【コラム】CNBLUE約6年ぶり日本オリジナルAL『PLEASURES』は、時に力強く時に優しく寄り添う大人のロック

CNBLUEが10月19日に、日本メジャーデビュー12周年を迎えた。CNBLUEは、ボーカル、ギター、キーボードから、作詞・作曲・プロデュースまでをマルチにこなすフロントマンのジョン・ヨンファ、ドラムのカン・ミンヒョク、ベースのイ・ジョンシンから成る韓国出身のロックバンド。デビュー時にはヨンファが大ヒット韓国ドラマ『美男＜イケメン＞ですね』に出演していたことや、全員が180センチ越えのモデル級のビジュアルから“イケメンバンド”として注目されたが、バンドとしての実力は確かなもの。それは、13年目に突入した今秋も日本武道館2Daysを皮切りにツアー＜CNBLUE AUTUMN CONCERT 2023 ～PLEASURES～＞を行うことからも図り知ることができる。

“韓国アーティスト”と聞いてパッと思い浮かぶのは、一糸乱れぬシンクロダンスを見せるダンスボーカルグループだろう。韓国は楽器のプレイヤー人口こそ少なくないが、日本と違ってバンドが演奏できる場が圧倒的に少ない。そのためCNBLUEは、デビュー前の2009年から日本でバンド修業を行ってきた。全員で共同生活を送りながら、半年間で100本ものストリートライブやライブハウスでの演奏を重ねた。観客ゼロから始めた日本でのライブだったが、2011年9月のインディーズ・ラストライブでは横浜アリーナを満員にするほどの人気に。2011年10月19日に「In My Head」で日本メジャーデビューして以降は、毎年のようにアリーナツアーを重ねるなど、彼らはロックバンドとして日本のファンに受け入れられてきた。

2020年にメンバー全員が除隊を迎えたが、活動再開を見すえたタイミングでコロナの猛威が世界を襲い、2017年11月の＜CNBLUE 2017 ARENA TOUR 〜Starting Over〜＞以来、実に5年もの間、日本でライブ活動を行うことができないという事態に陥ってしまった。ようやく来日ライブができるようになると、2022年11月に日本武道館、神戸・ワールド記念ホールでのライブを開催。韓国デビュー曲「I Am Loner」から、日本での新曲「LET IT SHINE」まで、新旧の楽曲を織り交ぜたバラード曲ナシの攻めに攻めた“神セトリ”で構成されたライブは、ヨンファの熱いシャウト、ジョンシンのダイナミックなベースと繊細なサブボーカル、そしてミンヒョクの刻むタイトでグルービーなリズムが一瞬で5年の空白を埋めてくれた。そして声出し解禁となった2023年上半期には、メンバーたちの要望で10年ぶりのZeppツアーを敢行。ロックバンドとしてのパワーみなぎる原点回帰のライブを見せてくれた。



日本メジャーデビュー12周年を迎えた今秋は、10月25日に満を持して約6年ぶりとなる日本7枚目のオリジナルアルバム『PLEASURES』をリリース。「音楽を奏でる喜び」、「挑戦することの楽しさ」を『PLEASURES』というアルバムタイトルに込めたという本作のリード曲となったのは、ブラスの入った軽快なロックチューン「Synchronize」。オープニングで「カンカンカン」という格闘技のゴングの音が入っているが、CNBLUEはこの曲で、大きな目標に立ち向かうファイターの姿を歌っている。

デビュー時から掲げてきた彼らの夢は、東京ドームでのライブ。ヨンファは2020年のソロ・アルバムでのインタビューで、「東京ドームライブは無理だと諦めかけたこともありましたが、入隊のために音楽から離れた2年を過ごして、また夢に向かって進む決心をしました。僕は皆さんを信じて、皆さんは僕を信じて進んで行けば、いつか実現できると思っています」と語ってくれたが、彼らはファンの前でライブができなかった時間を乗り越えて、改めて東京ドームという目標に向かう決心を固めた。バンドとしての最大級を更新し続け、目標に向かって挑む気高きファイターとなったCNBLUE。そしてその夢にSynchronize（同期）して共に闘う同志が“ファン”という訳だ。「Synchronize」のMVでヨンファは、ボクサーに扮して闘っている。格闘技好きで、世界4階級制覇を成し遂げたプロボクサー・井上尚弥とも交流があるヨンファは、ロックスターのパブリックイメージにあるような華やかなパーティとは無縁な男だ。常に自制し、音楽制作に時間を費やす。気分転換はトレーニングと、格闘家のようにストイックに音楽に立ち向かっている。



アルバム『PLEASURES』には、コロナ禍で離れていてもファンの近くに“ズーム”したいという想いを込めた「ZOOM」と、今までと変わらず思いきり楽しんで突っ走っていくという決意を乗せた「LET IT SHINE」など除隊後にリリースされた2枚のシングル曲のほか、新曲を6曲収録。もちろんラブソングもあるが、じっくり聴いてほしいのは30代のCNBLUEだからこそ歌える“大人のロック”ともいえる楽曲群だ。挑戦を宣言する「Synchronize」もそうだが、ヨンファとジョンシンの2人の歌い分けが美しいバラード曲「What do you feel」といった新曲たちに加え、シングルのカップリング曲として収録された「Clap your hands」、「MOON」などには、様々な機微を経験してきた彼らの人生観が現れており、時に力強く、そして時に優しく、聴き手に寄り添ってくれる。





このアルバムを引っ提げて、11月8日から東京、名古屋、神戸での＜CNBLUE AUTUMN CONCERT 2023 ～PLEASURES～＞が始まる。アルバム『PLEASURES』を一聴しただけだと、CNBLUEにあまりロックなイメージを持たない人もいるかもしれないが、ぜひ一度、ライブを見てほしい。とにかく彼らのライブは熱く、ロックスピリッツにあふれている。アルバム『PLEASURES』の楽曲たちも、きっとCDとは違ったよりロックなアレンジに変身していることだろう。新曲「Synchronize」で原点回帰を示唆した彼らが、改めて夢へと踏み出す、決意の一歩を見守ってほしい。

文：坂本ゆかり

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