【ライヴレポート】LUNA SEA、全国アリーナツアー『MOTHER』再現公演で「今日、この瞬間から始まった」

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LUNA SEAが10月7日および8日、神奈川・Kアリーナ横浜にてアルバム『MOTHER』と『STYLE』を2023年に再現する全国5都市各2Daysずつのツアー<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>を開催した。

◆LUNA SEA 画像

ツアー初日となった10月7日は1995年のツアー<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>と同タイトル。2018年の12月にメジャーデビューアルバム『IMAGE』と2ndアルバム『EDEN』のツアーを具現化したライヴを実現させてから約5年。『MOTHER』と『STYLE』を再構築したステージを観ることを待ち望んでいた人も多かっただろう。中でも1994年に誕生した3rdアルバム『MOTHER』はLUNA SEAの“金字塔” “最高傑作”と評されたレジェンド中のレジェンドと言える作品だ。


同年にリリースされた3rdシングル「ROSIER」はロングセールスを記録し、今なおLUNA SEAの代表曲として君臨。4thシングル「TRUE BLUE」は当時の状況では珍しいタイアップなしでのオリコンチャート初登場1位という快挙を成し遂げた。飛ぶ鳥を落とす勢いという言葉があるが、LUNA SEAはまさにシーンをものすごい勢いで駆け上っていた。

そんな中、シングルになりうる楽曲が散りばめられたアルバムを制作するかと思いきや、前述の2曲が収録されたアルバム『MOTHER』は神秘的でスケール感たっぷりに構築されたコンセプチュアルな作品となった。インディーズ時代から洋楽体質でプログレッシヴロック、パンク、ゴシックなどに影響を受けたバンドの音楽性、特異で緻密なアンサンブルが想像を超える高い次元で昇華されて非常にアーティスティック。当時、取材でスタジオを訪れた時にメンバーが「すごいものができそう」と高揚していたのを記憶しているが、アルバム中盤に8分を超える壮大なバラード「GENESIS OF MIND〜夢の彼方へ〜」が収録されているにもかかわらず、オープニング「LOVELESS」から「MOTHER」まで一気に聴かせる没入感。アルバムタイトルに込められた深淵なメッセージも含め、とにかく衝撃的だった。

本作とそれに伴うツアーがなければ1995年12月の東京ドームでの伝説のライヴ<LUNATIC TOKYO>は実現していなかったかもしれないし、重圧と戦いながらひとつの到達点の先に向かったアルバム『STYLE』も生み出されなかったかもしれないと思う。


チケット完売となった初日のKアリーナ横浜。怒涛の歓声の中、オーロラのように美しいレーザーの光が会場を包み、ライヴはツアー<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>のオープニングを必ずと言っていいほど飾ってきた荘厳な名曲「LOVELESS」で幕を開けた。SUGIZOのトリプルネックギターとINORANの12弦アコースティックギターの神秘のアンサンブル。繊細な音色と真矢とJの強力なグルーヴ、RYUICHIの艶のあるローボイスがひとつになり、間奏では真矢のドラムがフィーチャリングされるアプローチ。全員が黒を基調にした衣装。当時を彷彿とさせるヘアスタイルのメンバーがいるのも嬉しい。そして特効から重厚感とキレを合わせ持つ「TIME IS DEAD」へとなだれこむ展開。会場に観客の歌う力強い声が響きわたった。

アンコールを含め全17曲のライヴを観て感じたことは、やはりLUNA SEAは全てにおいてとんでもないロックバンドだということだった。

11月29日に『MOTHER』の全曲フルリテイクのセルフカバーアルバム(『STYLE』も同時発売)が発売される中、セットリストはツアー<MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>に組み込まれていた曲ばかり。驚くことに目の前のステージに立っている5人は28年の月日が経っているのに、誰ひとりいい意味で変わっていない。全員がフロントを背負って凛として立っているからこそ磨かれていく演奏とパフォーマンス。そして何よりも自分たちが生み出してきた楽曲への誇りと愛と熱量。この日のメンバー紹介でもSUGIZOに「不死鳥」と紹介されたRYUICHIのボーカルは声帯の手術を乗り越えて、アリーナ全体を引っ張っていくほどに復活していた。


