【対談連載】ASH DA HEROの“TALKING BLUES” 第16回ゲスト:GRANRODEO

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■ヘヴィなくせにホワイトファルコンを使う
■なんかもう、すごい個性じゃんね


Narukaze:GRANRODEOはe-ZUKAさんが作曲して、KISHOWさんが曲を受け取ってから歌詞を書くという流れですか?

KISHOW:ここ何年かはそうだね。言葉とか歌詞に意欲的だった昔は、いわゆる詞先で作ることもあったけど。でも100何曲も作っていれば、言いたいことはだいたい言っちゃってるじゃん(笑)。自分が言葉にしたいことの数なんて、たかが知れてて。だから、インスピレーションを曲からいただいて歌詞にするというかね。聴きながら“降ってこい!”みたいな感じ。「e-ZUKAさん、メロ先でお願いします」ってのが、最近の暗黙の了解になってる。

ASH:KISHOWさんに曲を渡すとき、歌詞は完全にお任せみたいな感じですか?

e-ZUKA:お任せです。このやり方はGRANRODEOを結成したときからですね。“この曲はこういうイメージで、こういう感じのワードがほしい”とかがあれば、なんとなく仮歌の中で忍ばせる言葉があったりするけど(笑)。直接、なにか言ったことはないよね。


ASH: e-ZUKAさん肉声の仮歌をデモで入れているんですか? デモ段階の仮歌は、シンセメロだと勝手に思ってました。

e-ZUKA:めちゃくちゃな言葉ですよ、鼻モゲラもいいところ。

KISHOW:“ZUKAモゲラ語”みたいな、英語なのか日本語なのか分からないごちゃっとした感じで。“ウェイウェイ、なんちゃら〜”とかね。でも一瞬、世の中に現存する言葉がそのZUKAモゲラ語の中に混じって入っているときがあって(笑)。歌詞を書くときにその言葉を拝借することが、なくはないんです。

e-ZUKA:アルバム『Question』に「恋はハチャメチャ」って曲があるんだけど、それは俺が仮歌で“♪ゆらゆらゆら ふわふわふわ 恋はハチャメチャ”と歌っちゃってたからね。野口五郎さんの楽曲「愛がメラメラ〜Smooth〜」へのリスペクトなんで、そこは譲りたくなかった(笑)。仮歌の鼻モゲラも、歌詞が完成してみると母音だけ似たようなものになっているときもあるんだよね。つまり言葉遊びみたいに、作詞をゲーム感覚で作れるじゃないですか。その逆も然りで、詞先だと曲を作るときにゲーム感覚で作れるんです。自分で作ると90秒ぐらいで収めてしまうAメロからサビの流れが、先に歌詞をもらって作り始めると、例えばAメロからブリッジを一度挟んで、次に違うAメロがきて、Bメロにいって、CメロにはいかずにDメロにいってからCメロへ、とか。詞先だとそういう構成も作れるんだよね。まぁ、詞先のパターンは、やる気があった昔の時代の話だけど(笑)。

ASH:今ではやる気がないみたいじゃないですか(笑)。

e-ZUKA:昔はまず曲がなかったからね。でも、ライブをやりたいとなると曲は必要だし、詞先でも曲先でもなんでも作ったんだよ。そもそもKISHOWは、GRANRODEOを結成するまで作詞なんてしたことなかったし。

KISHOW:ただ、GRANRODEOを始めたときは、自分は作詞ができると思い込んでたんですよ。根拠のない自信というやつですよね(笑)。歌いたいという願望だけは結成のずっと前からあったので、結成にあたって、歌を長くやるためには、歌詞を外注するのは違うなと。俺が書くしかねえなと。初めから腹は決まっていたんです。できる/できないじゃなくて、できるでしょうと決めつけてた。そうやって始めて早18年。初期衝動というのはやっぱり重要だなと思う。それが正しいかどうか分からないけど。

e-ZUKA:結局、自分で歌うわけだからね。

KISHOW:そうそう。誰かのために「歌詞を書いてください」と言われたら、プレッシャーでとてもじゃない。「この歌詞、大丈夫? 意味合ってる?」ってなっちゃうだろうけど、自分が歌う分には、それこそ無茶苦茶でも無理やり成立させられるってのがあったから。


▲ASH(Vo)


▲Narukaze(G)

Narukaze:それはタイアップでも、そうじゃないときでも同じ考え方で作るんですか?

e-ZUKA:うん、同じ。

Narukaze:そこがすごいですよね。タイアップとなると、僕はどうしてもいろんなこと考え過ぎちゃうんですよ。クライアントさんのオーダーとか考えとか、どんな方向性がいいかとか。

e-ZUKA:なるほどね。

KISHOW:けっこう不真面目かもしれないね、GRANRODEOは(笑)。

e-ZUKA:いや真面目です!と言っておきます(笑)。

ASH:現在は、「GRANRODEOさんにお願いします」って感じでしょうから、クライアントからの細かいオーダーとかはないんですよね?

