【コラム】aikoで「ラジオ」、お聴き下さい。

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2023年の7月にデビュー25周年を迎えたaiko。それに伴い、約5年ぶりとなるアリーナツアーを2024年1月27日の大阪城ホール公演を皮切りに行うことを発表していたが、先日、更に2月29日、3月1日の日本武道館2daysを追加発表し、4都市全8公演のツアーが今から待ち遠しい限りというところである。

そんなaikoの25周年を祝うべく、配信シングル「ラジオ」がリリースされた11月3日に、NHK-FMにて『今日は一日“aiko”三昧』という9時間超えの生放送が行われた。生放送で行われたこの『“aiko”三昧』は、リスナーから“三昧で聴きたいaikoソングTOP25”としてリクエストをリスナーからの投票形式で集め、その楽曲ごとにリスナーから寄せられたメッセージを紹介するというラジオならではの展開。さらにゲストとしてスタジオに集まった著名人達がaikoとの思い出話をそこに絡めいくという内容になっていた。

番組の前半はaiko不在で、デビュー前の大阪時代のaikoをよく知るラジオDJのヒロ寺平を中心に番組は進行されていたのだが、aikoはリスナーのメッセージに混ざり蔵出し音源はじい!!”などと楽曲の感想などをXに投稿するなど、ラジオな時間をリスナーとして楽しむ姿も紹介され、aikoとリアルタイムで繋がっているという喜びをリスナーに与えていたのだった。そう。こんな風に自分の憧れの人や、知らない人とも心を通わせられるのもラジオの魅力。

また、DJのヒロ寺平からは、蔵出し音源ならぬ“aikoとの秘蔵話”が蔵出しされる場面もあった。なんでも、aikoが1998年に「あした」でデビューし、翌年に「ナキ・ムシ」「花火」と畳み掛けてリリースし、だんだん世の中がaikoの存在を知る様になり始めていたこともあり、ヒロ寺平は、次に出す曲として選ばれた「カブトムシ」がバラードであったことに対して、なんとかaikoをプッシュしたいと思っていたからこそ、このタイミングでバラードで大丈夫なのかと不遜ながら当時は疑問を抱いていたとのことだが、そんなヒロ寺平の予想に反してカブトムシが大ヒットしたという秘話も飛び出した。こんな裏話がサラッと聞けてしまうのもラジオの魅力。そんなトークからも、aikoとヒロ寺平の間には絶大な信頼関係があったことが見えてくる。リスナーは、aiko本人ではなく、aikoのことを知っている人から、aikoの話を聞きたいのだ。そして、aikoをもっともっと好きになっていくのである。それこそも、やはりラジオの魅力。

ゲストには、aikoが高校生時代から大好きだったという、よゐこの有野晋哉や大の親友であるPUFFYの大貫亜美、aikoがリスペクトして止まない天童よしみやハイヒールモモコらが出演し、aikoの交友関係やプライベートが丸裸になった9時間だった。これもラジオの魅力。

aikoがスタジオに参戦してからのゲストとの気のおけない仲間との赤裸々トークでは、普段テレビや雑誌などでは語られることのないお互いの関係性や、リラックスしまくっている話し声など普段は聞けない宝物も。ライブでのテンション感とは違う、友達に悩み事を相談する様な、いつもよりも少し落ち着いたトーンで話すaikoの声はラジオでしか聞くことの出来ないもので、「aikoと昔からの知り合いだったかも?」「aikoは自分の親友だったのかも?」と、とにかくaikoを身近に感じ、シンガーソングライターのaikoとしてだけではなく、友達の様な距離感で好きになってしまうのである。

ペンネームやラジオネームで、メッセージを通してラジオで知り合ったリスナー同士も、いつの間にか「あ〜! ○○さん、久しぶり! 元気にしてたのかな?」「○○さん、良いことあったんだ! 良かった!」などと、いつの間にかラジオを通して友達の様な距離感になっていたりする。これもラジオの魅力。

