【インタビュー 後編】KAMIJO、新曲「美しい日々の欠片」を語る「だけど、愛だけが残ってしまった…」

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KAMIJOが1月31日、ニューシングル「美しい日々の欠片」と、ライヴBlu-ray & DVD『LOUIS XVII』を2作同時リリースした。新曲「美しい日々の欠片」は、愛する人を失う絶望を歌った冬のバラードだ。 切なく囁くような歌い出しは叙情的であり、感情の起伏をなぞる転調の嵐をはじめとしたアレンジの構築美はKAMIJO作品ならではの仕上がり。ソロデビュー10周年を経て、自身のルーツと理想を具現化した渾身の一作の誕生となる。

◆KAMIJO 画像 / 動画

一方のライヴBlu-ray & DVD『LOUIS XVII』は、ソロ10周年記念公演となった2023年8月28日のZepp Shinjukuワンマン<KAMIJO Solo 10th Anniversary Special Live「LOUIS XVII」>の模様を余すことなく収録したもの。豪華声優陣の演技と贅沢なバンドメンバーの演奏、そしてKAMIJOの歌で繋がれたルイ17世のフルストーリーは10年の集大成といえるベストライヴであり、その細部まで没入できる仕上がりだ。

先ごろ公開したインタビュー前編では、ライヴ映像作品『LOUIS XVII』をもとにソロ10周年を総括。ルイ17世に続く新主人公の登場と、新章となる完全オリジナルストーリーの幕開けを語ってもらった。そして、この後編では豪華バンドメンバーとともにレコーディングが実施されたシングル「美しい日々の欠片」制作秘話や、KAMIJO自身の未来を明かしてもらう。


   ◆   ◆   ◆

■次の主人公の名前はアンセム
■国歌になるような曲を書いていきたい


──『LOUIS XVII』から続く流れの中で気になるのが、1月31日にリリースされるシングル「美しい日々の欠片」ですよ。バラードと言われる楽曲になると思いますが、どんな位置付けで書かれたものなのでしょう? 当然、ルイ17世の物語の次に届けるものだという前提はあったと思いますが。

KAMIJO:そうですね。今まで僕の楽曲って、どんなに苦しいものも最後に光を残していたんですが、一度絶望に浸りたいなと。切ない楽曲だけは誰にも負けないぐらいのつもりでやってきましたが、この10周年を経て次に何をやるかとなったときに、まず楽曲面で言うと、バラードを歌いたいと。そして大好きな冬の空気感を伝えるような切ないバラードにしようと。それこそデビューシングルのようなつもりですよ。そんなテーマをもとに思い描いていたんですが、昨年はいろんな悲しいこともいっぱいありましたし、そういった思いも重なってこの楽曲は生まれたんです。

──ストーリーとしては、これから始まる次の物語のどこかに位置づけられる楽曲のような気がしています。

KAMIJO:東名阪ツアー<KAMIJO TOUR「NEW VAMPIRE IS BORN」2024>からそのストーリーを出していくんですが、人間とヴァンパイアが当たり前に共存する世界の中で起こった悲劇なんです。次の主人公の名前はアンセムというんですが、国歌になるような曲を書いていきたいなと思っているんですね。

──それはまた楽しみですね。「美しい日々の欠片」については、ピアノもストリングスも、曲作りの段階から同時に頭の中で鳴っていたんでしょうね。

KAMIJO:おっしゃる通りです。主旋律と同時に、セカンド(ヴァイオリン)とヴィオラが聞こえてきて、そこにファーストを足したりしていった感じですね。今回のストリングスは、すべての楽器がサンプリングではない生演奏。以前のようにMIDIデータを写譜屋さんに渡して譜面にするのではなく、自分で譜面を書き上げるところまでやったんです。もちろん、プレーヤーとのやり取りも含めての話です。そう気を遣いながら進めたレコーディングでしたが、ちょっとチャレンジだったとはいえ、なかなか楽しかったですね。


──それは時間もかかりますよね。

KAMIJO:そうですね。曲作りに関して言えば、メロディーのためにキーをガンガン変えたんですよ。たとえば、Bメロの後半でいきなり短3度下がるんですが、それはあのメロディーを歌いたかったからで。そのために、その前で短3度下のハモリを入れて、自然に聞かせたりもしている。それから、サビに入ったときにも半音下がるんですよ。その理由も、サビに対して半音下がらないと、泣きじゃくるような感情の表現になってしまったからなんです。半音下がることで、“一歩引いたけれども、すごく苦しい”という表現ができたんですね。そこら辺は、してやったりな感じで。さらに言うと、半音下がっているので、次の展開の2番に行くまでに何とか元のキーに戻りたいわけですよ。ピアノソロで戻るのは簡単なんですけど、そんなことは美しくない(笑)。で、実はサビが終わった後に転調しているんですね。そこは譜面上も記号を書いていないんです。そして、その後のギターソロでさらに半音下がる。演奏するミュージシャンにさえもそれを伝えず…でも、転調してるんですよ。

