【ライブレポート】水瀬いのり、自分らしさをまっすぐに伝えた自身最大規模の声出し解禁ツアー

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TVアニメ『デッドマウント・デスプレイ』2クール目のOPテーマ「スクラップアート」を9月にリリースした水瀬いのり。9月17日兵庫から始まり、宮城、愛知、福岡と回ってきた『Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART』も、10月28日、29日、神奈川のぴあアリーナMMでの2DAYS公演でファイナルを迎えた。大きな会場で、しかも2DAYSというのは、かなりチャレンジであり大変だったとも思うが、最後まで楽しくライブをした水瀬いのり。彼女の進化とチームの結束力を感じたファイナル公演の模様をレポートする。

◆ライブ写真

今回のツアータイトル “SCRAP ART”とは、“廃材芸術”という意味だそうだ。廃材を使って新たなものを生み出す……そこに希望や救いを感じたとのことだが、彼女が『デッドマウント・デスプレイ』で演じている崎宮ミサキは、一度命を失い、そこから新たに生まれ変わったキャラクターでもあったので、そのあたりも重ねているのかもしれない。

前回ツアー(<Inori Minase LIVE TOUR 2022 glow>)は、とてもアットホームで、水瀬いのりのナチュラルな魅力が溢れた素晴らしいライブだったが、今回のライブはそれとはまたベクトルが違った。まずはオープニングムービーで、「スクラップアート」のジャケットの世界観のような夜のビル街にいる水瀬いのりが描き出されたかと思ったら、そこからシームレスで現実のライブにつながるという面白い仕掛け。ステージの後方と左右の壁、全面を覆ったLEDのスクリーンに高層ビル街を映し出し、いくつかのブロックを前に押し出し、その上で歌うことで、本当にビルの屋上で水瀬が歌っているような大迫力のライブを作り出す。その非現実感に度肝を抜かれた。


また最初はフードを被っていた水瀬が、いつしかフードを取り熱唱していたり、あらわになった髪にワンポイントでカラフルなエクステを付けていたりと、衣装もかなり奇抜でアーティスティックだ。最初から、“このライブはエンターテイメントとしてみんなを楽しませるんだ!”という彼女の強い想いが感じられた。続く「identity」もビル街をバックに、光を使って時間の経過を描き出すような演出。疾走感たっぷりに、私は私だと強く歌っていく。演出やバンドの演奏が、後押しをしているのはもちろんだが、ラストの《正解じゃなくても私なんだ》というフレーズを聴いても説得力があるし、心に来るものがある。そのくらい1曲1曲への気持ちの込め方が尋常ではないように感じた。


会場を覆った青いペンライトが激しく上下した「brave climber」は、とにかくエモーショナル。サビの畳み掛け、息継ぎもままならないままロングトーンに突入したり、その切迫感がグッと来る。もともと歌がものすごく上手い彼女だが、そうじゃないんだ! 魂なんだ!というのを見せつけるステージだった。

メッセージ性の強い3曲を終えて、笑顔を見せる水瀬。MCでは、例年のツアーとは違い、みんなを驚かせたいのだと、ライブのコンセプトを語る。さらにツアーファイナルということで、ここまでの集大成を見せると意気込んだ。ツアー名である“SCRAP ART”の意味も、「日常生活に当てはめると、諦めたり挫折して立ち止まってしまっていても、それは不要なことなのではなく、そこからまた再生したり、それを経験したから輝けるのではないかと思い、このツアータイトルを背負って走ろうと決めました。なのでこのあとも1曲1曲に込められたメッセージを皆さんに届けていきますので、楽しんでいってくださいね!」と言うと、4年ぶりの声出し公演ということもあってコール&レスポンスを楽しみ、ライブを続けていく。


ドラムソロから、ベース、ギター、鍵盤と音が重なっていく。バンドがみんなの鼓動を高鳴らせていくと、水瀬のボーカルが絶妙のタイミングで入り、さらに気持ちを高めてくれる「僕らだけの鼓動」。デニム生地を合わせた新たな衣装に早替えした水瀬は、ステージからファンへ手を振ったり、投げキッスをしたり、サムズアップをしたり、4階席にいるファンにまで気持ちを届けていく。バーチャルな映像をバックに歌った「クリスタライズ」は、デジタルな曲をバンドサウンドで表現することによる迫力がすごかったし、大きなクラップも起こり、水瀬も最後は拳を突き上げて盛り上げていた。

ピンクの照明が会場を照らす中始まった、いのりバンドの紹介。パートと名前と、それぞれのイメージカラーが水瀬の声でアナウンスされると、メンバーがそれぞれの楽器を弾いていく。恒例のバンド紹介でファンを楽しませている間に、カッコいいからかわいい衣装にチェンジした水瀬が再登場すると「アイマイモコ」と「運命の赤い糸」を幸福感たっぷりに歌っていく。水瀬のファルセットの美しさは秀逸で、声質的に切なさも感じられるところが心をキュッとさせる。


