【ライブレポート】eillが届けるメッセージ「みんなにあげたいとびっきりの一言。それは……」

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eillがワンマンライブ<BLUE ROSE SHOW 2024 in TOKYO>を3月19日、Zepp DiverCity(TOKYO)で開催した。

◆ライブ写真

ライブタイトルにある“BLUE ROSE”とは、eillが歌詞などで度々用いているワードであり、大切にしているモチーフ。青い薔薇は本来自然界に存在しないが、人々の研究開発によって実現し、花言葉も“不可能”から“不可能を可能にする”に変わった。同じように、eillの存在も周囲の人の支えがあってこそであり、一人で何でもできる完璧な人間ではないが、だからこそ様々な可能性を秘めているのだと希望とともに音楽を発信している。

この日のライブでもeillは、ボーカリスト/ソングライターとしてのチャームを輝かせながらも、等身大のキャラクターを隠さずに、集まったファンにまっすぐメッセージを届けた。3月下旬と言えば、新生活が始まる直前。新たな季節を前に不安を感じている人も、彼女の歌とパフォーマンスに励まされたはずだ。


リリースや楽曲提供をコンスタントに行いつつ、韓国でワンマンライブを開催したり、幼馴染とともにバンド・CHAINZを結成したりといろいろな活動を行っていたが、国内でのワンマンライブの開催は2023年6月の<5th Anniversary Live “MAKUAKE”>以来約9ヶ月ぶり。1曲目の「hikari」が始まった時はステージが紗幕で隠されていたが、曲中に幕が落ちると、eillとファンの久々の対面が叶った。eillの歌声、そしてサトウカツシロ(G)、宮田'レフティ'リョウ(Key)、YosukeMinowa(Mani)、越智俊介(B)、松浦千昇(Dr)によるバンドサウンドが場内に広がっていく。

そこからシームレスに始まったのは「花のように」で、夜から朝へという時間の流れを感じさせる曲順だったが、「待って待って!」と一旦呼吸を整えてから仕切り直し。久々のワンマンということで、緊張していたのだろうか。そんな人間臭さを感じさせる場面もありつつ、前回のワンマンとはまた違ったアレンジの「MAKUAKE」でフロアを沸かせたeill。「palette」ではバンドのアンサンブルに自身も身を揺らしながら歌を届けた。


会場に流れるいい空気を途絶えさせぬよう、ビートを鳴らしながらのMC。eillが「元気ですか?」と尋ねると、観客が大きな歓声や拍手を返した。これにはeillも「めっちゃ元気や!」と笑顔。そのあと始まったのは、3曲を一繋ぎにしたメドレー。しかも「HUSH」「Succubus」「初恋」と初期曲が立て続けに披露されたものだから、フロアもどよめきながら、興奮しながらの大盛り上がりだ。

ヒップホップとピアノバラードのハイブリッドソングで、切ない歌メロはもちろん、eillのリズムセンスが感じられるラップの箇所も魅力的な「happy ending」を終えると、「たくさんの人と声を出すのは久しぶりの感覚で。ちょっとときめきました」とeill。そしてキーボードの前の椅子に座りながら、「きっとね、ここに来る途中とか、毎日過ごしている中で、eillの曲をたくさん聴いてくれたんじゃないかな。そうだよね?」と観客に問いかける。人は誰しも完璧じゃない。孤独と内省に沈む夜をいくつも乗り越えて、今この会場に辿り着いた一人ひとりに想いを馳せながらの発言だろう。その上で、eillは「いろいろな心を抱えて聴いていたと思います。その気持ちを全部抱きしめるように歌うので、最後までよろしくお願いします」と挨拶し、「片っぽ」をピアノ弾き語りで披露した。ビートやサウンドの装飾がない状態だと、この曲の根底にある孤独や寂しさが際立つ。強くなれない日があってもいいのだと、eillの歌が伝えてくれているようだった。


さらに、歌とギターを中心としたアコースティックアレンジの「プレロマンス」、韓国や台湾を中心にスマッシュヒットした「フィナーレ。」を披露するという、EP『プレロマンス/フィナーレ。』をフィーチャーした展開でライブの前半は締め括られた。そしてそのあとに待っていたのは、「25」「23」「20」という“年齢シリーズ”に焦点を当てたブロックだ。最新曲の「25」は、2小節ごとにキーが変わる目まぐるしいトラックを、あくまでも軽やかに乗りこなしているのがすごい。クオリティの高い楽曲を発表し続けてきたeillの作曲能力、ボーカリストとしての能力が凝縮された1曲だ。

