【ライブレポート】0.1gの誤算、緑川裕宇バースデーツアーファイナル。宙を舞って「一人もおいていかない。ヴィジュアル系人生、謳歌していこうぜ」

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0.1gの誤算が9月30日、日本青年館にて緑川裕宇バースデーワンマン<天色と摩天楼、夜長月が目覚める刻。>を開催した。

◆ライブ写真

本公演は、9月3日からスタートした緑川裕宇(Vo)のバースデーツアー<BERSERKER!? TRICKSTER!? SEPTEMBER!!!!!~アストライアの襲撃~>のファイナル。西日本エリアを中心に、東京を含め7公演のライブを経て、この日を迎えた。

幕開けは、イントロから中毒性のある新曲「被告人Aの告白」。YouTubeでミュージックビデオが公開されると、瞬く間にファンの間でも大きな反響を呼んだ曲ともあって、開幕早々から大きく会場が揺れる。



「日本青年館、完全ソールド。色んな人がいると思うけど、一人もおいていかないからな、『一人も』。ヴィジュアル系人生、謳歌していこうぜ」── 緑川裕宇

続けて、「必殺!からくり七変化」「桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌」など華やかなナンバー、「オオカミ男と月兎」「救済バタフライ」など、聴きやすくノリやすいナンバーを繰り出し、本編ラストの「絶望メンブレガール」まで、テンポ良くあっという間に駆け抜けた。

通常、ライブのメインは本編であり、アンコールはあくまでもおまけというイメージがあるが、0.1gの誤算のライブは違う。世界感を大切にしつつ、四方八方にバンドの魅力を伝える本編に対し、コアな部分をディープに掘り下げていくアンコール。そう、0.1gの誤算のライブは、ここからが本番と言っても過言ではない。


「今日初めて0.1gの誤算のライブを観に来た人~?」という緑川裕宇の問い掛けに、フロア後方や2階席にいた人が手を挙げて応える。いつも驚かされるのは、その数の多さ。「常に新しいファンを獲得し続けていることの証」をライブで目にするたび、このバンドの無限の可能性に胸を躍らせるのだ。

「今日、たくさん人がいてすごいと思うじゃん? でも、俺はまだ通過点だと思うの。これがゴールなわけじゃないでしょ?」という緑川裕宇からの問い掛けに、メンバー全員が「そうだよね」と言いながら深く頷く。続けて「もっと大きな会場で0.1gの誤算のライブを観たいでしょ?もっと上にいきたいよね?」という問い掛けに、今度はファンのみんなから拍手が贈られた。


すると、水田魔梨(G)が「もっと上にいきたいって言ったよね? では、上にいってもらいましょう」と、意味ありげな言葉をぽつり。その後、ステージ袖からスタッフ陣が飛び出し、GoProやワイヤーを手際よく緑川裕宇の身体に取り付け始めた。

「良かったじゃん。前に『やったことない体験してみたい』って言ってたし、今日は誕生日だから」と、メンバーに促される緑川裕宇。自らの「アンコールいけますか~!?」という言葉と同時に、上へ上へと上昇していく中、「男闘魂戦争卍燃えよ!誤算光殺法卍」と、タイトルコールを叫び、宙に浮いた状態で振り付けをやってみせた。この緑川裕宇の飛行はメンバーからのサプライズプレゼント。この大掛かりな演出に緑川裕宇は「飛んでるときは怖かったけど、貴重な体験になりました(笑)」と、話した。「怖い」と言うのもそのはず。新曲のコンセプト、和と中を基調とした新衣装に合わせ、この日、ステージにはお寺の入り口にある山門を模したセットが設置されていた。その巨大な山門を跳び越す地上9メートル(マンションの3階の高さほど)まで緑川裕宇は羽ばたいていたのだ。


その後は、「利己的メルヘン症候群」「2008年高田馬場AREA」「フルニトラゼパム」と、暴れ曲を畳み掛け、「こんな僕らどうですか」では、ステージの隅から隅まで駆け回り、煽りを入れながらサビのループへ。盛大に会場を沸かせた。

「新体制の0.1gの誤算になって、ちょうど2年が経ちました。2021年9月19日、TSUTAYA O-EAST(現Spotify O-EAST)で俺たちの第二の0.1gの誤算としての人生が始まりました。今までのバンド活動も楽しいことも辛いこともたくさんあったし、今でも挫折や苦悩はあるけど、この第二の0.1gの誤算の人生は毎日最高だよ。どんなに辛くても、みんなが日々送ってくれるメッセージに励まされてます」──緑川裕宇

ファンの方に感謝を述べた後、「こういう時じゃなきゃ言えないから」と、今度はメンバーのほうへ向きを変え、照れ笑いしながら「みんな本当にいつもありがとう」と、感謝を述べた。

「新体制になって、より周りのサポートが必要になってきた中で、ステージに立ってるとき以外の仕事を俺に代わってやってくれて、本当に感謝しかありません。俺のほうが年上だけど、これからも甘えさせてください」と、水田魔梨、眞崎大輔(B)に深く頭を下げた。続けて、「別に約束とかしなくても、何か行動を起こす時にはまず俺と友雪が先人を切ってます。これからもまずは2人で壁をぶっ壊していこう」と河村友雪(G)へ、「俺とまさしって似てるところが多いんだけど、似てる者同士ってなかなか一緒にステージに立つことは難しいんだよね。だから、これは奇跡だと思う。人生最後のバンドのドラマーがお前で良かったわ」と、サポートドラマーのまさしへ、言葉を贈った。

