【インタビュー】SPECIAL OTHERS、音のコミュニケーションが自由で温かく風景や物語を想像できる『Journey』

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毎月25日を“ニコニコの日”と称して、2月25日から9ヶ月連続で新曲をリリースすることを宣言したSPECIAL OTHERS。その集大成となるアルバム『Journey』が10月25日にリリースされる。メンバー各々による音のコミュニケーションが、とても自由で温かい。耳を傾けると、様々な風景や物語を想像できる。インストバンドとしての表現力が存分に発揮された作品だ。今回の取材を行った場所は、彼らのプライベートスタジオ『SPE STUDIO JAPAN』。新作についての話をじっくり聞いた。

■曲中にフリーな部分を設けていてそれぞれが自由にやるんです
■そうなると曲自体もそういう雰囲気になるんですよね


――2月から毎月25日に新曲をリリースしてきましたが、これはどういう経緯で始まった企画ですか?

宮原“TOYIN”良太(以下、宮原):海外のバンドのScary Pocketsが、コンスタントに新曲をYouTubeに出しているんですよね。それを楽しみにしていたので、自分達でもやってみたくなったんです。音楽って映像と合わせるとめちゃめちゃ面白いですから。

――スペアザがユーチューバーデビューしたということなのかも。

宮原:そうですね(笑)。生演奏にこだわりました。外国のMVはライブのことが多くて、観ていて面白いんですよ。「マイクをこう立てたらこういう音が録れるんだ?」とか、いろいろ勉強にもなるし。自分たちのMVもそういうものを目指しました。

柳下“DAYO”武史(以下、柳下):ストックの曲が一切ない状態でこの企画を立ち上げたので、始めた時はやり通せるかわからなかったんです。「むりだったら謝ろう」っていう話をしていました(笑)。

又吉“SEGUN”優也(以下、又吉):「まあ、どうにかなるだろう」と。

芹澤“REMI”優真(以下、芹澤):生演奏でMVを撮ることによって、曲自体に慣れることができたのも良かったです。ライブですぐにやっても良い感じで表現できるようになったので、練習を兼ねていたところもありましたね。

宮原:例えば10曲を一気に出すと聴く方も時間がかかるじゃないですか? それによって埋もれちゃう曲ってあるんです。でも1ヶ月毎に出せば隠れ名曲みたいなものにも気づいてもらえるかなと。そういうことも考えていました。


▲芹澤“REMI”優真

――連続リリースが危うかった月はありました?

宮原:大丈夫でした。1ヶ月あれば絶対に曲は作れるので。

柳下:MVを撮る場所は、常に探していましたけど。

――中華料理屋さんで撮影した「Bed of the Moon」のMVは、実に美味しそうでした。

宮原:紫金飯店ですね。あそこはビクターのスタッフが見つけてきました。



又吉:MVで観て、あの店に食べに行った人もいるみたいです。ありがたいですね。どれも美味しいですよ。僕が特に好きなのは生姜焼きです。

柳下:僕はあのお店で餃子が一番好きなので常に頼んでいます。最近はニラレバ炒めもお気に入りです。

芹澤:僕は玉チャー(玉子チャーハン)ですね。お店の代名詞みたいになっているメニューです。

又吉:俺、今日の気分は五目そば。

――想像するとお腹が空いてきます(笑)。毎月曲を作ってリリースを重ねていたので、アルバムの全体像のイメージやテーマは特になかったということですね?

宮原:はい。いつもそうなんですけどね。1曲1曲作って、「次、こういうのを聴きたい」っていう感じなので。


――「Journey」という曲が収録されていますが、アルバムのタイトルも『Journey』にした理由は?

