【インタビュー】MOCKEN、1stアルバムにバンドマンの真実「歌ってる自分に嘘があったら、僕はバンドを続けられない」

ポスト
no_ad_aritcle

埼玉県越谷発、4ピースバンドのMOCKENが2月7日、1stフルアルバム『STAND BY ME』をリリースした。永野元大(Vo, G)を中心に2019年12月よりスタートした活動は、翌2020年6月に杉山涼(B)と宇佐美大二(Dr)の正式加入によって、バンドとして本格始動。2022年8月、横山竜之介(G)が合流したことにより現体制となる。

◆MOCKEN (モッケン) 動画 / 画像

サウンドはタイトでソリッド。ギターロックを基盤としながら、エモやオルタナ要素をブレンドしたという楽曲はアンサンブルの繊細さも魅力的だ。しかしそれ以上に、圧倒的な音圧と爆発力が裏打ちしているのが、ライブバンドとしての意識の高さ。そのスタイルがサウンドそのものの勢いを加速させていると言っていい。メンバー個々のポテンシャルは、開放弦を巧みに絡めた「STAND BY ME」のギターリフ、疾走感とスウィング感を両立させた「HOLIDAY」のベースフレーズ、圧巻のツービートを響かせる「またね」の強靱なドラム、主旋律を喰らう「LAMP」の多種多様なギターアレンジ…これらを一聴しただけでもセンスの高さがうかがい知れるというもの。また、独自性の高い歌詞はフィクションとノンフィクションの間を行き交って刺激的だ。若さに同居する危うさ、混じりけのない純粋さ、はたまたユニークな妄想にはギリギリアウトなものも散見されるが、永野元大の等身大が描かれて嘘がない。

BARKS初登場インタビューでは、MOCKENの成り立ち、個々の音楽的バックボーン、バンドとしてのスタイル&ヴィジョン、そして1stフルアルバム『STAND BY ME』制作過程と今後についてじっくりと話を訊いた。


   ◆   ◆   ◆

■最初はとにかく3人の音がデカすぎて
■自分の音がまったく聴こえなかった(笑)


──いよいよ1stフルアルバム『STAND BY ME』が全国流通されましたが、心境としてはいかがですか?

杉山:僕たちの名刺代わりになるわけじゃないですか。ここが第一歩。バンドの第二章が始まるし、全国的にMOCKENというバンド名を知ってもらえる大きなきっかけになるのかなと。

横山:まず、全国の店舗にCDを置いてもらえるのが嬉しいです。最近はCDで音楽を聴く機会も減っていると思いますけど、自分もお客さんとして“どういう特典が付くのか?”とか楽しみにしていたので。それが今回、作品を提供する側になったという実感はまだあまりないですけど、とにかくワクワクしていますね。

宇佐美:もちろん嬉しいは嬉しいんですけど、僕が現実主義だからなのか…まだ大きな結果が出たわけじゃないという気持ちがあって。

──あくまでスタートラインですよね。

宇佐美:だから、バンドとしてやることは今までと変わらないのかなって。ただ、ずっと聴いてくれている人からすると、“こんなこともできるんだ!?”って思ってもらえる新たな一面になったかもしれないし、初めて僕らのことを知ってくれた人には“どんなライブをするんだろう?”って気にしてもらえるきっかけになるんじゃないかと。アルバムの全国流通がバンドの先を見据えた上でのスタートラインになったらいいなと感じてます。

永野:初めてのフルアルバムに向けて、音楽的に今までやってこなかったことにもチャレンジしようと考えて、いっぱい曲を書いたんです。それがどう評価されるのか、楽しみですね。


▲永野元大(Vo, G)

──BARKSインタビュー初登場ということもありまして、バンドの流れを振り返っていただきたいと思います。そもそもは弾き語りで活動していた永野さんに、当時ライブハウスのブッキングをしてた宇佐美さんが「バンド形式でやろう」と声をかけたことがきっかけなんですよね?

永野:そうですね。弾き語りの前に、僕が高校を卒業して組んでたバンドを宇佐美さんに観てもらったことがあったんですけど。そのときの曲を宇佐美さんが覚えていて、「僕がドラムを叩くから、バンドセットでやらないか?」って。実際にバンドで合わせるときに、サポートベースをお願いしたのが杉山さんだったりもして。たしか、2019年10月ですね。

──宇佐美さんが永野さんに声をかけたのは、どういう理由だったんですか?

宇佐美:タイミング的にはたまたまだったんですけど、以前から伸びそうだなと思っていたんですよ。

──宇佐美さんと杉山さんがリズム隊としてサポートするようになって、バンドに正式加入したのが2020年6月。

宇佐美:僕自身、正式にバンドをやるのは、それ以前に組んでたバンドで最後だと思ってたんです。だけど、「正式メンバーで」と声をかけてもらって「これを最後にするか。そして今度こそは」って。

杉山:サポートとして数ヶ月間バンドをやっていく中で、永野の人間性がいいなって。率直にそう感じたんです。

──MOCKENのサウンドはエモやオルタナティヴロックに系譜を感じるところもありますけど、それは当時から?