Jが攻撃的なベースを鳴らし、SUGIZOがスロープを全速力で走り、定位置に戻ってソロを弾いた「JESUS」は前半の起爆剤。ステージのLEDヴィジョンが赤く染まり、『MOTHER』の中で最もヘヴィな質感の「FACE TO FACE」はうねるグルーヴが凄まじく宇宙のカオスの中に吸い込まれるようだった。スローなナンバーでも内側で燃えるような熱と緊張感は途切れることがなく、こういう楽曲にドラマを与えられるのはRYUICHIしかいないと改めて思う。

RYUICHIが愛の言葉を伝え、アルバムの曲順どおりの「CIVILIZE」を投下したのも会場の興奮を加速させた。ハードコアなファストナンバーは息つく暇もない緊迫感でSUGIZOのアームを使ったアクロバティックなギターソロもさすが。INORANのギターの刻み、レゲエを取り入れたアレンジが当時斬新だった「RAIN」(シングル「ROSIER」のカップリング)を挟み、大曲「GENESIS OF MIND〜夢の彼方へ〜」へ。トリプルネックの12弦で遥か彼方に連れていかれそうな旋律を奏でたSUGIZOが客席に沈黙を促すジェスチャーをし、当時からSLAVEを感動でフリーズさせた壮大で切ないバラードが奏でられた。ギターとボーカルのみで始まり、途中からドラムとベースがインする構成でスクリーンに映る空と飛び立つ鳥も当時のツアーを彷彿とさせる。リアルタイムでライヴを観ていた人や映像で追体験した人にとってはあの頃の景色や空気が蘇るようでもあり、同時に感傷を吹き飛ばすほど新しく、今という時代にも刺さってくる。そんな魔法をかけるようにして前半のブロックが終了した。


20分の休憩を挟んで、盛大な真矢コールが鳴り響き、パワフルかつタイトな熟練技のドラムソロで魅了した真矢が「今日は、俺たちの忘れられない日にしようぜ! お前ら、最高にカッコいいぜ!」と叫び、ライヴは後半のブロックに突入した。懐かしの網Tシャツで登場したSUGIZOに驚きの声が上がり、黒のベストに白いシャツを合わせたJに場内が沸き、インディーズ時代の狂気的なLUNA SEAを象徴するアッパーチューン「FATE」を投下。前半のブロックでは煽り程度しか喋らなかったRYUICHIが客席に問いかけた。

「みんな気分はどうですか? <MOTHER OF LOVE MOTHER OF HATE>、やっぱり最高だよね。俺たちは常に前へ。もちろん上にも、そしてもっともっと深いところまでいつも広がっていってるんだよね。だって28年前のツアーの再現で、また新しいものをビシビシ感じてる。この瞬間、最高じゃない? そして初めて立ったこのKアリーナ横浜、最高です! それじゃあ、お前らと共にもう少し、時間を巻き戻してみたいと思います」──RYUICHI


そんな言葉の後に演奏されたのは『MOTHER』収録曲の「AURORA」。ノイズ音からエフェクトのかかったRYUICHIのヴォーカルに移行する冒頭のアレンジはいかにも当時のLUNA SEAだが、クリアでシンプルなアプローチは今の彼らならでは。会場を包みこむようなキャッチーなメロディとサウンドに会場の手が揺れ、シンガロングが響きわたった。

『MOTHER』の中で初期LUNA SEAに通じる匂いを放っている2ビートの攻撃的なナンバー「IN FUTURE」、今でもたびたび演奏されるインディーズ時代の「BLUE TRANSPARENCY」ではスクリーンに<LUNATIC TOKYO>の映像とリアルタイムの映像がクロスし、まさに時計の針が巻き戻されるような粋な試みが。アグレッシヴなパフォーマンスも含めて、どこを観たらいいか迷うほど楽しませてくれた。世代を超えてLUNA SEAを熟知しているスタッフが集結しているからこそ成せる演出だろう。

