【ライブレポート】Mrs. GREEN APPLE、実験的で挑戦的な<The White Lounge>に見た、想像しえない新たなエンターテインメント

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2023年12月20日、東京・J:COMホール八王子からスタートしたMrs. GREEN APPLEのファンクラブRingo Jam会員限定ライブツアー<Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”>が、3月2日および3日の東京ガーデンシアター公演で幕を下ろした。

◆Mrs. GREEN APPLE 画像 / 動画

彼らにとって最長のホールツアーとなった全13都市22公演。観客には白いアイテムを身につけての来場を推奨する“ドレスコード”に加え、“ネタバレ禁止”を徹底的に周知。フロントマン大森元貴(Vo/G)が自身のX(旧Twitter)で「先入観が罪深い公演」と表現するなど、あまり例を見ない特異なスタイルでのツアーとなった。そのため筆者も、通常であれば取材者向けに用意されるセットリストを事前に受け取らず、一切の予備知識なく3月2日のセミファイナル公演を鑑賞した。いや、体感的には“目撃した”という表現の方が相応しいインパクトだったかもしれない。

会場に入った途端、まず目に飛び込んできたのはステージ上に造られた白い建物。1階の中央には大きなドアがあり、ホテルのラウンジのようにソファやバーカウンターも見える。2階はバルコニー風の造りで、大きな窓があり、さらにステージ上方を見上げると、そこには天地が逆さまの状態でソファや椅子が配置されている。空間が捩じれているような強烈な違和感。さらにブラウン管テレビのようなものが所々に数台置かれているが、画面には何も映っていない。

そんな真っ白のラウンジの中を、白いドレスを着た女性と、同じく白いスーツ姿の男性が談笑したり、1階と2階を行き来している。しかも何人かは客席内の通路にもおり、空席に座ったりもしている。奇妙なことに、その全員が白いマスカレードマスクを着け、皆の動きがスローモーションのようだ。まだ開演前だが、この時点でショーは始まっているかのようだった。


気が付くと、ステージ1階の下手階段付近に、やはり白い仮面を着けた新たな2人の姿が。1人はギブソンES-335を構え、もう1人はコルグNAUTILUSの前に立つ。若井滉斗(G)と藤澤涼架(Key)だ。そして会場が暗くなり、白いドアを勢いよく開けて大森が登場すると、若井、藤澤の2人に加え、セットの背後にスタンバイする森夏彦(B)、神田リョウ(Dr)、須原杏(Vn)、林田順平(Vc)、真砂陽地(Tp)、小西遼(Sax)、兼松衆(Key)といったミュージシャンたちが、大森が書き下ろした楽曲「The White Lounge」を奏で始める。こうして、ミュージカル、あるいは演劇のような音楽エンターテインメント<The White Lounge>の世界が幕を開けた。

ライブの中身は、Mrs. GREEN APPLEがこれまでにリリースしたシングル/アルバムの中から14曲がチョイスされ、それらの歌詞を台詞のように紡ぐことでストーリー性を持たせ、大森を中心に、若井、藤澤の2人と、10人のキャスト陣(アンジェロ、池島 優、小野礼美、川本アレクサンダー、KTea、SHIHO、人徳真央、森川次朗、YU-RI、リヤナゲ錦季/演出:ウォーリー木下)が、歌と芝居、ダンスパフォーマンスを展開するというもの。Mrs. GREEN APPLEの楽曲はオリジナルから大胆なリアレンジが施されて演奏され、書き下ろし楽曲「The White Lounge」とそのリプライズが、プロローグ&エピローグ的な役割をもって歌われた。

そのストーリーは、たとえファンクラブ会員──すなわちMrs. GREEN APPLEのコアファン──と言えども、すぐさま理解できるほど容易なものではなかった。もちろん、その瞬間、その瞬間の歌やダンスは純粋に楽しめるのだが、“これはどういうことなのだろう?”と深層に思いを巡らせると、簡単には答えにたどり着かない。もちろん制作側は、すべて言葉、動き、映像、コップひとつの小道具に至るまで事細かに意志を込めていることは疑う余地はないが、だがあえてそこに明確な“正解”を設けないことで、歌を聴き、パフォーマンスを体感した者が真っ白な余白をどう解釈するか、そこを観客側に委ねているようにも感じたライブであった。



