【ライブレポート】w-inds.、いつまでも挑戦を

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2023年下半期は、最新アルバム『Beyond』を提げた全国ツアー<w-inds. Live Tour 2023”Beyond”>を開催していたw-inds.。今年はこの全国ツアーに加え、マカオで開催された『第24回China Music Awards』において「ASIAN MOST POPULAR GROUP」部門を受賞。これで中華圏でのアワード受賞歴はじつに30冠を記録。彼らはその勢いのまま、国内ツアーの流れで11月には台湾、12月には香港で単独公演を開催。アジア各国において、いまも独自のスタイルで “w-inds.旋風”を巻き起こしている。

◆ライブ写真

そんな彼らが10月29日、神奈川・神奈川県民ホール大ホールで開催した国内ツアーの追加公演の模様をレポートする。 彼らが現在各種ストリーミングサービスにて配信中の新曲「Run」を初披露した東京公演の模様は、12月23日にCS放送TBSチャンネル1にてオンエアされることも大決定。2024年1月からは本ツアーの再追加公演もスタートするので、こちらも期待して待っていてほしい。

結成20年目にして橘 慶太、千葉涼平の2人体制になった w-inds.。その復活劇のなかでも1番衝撃的だったのは、この2人がお互いの担当パートを大胆に変えるというとんでもないチャレンジに果敢に挑み、その結果、慶太と涼平、両者が歌もダンスも無敵レベルでやってのけるダンス&ボーカルユニットとして新生w-inds.を見事再生させたことだった。そうして彼らは結成22周年を迎えた2023年、橘 慶太全曲プロデュースのアルバム作りから離れ、歴代のw-inds.の軸となる楽曲を生み出してきた作家陣と再びタッグを組むという驚きのチャレンジで15thアルバム『Beyond』を作り、時空を超えたw-inds.像を作り出すことに大成功した。

そのアルバムを掲げての本ツアー< w-inds. LIVE TOUR 2023 “Beyond”>である。世界にハイレベルのダンス&ボーカルグループがたくさんいるなか、なぜ彼らがアジア各国でこんなにもアワードを授賞しているのか。他の歌って踊るグループとw-inds.はなにが違うのか。このツアーを見ればそこは一目瞭然。アンコールを含め、トータル20曲。そのなかで踊らない曲はたったの3曲。いつもなら当然のようにある生バンド演奏も懐かしのヒット曲群までも潔く排除して、w-inds.史上もっともパフォーマンスに振り切ってみせたこのツアー。年齢を重ねれば緩くなりがちなところをあえて逆張りでダンスで攻めまくり、そのことによってw-inds.が持つパフォーマンス力(+予定時間を毎回オーバーする2人のトーク力・笑)をマックスに引き出したライブのパワーで、オーディエンスをどこまでも高揚、熱狂させてみせたのだ。


左右に一段高くなった舞台と、中央にスマホ画面を拡大したような縦長のビジョンがあるだけのシンプルなステージセット。ライブは左ステージに涼平、右ステージに慶太が黒い衣装を着て構え、アルバム収録曲「FIND ME」でクールに幕を開けた。当時海外で大ブームになっていたEDMをいち早く取り入れた「New World」。w-inds.のダンスミュージックとパフォーマンスに大革命を起こした今井了介ナンバーをオープニングから連続で畳み掛けいくという仕掛けに、まずは感服。ライブ盛り上げテッパン曲「Let’s get it on」はステージとシンクロしてオーディエンスのペンライトも楽しそうに踊り、「K.O.」はメンバーがソロダンスを踊るときにダンサーチーム4人が手に持ったフラッシュライトで彼らを照らしたり、タワー型の照明を移動させて回し、舞台上のライティングを観客の目の前で作っていく演出で客席を釘付けにしていく。

そして、《新たな始まり/過去の栄光が何?/今が全てだろ?/this is our brand new way》と、このチャレンジングなライブに込めた思いを伝えるように「Bang! Bang!」を高らかに歌いあげたところで、ライブはMCへ。「この会場は2019年以来。ウィキペディアの情報によると」と涼平がいうと「4年もあると成長しちゃうんだよね。俺たち」と慶太が言い、「今回はバッチバチのダンスナンバー持ってきたので、久しぶりに踊るw-inds.を楽しんで」と本ツアーのテーマを伝えたあと、ライブは「Drop Drop」で再開。ここでは久しぶりに慶太の高音フェイク、ファルセットを堪能。新体制になったことで、この曲では2人がバックに下がり、ダンサーチームが前で踊るニューフォーメーションも登場。いつも思うのだが、w-inds.のダンサーを務めるのは並大抵のことではない。こうして1度憶えた曲のフォーメーションが新しくなることもあれば、曲の振り付け自体、どこまでも細かくて難易度が高い。そこに移動も加わる。それをすべて、なんてことないという空気感で気品を保ちながら、流れるような美しさでパフォーマンスしていくのがw-inds.のステージングだ。


「Temporary」からの高難度のダンスが続くブロックでは、曲中にメンバーとダンサーが人数を増減させながら作るフォーメーションやダンスを通して、バンドのように曲の物語を繊細に奏でていく。新生w-inds.の始まりとなった「Beautiful Now」は細かいステップワークで移動し、画面に映る空がモノクロから青空に変わったように、光と影の存在をフォーメーションダンスでも描き出す。アルバムからの「Unforgettable」は、メンバーのみをスポットで抜いたあと、照明がやや明るくなるとダンサーがすでにポジションについていて次々と新しいフォーメーションが浮き彫りになるなど、ステージセットがシンプルな分、初見でも観客はダンス映えする部分にフォーカスしてライブに没入できる。バラード曲「I Swear」では4台のミラーボールが光源となって幻想的な光を作り出す中、2人が左右のステージに分かれ、9曲目にして初めて踊らずに歌唱。