本編最後に投下されたのは圧巻の「ROSIER」。バックに当時のプロモーションビデオの映像の片鱗が流れる中、この曲のポテンシャルの高さが際立つ演奏とボーカルで会場を興奮の渦に叩き込み、Jが「行くぞ! Kアリーナ!」と叫んでマイクスタンドを後ろにぶん投げるパフォーマンスも含め、本編を清々しいほどの痛快さで締めくくった。


アンコールではスクリーンにリテイクアルバム『MOTHER』のジャケット写真がいち早く映し出される中、メンバーが登場。RYUICHIがアルバムについて「今、まさに最終のレコーディング作業で、もう2曲聴いてもらっていると思うけど「LOVELESS」と「G.」ね。たぶん、いい意味で驚いてもらえる“うわあ! キテる”と思ってもらえるアルバムになると思います」と言及し、メンバー紹介へ。

「今回のツアー、年末までみんなで愛し合って、舞台の上とお前らとどっちが最高にイカしてるか勝負しようぜ! そんなツアーにしたいです」と宣言したのは真矢。Jは「最高のツアーにしようぜ!」と叫び、INORANはRYUICHIに耳打ち。「みんな、愛してるって」と代弁し、SUGIZOは「Kアリーナ、みんな最高だね。素晴らしいよ。最高に幸せです。過去が今、現在、蘇って最高の形で一緒に未来を迎えましょう。みんな最高に愛してるぜ!」と伝えた。そして、SUGIZOから紹介されたRYUICHIは「今日、この瞬間から始まった」と今のLUNA SEAについての想いを語り、アンコールからは「自由にステージの写真を撮っていい」とまさかのサプライズ発言で驚かせる事態に 。「みんなはメンバーであり、カメラマンなんだ」と話すRYUICHIの後ろでスマホで客席を撮っている真矢の姿が大映しになっていたのも場内を沸かせた。

「TRUE BLUE」「BELIEVE 」、銀テープが降り注いだ「WISH」は解放のベクトル。RYUICHIとINORANが背中合わせになったり、RYUICHIが初めてセンターからスロープに移動したりとアンコールは神ショットが撮り放題となり、#LUNAPICをつけた数々の素晴らしい写真がSNSにアップされた。


おさまらない興奮の中、ダブルアンコールでは白を基調にしたそれぞれの装いでメンバーが再び、ステージに集結。

「今日、集まってくれたひとりひとり全員にこの曲を送りたいと思います」──RYUICHI

ミラーボールの光が反射する中、届けられたのはアルバムの最後を飾る「MOTHER」だった。アイルランドで撮影したプロモーション映像が映し出され、母なる地球、愛の象徴とも言える“MOTHER”に切実な魂の叫びを訴えかける不朽の名曲が暗闇の中の希望を浮かび上がらせる。深い余韻を残して初日のライヴが終了した。

なお、セルフカバーアルバム『MOTHER』にミックスエンジニアとして参加したのはU2などを手掛けたスティーヴ・リリーホワイト。21世紀にLUNA SEAが生み出した傑作アルバム『CROSS』(2019年発表)の共同プロデューサーでもあるスティーヴ・リリーホワイトが『MOTHER』を再生させるのは必然だったのかもしれない。

取材・文◎山本弘子
撮影◎田辺佳子/上溝恭香/清水義史

■<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023「MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE」>10月7日(土)@Kアリーナ横浜 SETLIST

01. LOVELESS
02. TIME IS DEAD
03. JESUS
04. IMITATION
05. FACE TO FACE
06. CIVILIZE
07. RAIN
08. GENESIS OF MIND ~夢の彼方へ~
Drum solo
09. FATE
10. AURORA
11. IN FUTURE
12. BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
13. ROSIER
encore
14. TRUE BLUE
15. BELIEVE
16. WISH
17. MOTHER

■<LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023>


【神奈川】
10月07日(土) Kアリーナ横浜
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open16:30 / start18:00
10月08日(日) Kアリーナ横浜
 <UN ENDING STYLE>
 open15:30 / start17:00
【福岡】
11月04日(土) マリンメッセ福岡B館
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
11月05日(日) マリンメッセ福岡B館
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【宮城】
12月02日(土) ゼビオアリーナ仙台
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
12月03日(日) ゼビオアリーナ仙台
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【愛知】
12月16日(土) 日本ガイシホール
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open17:00 / start18:00
12月17日(日) 日本ガイシホール
 <UN ENDING STYLE>
 open16:00 / start17:00
【大阪】
12月30日(土) 大阪城ホール
 <MOTHER OF LOVE, MOTHER OF HATE>
 open18:00 / start19:00
12月31日(日) 大阪城ホール
 <UN ENDING STYLE -COUNTDOWN SPECIAL->
 open21:00 / start22:00