そうした点も踏まえて筆者が一番に感じたことは、<The White Lounge>は、Mrs. GREEN APPLEの楽曲の歌詞とメロディの可視化であり、同時に、いよいよ(あるいは遂に)彼らがこうした実験的な表現に歩みを進める時が来たのかという想いだった。

一般的なミュージカルで歌われる音楽は、台詞や物語の進行をサポートするような歌詞が歌われつつ、言葉だけでは表現しがたい心理や情景をメロディとサウンドによって描写するために作られる。すなわち、物語ありきの音楽だ。対して<The White Lounge>の音楽は、そもそも単独でしっかりとした存在意義を確立している既発曲を用いながら、そこからどういうストーリーを編み上げていくかという真逆の方法論で構築されたエンターテインメント。

つまり、Mrs. GREEN APPLE自身が過去に生み出した楽曲であることは間違いないものの、個々の歌の背景に存在している付加的要素を一度すべて切り離し、純粋に歌詞とメロディだけを抽出したものを、大森、若井、藤澤の3人に手渡し、“さあ、これらの素材であなたたちはどんなエンターテインメントを表現する?”という問いかけに対する、今の3人からのひとつの回答であり、挑戦の結果だったように感じられた。

だからこそ、今回のライブで歌われた最も古い曲「ツキマシテハ(3rdシングル「In the Morning」カップリング曲/2016年)」も、現時点での最新アルバムとなる『ANTENNA』(2023年)収録の「Feeling」も、いずれもMrs. GREEN APPLEの楽曲でありつつ、楽曲の世界観を拘束するものを一度全否定し、新たに発想で自由に練り上げた(曲を作った時点のMrs. GREEN APPLEではなく)“今”の3人が思い描く音楽表現となっていた。その際、「Attitude」のように原曲のイメージから大きく変化した楽曲と、「Soranji」のようにオリジナルを踏襲したアレンジの曲があったのは、必ずしも過去を壊すことが目的だったのではなく、純粋に歌詞とメロディを主人公とし、その化身として大森、若井、藤澤がステージに立って、歌い、演奏し、パフォーマンスを行った結果だったからだ。


そのために重要となるのが楽曲のリアレンジ。多くのファンは気づいているだろうが、今回のステージで演奏したミュージシャンは、Mrs. GREEN APPLEが2023年、オフィシャルYouTubeチャンネルに公開したライブ映像<Studio Session Live>の参加者たちだ。同映像では、ある曲はシックに、ある曲は華やかに、そしてある曲はシンフォニックにと既発曲をスペシャルアレンジすることで、多くのリスナーは、オリジナルとは違った形でMrs. GREEN APPLE作品の歌詞とメロディの深淵と対話することができただろう。この試みは、彼らが同じく2023年に行ったアリーナツアー<ARENA TOUR 2023 “NOAH no HAKOBUNE”>ならびにドームライブ<DOME LIVE 2023 “Atlantis”>という大規模ライブのポピュラリティ性とは真逆のアプローチだ。

ならば、<Studio Session Live>のようにミクロな視点で観客を歌詞とメロディに惹きつけ、一人ひとりの想像力をより拡張させながら、マクロな視点で数千人規模のホールツアーとして成立させられるエンターテインメントの姿は、一体どういうものになるのか。結成10年間で得た経験値と、ドームライブを成功させた実績を手にした今、ようやくたどり着いた現時点での最適解こそが<The White Lounge>だったのだろう。

