【インタビュー】感覚ピエロ、映画『ゆとりですがなにか』主題歌と結成10周年、秋月復帰を語る「僕らが生まれた理由の音を」

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■“待たせてしまった ありがとうを”
■という歌詞は自分のことにも当てはまる


──『ゆとりですがなにか』然り、『ブラッククローバー』然り、所縁のある作品との再タッグが続いていますね。

秋月:本当にご縁というか、嬉しい限りですね。頭が上がらないです。『ゆとりですがなにか』や『ブラッククローバー』のスタッフの方々が自分たちの作品の話をしていた時に、その延長線上に僕らの名前が出てきたということがとても嬉しい。ありがたいことに、感覚ピエロの音楽を求めてくれはる人はいるし、そういう人には刺さり続けているのかな……とも思ったりして。変な言い方になっちゃいますけど、“まだ音楽やめさせてくれへんのやな”って。そういう意味でも、“バンドは続けないと”と思ったし、当時提供させていただいた曲を超える曲を書くことが僕らの役割だと思いました。実際、先方からも「「拝啓、いつかの君へ」ぐらいパンチのある曲を書いてほしい」と言われました。


──改めて振り返ると、「拝啓、いつかの君へ」がドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に抜擢されたのは、MVを見た水田伸生監督からオファーがあったからでした。書き下ろしではないけど、秋月さんが自分自身の想いを書いた曲が、ドラマにも上手くハマるというミラクルがあった。

秋月:書き下ろしやったらもっと違う言葉を使っていたと思うし、きっと「拝啓、いつかの君へ」は生まれてなかったんやろなと思っていて。なので、今回、水田監督から「曲を書いていただけませんか?」と連絡をいただいた時に、最初、脚本を読むかどうか迷ったんですよ。だけど、監督から「読みましたか?」ってLINEをめっちゃいただいたので、「これは読まなきゃ」と思って(笑)。

──ははは。

秋月:脚本を読んだ時に、ドラマから続いている『ゆとりですがなにか』の世界はもちろんあるけど、人物やキャラクターはそれぞれ成長を遂げているように思いました。僕らが「拝啓、いつかの君へ」を書いた時はまだ平成だったけど、今は令和で、コロナ含めいろいろなことがあった。それと同じように、『ゆとりですがなにか』に出てくる人物たちも、あの世界でずっと生きてきたんだろうな、僕らと同じ時間を一緒に歩んでいたんだなって。歌詞は、そういう部分を自分たちにも置き換えつつ書きました。同時に、映画を観た人にしか理解できない曲にはしたくなかったので、曲単体で聴いても刺さるような言葉選びを意識しましたね。

──“待たせてしまった ありがとうを”というフレーズは、感覚ピエロの現状にも当てはまるように思いますが。

秋月:そうですね。“待たせてしまった ありがとうを”は、自分のことにも当てはまります。あと、映画の中でも“ありがとう”という言葉が出てくるシーンがあるので、そことリンクさせています。岡田将生さんと安藤サクラさんのシーンなんですけど、僕、そのシーンを見て“ありがとう”という言葉はやっぱり必要やなと思ったんですよ。最近僕らは“ありがとう”と言えていなかった気がしたので、こういう歌詞を書きました。

──“ピーヒャララって飛んだ”という表現も印象的でした。

秋月:これは何も考えずに出てきた言葉です。僕、作曲をする時は、アコギを弾きながら適当にメロディを歌うんですけど、“ピーヒャララって飛んだ”はたまたまポロッと出てきたフレーズで。特に意味も考えずに、“語呂がいいな” “響きがいいな”くらいの感覚でそのまま使っちゃいました。たまにそういうことがあるんですよね。“歌詞、全部は覚えていないけど、なんかピーヒャララって言ってたな”という感じで、インパクトに残っていたら嬉しいです。


──編曲は横山さん。スピード感があり、展開の多い曲ですが、バンドのサウンドは力強く、“世界は目まぐるしく変化するが、自分の道を力強く進んでいこう”という決意が伝わってきます。また、そういった決意に至った自分自身のことを祝福するような空気感もあるように思いました。

横山:特に試行錯誤したのはリズムパターンだったんですけど、とはいえ、元々秋月が“こんなイメージ”と入れていたパターンが、前に進む感じ、祝福感のあるものだったので、それをブラッシュアップして進行していきました。全体としては、「拝啓、いつかの君へ」という楽曲やあの曲を生み出した過去の自分たち、「拝啓、いつかの君へ」を好きで聴いてくれていた人たちに対するリスペクトを込めていて。“あの頃の自分たちと同じ熱量で、同じ気持ちでここに存在しているんだよ”ということを示すような曲にしたくて、今自分たちが伝えたいこと、この曲が今制作される意味、ストーリーをみんなでアレンジメントに落とし込んでいきました。

──“メンバー同士お互いのことをリスペクトできている” “自分たちで自分たちのことをカッコいいと思いながら、バンドをやれている”という今の4人のマインドが、この仕上がりに繋がっている気がしますね。

横山:そうですね。レコーディングでは「バンドっぽくやってみよう」とよく言っていた記憶があります。僕ら10年バンドをやってきたので、“上手くやらなきゃ”という思考が働きそうになる瞬間もあるんですけど、そうじゃなくてもっと純粋に、フレッシュな感じでやろうよ、と。デモの時点ではドラムやベースは打ち込みなので、彼ら(滝口、アキレス)の演奏によって初めて“やっぱり俺たちカッコいいじゃん”と言えるものが実現したなと思っています。

──ボーカルの熱量も素晴らしいです。どんな気持ちでレコーディングに臨みましたか?

横山:水田監督がレコーディングにいらっしゃったんですよ。監督ご自身が歌録りの現場にわざわざ足を運んでくださって、激励してくださるなんて、今まで経験したことのないことだったので……やっぱり緊張しますよね。緊張というか、心の在り方が変わってくる。普段のレコーディングではお客さんのことをイメージしながら歌っているんですけど、この日は、この曲を待ち望んでくださっている方の目の前で、自分たちの音楽に魂を吹き込むという状況だったので。

──そのエピソードを聞いて納得しました。まさに魂のこもった歌だと思ったので。

横山:僕はプリプロを結構しっかりやるほうなんですよ。“こういうふうに歌ったら、こういうふうに聞こえるかな”ということを考えながらプリプロしたあと、歌録りでは、プリプロで準備したことを元に“これをどうバージョンアップさせていこうか”というようなことをいつも考えていて。だけどこの日はそういうことじゃなくて、本当にこの曲に魂を吹き込まなきゃいけないんだと思って。“目の前にいるこの方を感動させる歌を歌わなくてはいけない”という感じで、今までのレコーディングとはまた違った熱の入り方だったなと思います。すごく燃えました。

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