【ライブレポート】fuzzy knot、Shinjiバースデイ公演で「人生最大に嬉しい誕生日になりました」

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Shinji(シド)と田澤孝介(Waive / Rayflower)のロックユニットfuzzy knotが、Shinjiのバースデイである2月8日、東京キネマ倶楽部で2024年初のワンマンライブ<fuzzy knot LIVE 2024 〜Shinji Birthday〜>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆fuzzy knot 画像

公演タイトル通り、この日はShinji(G)の誕生日であり、fuzzy knotにとって2024年一発目のワンマンライブ。会場周辺には開場前から大勢の観客が集まっていた。


開演時間になると、スモーク漂うステージに水色のスポットライトが注がれた。サポートメンバーの与野裕史(Dr)、工藤嶺(B)に続いて、Shinjiと田澤孝介(Vo)が入場。SEがやんだと同時に、Shinjiは宙を指さし、田澤は両腕を広げ、「楽しむ準備はできてるかい!」と声高らかに叫んで「遠隔Reviver」にてライブの幕を開けた。重厚なサウンドに力強い田澤の声が乗り、初っ端から強烈なパンチを放つ。

2曲目には「ペルソナ」を披露して、会場をfuzzy knot色に染めていく。特徴的なギターリフもさることながら、リズム隊のグルーヴが強靭だ。続くジャジーな「ダンサー・イン・ザ・スワンプ」でフロアが優雅なダンスホールへ。大正ロマンのオペラハウスをモチーフにした東京キネマ倶楽部の空間に調和するナンバーだ。紫と青のスポットライトが音に合わせてチカチカと光るたび、観客は波のように右に左に揺れてステップする。MCの口火を切ったのは田澤。



「俺が知っているミュージシャン史上一番、Shinjiはこういうことにおいてはシャイ。セットリストにも<fuzzy knot LIVE 2024 〜Shinji Birthday〜>と書いてあるわけですよ。それでさえも、「もう照れくさいからいいよ」と言ってて。そもそもさ、誕生日にライブをするのは初めて?」──田澤孝介

「初めてだね。だってステージに出る前にさ、影アナから“Shinji Birthday”ってハッキリ言われただけで恥ずかしかったもん」──Shinji

「お客さんが今日をめちゃめちゃ楽しんでくれることが、Shinjiにとって一番のプレゼントじゃないかなと思います。よっしゃー! まだまだ行けるのかい!?」──田澤孝介


というふたりの息の合った掛け合いトークを経て、「ブルースカイ」へ。そのサビでは観客全員が腕を伸ばし、一緒に声を上げる快活なシーンも。クールダウンする暇を与えることなく、デビュー曲「こころさがし」「Joker & Joker」と畳み掛けていく。<fuzzy knot Tour 2023 〜時の旅人〜>をはじめ、去年のライブはヘヴィで荘厳な楽曲を冒頭に据えて、観る者を圧倒していた。しかし、この日は“静と動”で言えば、多幸感に満ちた“動”のfuzzy knotが新鮮な印象だ。

6曲目の「Joker & Joker」が終わり、真っ暗なステージ上でShinjiが田澤に近づき、マイクを通さずに耳打ちをした。マイクを握った田澤が、「こそっとShinjiが俺に、「ありがとう」って言ってきて。何が“ありがとう”なのか聞いてん。そうしたら、「…こういうのいいね」って言ってたわ」と伝え、その言葉に対してフロアから大きな歓声が起きた。続けて田澤がこう語った。



「ほんまにさ、“楽しかったな。こういうのもいいよな”と思えたら、次に繋がっていく気がするからね。〜中略〜 やることは変わらないと言えばそうなんですけど、やっぱりハッピーなオーラって伝染していくからさ。そんな中で、自分らも音を鳴らせるというのは、とても幸せでございます。なので、僕らも幸せをいただいているという。そんな同時進行で、皆さまにいろんなモノをお返していきたいなと思いますので、引き続き、僕らの音楽を心に体に、しっかりと染み込ませていってください」──田澤孝介

中盤になると多幸感に満ちた空気が一変。7曲目「深き追憶の残火」のでずっしりとしたサウンドと地の底から這い上がるような声が、会場を激情的ムードに変えた。Shinjiのブルージーなギターソロから始まった「愛と執着とシアノス」では、鬼気迫る雰囲気を創出。「時の旅人」から「Inferno」への流れは、スケール感のあるイントロという点では近いものの、両極にある2曲を続けて披露することで、表現の奥深さが浮き彫りとなった。そして、10曲目を披露した後のMCが、再び会場の空気を一変させる夫婦漫才トークへ。以下に、そのやり取りを再現したい。