このように考えていくと、2022年末、大森の頭に<Studio Session Live>のアイデアが浮かんだ時点で、彼の眼には<The White Lounge>のステージが既にぼんやりと見えていたのかもしれない。もっと言えば、Mrs. GREEN APPLEの音楽が街中で鳴り始めた2019年に敢行したストイックなライブツアー<Mrs. GREEN APPLE 2019 HALL TOUR “The ROOM TOUR”>の段階で、もしかしたら大森が本当にやりたかったのは、<The White Lounge>のようなエンターテインメント表現だったのではないか? ただ当時は、実力的にも、集客的にも、チーム編成的にも、まだまだ時期尚早だったのかもしれない。そこからアーティストとしての表現力と、ミュージシャンとしての音楽力に磨きをかけ、アルバム『ANTENNA』を作り上げ、誰もが認めるドームライブの成功を経て、大森の中で確信を持って<The White Lounge>の実現にゴーサインを出せたのだろう。


その際、常々“バンドはこうあるべき”というさまざまな既成概念(あるいは大衆の欲望)と真摯に向き合いながらも、リスナーが想像しえない新しいエンタテインメントを生み出そうとし続けてきた彼らの挑戦を、自分たちの音楽を最も深く理解するファンたちにぶつけ、それに対してどうリアクションするのかを確かめるべく、まずはファンクラブ会員限定のホールツアーという形態をとったことは十分に理解できる。結果、<The White Lounge>の映画化が決定したということは、十分すぎるほどに手応えがあったからに違いない。今回、残念ながらチケットを手にすることができなかったファンクラブ会員にも、ぜひ映画館で疑似体験してほしい。

SNSで絶賛されるスイーツも、直接目の当たりにし、実際に食べてみないことには、それが美味しいのかどうかはわからない。食べてみて、“想像以上に美味しかった”ということもあれば、“大したことなかった”と感じることもあるだろう。それこそが体験だ。ライブも同じで、アーティストの表現をリアルに体験して、そこではじめて“自分はこう感じた”と思慮をめぐらすことができる。

その際、“よくわからなかった”という感想は、決してネガティヴなものではない。なぜなら、これまでに体験したことがなく、知識がないものが目の前に表れたときに、人は“わからない”と感じるのであり、アーティストは多かれ少なかれ、まだ世の中に存在しない、受け手が“わからない”と感じるものを常に目指している。その“わからなさ”が、理解の数歩先を行くのか、100歩先を行くのか、そこにアーティストのスタンスが表れる。すなわち“わからない”ということは、ある意味では表現者に対する賛辞であるのだ。


その“わからなさ”を自分には無縁なものとしてスルーするのか、わからないなりに解釈してみようとするのかは、あなた次第。受け手の自由だ。しかも、自分なりに理解できるまで、1年かかるのか、5年後、あるいは10年後なのか、それすらもわからない。でも、だからこそアーティストの表現は興味深く、作品に深みが生まれてくる。今回のMrs. GREEN APPLEの試みも、もしかしたら1年後、5年後、10年後で評価が変わっていくものなのかもしれない。それはつまり、<The White Lounge>で表現されたものの“正解”は、受け手である我々の中にこそ存在しているということなのだ。

取材・文◎布施雄一郎
撮影◎田中聖太郎写真事務所 (金谷龍之介)/古溪一道

■<Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”>セットリスト

01. The White Lounge ※書き下ろし楽曲
02. Folktale
03. 君を知らない
04. ダンスホール
05. ツキマシテハ
06. Coffee
07. ニュー・マイ・ノーマル
08. PARTY
09. 春愁
10. Just a Friend
11. Attitude
12. Feeling
13. ケセラセラ
14. Soranji
15. The White Lounge -reprise-
16. フロリジナル

■『Mrs. GREEN APPLE 2023-2024 FC TOUR “The White Lounge”』映画化

詳細は後日改めて


■スタジアムツアー<ゼンジン未到とヴェルトラウム~銘銘編~>

▼2024年
7月06日(土) ノエビアスタジアム神戸
7月07日(日) ノエビアスタジアム神戸
open16:30 / start18:30
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888
7月20日(土) 横浜スタジアム
7月21日(日) 横浜スタジアム
open16:30 / start18:30
(問)SOGO TOKYO 03-3405-9999

