No Big Deal Records所属、若手4バンドの個性がぶつかり合った<Young Groove Tour 2024>ファイナル公演

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No Big Deal Records所属の若手バンドによるツアー<Young Groove Tour 2024>が、2月27日に東京・下北沢SHELTERでファイナルを迎えた。ここでは、イベントのオフィシャルレポートをお届けする。

◆ライブ画像

ジ・エンプティ、鉄風東京、Bye-Bye-Handの方程式、ORCALANDの4組で名古屋、大阪、福岡と回ってきたこのツアー。ファイナルはライブに懸ける4つの気合いと信念がそれぞれのやり方で爆発した熱い一夜だった。

この日トップバッターとしてステージに立ったのは仙台を本拠地とする鉄風東京。彼らといえば、このツアーの直前、2月12日に地元仙台で行われたワンマンライブを最後にメンバー2名が脱退、サポートメンバーを迎えた新体制で新たなスタートを切ったばかりだ。

▲鉄風東京


だが体制が変わろうとバンドの本質は変わらない。この日も放たれる音はどこまでもヒリヒリとした感触をもっていた。1曲目の「遥か鳥は大空を征く」から早くもシンガロングを生み出すと、続く「外灯とアパート」では大黒崚吾(Vo)の叫びがSHELTERの空気を震わせ、ここでもフロアから歌声が起きる。

激しさと鋭さの裏側に優しさや丁寧さを感じさせる彼らのロックを聴いていると、なぜだか無性に心がざわつく。それは集まったオーディエンスにとっても同じようで、曲を重ねるごとにじわじわと会場の熱は上がっていった。

ラストは「このSHELTERにふさわしい曲をやって帰ります」と「FLYING SON」を投下。ヘヴィなリフと前のめりなビートが塊のようにこちら目掛けて飛んでくる。MCではメンバー脱退後ここまでサポートを務めてきたSougo(G)と颯(Dr)のふたりがこの日をもって最後となると言っていたが、この翌日、ふたりは正式メンバーとして加入。この日のステージは、まさにバンドとしての過渡期を刻むものとなった。

2番手として登場したのは福岡・久留米で中学からの友人4人で結成されたジ・エンプティ。2023年12月にNo Big Deal Recordsに仲間入りしたばかりだ。ハルモトヒナ(Vo)がいうとおり、このレーベルでは一番の後輩だ。

▲ジ・エンプティ


だが年齢もキャリアもこうしてステージに出てしまえば関係ない。オープニングを飾った「思い出は甘いままで」から堂々たるパフォーマンスを披露する。ヒナは観客の目をまっすぐに見てひとつひとつの言葉を大事に届けるように歌う。バンドのサウンドもそんなヒナの歌をがっちり支えるように力強く鳴り響く。フロアのみんなと拳を合わせ、「今日この空間におる全員に会いにきた。やっちまおうぜ!」とヒナ。そこから会場中を巻き込んでライブは加速していった。

トクナガシンノスケ(G)のアグレッシヴなリフが走る「ラブソング」、パンキッシュなショートチューン「神様からの贈物」、さらにMCを挟んで「おやすみレイディ」「MY SWEETEE」と次々と畳み掛けられる楽曲たち。どの曲も感情が溢れ出すような勢いを感じさせる。と、思っていたらいきなりヒナがフロアの中に割って入り、後方のPAブースによじ登って歌っている。とにかく少しでもお客さんの近くで、それこそ拳と拳がぶつかり合う距離で歌を届けたいというまっすぐな思いがそんな姿勢からも伝わってきて、なんだか眩しい。最後の「空っぽの唄」までその姿勢は全くブレることなかった。

後半戦に突入した3組目は大阪のBye-Bye-Handの方程式。彼らがレーベルのオーディションでグランプリを獲得したのは2020年だから、今回の4組の中ではもっとも先輩格ということになる。バンドとしての魅力も、武器も、すでに確固たるものを築きつつあるバンドだ。

