【ライヴレポート】tetsuya率いるLike-an-Angel、コピバン史上初の日比谷野音ワンマンで「楽しいって言ってくれるのが嬉しい」

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L'Arc-en-Cielのリーダーでありベーシストのtetsuyaが、自身のSNSでL'Arc-en-CielのコピーバンドLike-an-Angel結成を告知、世間を騒つかせたのは2023年4月1日のこと。そしてそれは、翌月5月30日に代官山UNITでお披露目されることになった。

◆Like-an-Angel (ライク アン エンジェル) 画像

tetsuyaがベースを担当するという情報以外、詳細は発表されることはなかったが、1日2公演で行われた初ライヴ<Like-an-Angel「1st LIVE」>のチケットは瞬殺でソールドアウトとなった。本人が在籍するコピーバンドとは前代未聞の構想であるが、本人だからこそ実現可能な“通常のL'Arc-en-Cielのライヴではなかなか演奏されることのない楽曲を中心に届ける特別な形”を活動モットーとするL'Arc-en-Cielの楽曲の良さの再確認とL'Arc-en-Ciel愛を感じさせる最高のエンタテインメントなのだ。

想像を超えたエンタテインメントの形に大興奮だった第1回目のライヴに集まったファン達にライヴの最後に投下されたのは、なんとLike-an-Angel の次のライヴ告知であった。

   ◆   ◆   ◆


▲tetsuya

2023年10月7日、<Like-an-Angel PARALLEL WORLD 2023>と名付けられたLike-an-Angel 2度目のライヴは、日比谷野外大音楽堂で行われた。夕暮時が過ぎ、夜の入り口に秋の風が心地良く流れる中、SEをバックにメンバーがステージへと姿を現した。hibiki (Dr / 摩天楼オペラ)、jekyll (Vo) 、hiro (G / La'cryma Christi)、saki (G / NEMOPHILA)、そして、お待ちかねのtetsuya(B)の登場にフロアは大きな歓声を上げた。

一気に色づいた会場に放たれたのは「In the Air」。tetsuyaのベースフレーズから幕を開けるこの曲にオーディエンスは思わず歓喜の声を上げると、柔らかに響き渡るギターのアルペジオと滑らかに流れるドラミングに合わせ、手に持ったペンライトを揺らしてその音と歌に応えた。tetsuyaが生み出す厚く優しく彩る低音こそがL'Arc-en-Cielの楽曲の個性を創り出す鍵とも言える。

それに加え、透明度の高さと美しさが際立つギターフレーズもL'Arc-en-Cielの絶対的な個性なのだが、この日のLike-an-Angelは上手にガールズメタルバンドNEMOPHILAのリードギターであり繊細な速弾きを得意とするsakiと、下手にLa'cryma Christiのギタリストでありロングトーンと難解なフレーズを得意とするhiroが、上手と下手でサウンドに色を添えたのだった。ツインリードギターで奏でられるL'Arc-en-Cielの楽曲が聴けるとは思っていなかった新鮮さもまた、Like-an-Angelならではの楽しみ方である。

曲が「THE BLACK ROSE」へ移るとtetsuyaは客席に向かい、右手で“もっともっと!”とオーディエンスを煽った。下手から上手へと移動しながら歌を届けていくjekyllは、広いステージを持て余すことなく歌声を堂々と伸びやかに響かせ、初期曲である「The Rain Leaves a Scar」ではキーの高いハミングでオーディエンスを魅了した。


▲jekyll

「The Rain Leaves a Scar」ではLike-an-Angel お披露目ライヴのときからツーバスで派手なドラミングを披露したhibikiが、メタルバンドならではの流石のドラムソロを披露。往年のハードロックバンドやメタルバンドのライヴによくあった長めのドラムソロを彷彿とさせた存在感たっぷりな派手やかなドラムソロは、高めにセッティングされた左右のシンバルとツーバスを駆使してヘヴィかつ華やか。ひとつの見せ場となった。下手のお立ち台の上から見守るtetsuyaの中には、“それぞれのパートがソロを披露するSHOW”というものがロックバンドの神髄でもあった時代のエッセンスを、Like-an-Angelで再現したいという想いもあったのかもしれない。轟音のような海外のロックフェス的な歓声が湧き上がる中、jekyllは久しぶりの再会となるオーディエンスに語りかけた。