ラジオ局でディレクターをしている友人に聞いた話なのだが、ラジオのヘビーリスナーには長距離運転手が多いのだとか。真夜中に真っ暗な高速道路をただただ車を走らせる長距離運転手からのリクエストが多く、時に“○時○分頃にかかった曲名を教えてほしい”というメッセージが来たりするのだという。ラジオから聞こえてくる話声に、誰かがそこに居てくれるという安心感を覚えるのだろう。そんなときにかかった曲は、その曲をリクエストしたリスナーと、その曲を受け取ったリスナーを確実に繋げている。ラジオには特別な力が宿る。

aikoといえば、生粋のラジオっ子ということも有名だ。きっとaikoもそんなラジオを通して感じる温もりをたまらなく愛しく感じているのだろう。

そんなラジオの中で繋がってきた人と人の温かい距離感は、aikoが自らの歌に込める温もりと似ていると感じることがある。

 “aikoの歌はいつも隣にいる様に寄り添ってくれる”

aikoフリークは、aikoの魅力をそう語る。この感覚こそ、ラジオと通ずる温もりなのではないだろうか。失恋したとき、友達と喧嘩したとき、独りぼっちが寂しいとき、aikoの歌はそっと隣にいて、そっと優しく“大丈夫だよ”をくれる。aikoの歌う歌の距離感は、ラジオと似ているのかもしれない。

バンド活動をしていたaikoは卒業後に出場した『TEENS’ MUSIC FESTIVAL』での優勝をキッカケに、ひょんなことからFM大阪のラジオ局見学に行くことになり、それがDJのオーディションだったことからラジオのDJとしてデビューすることになっていったのは、aikoのファンの中でも有名な話であるのだが、aikoとラジオの出逢いを紐解くと、それは、小学4年生のときまで遡ることになる。

aikoとラジオの出逢いは、小学4年生のときのクリスマスプレゼントにもらったラジカセでラジオを聴いたこと。そこから本格的なリスナー人生がスタートしていったのだと言うから、かれこれ38年。なんとも筋金入りのリスナー人生だ。

そんなaikoの25周年ということで、aikoとラジオにまつわる全てが『今日は一日“aiko”三昧』という9時間に集結されたのである。



そして。そんなaikoが11月3日にリリースした配信シングル「ラジオ」をここでご紹介。

ゆっくりと旋律を上げていくピアノの音色に、一瞬にして引き込まれる感覚になる。
優しく、温かく、そして、どこかちょっぴり切ない。

2回目に繰り返されるその旋律は、1回目よりも少しスキップ気味。少し肌寒くなった今の季節に聴くからか、袖口を引っ張って伸ばしながら、静かな空気の中をちょっぴり浮いて歩く、これから歌詞の中で出逢う主人公の足元のステップを想像してしまう。

夜中にラジオとふたりになる為にお気に入りの靴を履いて出かけた主人公は、ノイズに邪魔されながらも必死でラジオからの声を拾って心を重ねる。ピアノ1本の音だけで、アンプラグドに届けられるaikoの唄う「ラジオ」の主人公は、紛れもなくaiko自身である。

真っ暗な星空の下や、ベッドの中にもぐって聴くラジオは、本当に自分とラジオのふたりっきりの空間。普通にCDで聴けばいつでも聴ける曲がラジオから流れると、何故だかとびきり嬉しくなる。“あの曲かからないかなぁ”と待ちわびるもどかしい時間も、ラジオという時間が作ってくれる特別だ。

aikoは「ラジオ」の中で、そんな小さな幸せと、そこから聞こえていた独りぼっちの自分に問いかけてくれていた声の魔法について唄う。aikoの唄にはそっと寄り添うリアルが存在する。

誰もがその温度を感じたことがある、特別なものではないからこそのリアル。だからこそ、そのリアルは多くの人の胸に届くのだろう。

「ラジオ」は少女だったaikoの一夜のほんの数時間の出来事と心の動きを綴った唄。なのに、そこには小さな悩みに大きな葛藤を抱いていたリアルや、不安をかき消してくれる力と生きる意味がしっかりと詰め込まれていて、しっかりと背中を押してくれるのである。

誰もが心と気持ちを重ねられる経験をaikoは歌詞にする。「ラジオ」からは、夜中にちっちゃく響く目覚ましの音も、茶色の靴の踵が鳴る音も、冷たい冷えた空気も、白い息も、電波が混線したラジオのノイズ音も、ノイズに邪魔されてちょっと聴こえ辛いラジオの声も、寄り添ってくれるDJの声も、ベッドに潜るときの布団が擦れる音も、好きな曲が流れるのをドキドキして待つ心臓の音も、全部にリアルに伝わってくる。情景をこんなにも赤裸々に言葉にして伝えきれるアーティストは他に居ない。