▲Bye-Bye-Handの方程式


なんといっても彼らの魅力はそのメロディと言葉の強さ。強烈なキャラクターをもつメンバーを従えながら、真ん中に立った金髪のギター・ヴォーカル、汐田泰輝はズバッとストライクを投げ込むようにその魅力を届けてくる。「風鈴」から「風街突風倶楽部」へという鉄壁のコンボで始まったライブは、続けて「darling rolling」に入る頃にはすっかりフロアを熱く盛り上がらせていた。汐田は「やろうぜ!」と呼びかけ、岩橋茅津(G)が煽ればオーディエンスからも声が上がる。

そして投下された「ひかりあうものたち」。手拍子とシンガロングがSHELTERの空気をひとつにまとめ上げていく。「この4日間、俺たちが何をしてきたのか。無茶苦茶にして帰ります」と宣言し演奏されたのは「東京の歌」だという「romance tower」。サビのダンサブルなリズムでフロアを揺らすと、さらに2月4日にリリースされたばかりの新曲「春のチャンス」へ。

さらにアッパーなサウンドがキラキラと眩しく光を放った。5月には1stフルアルバムをリリースすることが決定している彼ら。ライバル3組を前に「当たり前に一番を取りにきました」と宣言するあたりにも自信と自負が伺える。そこから突入したラスト3曲はその言葉どおりの迫力だった。「midnight parade」をエモーショナルに届けると、「ソフビ人間」ではイントロから手拍子を巻き起こす。ラストに披露された「ロックンロール・スーパーノヴァ」ではタイトル通り爆発的な盛り上がりを生み出し、4人はステージを下りていったのだった。

さあ、各地を回ってきたツアーもいよいよ最後のアクト。この日トリを務めたのはここ下北沢を根城とする4ピース、ORCALANDだ。

▲ORCALAND


「帰ってきたぜ、下北!」という大塚祥輝(Vo/G)の言葉とともに幕を開けると、いきなり「テレキャスター・ヒーロー」がその場の全員を巻き込んで最高の盛り上がりを見せた。村田京哉(G)やおとやん(B)もそれぞれに見せ場を作りながら、「関係NIGHT FEVER」「ダンシングゾンビの決意」と畳み掛けられるキラーチューン。とにかくどの曲でも大塚はオーディエンスを煽り、温度をぐいぐいと高めていく。

「もっともっと、あんたらのグルーヴ見せてくれよ!」。フロア一面のジャンプが、SHELTERにこもった熱気をシェイクする。さすがというべきか、このバンドにしか生み出せないヴァイブスが、みんなの笑顔を導き出していった。

「今日、めちゃくちゃ楽しかったでしょ?」と問いかける大塚の声に「最高!」と声が上がる。そんな感じでライブは進んで行ったのだが、「リフレイン」を終えたところでトラブルが発生。村田のギターが突然鳴らなくなってしまったのだ。だがそれぐらいでこのバンドは動じない。スタッフも交えてリカバリーを図る間、大塚がツアーの思い出を語り出す。

共演した3バンドへのリスペクトを感じさせながら、自らを奮い立たせるように言葉を紡いだ後、大塚はこう言った。「音楽で抱きしめて、頭空っぽになって、今日は最高だったって日を作りたい。力貸してくれますか?」──村田のギターも復活し、ラストの1曲「やってらんねえ」へ。観客の拳が突き上げられ、気持ちの入ったシンガロングが広がる。不測のインターバルもパワーに変える、彼らのライブバンドとしての底力を見た気がした。

その後2度にわたるアンコールでステージに呼び戻され、そのたびにORCALANDはオーディエンスを熱く踊らせた(ちなみに演奏したのは2回とも「反省している」)。それでもお客さんはまだまだ欲しそうな感じだったけれど、この日の続きはそれぞれのバンドのライブで。「No Big Deal Records」というひとつ屋根の下、切磋琢磨を続ける4バンドの旅は、まだまだ始まったばかりだ。

取材・文◎小川 智宏
撮影(ジ・エンプティ/Bye-Bye-Handの方程式)◎かい
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