【インタビュー】Ken Yokoyama、8thアルバム『Indian Burn』完成「“雑巾絞り”は大変だけど、目いっぱいやらなきゃいけない」

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Ken Yokoyamaが1月31日、8thフルアルバム『Indian Burn』をリリースする。前オリジナルアルバム『4Wheels 9Lives』から2年8ヵ月ぶりとなる『Indian Burn』には、全12曲を収録。「Better Left Unsaid」「My One Wish」「These Magic Words」といった2023年のシングル三作品は、アルバムアーティストを自認するKen Yokoyamaにとってイレギュラーなリリース攻勢であり、加えて日比谷野音ワンマンやホールツアー展開といった初の試みも含め、ある意味では異例尽くし。それらトライの全ては、制作を同時進行していたアルバムへの布石であり、その最終地点が『Indian Burn』となるものだ。

◆Ken Yokoyama 画像 / 動画

“人の腕を雑巾のように絞ること”を意味する『Indian Burn』は、そのアルバムタイトルが示すとおり、絞り出すような制作作業だったという。結果、生み出された前述のシングル表題曲3曲と新曲9曲は、疾走するメロディックパンクチューンやマイナーキーのミッドテンポチューン、そしてインストなど曲調はさまざま。サウンドスタイルもパンクはもとより、レゲエやスカ、ラテンやオールドロックまで多彩ながら、その核を貫くのは横山健 (G&Vo)、南英紀 (G)、Jun Gray (B)、松本”EKKUN”英二 (Dr)といった4人が放出する膨大なエネルギーだ。変わらぬ衝動と歴戦をくぐり抜けてきたしなやかさも強さもある。

「改めて、アルバムアーティストだったんだなって思いました。そこには熱量も意地もある」とは、このインタビューで語られた横山健の言葉だ。リアル、等身大といった形容詞すら陳腐に色褪せてしまうほどの熱量と意地が封じ込められた最新アルバム『Indian Burn』について、横山健とJun Grayに語ってもらった1万字越えのロングインタビューをお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

■新鮮なアルバムにしたかった
■なんとなく作ったアルバムにはしたくなかった


──8枚目のアルバム『Indian Burn』が完成しました。レコーディング自体は、2023年初頭からスタートさせていたとのことですが、その過程でHi-STANDARDの恒岡(章 [Dr] / 2023年2月14日死去)さんが他界して、ずいぶん気持ちも揺れ動いたと思うんです。Hi-STANDARDが出演した<SATANIC CARNIVAL 2023>のステージを終えるまで、横山さんは「ずっと気を張っていた」と前回インタビューで話してくれました。

横山 :はい。

──アルバムに向けての気持ちは、制作前とはいろいろ変わっていきましたか?

横山:ツネちゃんのことは、やっぱり制作に入り込んでいったと思うんです。まずシングルシリーズ(「Better Left Unsaid」「My One Wish」「These Magic Words」)自体は、2023年2月にレコーディングをして、そのリードトラック3曲が『Indian Burn』にも入っているわけです。で、あと9曲のレコーディングを2023年6月にしたんですよ。つまりシングルシリーズのレコーディングが終わって、次のレコーディングまでに約4ヵ月間ありますよね。その間に曲を書き足していったりとか、その期間にまとめてアルバム用の歌詞を書いていったんです。もうちょっと前にできていた歌詞もあったけど、当然ツネちゃんのことは、作品に入り込んでいると思います。どういう形か、自分ではわからないところもあるけど。

Jun Gray:まあ、わからないものもあれば、歌詞を読めばわかるものもあるし。でも2月にシングルのレコーディングをしていたとき、ほぼほぼアルバム用の原曲自体は受け取っていたので。2月のレコーディング後に作ったのは、せいぜい1〜2曲かな。「A Little Bit Of Your Love」が最後だったと思う。


▲横山健 (G, Vo)