「how you doing?」──jekyll

jekyllのこの声にオーディエンスは一際大きな声を返した。最高のライヴ感だ。そしてMCを挟んで始まったのは「死の灰」。L'Arc-en-Cielのパブリックイメージからは少し外れたディープな印象のこの楽曲にオーディエンスは、力を抜き、メロディに身を委ね、気怠く体を揺らし、音を楽しんだ。「死の灰」はtetsuya作曲だが、ポップセンスに秀でたtetsuyaにしては少し肌触りの異なるルーズなハードロックといえるだろう。hydeによって載せられた歌詞の質感も、メロディに呼ばれたのか、それまでのL'Arc-en-Cielの歌詞とは少し異なる体温を感じさせた。jekyllの歌も、巧みに差し込んでいくhiroのロングトーンもこの曲ならではの世界観を見事に演出していた。

そこから間髪入れずに届けられた「DAYBREAK'S BELL」への流れに、オーディエンスは最高!と言わんばかりの歓喜の声を上げた。「DAYBREAK'S BELL」(2007年発表)と「死の灰」(1999年発表)はリリース時期が約8年違うが、時の流れを感じさせない程に心地良い調和をみせながら、青が少し強めの紫の照明に溶けていく。幻想的な照明の光が客席に流れ込んでいくかのように、オーディエンスの照らす青と薄い紫を発するペンライトの光が客席を染めていった。このとき、tetsuyaが中央のヴォーカル台に立ってベースを奏でると、jekyllがtetsuyaの左から右肩へと手をまわし、自らの体にtetsuyaをグッと引き寄せながら歌ったのだった。客席からはその光景にどよめきのような歓声が湧き上がった。


▲hiro

イントロのヴォイスから「CHASE -English version-」へと繋がれ、ステージの照明が蛍光色のレーザーに変化すると同時に、客席の放つ光が蛍光緑へと景色を変えた。演者とオーディエンスが一緒に創り上げていく、ライヴならではの瞬間を見た気がした。……と、そのとき。tetsuyaが中央を向き、手を止めた。その異変に気づいたhiroが音を止めると、「CHASE -English version-」の演奏が途中でストップ。ベースの音が出なくなるというトラブルが発生したのである。スタッフが早急に対処にまわると、その間、tetsuyaは客席に話しかけ始めた。が、トラブルが即座に敏速に解決され、tetsuyaがこう語った。

「10分くらい喋ろうと思ったのにぃ〜」──tetsuya

不測の事態で緊張感に包まれた会場を一気に和ませたtetsuya。流石はリーダーだ。tetsuyaが愛される意味が滲み出した予期せぬ時間に、オーディエンスは笑みを浮かべ、再び最初から届け直された「CHASE -English version-」を全身で楽しむ。“I'm chasing you”という主旋律の後に“chasing you”のコーラスを歌うオーディエンスとの掛け合いが、ライヴをさらに盛り上げる。中央を向いて下手のお立ち台に立ってプレイするtetsuyaと中央のヴォーカル台に立ち、tetsuyaを見つめながら歌うjekyllとのやり取りは、オーディエンスの盛り上がりをより煽る形となった。

照明が赤の逆光に変化し、ステージにスモークが流れ込むと、曲は「THE NEPENTHES」へ。まさしく、ここからはL'Arc-en-Cielのディープゾーンを切り取ったブロックだったと言えるだろう。フロアタムを軸とし、重心を落としたhibikiのドラミングに、細かく音を上下させて難解なベースフレーズを載せていくtetsuya。プログレ的な魅力を含むギターフレーズを放つhiroとワウを効かせたギターフレーズでサウンドに変化を加えるsaki。サウンドが創り上げる不穏な世界観の中、アップダウンが激しい旋律に言葉を絡めていくjekyll。 Like-an-Angelを通してL'Arc-en-Cielの音楽性の高さを再確認させられた。とどめを刺されたかのような感覚を覚えたのは、ここから「真実と幻想と」へと繋がる流れ。ひたすら音を浴びる以外の選択肢は無かった。ディープなロングトーンを響かせるhiroと、女性ならではの繊細さとアームを駆使したセンスの高いフレーズを聴かせるsaki。上手にsaki、下手にhiroがそれぞれのお立ち台に別れてひざまづいた姿勢で向き合い、ギターソロをリレーで繋いで両者が曲を演出したのだった。Like-an-Angelは単なるコピーバンドではない、ということを証明した演出だったといってもいいだろう。


