【インタビュー】超学生、“ヴィラン”シリーズ第3弾・煮ル果実コラボ「超獣戯画」に覗く美学「僕は変化していきたい」

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超学生がデジタルシングル「超獣戯画」をリリースする。同曲は超学生とVOCALOIDクリエイターがタッグを組み、“ヴィラン”をテーマに制作をする“超学生×ボカロPプロジェクト”の第3弾楽曲である。

◆撮り下ろし写真

第1弾ではDECO*27による「ファントム」、第2弾では柊キライによる「ヒス」でリスナーを驚かせた彼が今回オファーした相手は、煮ル果実。ロックミュージックに多種多様なジャンルを取り入れたサウンドメイクを得意とする実力者とともに、百鬼夜行や鳥獣戯画を彷彿とさせる和風の世界観をスリリングかつエモーショナルに彩っている。

今プロジェクトで超学生は自身で作家陣を選出することに加え、ボーカルミックスとマスタリングなど音源制作に参加しており、楽曲そのものにも彼のアイデアやポリシー、クリエイティビティが色濃く反映されている。彼はこのプロジェクトとどのような心持ちで向き合い、どんな刺激を得ているのだろうか。

   ◆   ◆   ◆

◾️悪の道を楽しむようなヴィランを描いていただきたかった

──今年8月から始まった、VOCALOIDクリエイターとタッグを組んで“ヴィラン”をテーマにした制作を行うプロジェクトがかなり好評ですね。

超学生:予想を大きく上回る反響をいただいておりまして、とてもありがたいです。そもそもこのプロジェクトは、超学生の世界観に合うものを作りたい気持ちと、もともと僕がVOCALOID楽曲を歌う“歌い手”として活動しているので、リスナーの皆さんがより好む楽曲を作れたらという思いから始めたものですが、テーマがヴィランということもあって、ボカロPファンの方々に「普段なかなか聴けないタイプの曲だ」と喜んでいただけているのもうれしいですね。

──超学生さんの声のムードやスタイリングはヴィランとの親和性も高いですが、こうやってインタビューさせていただくと、人間性はヴィランと遠い位置にあるのかなとも思いますが、いかがでしょうか。

超学生:アニメや漫画に出てくるヴィランのような、深い闇や禍々しさは僕本人にはあんまりないですね。僕は自分と性質が遠い主人公ほど歌いやすいんです。でも多数派から外れてまで貫きたい信念を持っているヴィランを、見習わないといけないなと思う場面はありますね。僕はやりたいことが明確にあるのに、周りに流されちゃうことや影響を受けすぎちゃうことがよくあって。だから1本芯が通っている、ここだけは曲げないという信念をちゃんと持ちたいなとは常に思っています。


──多数派に流れず、逆風を進んでいくモチベーションはどこにありますか?

超学生:もしかしたら、活動へのモチベーションの低下を避けるためにそうしているのかもしれない。僕はほかの歌い手さんに比べて投稿頻度が高いので、自分の好きな曲を選んだり、自分が今やりたいと思う制作をしていないと、活動のモチベーションが保てない気がします。だからカバー曲を選ぶときも、注目を得たいという理由だけで流行曲を選ぶことはないですね。

──流行曲のカバーを投稿しているときは、流行りに便乗しているのではなく、純粋に超学生さんが歌いたいと思っているからということですね。

超学生:そうですね。活動に対する方向性や制作に取り組む姿勢、“僕のやりたいことはこれなんですよ”という主張は、動画内容そのものでしっかり伝わるようにしていきたいなと思います。



──ヴィランシリーズは、その大きな一手になっていると思います。まず第2弾としてリリースされた柊キライさん作詞作曲の「ヒス」は、なかなか出会ったことのない得体の知れない楽曲で、最初聴いたときとても不思議な気持ちになりました。ダークなのにダークになりすぎない絶妙なラインというか。