横山:でも、3月から5月の間にガーッと組み上げていった曲が、意外と多いよ。

Jun Gray:ああ、そうか。それで最後に持ってきた「A Little Bit Of Your Love」のとき、健が他にももう1曲作ってきたんだよね。「この2曲のうち、どっちかをアルバムに入れたい」と言って。「2ビートのこっちもいいけど、次回作に取っておいてもいいんじゃない?」ってことで、ミドルテンポの「A Little Bit Of Your Love」を最後に組み立てていった記憶がある。

横山:レコーディングのギリギリのときにね。曲数に関しても、僕は“アルバムに12曲も入れなくていいんじゃないかな”と思ってたんですよ。シングルシリーズのインタビューでも言ったように、僕はアルバムに対する価値観を見失った時期があったんで。“無理せず10曲入りだっていいじゃん。多く入れたらもったいないよ”って。それでJunちゃんとすごい議論した覚えがある。

Jun Gray:そう。健は「10曲あればアルバムは成立する」みたいなこと言ってたけど、今までのアルバムに入れてた曲数ってものもあるじゃないですか、13曲ぐらい入れていたから。だから、「10曲だと、急に少なくなった、ってリスナーは思うんじゃないか」と。でも、健が言うこともわかる。他のアーティストの作品を見ると、10曲とか11曲で成立しているし。でもその時点で11曲しかなかったから、「じゃあ、11曲でいいよ」と。そうしたら健は、「もう1曲作る」って。

横山:11曲だと、気持ち悪いじゃん(笑)。何曲入りにするかってことでも、それぞれ微妙にアルバムに対しての想いってあるんですよ。11曲よりも12曲のほうがキリがいいとか。それで速い曲とゆっくりした曲を作って、JunちゃんとEKKUN (松本”EKKUN”英二 [Dr])と3人で聴いたら、「速い曲は次回に取っておけ」とJunちゃんに言われ(笑)。

Jun Gray:ははは。スマホで1回しか聴いてないけどね。その速い曲も、いわゆる“健メロ”で、「これはいい。これを入れるのはもったいない、取っておいたほうがいい」って(笑)。で、もう1曲の「A Little Bit Of Your Love」を最後に完成させたという。

横山:とにかく締切ギリギリまでずっとアルバムに向かっていた、という話です。


▲Jun Gray (B)

──それでアルバムタイトルを『Indian Burn』(=雑巾絞り)にしたってことを、2023年11月28日のラジオ番組『オールナイトニッポン』で話していましたね。

横山:はい。まだ出るかって、ずっと絞っていたんですよね。アルバムをこの形にしたかったんです。

──いろんなことがある中で入り込んで、最後の最後まで絞りきって作ったわけですよね。アルバムを聴いて、バンド=Ken Yokoyamaにとって、血となり肉となっている音楽や、自分の想いや考えなど、全てを凝縮させたように感じました。原曲を作り始めた約2年前とは、アルバムに向かう姿勢にも変化があったように感じるんですが。

横山:一聴したらサラッと聴けるけど、そこに巧みなトリックであるとか、意匠がちゃんと…。Junちゃん、意匠って分かる? 意見の意に師匠の匠って書くんだけど、作る側の気持ちっていうかね。

──いやあの、Junさんは年上ですから(笑)。

横山:全然言葉を知らないんですよ、Junちゃんは(笑)。今みたいな言葉を使うと「お前は頭いいって思われたいんだろ?」(←Jun Grayの口調を真似しながら)とか言ってくるし。「そんなことないよ。みんな知ってるよ。Junちゃんが言葉を知らなさすぎだよ」って、いつもケンカしてるから(笑)。

──タイにばかり行ってるから、日本語忘れちゃうんだよと(笑)。

横山:Junちゃんには通じない言葉かもしれないけど、意匠のこもったものにしたいって。今までの自分たちにありそうでなかった、使ったことなかった小技もふんだんに使って、自分たちにとっても新鮮なアルバムにしたかったですね。なんとなく作ったアルバムにはしたくなかった。そういった意味では、やはりバンドとして地力があるなと思いましたよ。音楽を仕上げていく作業、作り上げていく作業に対して。