そして最後は次のように締め括られた。

「この5人で0.1gの誤算をこれからもやっていきます。人生背負ってこれからも一緒に歩んでいきましょう。寂しいけど、クライマックスです。でも、この先何度でもこの感動を味わえる、俺はそんな気がしてます」──緑川裕宇

ドラムセットの前へ集まったメンバーが白い照明に照らされ、シルエットだけが浮かび上がる。柔らかく始まった「アストライアの転生」。みんなへの想いを込め、再び語りかけるように優しく歌い上げられた。濃厚すぎるステージはダブルアンコールというかたちでその後も続き、「有害メンヘラドール」で幕を閉じた。


約一か月間のバースデーツアーを終え、緑川裕宇から、メンバー、ファンの皆さんへの感謝の気持ちが溢れたこの日、冒頭で彼が言った「色んな人がいると思うけど、一人もおいていかない」という言葉を全身全霊で体現したライブだったように思う。

実はこの日、緑川裕宇が宙を舞うサプライズ演出に加え、もう一つ新しい試みが行われていた。初めてライブに来た人向けの「暴れないゾーン」や、知ってる曲だけ暴れたい人向けの「マイペースゾーン」の設置、子どもが安全に楽しめる「小学生以下限定ワンマン」の開催など、ファンの属性、状況を考え、「色んな人が来やすい環境」をつくるべく独自の方法で常にオーディエンスのニーズに応えてきた0.1gの誤算。

この日は2階席最前列の方限定で手持ちのカメラ、スマートフォンで写真、動画を好きなだけ録ることができる「撮影席」が用意されていた。近年、ライブ中に1曲のみ撮影可能にする企画は目にすることが増えたが、最初から最後までいつでも撮影OKというのは、シーンの中でも初めての挑戦ではないだろうか。特にヴィジュアル系バンドはメンバー全員がフルメイクに派手なヘアセットをしてステージに立つわけだが、ライブ中は頻繁にお直しをするような時間は勿論ない。そのような意味でも他ジャンルのバンドと比べ撮影のハードルが高い彼らが、「色んな人に観てもらいたい」「色んな楽しみ方をしてもらいたい」という一心で導入した出血大サービスだったのだ。


常に「色んな人が楽しむため」の工夫を凝らし、メンバー自身も「本気の遊び」を楽しむ。これこそが、「話題の尽きないバンド」「チケットが取れないバンド」と言われる今の0.1gの誤算をつくり出す元になっているのだろう。

0.1gの誤算の次なる目的地は2024年3月27日の豊洲PIT。それまでにも新曲「被告人Aの告白」を含むミニアルバム『被告人は、心神喪失の状態にあり…』の配信、沖縄ファン旅行やクルーザーイベント、コンセプトワンマンなど、見逃せないイベントが続いていく。
この先の旅路も0.1gの誤算と共に。「一人残らず」次のステージへ。

写真◎株式会社At sense 田口雅大
文◎藤代冬馬

セットリスト

01.被告人Aの告白
02.必殺!からくり七変化
03.桜花爛漫!天晴れサムライ応援歌
04.アストライアの入滅
05.噓とシアン
06.オオカミ男と月兎
07.救済バタフライ
08.Le Diable~太陽を裁く者~
09.NEVER ENDING
10.絶望メンブレガール
(encore1)
11.男闘魂戦争卍燃えよ誤算光殺砲卍
12.誤算節
13.利己的メルヘン症候群
14.2008年高田馬場AREA
15.フルニトラゼパム
16.こんな僕らどうですか?
17.アストライアの転生
(encore2)
18.21gの感傷
19.混沌的極悪暴曲-ヴィジュアロックパロディウス-
20.有害メンヘラドール

ライブ情報

<メンバープロデュースワンマン>
10月14日(土)池袋EDGE(眞崎大輔プロデュース)
10月15日(日)池袋EDGE(水田魔梨プロデュース)
11月4日(土)池袋EDGE(河村友雪プロデュース)
11月5日(日)池袋EDGE(緑川裕宇プロデュース)

<突撃小旅行~滋賀、岐阜編~>
10月21日(土)滋賀U☆STONE
10月22日(日)YANASEGAWA ANTS

<ハロウィンワンマン「イケハロVSゴサハロ~2023~>
10月29日(日)池袋EDGE

<北海道ワンマンツアー「北の大地大進行」>
11月20日(月)旭川CASINO DRIVE
11月22日(水)札幌SPiCE
11月23日(木・祝)札幌SPiCE

<クリスマスワンマンツアー「プレゼントを忘れたゴサンタ」>
12月8日(金)福岡DRUM Be-1
12月9日(土)福岡DRUM Be-1
12月16日(土)大阪BananaHall
12月17日(日)名古屋SPADE BOX
12月22日(金)渋谷WWWX

<誤算ギャ&誤算ギャ男 大増殖計画〜初心者にも優しいワンマン〜>
開催決定!!
12月11日(月)Zepp Shinjuku

<水田魔梨バースデーワンマン「猫の生活~転生編~>
12月30日(土)渋谷WOMB

<8th Anniversary ONEMAN>
2024年3月27日(水)豊洲PIT

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