──絶妙に転調を連続させながら戻っていくわけですね。

KAMIJO:そう。6回ぐらい転調してるんですけど、その過程がミュージシャンだましといいますか。メカニクスを明かすと、メロディーも元のキーに準じた音階しか使わずに、でも実は転調しているという。その繰り返し繰り返しで、トラップ&トラップみたいな。

──その工夫は音楽理論的に興味深いのは当然あるとして、単に技術的な話ではなく、どういう感情を聴き手に抱かせるのか、そのときの主人公はどんな心情なのか、いかなる視点なのか、そういったところにまで関係してくるものですよね。

KAMIJO:そう、それが大事なんですよ。1番では、相手の女性はまだ生きているんです。だから、最後まで笑顔を守らなきゃいけない。つまり、自分は強くなきゃいけない。その後、途中にギターソロを挟んで、相手が亡くなるというストーリー。だから、その後の最後の展開はラストサビに繋がるんですが、そこにはブレスを入れなかったんです。歌詞で言うところの“その笑顔が蘇るよ ありがとう 出会ってくれて” “流れてゆく”ってところですね。それが僕の中での最大のポイントで。ここでブレスを入れると、“流れてゆく”が一歩引いちゃうんです。今度は一歩引きたくないんですよ。ここで思いっきり絶望に浸りたかったんです。今まで歌については、そのつどニュアンスを優先することのほうが多かったかもしれませんが、今回は歌もかなり細かく構築しましたね。


──すごく精緻な作り方をしてますよね。いい意味で主人公のどこか冷静な視点が貫かれているんですよね。それゆえに想像する余地がある。なぜそうなったのか、ここには書かれていない。どう考えてもこれは悲しい話ですが、聴き手の感情を踏みとどまらせるような作りでもある気がします。

KAMIJO:実は、最初は感情出しまくりの絶望の歌だったんです。でも、そのときに書いていた歌詞は、あまりにもこの恋人に対する愛が足りなかったんですよ。愛があったら、最後のその瞬間まで寄り添って、楽しい日々を、笑顔を守ってあげる。それに対して相手も未来を語らない。自分を傷つけないようにしてくれてる。だけど、最終的に愛だけが残ってしまった…。相手のことを思って歌わないと駄目だなと思って、すべて書き直したんです。

──言わば、独りよがりの歌になっていたんですね。

KAMIJO:そうなんですよ。もしかしたら、そのほうが泣ける人はいるかもしれないですけど、リアリティを追究すると、やはりこの流れだったんです。最終的に笑顔を守ったうえで亡くなっているにも関わらず、やっぱり絶望は感じるんですよ。でも、後悔は残らないと思うんですよね。

──ええ。気持ちとしては、ちょっとポジティヴなものも残るんですよね。先ほどのハーモニーという視点で言えば、これはKAMIJOさんの特徴的なところでもあると思いますが、歌とベースをどう共存させるか、並立させるかは、すごく意識していると思うんですね。たとえば、最初のBメロと最後の2回のサビのベースは、すごく歌を押し出してくるフレーズが考えられている。

KAMIJO:ありがとうございます。最近は特にそうですね。最後のサビに関しては、IKUOさんのアイディアです。最初のBメロに関しては、基本リズム的なところは、僕の中では完全にポール・モーリアを狙ってたんです。そういったところにIKUOさんのロック要素を入れていただいて、すごくカッコよくなりましたね。あそこまで休符が入ってるのって、なかなか今までやってこなかったので。

──他のベースパートとの起伏もよく練られている印象ですが、レコーディングの時点では歌詞は書き上げていないですよね?

KAMIJO:いや、できてました。今回は歌詞ありで。

──なるほど。だとすると、フレージングにもすごく合点がいきますね。

KAMIJO:はい。一応、OKテイクの歌も先に録っちゃってたんですよ。ですけど、バンドの音を録り終えた後に、演奏がカッコよくなりすぎたんで、歌も録り直しました(笑)。

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