▲saki

sakiが奏でるギターフレーズが「MY HEART DRAWS A DREAM」のイントロに変化していくと、tetsuyaは小さくジャンプ、時おりターンを加えながら楽曲を引っ張っていった。繰り返される“夢を描くよ”というサビの一節をオーディエンス全員が合唱する光景は素晴らしかった。新型コロナウイルスの蔓延により、声の出せない不自由なライヴが続いたこともあり、夜空高くオーディエンスの声が響き渡った光景は、一際美しく胸に響いた瞬間でもあった。

この流れで届けられたのは、妖艶な世界観を放つシングル曲「X X X -English version-」。L'Arc-en-Cielのライヴではなかなか聴くことのできない名曲達がひしめくセットリストの中で届けられた「X X X -English version-」は、当時シングル曲としては妖しくダークなカラーゆえ異彩を放っていたが、この流れのなかにあって違和感など皆無。むしろ日本が誇る生粋のロックバンド=L'Arc-en-Cielの神髄だったのだということを再確認した。

日本音楽シーンを牽引してきたL'Arc-en-Cielのあまり知られていない本質とでも言おうか。「EXISTENCE」「AS ONE」といったアルバム収録曲(『AWAKE』収録)の披露は、ラルクサウンドこそ日本ロックシーンの礎だと改めて確信させられるワンシーンとなった。とはいえ、このライヴはそもそもL'Arc-en-Cielではなく、コピーバンドLike-an-Angel。しかし、L'Arc-en-Cielを観てそう確信するのは当たり前だが、コピーバンドを観てもそう感じるということは、純粋に楽曲の良さが際立っているということなのだろう。

tetsuya作曲の「Cureless」のイントロが流れた瞬間、客席からは一際大きな歓声が上がった。1995年にリリースされた約28年前のこの楽曲にも、やはり変わらぬL'Arc-en-Cielの絶対的な個性が宿っている。ベースフレーズがメロディを引っ張る、という楽曲の在り方を至近距離で見せつけられたオーディエンスは、その魅力に改めて心酔していた様子だった。


▲hibiki

「こんばんは〜! Like-an-Angelです! (野外会場で)音が漏れているから“あれ? 今日ラルクのライヴやってるのかな?”って思われてるかもね。楽しんでる? 楽しい? (オーディエンスからの「楽しい〜!」の反応に)「楽しい」って言ってくれるのが嬉しい。すごく幸せ。ちょっとウルウルしてたんちゃうの? 見ちゃったもんねぇ〜。見ちゃったもんねぇ〜。こんなコピーバンドに高いチケット代払って来てくれてありがとうね。本当に幸せです。メンバーもスケジュールを調整してくれて、ほんまにありがとうね。本当に感謝です」──tetsuya

茶目っ気たっぷりのいつもと変わらないtetsuyaのMCに、客席から「てっちゃ〜ん!」の声が飛び交う。「ヒュ〜!」とtetsuyaが掛け声を上げると、とことん歪んだサウンドで、ギターソロさながらのベースソロを披露。ベースソロの最後の音を届け終えると、クルッと客席に背中を向け、ドラムの方に向かって無邪気に走り出す。すると、それを合図に「STAY AWAY」のイントロが始まった。客席は思いのままに音に身体を委ね、L'Arc-en-Cielの王道ポップに全力の盛り上がりをみせた。また、Like-an-Angelとしてステージに立つtetsuyaからは、作詞作曲やプレイ、演出や衣装への類い稀な感性、そして突出したエンターテインメントセンスの高さが溢れ出る。tetsuyaの魅力の全てを感じ取れる時間であることを実感出来た。