客席からの「かわいい!」に、まだ免疫がなくて慣れないと言うと、さらに大きいボリュームの「かわいい!」が返ってきて「振りじゃない振りじゃない!」と本気で慌てる姿も彼女らしい。ここではバンドメンバーとおしゃべりをして、会場を和やかな空気にさせていく。そんなほんわかとした雰囲気の中、最新シングルから、自身が生み出した公式キャラクター・くらりちゃんのイメージソング「くらりのうた」を歌っていく。「私はクラゲという気持ちで、たゆたっていただければ」と言った通り、スクリーンの幻想的な水の映像演出もあって、水の中にゆらゆら漂っているかのような気持ちになった。カメラマンが水瀬の後ろに立ち、水瀬から見えている光る会場の景色をスクリーンに映し出してくれたのも良かったし、おしゃれな演奏も心地よい。そして、優しい歌声で、雪がしんしんと降っているような映像を映し出しての「あの日の空へ」も心に染み渡った。

幕間の映像コーナーでは、水瀬がアートチャレンジをするという企画も。この日は絵画に挑戦していたが、それぞれの会場で違うアートをしていたようで、ここでは彼女の面白さというか、独特のセンスが垣間見られた。このあたりも彼女が好かれる所以だろう。


ライブ後半は、ステージを紗幕で覆っての演出で、映像の世界の中にいるかのように見せた「アイオライト」から始まる。この曲も『デッドマウント・デスプレイ』の1クール目のEDテーマなので、ダークファンタジーな世界観がカッコよかった。紗幕が落ちて、ロックナンバー「クータスタ」へ。今度はクールでエレガントな紫の衣装をまとった水瀬。1つのライブで本当に色々な姿を見せてくれる。この曲はツインギターの良さが炸裂していたし、ライティングもクールだった。そこから観客の大きな声やクラップが後押しした、疾走感溢れる「TRUST IN ETERNITY」。間奏では水瀬も拳を上げてファンを煽る。それにしても高音のロングトーンもブレることなく歌い切れるところは、ものすごい。歌をちゃんと伝えるためには、それができるだけの力が必要であることが、よく分かる。

MCで「続いての曲は、皆さんとコール&レスポンスをしたい1曲になっています。ここらでぶち上がるぞスイッチを入れてください!」と煽ると、轟音ギターから始まった「約束のアステリズム」を、大きな客席からの声とともに歌っていく。みんなの“WOW WOW”の大合唱をバックに歌うことが、やはりこの曲の完成形と言えるだろう。それにしても、全面のスクリーンを使ってステージで歌う水瀬を映し出す迫力はすごかった。続いても、みんなで曲タイトルをコールする「Million Futures」。ここでは熱気で会場の温度が上昇したのを体感する。そのくらいものすごい迫力だったし、長めのアウトロで始まったツインギターによるソロ合戦も凄まじかった。背面弾きや速弾きが炸裂し、会場を盛り上げているなか、水瀬はステージから捌け次の準備へ。


ぶち上がった2曲を終えると、会場の雰囲気はガラッと変わる。オルゴールから、バンドのおしゃれな演奏へ移っていくと、通称WWWシリーズと呼ばれている3曲のコーナーへ。少し説明すると「スクラップアート」を手掛けた栁舘周平が作詞・作曲を手掛けた「Winter Wonder Wander」(2017)、「Well Wishing Word」(2020年)、そして最新作のカップリング「While We Walk」のことを指すのだが、ここではステージ全面に木組みの街を映し出し、絵本の世界にいるような感じになる。水瀬もメルヘンな赤い衣装に身を包んで、「Well Wishing Word」「While We Walk」「Winter Wonder Wander」と続けて、曲のメッセージをしっかりと伝えていく。セットが大きなスクリーンだからこそ、歌に合わせて季節が巡っていくような感じを演出できていて、それに合わせ、最後は客席が白いペンライトを振って雪が降っているような感じを演出していたのも美しかった。また、スクリーンに映し出される花火もきれいで、多幸感に満ちていた。


歌い終わり、大きな余韻が残る中でのMCでは、「WWWシリーズが三部作になるとは、最初思っていなかったんです。時系列は違えど、登場人物がシンクロするような楽曲なんですけど、ファンタジックな世界に連れ込んでくれるようなものが自分の楽曲でできたらいいなと思っていたので、この三部作をライブで聴いてもらえることが嬉しくて。私もこの曲たちからもらったメッセージやパワーが大きすぎて感極まる思いなので、これから先も大切に歌っていきたいです」と話していた。