▼チケット
指定席:12,800円(税込)
※雨天決行・荒天中止
※4歳以上のお子様よりチケット必要/3歳以下のお子様はご入場できません(年齢はご来場の公演当日時点)
※営利目的の転売禁止。
※チケット料金はお一人様の価格となります。
※お一人様1公演につき2枚まで購入可能(複数公演エントリー可能)
【オフィシャルファンクラブRingo Jam会員限定チケット最速先行受付(抽選)】
受付期間:3月4日(月)12:00〜3月17日(日)23:59
申込条件:申込者・同行者ともにRingo Jam会員(年・月会費コース)の方
※「年会費」「月会費」どちらのコースでもお申し込みいただけます。
https://new.mrsgreenapple.com/news/detail/20033


■新曲「ライラック」

※TVアニメ『忘却バッテリー』オープニングテーマ
※リリース未定


■TVアニメ『忘却バッテリー』
放送開始:2024年4月より
放送局:テレ東ほか
▼放送情報
・テレ東:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・テレビ大阪:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・テレビ愛知:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・テレビせとうち:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・テレビ北海道:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・TVQ九州放送:4月9日より 毎週火曜深夜24時00分~
・AT-X:4月12日から 毎週金曜20時00分~(※リピート:毎週火曜8:00/毎週木曜14:00)
※放送日時は予告なく変更になる場合がございます
▼配信情報
Prime Videoにて毎週火曜 放送直後より最速配信
さらに各種配信サービスにて毎週水曜24:30より順次配信スタート
※配信開始日はサービスによって変動する場合がございます
▼CAST
清峰葉流火:増田俊樹
要 圭:宮野真守
藤堂 葵:阿座上洋平
千早瞬平:島﨑信長
山田太郎:梶 裕貴
土屋和季:山谷祥生
国都英一郎:大塚剛央
巻田広伸:石井マーク
桐島秋斗:河西健吾
▼STAFF
原作:みかわ絵子(集英社『少年ジャンプ+』連載)
試合制作:高嶋栄充
監督:中園真登
シリーズ構成:横手美智子
副監督:飯田剛士
キャラクターデザイン:長谷川ひとみ
アクション作画監督:立中順平 / 徳丸昌大
美術監督:船隠雄貴
色彩設計:中野尚美
撮影監督:川下裕樹
3DCG監督:小川耕平
編集:吉武将人
音楽:菊谷知樹 / 山崎寛子
音響監督:名倉靖
音響効果:長谷川卓也
制作:MAPPA

●オープニング・テーマ:Mrs. GREEN APPLE「ライラック」
●エンディング・テーマ:マカロニえんぴつ「忘レナ唄」

▼原作情報
原作コミック:『忘却バッテリー』(集英社『少年ジャンプ+』連載/最新第17巻発売中
▼イントロダクション
 原作は集英社『少年ジャンプ+』で連載中、同アプリ内での累計閲覧数2億超えの『忘却バッテリー』(著・みかわ絵子)。2018年4月より連載が開始され、記憶喪失の主人公というユニークな設定、魅力的なキャラクターたち、高校野球のリアルな部分を描いた描写、ギャグとシリアス要素の絶妙なバランス、などが人気を博している。
 中学球界で名を馳せた完全無欠の剛腕投手・清峰葉流火、切れ者捕手の“智将”・要 圭の怪物バッテリー。全国の強豪校からスカウトを受けていた彼らが進学したのは何故か野球無名校の東京都立小手指高校だった。さらに圭は記憶喪失で野球に関する知識も失っていた。そしてかつて彼らに敗れ散り野球から遠ざかっていた天才たちも、偶然同じ高校に入学しており…。巡り合い、再び動き出す彼らの高校野球ストーリーがいま始まる。
公式サイト:boukyaku-battery.com
公式X:@boukyakubattery


(c)みかわ絵子/集英社・KADOKAWA・MAPPA

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