【速レポ】＜響都超特急2023＞G-FREAK FACTORY、「ローカルバンドの最高傑作。筋を通しに来たぜ」

茂木洋晃（Vo）は本気でそれを言っている──と誰もが信じていると思うのだが、G-FREAK FACTORYは自らビジュアル系と謳うバンドだ。だからこんな言い方をしたら気を悪くするかもしれないが、茂木曰く“日本のアフリカ”群馬からやって来たG-FREAK FACTORYはオーディエンスに拳を振らせ、シンガロングの声を上げさせ、曲によってはダイブもさせるというフェスらしい盛り上がりを作りながらも、フェスの後半戦、いや、終盤にふさわしい貫禄とともに、いぶし銀の魅力を、＜響都超特急2023＞金閣ステージのまだ2番手にもかかわらず見せつけたのだった。

◆ライブ写真

この日、サポートのキーボード奏者も含む5人が1曲目に選んだのは、図らずもトピカルなものになってしまった「愛は一つ」というメッセージを語りかけるように歌う「Too oLD To KNoW」。その演奏中、「さあ、帰って来たぜ！　京都！」と茂木が何度も言ったのは、茂木が新型コロナウイルスに感染してしまったため、昨年このステージに立てなかったからだ。


「2022年のリベンジ！」と叫んだ茂木に応え、オーディエンスが「Too oLD To KNoW」のパンチライン中のパンチラインである“でも二度と無駄な血は流すな”を一際大きな声でシンガロングする。

同期で鳴らした三味線の音色とともに繋げたのは、原田季征（G, Cho）が奏でる幻惑的なリフがオーディエントを酔わせつつ、吉橋"yossy"伸之（B, Cho）と岩本"leo"怜王（Dr）が奏でるタイトな8ビートがオーディエンスの気持ちを突き動かす「REAL SIGN」。途中に差しこむレゲエパートが、オーディエンスを緩やかに上下に揺らす。




歌詞をちょっと変え、この日はコロナ禍に負けなかったライブハウスの賛歌として演奏した「らしくあれと」の最後、茂木は「超特急ありがとう！」と自分達が帰ってこられる場所を守り続けてくれたオーディエンスに感謝することも忘れない。

「ビジュアル枠でここにブッキングしてもらいました」とこれから真面目なことを語る照れ臭さなのか、次に登場するMUCCに絡めたジョークを挟んでから、茂木は昨年自分達の代打を務めた「長崎の親戚みたいなバンド」SHANKと、コロナ禍の最中もフェスを続けた「勝手に横にいるバンドだと思っている大切な仲間」ROTTENGRAFFTYに謝辞と賛辞を贈る。


そして、「ROTTENGRAFFTYが毎年大切にしているこの＜響都超特急＞。あの時やめてしまったら、恐らく今日はなかったでしょう。田舎で、ローカルでフェスをやるってことがどれだけ難しくて、どれだけ大変か、今日は少しだけ見てってくれ。誰も言わないから、そこを最後まで見ていってほしい。ローカルに。SHANKに」とSHANKの「Set the fire」のワンフレーズを歌ってから、自分達の「Fire」に繋げたのだから、泣かせるではないか。筆者は思わず、こっそりと男泣き。


その「Fire」はバラードと言うには、あまりにも熱情的なスローナンバー。テンポを落とした演奏が孕む凄みが聴く者の胸を裂く。そこに「歌える奴、一緒に歌おう」と茂木がオーディエンスに語りかけ、バンドが繋げたのは「ダディ・ダーリン」。ノスタルジックでフォーキーな魅力もある、いわゆるバラード調の曲だが、持ち前の歌心をじっくりとオーディエンスに味わわせながら、茂木は歌詞を変え、「Too oLD To KNoW」同様、図らずもトピカルなものになってしまったこの曲のメッセージをより鋭いものにしてみせる。

「初めて見る奴、遅れてごめん。俺達がG-FREAK FACTORYだ。これからよろしく。超特急、最後まで楽しんでいってください」（茂木）


そんな挨拶もいかしていたG-FREAK FACTORYが最後に演奏したのは、サビが8ビートのロックンロールになるラップレゲエナンバーの「Sunny Island Story」。ステージに飛び入りしてきたROTTENGRAFFTYのNAOKI（Vo）と茂木がエールの交歓を繰り広げ、オーディエンスを沸かせた瞬間、G-FREAK FACTORYのリベンジは見事成就したのだった。

そして、最後の最後、思いの丈をスポークンワードに託した茂木の声が金閣ステージに響き渡る。

「ローカルバンドの最高傑作。筋を通しに来たぜ。G-FREAK FACTORYだ。全員、オーイエー。セイ！　オーイエー！」


文◎山口智男
写真◎かわどう