永野:そういう音楽が好きっていう感覚はあったんですけど、一番最初は全然意識してなくて。エモやオルタナっていうものは後になってから知った感じでしたね。最初に好きになったのがBUMP OF CHICKENで、そこから王道ギターロックを中心に聴いていって、ライブハウスで出会った地方のオルタナバンドを観て、“こんなカッコいい音楽があるんだ!?”って感じで掘り下げてきたので。


▲横山竜之介(G)

──サポートギタリストと共に活動しながら、2022年8月に横山さんが正式加入しますが、きっかけは何だったんですか?

横山:もともと僕は別のバンドをやっていたんですけど、MOCKENと対バンする機会があって。

──そのときの印象は?

横山:強振するパワー感がすごいというか。ずっとホームランを狙いにいってるみたいに感じましたね。当たったらどこまでも飛んでいく、みたいな。

永野:ちょうどそのとき、サポートギタリストがやめるタイミングでもあって。僕らも焦っていた時期だったので募集してみたら、一番最初に連絡をくれたのが、(横山)竜之介さん。もちろん順番的にというわけではなくて、考えたときに自然と“竜之介さんがいいな”ってなりました。

──4人で最初にスタジオへ入ったとき、いい手応えはありましたか?

横山:とにかく3人の音がデカすぎて、自分の音がまったく聴こえなかったんです(笑)。僕もアンプのツマミをMAXにして、それでもギリ聴こえるか聴こえないかぐらい。だから、いつもSGのピックアップセレクターをリアにしてたんですけど、普段使わないフロントにして。それでようやくバンドサウンドの帯域に、僕のギターが入る隙間を見つけたという。それぞれが音で殴り合ってるような感じでしたね。

永野:音圧を狙ってたとか、そういう話じゃなくて。単純にそれぞれの音がデカかっただけだと思います(笑)。

──リハスタでは生ドラムの音量に合わせて、ギターやベースの音決めをするわけで。それほどドラムの生音が大きいというエピソードのひとつでもありますよね。これまで発表された楽曲を振り返って聴くと、横山さん加入以降、サウンド的にまとまりが出てきたような印象もあります。

永野:それ以前のサポートギタリストもめちゃめちゃ上手い人だったんですけど、音楽的な系譜が全然違ってたんですね。今の4人は音楽的な波長が合ってるから、まとまりが出てきたのかな。


▲杉山涼(B)

──みなさんのバックボーンはどのあたりなんですか?

杉山:僕はMY FIRST STORYですね。ラウド系から入って、Suchmosとかシティポップにも足を踏み入れつつ、前にやってたバンドはギターロックだったり。

横山:僕のルーツはELLEGARDENが軸で。大学のサークルではSUPER BEAVERとかもコピーしつつ、音楽的に広がっていったのはKOTORIを聴いてから。だんだんエモっぽいアルペジオとかが好きになっていきました。

宇佐美:僕の始まりは、ゆずからだったんです。

──アコギだったんですか?

宇佐美:はい。最初はドラムを叩いてなかったんです。その後、高校の吹奏楽でドラムを始めてクラシックも好きになって。先輩がハイスタをコピーしてたのをきっかけにメロコアやパンクにいったり。そこから東京事変、凛として時雨、9mm Parabellum Bulletに影響を受けてめちゃめちゃのめり込んだりしました。あと、ライブハウスで働くようになって、出入りしてる幅広いジャンルの人たちからも影響を受けてるかなと思います。

──永野さんはBUMP OF CHICKENがルーツというお話でしたね。

永野:そうですね。大きくバンドという括りでいえば銀杏BOYZ、KOTORIも好きだし。オルタナ方面だと宇都宮のsaidがめちゃめちゃ好きです。あと、洋楽はあまり詳しくないんですけど、ポップパンクが好きですね。アメリカのThe Starting Lineの楽曲「A Goodnight's Sleep」から取って、僕らの1st EPを『Goodnight's Sleep』というタイトルにしたくらいで。


▲宇佐美大二(Dr)

──MOCKENの歌詞は、恋愛をモチーフにすることが多いじゃないですか。それも美しい恋物語じゃなくて、ある種の醜さ。あまり人に知られたくない部分も綴ってて。

永野:マンガで言うと少年マンガより青年マンガが好きなんですよ。特に思春期を題材にしたような、あの時期特有の言いようのない気持ち悪さがすごくいい。僕自身も根暗で、どうしようもなくイキってたし。今になって考えてみたら恐ろしい生き物だったんです(笑)。そういうバックボーンがあるから、好きなマンガの設定や題材だけを参考にして、曲を書くことがわりと多い。今回だと「海の向こうには」はまさにそれで。

──恋人と自転車に乗って海を見に行くというロマンティックな曲ですね。

永野:僕、マンガ家の押見修造先生が好きなんですけど、「海の向こうには」は『惡の華』のコマ割りの雰囲気をイメージしながら作ったんです。別に『惡の華』に海が出てくるわけじゃないですけど、ニュアンスを表現したいなって。

──そうなると、歌詞のストーリーやメッセージはファンタジーだったりするんですか? それとも人間性が滲み出る実体験もあったり?

永野:どっちも好きなので、両方あります。僕は読んだときに、ひとつの物語になってる歌詞が好きなんです。ロジックさえあれば面白いと思っているので、どちらもやっていきたいですね。

◆インタビュー【2】へ
この記事をポスト

この記事の関連情報