歌い終えた後は「汗の量がすごいので着替えて着ます」と慶太が告げ、1人ずつ交代で衣装チェンジ。着替えを終えた2人が揃ったところで始まったトークタイム。ここでは涼平の見た目が若いという話題から、その秘訣を慶太に聞かれた涼平がアンパンマンのように顔を常にチェンジしていると言い、場内は大爆笑。パフォーマンスしているときとこのトークの緩さも彼らのライブの魅力。さらに、2人からは昔はNHKホールで歌番組を収録したとき、歓声が大きすぎて「Long Road」の曲の最初の出だしが聞きとれず、慌てて踊っていたという懐かしい話が飛び出すと、彼らの提案でそれをこの場で再現することに。2人が袖に分かれてスタンバイすると、客席からは観客一丸となった黄色い悲鳴が上がり、会場に響きまくる。その大歓声を全身で浴び、気持ちよさそうに満足げな笑顔をうかべてステージに出てきた2人。「このテンションでいける?」と煽りながらも「次は歌うナンバーだけど」と慶太がいって観客を笑わせ、このあとは、踊らない曲を2曲続けて披露。


後半戦の始まりとなった「Over The Years」では、ピュアで真っ白な昔のw-inds.を再現するように爽やかでストレートな歌唱を披露。そんな2人が左右に分かれて立ち、スタンドマイクを使って歌った「Blessings」はさきほどとは対照的に、いまの彼らならではのテクニックを使って、新しいw-inds.の扉を開けたパフォーマンスを歌唱だけでアクト。これができるのは、圧倒的な歌唱力に自信を持ちながら踊っているいまのw-inds.だからこそといえる。

そして「Fighting For You」からは、再び“踊るw-inds.”に切り替わる。この曲をパワフルにパフォーマンスしたあと、突然ステージは無音状態に。舞台が真っ白いスモークに包まれ、いきなり「Strip」が始まると、場内に大歓声が響きわたる。赤いソファに座って歌う2人、その間にステージには椅子がセットされ、ソファーから椅子に移動してダンサーとともに全員椅子に座って踊る姿は、MVを忠実に再現しているようで、観客は大興奮。マイクを持っているのでジャケットを脱ぐシーンは片方を開くだけだったが、それでも開いたジャケットからタンクトップがチラッと見えただけで、大人の色気がダダ漏れ。それを見た客席は興奮の坩堝と化し、この日1番のブチ上がりをみせ、曲が終わった後も歓声がなかなか止まなかった。


この後のMCは、コロナ禍でオーディエンスが声が出せない時期があったお陰で、社内でもトーク力がついたと評判だという話から、昔は「トークが面白くないからMCの練習をしろといわれてました」と慶太が言うと「いまも練習はしてないないですけどね」と涼平。「僕らは2人だからなんとか成り立つけど、(三浦)大知君とかはどうやってしゃべってるんだろう。ソロの人は凄いね」と慶太がいい、その流れで「ここで1人で、ひとことで超絶キャーってなる言葉をいって客席を湧かせてみようよ」と提案。まず慶太が「Hi baby! Don’t you know me? I need 「SUPER LOVER」tonight!」と「SUPER LOVER〜I need you tonight〜」の冒頭のセリフをカッコつけていうと、観客は大絶叫。 「うわ〜。ズルいなぁ」と大慌ての涼平は頭を抱えて考えだす。本気で考え込むこと数分。そんな真面目なリーダーに「もうここのトークで20分。スタッフも慌ててるので」と慶太が助け舟を出し、この後からライブはラストスパート。


「Delete Enter」からw-inds.はノンストップで踊りまくる。歌もダンスもさらに研ぎ澄まされたような緊迫した空気感のなかで「Lost & Found」を踊り、華麗でスピーディーなステップワークで「We Don’t Need To Talk Anymore」をアクト。そうして本編ラストはオープニング3曲を飾った今井ナンバーの「New World(Remix)」で締める。もう体力限界ギリギリ、それでも、そこからさらにパワーすべてを出しきって、ハイレベルのパフォーマンスを求める彼らはあまりにも崇高すぎて、すべてがとんでもない域に達しているように思えた。そんな域に達しようが、気高く、品のある美しさ、しなやかさをけして失わないのがw-inds.の唯一無二なところ。こうして、会場に興奮と熱狂を巻き起こしたまま、曲が終わると彼らは颯爽とステージを後にした。そんな去り際までクールに、カッコよく締めくくってみせた本編。



アンコールに応えて、このあとラフな衣装に着替えて再びステージに登場した2人。ここではダンスも人気の「Get Down」をあえて踊らずにパフォーマンス。慶太が「自分たちのいまの想いを込めました」という言葉を添えてNHKホールで初披露した「Run」をダンサーとともにパフォーマンスしたあとは、涼平がいきなり「年明け、2023年1月から再追加公演が決定しました」といって、公演スケジュールを発表。「新曲バンバン作ってます」といっていた慶太は「その頃には新しい曲も1〜2曲入れようかな!?」と予告。そうして「来年、ツアーでみなさんとお会いできることを楽しみにしてます」と伝え、最後は「STEREO」を届け、会場じゅうが祝祭感と多幸感に包まれたところでこの日のライブは幕を閉じた。

この慶太の予告は本当だった。この公演後に行なった台湾公演で、新曲「FAKE IT」をすでにサプライズ披露したw-inds.。2024年、新曲パフォーマンスを加えた再追加公演で、まだまだ挑戦を続けていくw-inds.は、この先にあるw-inds.25周年のメモリアルイヤーに向け、いまある自分たちをどこまでも超えていく。

取材・文◎東條祥恵

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