──勢いで突っ走って終わりではないですからね。最後に仕上げた曲「A Little Bit Of Your Love」のサウンドアレンジも、Cメロ部分でちょっと転調させているじゃないですか。よく思いついたな、と驚きましたね。

横山:あれは本当にヒネりましたね。“Aメロはこうしたい、サビはこういうのがあるけど、それをどうつなげよう”と。それを楽器4人の微妙なサジ加減で、1番も2番も違った形で巧くつなげていて。サラッと聴けるけど、すごくユニークなアレンジの楽曲。僕の中のビートルズが「Yes!」って言ってくれた感じの曲なんですよ(笑)。


▲8thフルアルバム『Indian Burn』

──パンク以外の多ジャンルの音楽フレーバーが、いい塩梅で入り込んでいる。そういうアレンジが散りばめられたアルバムですからね。

横山:Ken Yokoyamaはパンクバンドだと思っているし、パンクロックを鳴らしているつもりではあるけど、当然、メンバーそれぞれ、いろんな音楽を聴いているわけです。“パンクバンドをやってるからこういったサウンドでなければいけない”とか、“シンプルな曲でなければいけない”とか、あるいは“怒りが入っていなければいけない”とか、そういうことを何もお手本にしてないですから。自分らのオリジナルな楽曲やサウンドになっていると思います。

Jun Gray:型にハマってしまったら、それこそパンクではないからね。

──枠の外し方も、すごく熟成されていると感じました。トライ&エラーを繰り返すような制作過程だったんですか?

横山:多かったですね、トライ&エラーは。ボツになった曲も多かったし、いろんなアレンジを試した気がします。アレンジでもボツになったのも多いし、一晩経って、やっぱりやめようって判断したこともあったし。

Jun Gray:シングルのリードトラックを作っていた時期も含めると、コロナ禍になってからずいぶんと長い時間、作曲とアレンジをやっていた気がする。前のアルバム『4Wheels 9Lives』をリリースした直後から始まっていたんじゃない?

横山:そうだね。『4Wheels 9Lives』は東名阪でのみライブができたけど、レコ発ツアーがちゃんとできなかったからね、コロナ禍の影響で。曲を作って、自分を奮い立たせることぐらいしかできなかったんですよ。始めてみたら、それこそ雑巾絞りのようで、なかなかしんどかったですけど(笑)。

Jun Gray:でも、そのぶん充実したよ。シングル3枚のリードトラックをアルバムにブチ込むってことも今までやったことなかったし。リードトラックが3曲もあるって、俺が今までやってきたどのバンドでも経験がないから。1曲だけリードトラックがあって、あとは悪い言い方すると、埋め合わせでアルバムの曲を作ってという。それとは違うから。シングル3枚のリードが入っているってことで、明らかにアルバムの完成度も高い。

横山:アルバムの意味を見失ったわりに、すごい熱量でアルバムを作ったんですよね。改めて、アルバムアーティストだったんだなって思いました。そこには熱量も意地もある。音楽を取り巻く今の状況に対する意地があるし、自分自身のミュージシャンとしての意地もある。いろんなものがあって、すごい熱量の中で作っていったんですよ。ただ、1年でシングル3枚リリースってのは、ちょっと多かったかもね(笑)。昨日のバンド練習でもそんな話をしたぐらいで。

──いわゆる昔のメジャー契約アーティストっぽいリリースサイクルでしたからね。

横山:そうそう。これは昔のレコード会社体制を否定するわけじゃないんですけど、ディレクターとかがいて、バンドの動きを考えるわけじゃないですか。シングルを出して、その後こうしようとか。そういうものと、自分らで発想して自分らでやるものって、絶対に熱量が違うと思うんです。人の発想に沿ってやることって、形になるまで、どこか芯を食わないんですよ。でも、今回は“こうするぞ”って僕が考えて進めていったので。1枚のアルバムにシングル3枚のリードトラックが入っているのは、まるで昔のメジャーバンドのようですけど、熱量が絶対に違うと思います。でもまあ、自分で自分の首を締めた時期にもなりました(笑)。発想した本人に全部の責任が降りかかってくるから。

◆インタビュー【2】へ
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