超学生:もともとキライさんの楽曲の主人公には、世の中や特定の人物を強く恨んでいるような、かなりヘイターな印象を持っていて。だから今回のコラボレーションにあたって、悪の道を楽しむようなヴィランを描いていただきたかったんです。凶悪だけどポップというミスマッチさが、いい狂気を生んでくれるんじゃないかなと思ったんですよね。以前キライさんに書き下ろしていただいた「ヒト」(※2021年4月リリース)の制作以上に細かいところまでヒアリングしていただいて、超学生が当初からイメージしていたエレクトロスウィングの跳ねるリズム、重厚な部分と軽妙な部分がある音作り、悪役の立場からの主観的な目線で書かれた歌詞など、いろんな要素が引っ張り合う曲になりました。

──超学生さんの音への解像度が上がっているからこそできるクリエイティブなのではないでしょうか。

超学生:かなり音作りに凝っていただきましたね。キライさんはこちらの要望を隅々まで叶えようとしてくれて、これはキライさんから信頼していただいているということなのかもしれないと思ったんです。出す要望一つひとつにちゃんと意味があることを肝に銘じて、気を付けながら相談をさせてもらいました。「ヒス」の主人公の生息地は海(の設定)なので、海が持つ“深ければ深いほど上下左右の概念が薄くなっていく”という特性を表現したくて、右から左に動くようなボーカルミックスを施しましたね。落ちサビの手前に一瞬入る深めの打撃音は、キライさんと僕でいろいろと相談しながら時間を掛けて音色を決めました。

──そして第3弾は、煮ル果実さん作詞作曲の「超獣戯画」。超学生さんがオリジナル曲で煮ル果実さんとタッグを組むのは今回が初めてです。

超学生:昔から煮ルさんの曲は大好きなので、前々からずっとご一緒したかったんです。煮ルさんの曲は生々しさやアナログ感が強くて、音色の配置の仕方も独特なんですよね。聴き心地の良さと詩的な日本語表現が両立されている歌詞も煮ルさんならではだと思います。いつの時代もおしゃれな和の雰囲気のアニメや漫画は熱狂的な人気を生むし、僕もそういう世界観に惹かれるタイプなので、ヴィラン要素と和の要素を持ち合わせた煮ル果実さんなら、僕のイメージしているそれを素敵に書いてくださるんじゃないかなと思ったんです。

──超学生さんが今おっしゃったような具体的なイメージをお伝えになって、それを煮ル果実さんが楽曲に落とし込んだと。

超学生:キョンシーを題材にクリエイターの苦悩を綴った「命辛辛」のように、楽曲のテーマに沿って自分の考えを主張するのが得意な方なので、「超獣戯画」でもそれをかっこよく落とし込んでくださっているし、ありがたいことに煮ルさんも僕のカバー音源を聴いてくださっていたので、超学生の声にフィットする楽曲を制作していただいたなと感じています。“どんな歌い方でも、なんでもやります”ともお伝えして、煮ルさんのセンスで作っていただきました。



──“なんでもやる”とは、相変わらずのチャレンジ精神。

超学生:やっぱりボカロPの方々の作る楽曲の面白さのひとつに、VOCALOIDには基本歌えないキーがないことの影響は大きいと思うんです。だからVOCALOIDに曲を書き下ろすような感覚で書いていただけたら、プロジェクトとしての意味もより生まれるのかなと。

──超学生さんがご自分でボーカルミックスをなさるからこそできる提案でもありますね。

超学生:自分次第でなんとでもなるという面はありますね。煮ルさんからも「これでもすごくいいと思うけど、こうしたらもっとボーカルが映えると思うんですがいかがでしょう?」というように、ボーカルが埋もれないためのボーカルミックスのご意見やご要望をいただいたりと、意見交換をたくさんさせていただけました。あと、曲の最後に和楽器の音が聞こえると思うんですけど。

──確かに、笙のような音と、弦の和楽器のような音が聴こえます。

超学生:“こういう音が鳴っていると時代背景が感じられて熱いな”と思ったので、ここの音色はふたりでじっくり相談して、それを煮ルさんに時間を掛けて探していただきました。僕の提案にも真摯に向き合ってくださって、本当にありがたかったです。

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