▼チケット
・チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/lunasea/
・イープラス: https://eplus.jp/lunasea/
・ローソンチケット: https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=465766
・mu-mo TICKET: http://r.y-tickets.jp/lunasea2302

■セルフカバーアルバム『MOTHER』

▲セルフカバーアルバム『MOTHER』ジャケット

2023年11月29日 発売
【初回限定盤 A (ALBUM CD+DVD ※内容未定①)】
【初回限定盤 B (ALBUM CD +Blu-ray ※内容未定①)】
【通常盤 (ALBUM CD)】
▼ALBUM CD ※全形態共通
01 LOVELESS
02 ROSIER
03 FACE TO FACE
04 CIVILIZE
05 GENESIS OF MIND 〜夢の彼方へ〜
06 AURORA
07 IN FUTURE
08 FAKE
09 TRUE BLUE
10 MOTHER

【SLAVE限定盤 PREMIUM BOX A】
・ALBUM CD
・LIVE CD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.27「A Rosy Show」Selection
・DVD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.27「A Rosy Show」Selection
・「MOTHER」オリジナルTシャツ
・『THE BEST OF LUNA SEA 2023』スタッフパス
・BOOK 『THE BEST OF LUNA SEA 20232』 2023.5.27「A Rosy Show」 ライヴ写真集
【SLAVE限定盤 PREMIUM BOX B】
・ALBUM CD
・LIVE CD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.27「A Rosy Show」Selection
・Blu-ray 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.27「A Rosy Show」Selection
・「MOTHER」オリジナルTシャツ
・『THE BEST OF LUNA SEA 2023』スタッフパス
・BOOK 『THE BEST OF LUNA SEA 20232』 2023.5.27「A Rosy Show」 ライヴ写真集
※SLAVE限定盤はLUNA SEAファンクラブ『SLAVE』会員限定販売

■セルフカバーアルバム『STYLE』

▲セルフカバーアルバム『STYLE』ジャケット

2023年11月29日 発売
【初回限定盤 A (ALBUM CD+DVD ※内容未定②)】
【初回限定盤 B (ALBUM CD +Blu-ray ※内容未定②)】
【通常盤 (ALBUM CD)】
▼ALBUM CD ※全形態共通
01 WITH LOVE
02 G.
03 HURT
04 RA-SE-N
05 LUV U
06 FOREVER & EVER
07 1999
08 END OF SORROW
09 DESIRE
10 IN SILENCE
11 SELVES

【SLAVE限定盤 PREMIUM BOX A】
・ALBUM CD
・LIVE CD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.28「A Show for You」Selection
・DVD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』2023.5.28「A Show for You」Selection
・「STYLE」オリジナルTシャツ
・『THE BEST OF LUNA SEA 2023』スタッフパス
・BOOK 『THE BEST OF LUNA SEA 20232』 2023.5.28「A Show for You」 ライヴ写真集
【SLAVE限定盤 PREMIUM BOX B】
・ALBUM CD
・LIVE CD 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.28「A Show for You」Selection
・Blu-ray 『THE BEST OF LUNA SEA 2023』 2023.5.28「A Show for You」Selection
・「STYLE」オリジナルTシャツ
・『THE BEST OF LUNA SEA 2023』スタッフパス
・BOOK 『THE BEST OF LUNA SEA 20232』 2023.5.28「A Show for You」 ライヴ写真集
※SLAVE限定盤はLUNA SEAファンクラブ『SLAVE』会員限定販売

■「LOVELESS」「G.」先行配信

2023年10月4日(水)配信リリース
・「LOVELESS」ストリーミング・ダウンロード:https://avexlunasea.lnk.to/LOVELESS_st
・「G.」ストリーミング・ダウンロード:https://avexlunasea.lnk.to/G._st

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