ステージ前方から6本の花火が吹き上がった「Driver's High」、メンバーがステージ狭しと動き回る中で届けられた「GOOD LUCK MY WAY」と畳み掛けられたラストスパートは、オーディエンスの心を完全に解放させ、喜ばせる時間となって本編の幕を閉じた。


鳴り止まないクラップに応えてステージに戻ったメンバー。tetsuyaはオーバー目のシャツとスリムなパンツでトラッドっぽくまとめていた本編の衣装とはテイストをがらりと変え、パーカーに変形ベストを重ねたカジュアルな衣装に着替えて登場した。

アンコールの1曲目は「Fare Well」。マーチングドラムと激しい運指によるtetsuyaらしいベースフレーズは秀逸。2曲目の「Brilliant Years」では中央でjekyllと声を重ねる場面もあり、オーディエンスにとっては満足感の高い選曲となった。イントロで絶叫のような歓声が上がった「Link」では、それと同時に銀テープを客席に向かって発射。銀テープを手にしたオーディエンスが両手を高く掲げ、サウンドにクラップを加えて盛り上がる。上手と下手を行き来しながら時おり華麗なターンをみせたtetsuyaも楽しそうだ。

「Link」の後、jekyllが唯一無二の素晴らしいバンドであるL'Arc-en-Cielに敬意を持ったメッセージを英語で届け、ラスト曲「あなた」へ。美しく優しく響く「あなた」のメロディは不滅。この先どんなに世界が変化しようとも、変わらず未来に残っていくに違いないと確信した。jekyllはステージ中央に立ち、その背後からミラーボールの放つ目映い光を受けながら、声を揃えて歌うオーディエンスを包み込むように、両手を大きく広げながらこの曲を届けた。客席を照らしたミラーボールの光と、客席に広がる青いペンライトの光が重なった景色は、とても温かなものとなった。


すべての演奏を終えるとtetsuyaは、共にLike-an-Angelとしてステージに立ち、一緒に音を届けくれたjekyll、hiro、saki、hibikiをステージ中央に集めた。そして全員で手を繋ぎ、「わっしょい! 3回ね!」と手を高く上げて、“ありがとう”の気持ちを伝えたのだった。

取材・文◎武市尚子
撮影◎岡田貴之

■<Like-an-Angel PARALLEL WORLD 2023>10月7日(土)@東京 日比谷野外大音楽堂 SETLIST

01. In the Air
02. THE BLACK ROSE
03. The Rain Leaves a Scar
-Drum Solo-
04. 死の灰
05. DAYBREAK'S BELL
06. CHASE -English version-
07. THE NEPENTHES
08. 真実と幻想と
-Guitar Solo-
09. MY HEART DRAWS A DREAM
10. X X X -English version-
11. EXISTENCE
12. AS ONE
13. Cureless
-Bass Solo-
14. STAY AWAY
15. Driver's High
16. GOOD LUCK MY WAY
encore
17. Fare Well
18. Brilliant Years
19. Link
20. あなた

■<TETSUYA Billboard Live Tour 2023>

▼大阪 ※1日2回公演
12月19日(火) Billboard Live OSAKA
・1stステージ:open17:00 / start18:00
・2ndステージ:open20:00 / start21:00
(問)Billboard Live OSAKA:06-6342-7722
▼神奈川 ※1日2回公演
12月25日(月) Billboard Live YOKOHAMA
・1stステージ:open17:00 / start18:00
・2ndステージ:open20:00 / start21:00
(問)Billboard Live YOKOHAMA:0570-05-6565
▼東京 ※1日2回公演
12月28日(木) Billboard Live TOKYO
・1stステージ:open17:00 / start18:00
・2ndステージ:open20:00 / start21:00
(問)Billboard Live TOKYO:03-3405-1133
【チケット】
・サービスエリア ¥16,600 (プレート&グラスシャンパン付)
・カジュアルエリア ¥11,300 (グラスシャンパン付)
※ご飲食代は別途ご精算

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