苦手だというが、それでもaikoは自分の曲を愛してくれるみんなに、“ありのままを届けたい”という強い想いからそこに向き合っているのだと伝えた。会場からは、そんなaikoの想いを受け取った“ありがとう”の声が飛び交っていたのだった。


そこから「マント」「アンドロメダ」「ポニーテール」と繋げたaiko。aikoのお気に入りのナンバーであるという3曲は、キーが高く自信がないと歌えないという。4拍子のリズムに乗って軽やかにステップを踏みながら、変わらないあどけない歌声を響かせるaiko。人間性そのものが溢れ出していると言っても過言ではない曇りのない歌声は、無条件に聴き手の背中を押す。そして、ライブでは久しぶりに歌う「気付かれないように」を届ける前に、aikoはこんなMCを差し込んだ。

「この曲は、フラれてすごいズタズタやって、そこから時間が経って、そのときの気持ちを振り返ってたときに書いたので、書いたときにはもうそこに(好きだという)気持ちはなかったんやけど、悲しかったっていう気持ちでいっぱいになって心が動いて書いた曲でした。だけど、そこから時間が経ってこうやって歌うことが出来て、歌うことでそのときに悲しかった気持ちを忘れられるくらい、みんなが埋めてくれました。いろんな曲がみんなにとっていろんな時代を思い出す曲であってほしいし、そこから時間が経って、“あのときこーやったなぁ”って一緒に振り返ることが出来るものであってくれたら嬉しいなって思います」

“あのとき”は時を超えて、“今”のaikoが歌った「気付かれないように」。切なく響くメロディは、悲しみを超え、とても優しく温かな感情へと変化していた。“あのとき”からいろんなことを経験し、確実に前進し、成長した説得力と包容力を感じさせる曲へと進化したのだろう。その悲しみはいつか自分を支える優しさに変わる日がくることを教えてくれていた。

aikoの書く歌詞は、創られた物語ではなく、aikoが感じた悲しみや喜びや素直な想いや、経験そのものであるからこそ、聴き手の胸に刺さるのだろう。

aikoは続けて届けた「アップルパイ」の曲中でメンバー紹介を挟み、オーディエンスのクラップの中で「あたしの向こう」を届け、「ハナガサイタ」で本編を締めくくった。


そして──鳴り止まぬaikoコールの声に応え、ステージに戻ったaikoは、スモークが敷き詰められたステージの上で、しっとりと歌い上げられた「玄関のあとで」から、なんと12曲を届けたのだった。アンコールから1時間半。本編とほぼ同じ時間のアンコールとは。もはやそこには愛しかない。

aikoはアンコール8曲目に届けられた「エナジー」でステージから降り、1階の客席をぐるっと1週し、オーディエンスと近い距離で触れ合いながら歌を届けた。中には大好きなaikoが近すぎて、嬉しさを通り越して泣き出すファンもいた程だった。

愛しく想う気持ちに、こんなにも愛を返してくれるaikoのことを、好きじゃなくなる理由がない。好きでい続ける理由しかない。そんな瞬間の連続のライブだった。オーディエンスが、ライブに来る度に“aiko愛”を更に募らせていくことになることがとても理解出来る。そして、その感動を自分の友達や大切な人にも味わってもらいたいと、次のライブには友達や大切な人を誘って一緒にライブに来る気持ちに共感する。だからこそ、aikoのライブは常に初参戦者が多く存在し、その輪が広がり続けているのだろう。幸せの伝染。aikoのライブにはそんな力が存在する。

退館時間が迫る中、ギリギリまで歌い続けてくれたaikoにオーディエンスは心からのありがとうを贈り、aikoは一緒にライブを作ってくれたオーディエンスに心からのありがとうを贈り、再会を約束したのだった。


約半年間に渡るツアーを完走させたaikoは、ライブ中に44枚目のシングル「星の降る日に」を11月22日にリリースすることを発表し、ライブ終了後にヴィジョンを通して2024年1月27日の大阪・大阪城ホール公演を皮切りに、3都市を回る全6公演のツアー<Love Like Pop vol.24>を開催することを告知した。

アリーナツアーは2019年3月以来、実に約5年ぶりの開催となる。最高の25周年を経て磨きが掛かったaikoワールドは、この先も更に勢いを増していくことになるであろう。まだaikoを未体験の方は、26周年目からaikoの世界に足を踏み入れてみませんか? aikoは“来て良かった”という気持ちをくれることを保証します。

取材・文◎武市尚子
写真◎岡田貴之
※ライブ写真は27日公演のものも含む

44th Single「星の降る日に」

2023年11月22日(水)発売
CD予約:https://aiko.lnk.to/44thSG

■初回限定仕様盤A (CD+LIVE Blu-ray)
PCCA-15026 ¥3,630(税込)

■初回限定仕様盤B (CD+LIVE DVD)
PCCA-15027 ¥3,630(税込)

■通常仕様盤 (CD Only)
PCCA-15028 ¥1,320(税込)
※初回限定仕様盤:カラートレイ&三方背ケース仕様
※CD収録内容は後日発表

・Blu-ray/DVD収録内容:
「aiko×FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2022」

【44th Single「星の降る日に」初回限定仕様盤 予約購入先着特典】
特典:aiko・オリジナルステッカー
全国のCDショップ、WEBショップにて2023年11月22日(水)発売「星の降る日に」初回限定仕様盤を予約・購入した方に、先着で上記オリジナル特典をプレゼント。各店舗で用意している特典数量には限りがあります。
※通常仕様盤には上記特典はつきません。
※特典は数に限りがあります。発売前でも特典プレゼントが終了となる場合があります。
※一部取り扱いのない店舗やウェブサイトがあります。予約・購入の際は、各店舗の店頭または各サイトの告知で特典の有無をご確認ください。

<Love Like Pop vol.24>

2024年
1月27日(土) 大阪:大阪城ホール 16:30/17:30
1月28日(日) 大阪:大阪城ホール 16:30/17:30
2月7日(水) 愛知:日本ガイシホール 17:30/18:30
2月8日(木) 愛知:日本ガイシホール 17:30/18:30
2月17日(土) 神奈川:横浜アリーナ 16:30/17:30
2月18日(日) 神奈川:横浜アリーナ 16:30/17:30

チケット全席指定 7,500円(税込)
※公演日によって開場/開演時間が異なります。
※開場/開演時間は変更になる場合があります。
※小学生以上チケット必要。未就学児は入場できません。

アナログレコード第三弾

2023年11月22日(水)発売
生産限定盤/180g重量盤
予約:https://aiko.lnk.to/analog_231122

■「BABY」
品番:PCJA-15009
価格:4,950円(税込)

■「時のシルエット」
品番: PCJA-15010
価格:4,950円(税込)

■「泡のような愛だった」
品番:PCJA-15011
価格:4,950円(税込)

■「May Dream」
品番:PCJA-15012
価格:4,950円(税込)

4タイトル同時購入先着特典:「アナログBOX」(サイズ:左右326mm/天地345mm/幅43mm)

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