さらに集まってくれたファンへの感謝を伝えると、「このライブを経て、また皆さんと共有した時間が増えて、人それぞれいろんな感じ方があると思うけど、私自身は楽しくステージに立つことができたので、それが一番のご褒美かなと思います。皆さんにも届いてくれていたら嬉しいけど強要するものではないから、感じたままに受け止めてほしいなと思います」と伝えて、「次の曲は、4年間、声出しをできなかった期間を経て、みんなで一緒に作る曲になっているので、声を振り絞って、ひとつになりましょう」と、スタンドマイクで「僕らは今」を熱唱する。どこまでも控えめで、たまにネガティブな想いが出てしまうのも彼女のアイデンティティだと思うし、だからこそ、これほどまで多くの観客がひとつの会場に集まるのだろう。バラード調で始まり、ロックになっていくこの曲で、《Believe in me, believe in you》と大合唱をし、想像していた、見てみたかった景色を、みんなで一緒に見て、最後にジャンプをしてライブ本編を終えた。


濃密で、最高のセットリストで駆け抜けた本編。ここまで、曲のメッセージを伝えることを意識しつつ、エンターテイメントとしてみんなに楽しませるライブをしてきたが、大きな“いのり”コールに応えてのアンコールでは、みんなの近くまで感謝の気持ちを伝えに行く。ツインテールになった水瀬が、くらりちゃんのフロートに乗って、「Morning Prism」「ココロはMerry-Go-Round」を歌いながら、ゆっくりと会場を回る。ファンへレスをしまくり、会場が笑顔に包まれる。ステージに戻り「『僕らは今』でひとつになれることを証明しましたから。次の曲も、もっともっと強くなった私たちで高く高く飛んでいけるような曲なので、掛け声、合いの手たくさんで歌ってくれたら嬉しいです」と伝え、「Ready Steady Go!」で、タオル回しを全力でして、アンコールを終えた……のだが、ファイナル公演にはWアンコールがあった。


水瀬は、音楽チームへの感謝の気持ちを吐露していく。「チームいのりが、弱音をはける場所になっているのがすごく嬉しくて……」と、積み重ねてきて生まれた絆を思い、涙ぐむ場面もあったが、最後は「歌えるのかな? 私」と言いながら、「みなさんも自分の個性だったり、自分らしさを大切にしながら歌っていただけたら嬉しいです」と伝え、「Catch the Rainbow!」を会場の隅々まで届けて、ツアーを終える。いろんなアイデアを使って曲を表現し、ずっとファンを楽しませてくれた今回のライブ。曲に対しても、ファンに対しても、スタッフに対しても、常に真摯に向き合い続け、最高のステージを作り出す水瀬いのりの魅力や凄さを、改めるまでもなく感じたツアーファイナルだった。

取材・文◎塚越淳一
写真◎加藤アラタ / 三浦一喜

セットリスト

-OPENING MOVIE-
M1 スクラップアート
M2 identity
M3 brave climber
-MC-
M4 僕らだけの鼓動
M5 クリスタライズ
-バンドメンバー紹介-
M6 アイマイモコ
M7 運命の赤い糸
-MC-
M8 くらりのうた
M9 あの日の空へ
-BRIDGE MOVIE-
M10 アイオライト
M11 クータスタ
M12 TRUST IN ETERNITY
-MC-
M13 約束のアステリズム
M14 Million Futures
M15 Well Wishing Word
M16 While We Walk
M17 Winter Wonder Wader
-MC-
M18 僕らは今

アンコール
EN1 Morning Prism
EN2 ココロはMerry-Go-Round
-MC-
EN3 Ready Steady Go!

Wアンコール
EN4 Catch the Rainbow!

<Inori Minase LIVE TOUR 2023 SCRAP ART>アーカイブ配信情報

2023年10月29日(日)神奈川・ぴあアリーナMM公演 アーカイブ配信
~12月3日(日)23:59
https://www.inoriminase.com/special/2023/SA/

10月29日(日)神奈川・ぴあアリーナMM公演 セトリプレイリスト
https://lnk.to/scrapart_live

12th Single「スクラップアート」

▲「スクラップアート」 ジャケット

2023年9月13日発売
品番:KICM-2138
定価:¥1,430(税抜価格¥1,300)
初回封入特典:
・特製トレカ
・「スクラップアート」発売記念謎解きゲーム出題シート
解答期限:2023年9月13日(水)12:00~10月31日(火)23:59

【CD収録内容】
01.スクラップアート
作詞・作曲・編曲:栁舘周平
02.くらりのうた
作詞:水瀬いのり 作曲・編曲:金山秀士
03.While We Walk
作詞・作曲・編曲:栁舘周平

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