宮原:曲の「Journey」も旅みたいな感じですし、「俺たちは音を旅してきたぜ」って思って、これになりました。

――開放感に溢れた曲が並んでいるアルバムだという印象がします。

宮原:コロナ禍が明けたという意識が勝手にあったからですかね? それが自然と曲作りにも表れたのかなと思います。

柳下:コロナ禍の期間はスタジオにこもって作業していることが多かったので、どちらかというと良い意味で内向きだったというか。ただ自分たちがやりたいようにやっていたので。

又吉:今思えば、あの時期も大事だった気がします。外に出られない分、メンバーそれぞれが機材を買って試したりもしたんですよね。新しいアンプを買って鳴らしたのを聴いて、「この音良いね!」ってなって、そこから曲ができていったりもしたので。

芹澤:今のみんなの話と真逆になるかもしれないですけど、俺にとってコロナ禍は開放的な気持ちになった時期なんです。「今日も休みだから、機材とか試して遊べる!」って楽しかったりもして(笑)。今回のアルバムが開放的な音になったのは、すごく休めたからなのかも。そんなことを思ったりもします。


▲宮原“TOYIN”良太

――1曲目の「Fanfare」は、清々しい気持ちになるサウンドです。連続リリースの最初でしたね。

宮原:はい。「曲作ろう」ってやって出てきたのがそれで。「なんかドラクエっぽいな」と思ったので、タイトルが「Fanfare」(笑)。



――(笑)。いつもそういうイージーなノリでタイトルを決めているんですか?

宮原:イージーですよ(笑)。イージーでしかない。

――この曲もそうですけど、お互いが鳴らす音に反応しながらバンド全体で曲を躍動させるパワーがものすごいバンドですね。

宮原:曲中にフリーな部分を設けているので、そういうところはそれぞれが楽しく自由にやるんです。そうなると曲自体もそういう雰囲気になるんですよね。

又吉:フリーなところが多ければ多いほど曲の広がりがどんどん出てくるんです。

――スペアザの曲は、メンバー同士の活き活きとした音のコミュニケーションをいつも感じます。

芹澤:活き活きとしたコミュニケーションが当たり前だと思っています。人同士の言葉のコミュニケーションって台本がなくても成立するじゃないですか? このバンドもそういうのに似ているんです。例えば彼女が「平気」って言っていても平気だとは思わないで行動しなきゃいけないことってあるじゃないですか?(笑)。それと同じなんです。「ドラムのフレーズがさっきと同じだけど、ここは弱く叩いたから展開しないんだな」ってわかったりするので。バンドってそういう人間同士のコミュニケーションとそっくりなんです。

又吉:楽器を弾くって特別なことではなくて、「弾きたかったら弾くし、弾きたくなかったら弾かない」っていうことだったりするんです。それは日常生活のいろんなことと一緒なんでしょうね。言葉のコミュニケーションも特別に何かを考えてやるわけではなくて、自然にやっているし、楽器を弾くのもそれと同じなんだと思います。

柳下:日常のメンバー同士の会話とジャムセッションも似ていますからね。

――「Early Morning」も、心地よい音のコミュニケーションですね。

宮原:目をつぶって聴いて、朝靄(あさもや)が見えたので仮タイトルは「朝靄」。そこから「Early Morning」にしました。安易ですね(笑)。



――(笑)。悪口ではないんですけど、安直な発想を大事にしているんですね。

宮原:はい。安直が全てだと思っています(笑)。

柳下:安直なバンドであることは自覚しています(笑)。

宮原:いろいろ理屈をつけて行動しているようだけど、人間の根本にあるのは直感らしいですよ。ほぼ直感で判断しているに過ぎないそうです。「この人は喋り方が変で食べ方が汚いから嫌い」じゃなくて、直感で「嫌い!」。そこに理由はないらしいです。我々は歌詞がない分、感じ方が直感に近いところもあるんだと思います。直感は我々のテーマですね。

――インストバンドの良さって、そこが大きいですよね?

芹澤:そうなんです。理屈で捉える必要がないというか。直感や感覚は人間がAIに勝てる唯一の部分、最後の救いじゃないかなと。例えばサンシャイン池崎さんが「イエーイ!」って言っただけでなんで面白いのか? ChatGPTに訊いたら、長い説明をしてくれるんでしょうけど、あれも感覚的に「面白い」って感じるってことに尽きると思うんです。

――言葉も重要ですけど、それとは別の大事な感覚をよみがえらせてくれるのが音楽の良さなのかも。

宮原:現代人は直感の大事さを忘れていると、勝手に偉そうに思っています(笑)。我々の音楽を聴いてそういう感覚を思い出して欲しいっていうのはありますね。

柳下:日常生活で直感だけで生きるのは難しいですけど、せめて音楽の中だけでは直感で生きていたいっていうことです。

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