e-ZUKA:うん。「お任せします」というのが多いけど、例えば同じような作品の曲であれば、自分の中で考えるよね、前と同じような曲調にならないように。それはGRANRODEOのスタッフも考えてくれるし。例えばディレクターが「善と悪が入れ替わるような作品ストーリーだから、展開が多い曲はどうですか?」とか。そうやってアイデアをもらうことはある。で、「それはなかなかおもしろい。じゃあ、やってやってもいいかな」って感じで(笑)。

ASH:俺らも早くそう言えるようになりたいです。


e-ZUKA:でも例えば、なにもオーダーがなかったら、どういう曲を作ればいいのか自分では分からないじゃん? 曲作りのモチベーションがないときは、どんな曲を作ったらいいか特に分からない感じになる。そのときに「こういうのはどうですか?」って参考曲をスタッフとかが提示してくれて。それを聴いて、“ここの要素はおもしろいな”と思ったり。逆に“こんなのはやりたくねえな”と思うと、ちょっと違うタイプの曲が自分の中から出てきたりもするんだよね。前に参考曲でCHEHONの音源をもらったことあるよ。

ASH:えっ、レゲエのCHEHONですか?

e-ZUKA:そうそう。「こういう要素があってもいいかもしれません。アンダーグラウンドな要素として」みたいに送られてきた参考曲がCHEHON。まぁ、“聴かねえ、こんなの”って(笑)。

ASH:僕はめちゃくちゃヒップホップやレゲエが好きなんで、普段からCHEHONも聴くんですよ。でも、いろんな音楽からインスパイアされて、分析もしながらという面もあるんですね、e-ZUKAさんも。

e-ZUKA:そんなこと言ったら、俺はNaru君とかTAKE(FLOW)ちゃんみたいに、バンバン曲ができる人になってみたいけどね。

Narukaze:いや、できないすよ、僕(笑)。なにを言い出すんですか。

e-ZUKA:うそー、名曲揃いじゃないですか、今回のアルバム『HUMAN』も。

KISHOW:本当にねぇ。Naru君が全部の曲を作っているもんね。


e-ZUKA:そうだよ。しかも、新しい感じしちゃっててさ。ヘヴィな感じも出してるくせに、ギターはグレッチのホワイトファルコンを使うという。なんかもう、すごい個性じゃんね。

Narukaze:でも、ホワイトファルコンを持ち始めたのもe-ZUKAさんの影響が大きいんですよ。僕はもともとソリッドギターを弾いてたんですけど、ソリッドだと、その先にはe-ZUKAさんが立ちはだかってるから。自分の道を考えたら、ソリッドギターじゃダメだと思って。

e-ZUKA:なんでやねん! ああ……これが褒め殺しってやつだな(笑)。

KISHOW:ちょっと、“たらされてる感”はあるよね、俺ら(笑)。

e-ZUKA:でもさ、ホワイトファルコンでああいうヘヴィなプレイって、弾きにくくない?

Narukaze:弾きにくいですけど、もともとグレッチの音が一番好きだったんです。僕にとってロックの入りがBLANKY JET CITYだったんで、原点に返って、グレッチを持った感じです。

ASH:初めてNaru君と会ったのは11年ぐらい前なんですけど、使っているギターもパフォーマンスも今とだいぶ違ったもんね。当時のNaru君はアクロバティックなギタリストというイメージだった。でも一緒に音楽を作ったりステージをやったりしていく中で、実はめちゃくちゃロックンロールなギタリストなんだなと気づいて。

e-ZUKA:実はメタルとかにもグレッチみたいな弾きにくいギターを使ってるのに上手い人がいてさ。ズルいよね〜。ガンズ・アンド・ローゼズのリチャード・フォータスとか。あの人も箱ものギターを使うよね。以前GRANRODEOが、ガンズ・アンド・ローゼズのステージに出させてもらったんだけど(<GUNS N' ROSES JAPAN TOUR 2022>11月6日@さいたまスーパーアリーナのサポートアクト)、ライブ観てて、“Narukazeっぽいな”と一瞬思ったんだよね。箱もの使ってるのに、すごくテクニカルなプレイをするところが。


▲KISHOW(Vo)

ASH:でも、Naru君がホワイトファルコンを選んだ理由の先にe-ZUKAさんがいたっていうのは、ちょっと意外な話だった。

KISHOW:Naru君はe-ZUKAチルドレンみたいなとこがあるんだね、やっぱり。

ASH:Naru君がルフィだとしたら、e-ZUKAさんはシャンクスな感じというか。

KISHOW:いいね。でもe-ZUKAさんがシャンクスだとしたら、「腕がー!」ってなっちゃってギター弾けなくなっちゃう(笑)。

ASH:それは例えとしてまずかったです(笑)。

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