そして、何よりも少女性の高い曇りのない素直な歌声と、“aiko節”と称される半音が心地よく伸びる他にない独特なメロディはaikoの個性と言えるだろう。今作の中でも“声だけであなたが泣いている事も今じゃわかるよ”の歌詞が載るフレーズのメロディの流れでは、すぅっと引き寄せられて心をギュッと掴まれる。刹那的なメロディに載ったaikoの少女性の高い曇りのない素直な歌声は、無意識のうちに時空を越え、懐かしい時代へとタイムトリップさせてくれるのだ。

「ラジオ」は、2011年2月にCDリリースされたaiko初のベストアルバム『まとめI』『まとめII』の初回限定仕様盤の特典ディスクに収められていた楽曲で、学生時代からラジオのヘビーリスナーだったというaikoならではの書き下ろし作品。


今回、この曲のジャケットのアートワークにはaikoによる手描きイラストが用いられているのだが、そこに描かれた女の子は、『まとめI』『まとめII』の初回限定仕様盤特典ディスクのジャケットイラストとして描かれた女の子が、時を経て成長した様子なのだとか。
この女の子こそも、きっとaiko。ラジオとふたりっきりになりたくて、こっそり秘密で出かけていた少女。それは紛れもなくaiko自身であるのだろう。

aikoがこの曲をどうしても配信で届けたかったのは、ラジオの様に誰もが聴ける環境で、電波を通して届けたかったからかもしれない。

秋の夜長、少し湯冷めした体をあったかい紅茶を飲んで温めた後、布団にくるまって、抱えたラジオからaikoの唄う「ラジオ」が流れるのを、愛おしく待ってみるのも悪くない。

では、次にお送りする曲。
aikoで「ラジオ」。お聴き下さい。



文◎武市尚子

配信シングル「ラジオ」

2023年11月3日リリース
配信リンク:https://aiko.lnk.to/radioPR

『今日は一日“aiko”三昧』アーカイブ配信

https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=8683_01

今日は一日“aiko”三昧 第2部
11月3日(金)午後7:20放送
2023年11月10日(金) 午後9:15配信終了

今日は一日“aiko”三昧 第1部
11月3日(金)午後0:15放送
2023年11月10日(金) 午後6:50配信終了

『FM802 HOLIDAY SPECIAL Q・B・B ベビーチーズ presents aiko Baby Darling』放送情報

・10月29日 1時間特番
802 BINTANG GARDEN Q・B・B ベビーチーズ presents aiko Baby Darling vol.1

・11月26日 1時間特番
802 BINTANG GARDEN Q・B・B ベビーチーズ presents aiko Baby Darling vol.2

・12月24日 1時間特番
802 BINTANG GARDEN Q・B・B ベビーチーズ presents aiko Baby Darling vo.3

詳細:https://funky802.com/site/pickup_detail/7177

<Love Like Pop vol.24>

2024年
1月27日(土) 大阪:大阪城ホール 16:30/17:30
1月28日(日) 大阪:大阪城ホール 16:30/17:30
2月7日(水) 愛知:日本ガイシホール 17:30/18:30
2月8日(木) 愛知:日本ガイシホール 17:30/18:30
2月17日(土) 神奈川:横浜アリーナ 16:30/17:30
2月18日(日) 神奈川:横浜アリーナ 16:30/17:30
2月29日 (木) 東京 :日本武道館 17:30/18:30
3月1日 (金) 東京 :日本武道館 17:30/18:30

チケット全席指定 7,500円(税込)
※公演日によって開場/開演時間が異なります。
※開場/開演時間は変更になる場合があります。
※小学生以上チケット必要。未就学児は入場できません。

44th Single「星の降る日に」

発売日:2023年11月22日(水)
予約:https://aiko.lnk.to/44thSG

■初回限定仕様盤A (CD+LIVE Blu-ray)
品番:PCCA-15026
価格:3,630円(税込)

■初回限定仕様盤B (CD+LIVE DVD)
品番:PCCA-15027
価格:3,630円(税込)

■通常仕様盤 (CD Only)
品番:PCCA-15028
価格:1,320円(税込)

※初回限定仕様盤:カラートレイ&三方背ケース仕様

[CD収録内容]
01.星の降る日に
02.いつ逢えたら
03.名のないハート
04.星の降る日に(instrumental)

[Blu-ray/DVD収録内容]
「aiko×RADIO CRAZY 2022」
01. キラキラ
02. beat
03. 花火
04. 夢見る隙間
05. ハニーメモリー
06. メロンソーダ
07. be master of life
08. ストロー
09. ボーイフレンド
特典映像:aiko×Radio Crazy behind the scenes

・初回限定仕様盤
予約購入先着特典:aiko・オリジナルステッカー

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