   ◆   ◆   ◆

Shinji:僕は夜8時20数分に生まれたんですよ。今、何時?
観客A:7時55分!
観客B:7時59分!
田澤:この時代に、なんで時計がバラバラやねん(笑)! でも、もうちょっとやね。
Shinji:そうだね。何の曲を演奏している時に、誕生した瞬間を迎えるのか、気になってるんだよね。〜中略〜 ちょっと先々の話をしてもいいですか? 僕は60歳になった時の自分を頭に描いていて。俺は…高倉健になりたい。今はまだカッコいいライブをして、たまにヘンテコなことを言ってる人かもしれないけど、60歳の時には“ニヒル”路線でいけるようになりたい。
田澤:渋いおじさんってこと?
Shinji:うん。ニヒルが許されるのって、高倉健と反町隆史ぐらいしかいないと思う。その境地に60歳でいっていたい。
田澤:今から目指すんや?
Shinji:そう! 徐々にね。徐々にニヒルになっていくから (※ふたりが顔を見合わせて爆笑)。
田澤:ニヒルを誓う奴の笑顔じゃなかったけどな(笑)。
Shinji:で、90歳になったら終活だよね。その頃には“コスモ”を感じたい(一同笑)。
田澤:誰や、Shinjiに酒を飲ましたのは。
Shinji:だって、コスモを感じられないでしょ?
田澤:残念ながら、俺は感じないわ(笑)。
Shinji:普通の人だと、Wi-Fiが飛んでることも分からないでしょ?
田澤:そうね。分かるのはメイプル超合金くらいじゃない?
Shinji:Wi-Fi感覚で俺はコスモを感じたい、最終的には。
田澤:まず、普通の人はWi-Fiを感じへんのよ!
Shinji:そして、Wi-Fi感覚でブラックホールを感じたい。決して、面白いから言っているわけじゃなくて、人間として感じ取れる人になりたいのよ。例えば、“田澤は今何を考えているのかな?”と思ったら、目を瞑りながらギャラクシーを感じて、“あ、こんなことを考えているだろうな”ってね。
田澤:だろうな、なんや! 予想の域を出てないねや。
Shinji:ふふ、そうだね。
田澤:それやったら今でもできるやろ! コスモとギャラクシーを感じてんねやったら、ちゃんと分かってくれよ(笑)!

   ◆   ◆   ◆


Shinjiのボケと田澤のツッコミは20分近く繰り広げられ、その間、フロアの笑いが絶えることがなかった。ライブ後半は温まった会場にピッタリな「トリックスター・シンドローム」からスタート。12曲目の「Set The Fire !」でみんながジャンプをして再度沸点へ到達した。「声を出していこうぜ!」という田澤のシャウトから、いつもはライブのラストに演奏される「Before Daybreak」へ。幸せの絶景、善の音のシャワーを浴びているような感覚だ。

そして、次曲へつながるかと思いきや、「Shinji、誕生日おめでとう!」と田澤が叫んだと同時に、定番「バースデーソング」が流れて、スタッフがケーキをステージ上に運ぶ。Shinjiが照れながらろうそくの火を吹き消すと、フロアから一斉に「おめでとう!」と祝福の声が上がった。

「なるほどね。今日俺が「入念にセットリストの打ち合わせをやろうよ」と言ってもあんまりみんな聞いてなくてさ。これ(ケーキの演出)があったのか(笑)」──Shinji


ここからのラストスパートがすごかった。会場にいる全員が残る力をすべて放出するかの如く、「ダイナマイトドリーム」で思い切りジャンプ、「Hello, Mr. Lazy」で熱狂、「#109」で頭を振り回すなど、お祭り状態だ。改めて田澤がマイクを握り、こう語った。

「最後に1曲歌います。あまり明るい曲ではないんだけど、生きていれば辛いこととか悲しいことが必ずやってくる。僕らのみならず、ここにいる全員が味わうと思います。それも全部、自分を成長させる試練だとして、せめてその試練がみんなにとって幸せなものでありますように、という願いを込めて。特に今日は彼(Shinji)に向けて、幸せの、優しさの雨が降り注ぐように歌いたいと思います」──田澤孝介


ラストソングは「キミに降る雨」。“希望”という言葉がしっくりくるような、感動的なパフォーマンスだった。すべての演奏と記念撮影を終えて、与野、工藤、田澤がステージ袖へはけた。ひとり残ったShinjiがセンターマイクの前に立ち、感謝の気持ちを伝えた。

「クサいかもしれないけど、本当に人生最大に嬉しい誕生日になりました」──Shinji

この言葉に、この日一番の拍手と歓声が起こり、スペシャルなライブは幕を閉じた。ちなみに、Shinjiが誕生した時間(20時20数分)、何の曲を演奏していたかといえば、ろうそくの火を吹き消した瞬間がそれだった。終演後、田澤とShinjiに聞いたライブの感想をお届けしたい。


   ◆   ◆   ◆

「バースデーライブが初めてということで、Shinjiに“こういうのも良いな”と思ってもらいたくて。それが叶ったと思うので、すごく嬉しかったです」──田澤孝介

「ライブなんて、本来は照れて出ちゃいけないものなんですけど、どうしても照れくさくてね(笑)。初めて経験したけど、良いものだなって。これからの人生で自分から進んでやろうとは思わないですけど、せっかく祝ってくれる人がいるのであれば、また喜んでやりたいなって。嬉しい誕生日でした」──Shinji

   ◆   ◆   ◆

取材・文◎真貝 聡
撮影◎江隈麗志

■<fuzzy knot LIVE 2024 〜Shinji Birthday〜>2月8日(木)@東京キネマ倶楽部 SETLIST

01. 遠隔Reviver
02. ペルソナ
03. ダンサー・イン・ザ・スワンプ
04. ブルースカイ
05. こころさがし
06. Joker & Joker
07. 深き追憶の残火
08. 愛と執着とシアノス
09. 時の旅人
10. Inferno
11. トリックスター・シンドローム
12. Set The Fire !
13. Before Daybreak
14. ダイナマイトドリーム
15. Hello, Mr. Lazy
16. #109
17. キミに降る雨

■<fuzzy knot Tour 2024 〜3 years knot〜>

4月20日(土) 愛知・名古屋ell. FITS ALL
4月27日(土) 大阪・大阪バナナホール
5月02日(木) 東京・Spotify O-WEST
▼チケット
スタンディング ¥6,600(税込/ドリンク代別)
※4才未満入場不可
【オフィシャルサイト最速先行予約】
受付期間:2024年2月8日(木)21:00〜2月20日(火)23:00
https://www.fuzzyknot.com/news/term/live/

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