【コラム】音楽のチカラ、楽器を愛する人達のちょっとイイ話

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【BARKS編集部コラム】音楽のチカラ、楽器を愛する人達のちょっとイイ話


BARKSでの人気コーナーのひとつ【俺の楽器・私の愛機】企画をスタートさせたのは2021年4月1日。コロナ真っ只中から2年9ヵ月の年月が経ち、今では投稿数も1500を超えた。

【俺の楽器・私の愛機】はその名の通り、皆さんの楽器の写真とコメントを投稿していただき、そのこだわりや愛情、出会いのエピソードや入手時の思い出など、失敗談も含め、楽器にまつわる思いを紡ぐコーナーだ。自分自身、以前GiGSというプレイ雑誌(バンド系楽器/演奏を専門とした月刊誌)に従事していたときには、楽器業界が牽引するトレンドには敏感である必要があったし、自分の興味やアンテナもニューモデルやハイエンド・モデル、各ブランドの代表機種となるフラッグシップに寄っていたのだけれど、【俺の楽器・私の愛機】での皆さんからの投稿に触れ、そのエピソードを知るに連れて、自分の価値観や楽器への理解が少しずつ変化していくのを感じていた。

学んだことのひとつに、ハイエンド楽器が素晴らしいのは当然だけど、ひとりひとりに対してかけがえのない愛機というのは、決してハイエンドや高級モデルに限ったものではないという当たり前の事実だ。頭では分かっていたけどリアリティがなかった。そこに注がれる愛情とこだわりは、高価なものだろうと安価なものであろうと何も変わらない。むしろ初めてのギターや憧れの気持ちを焦がしたモデルなど、安価なモデルにこそかけがえのない思い出が色濃く紐付いていたりもする。

機能や仕様など、音の良さを推し測るスペックを重要視する私の偏向はいつしか薄れ、楽器自体への評価よりも、そこに至った経緯やそこに期待した思いや満足度など、楽器に寄せるオーナーの思いこそが、音楽を奏でる相棒としての本質を引き出す最大のスパイスであると思い至った。なぜそれを使い続けているのか、なぜそれにこだわるのか、そしてなぜそれが一番にして至福なのか。それはオーナーであるプレイヤーの志向のみならず、楽器選びには、価値観や人生観と言った人間性そのものが多分に関わっているからに他ならない。

そんななか、「投稿ではありませんが、お礼申し上げます」と書かれたひとつの投稿が寄せられた。【俺の楽器・私の愛機】に投稿されたギターの1本が盗難にあったものの、買い取りに出された楽器店の機転により、その場で警察を要請、無事盗難ギターがオーナーの元へ帰ることとなったという知らせの内容だった。

もちろんここにはたくさんの奇跡と、機智に富んだ楽器店の采配があったこその顛末ではあるのだけれど、「オーナーのこだわりが随所に注がれたオリジナリティに満ちたギターだったこと」「買い取りの依頼を受けた楽器店がその場でそのギターを検索し、【俺の楽器・私の愛機】にたどり着いてくれたこと」「こだわりの詰まった愛機を売りに出すのか?と楽器店が不審に思ったこと」「投稿記事には、オーナーにしか語れないエピソードが寄せられていたこと」「そのエピソードをネタに会話を重ね、本当の所有者ではないことが確信できたこと」「うまく時間を引き伸ばすことができ、警察の到着を得られたこと」…など、たくさんの神風が吹いたわけだけど、全ては長年にわたって愛機に注がれてきたたくさんのエネルギーが、オーナーの元へ帰ることに収束させたことは疑う余地もない。素晴らしき楽器店の計らいと称えるべき功績も、そのエネルギーが引き寄せてくれたものなのだろう。

投稿してくれたオーナーは、顛末の詳細を伝えてくれたと同時に「今回このような形でBARKS様のサイトが私のギターの個体特定に繋がりました、ありがとうございました。また、◯◯◯◯を購入した楽器店◯◯◯◯さんも心配して頂き、15年前に購入したギターでも販売履歴が残っており販売履歴の証明や数々のお力を頂き音楽、楽器での繋がりを感じ、今一度、改めて音楽とは最高のものであると心より実感しております」という一文を寄せてくれた。

まさにこれ。音楽のチカラ。楽器のチカラ。今回の一幕を知らせてくれたこのギタリストは、サポートやスタジオで活躍するプロ・ミュージシャンで、音楽とともにする生活をしているという。こういう人が奏でる音色には、きっと人の心を動かす力がある。盗難という愚行自体がなくなることを願うばかりではあるけれど、音楽のチカラは、色んなところで奇跡を起こしてくれるのは皆が知っているところ。この話も、そんな奇跡を切り取ったひとつのエピソードだ。

文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)


★皆さんの楽器を紹介させてください

「俺の楽器・私の愛機」コーナーでは、皆さんご自慢の楽器を募集しています。BARKS楽器人編集部までガンガンお寄せください。編集部のコメントとともにご紹介させていただきますので、以下の要素をお待ちしております。

(1)投稿タイトル
 (例)必死にバイトしてやっと買った憧れのジャガー
 (例)絵を書いたら世界一かわいくなったカリンバ
(2)楽器名(ブランド・モデル名)
 (例)トラヴィス・ビーン TB-1000
 (例)自作タンバリン 手作り3号
(3)お名前 所在 年齢
 (例)練習嫌いさん 静岡県 21歳
 (例)山田太郎さん 北区赤羽市 X歳
(4)説明・自慢トーク
 ※文章量問いません。エピソード/こだわり/自慢ポイントなど、何でも構いません。パッションあふれる投稿をお待ちしております。
(5)写真
 ※最大5枚まで

●応募フォーム:https://forms.gle/KaYtg18TbwtqysmR7

「楽器人の投稿がmusic UP'sに掲載されます」

全国約1,000カ所の音楽関連スポットで、毎月20日に配布されるフリーマガジン「music UP's」にて、楽器人の特集を掲載、【俺の楽器・私の愛機】で紹介された投稿の中からあなたの愛機をご紹介させていただきます。

※毎月の掲載数は2~4件ほどの予定です。選出はBARKS編集部で行ないます。
※掲載の選出対象は【俺の楽器・私の愛機】コーナーにて2022年5月30日以降に掲載された投稿が対象となります。

引き続き【俺の楽器・私の愛機】をお楽しみください。今後ともBARKS楽器人をよろしくお願いいたします。

◆【俺の楽器・私の愛機】まとめページ
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