パワーポップ系の「23」でも、バンドのスパーク具合が最高な「20」でも、観客が一緒に声を出して盛り上がった。そうして生まれた温かい空気の中、eillは「もう25歳になりました!」と改めて報告。そして「あっというまに過ぎ去っていく中で、人だから、ダメな時もいい時もあるし、音楽をやっていると変わるもの、変わらないものがあって」と前置きしつつ、「今までは自分で自分を縛っているところもあったけど、“いや、私が歩けば私の道になるんだ”とこの5年で気づきました。それはみなさんが導いてくれた道だと思います。ありがとうございます」と感謝を伝えた。ふとした時に「いつ、どこに私の音楽を聴いてくれる人がいるんだろう?」と思ってしまうほど、なかなか自信を持てない性格だからこそ、「こんなにたくさんいた!」と確認できるライブという場所に、eillは喜びを感じるのだという。


「生きていると、自分自身に圧をかけて押し潰されそうになることもあります。でも、ずっと言い続けていること。私を救えるのは私しかいない。あなたを救えるのはあなたしかいない。だから“頑張って”とは言いません。今みんなに、私にあげたいとびっきりの一言。それは“大丈夫”。そんなことをずっと歌っていきます。迷った時に、eillの曲を聴いてください。ずっとそばで支えます」

「みんなで歌おう」と呼びかけながらの「SPOTLIGHT」、「FAKE LOVE/」からの「ここで息をして」という黄金の流れで場内をさらに熱狂させたあと、本編は「WE ARE」で終了した。歌のない間奏でも「みんな孤独を抱えてる」「だから大丈夫」と言葉を重ね、自分の内にある想いを最後まで伝えようとしていたeill。そんななか、観客に対して「もっと心の声を聞かせてください!」と言っていたのが印象に残っている。“心の声”というのは、感染症対策で声出しが制限されていた時期のライブMCでよく聞いた言葉で、今はシンガロングできないから心の声を聞かせてほしいと、ファンに伝えるアーティストは多かった。今eillがこのワードを使ったのは、きっとそういう意味ではない。あなたが本当に思っていることを蔑ろにせず、なかったことにせず、声に乗せて表出させてほしい、そうして私に見せてほしい、ということだ。私が歩けば私の道になった。だから、あなたが歩けばあなたの道になるはず。終演後も心の中に残る熱い余韻が、あなたが人生を歩む上での道しるべになってくれるはずだ。


アンコールでは、仮面をつけた人が3人登場。「いったいどれがeillだ?」と観客を翻弄する遊び心溢れる演出とともに「罠」を披露したあと、ファンに対する気持ちを歌った「letter…」を最後に届けた。今年4月には2度目の韓国ワンマン<BLUE ROSE SHOW 2024 in SEOUL>が開催され、9月からは約2年ぶりの全国ツアー<BLUE ROSE TOUR 2024>が始まる。eillがeillとして発信する音楽とメッセージが、さらに多くの人を勇気づけることになるだろう。

取材・文◎蜂須賀ちなみ
写真◎tatsuki nakata

セットリスト

1. hikari
2.花のように
3.MAKUAKE
4.palette
5.メドレー
 HUSH
 Succubus
 初恋
6.happy ending
7.片っぽ
8.プレロマンス
9.フィナーレ。
10.25
11.23
12.20
13.SPOTLIGHT
14.FAKE LOVE/
15.ここで息をして
16.WE ARE

en1.罠
en2.letter...

<BLUE ROSE TOUR 2024>

2024年
9/7(土)宮城・仙台darwin 
開場16:30/開演17:00

9/14(土)愛知・名古屋ボトムライン 
開場17:30/開演18:30

9/15(日)石川・金沢AZ 
開場16:30/開演17:00

9/20(金)大阪・心斎橋BIGCAT 
開場17:30/開演18:30

9/21(土)福岡・福岡DRUM Be-1 
開場18:30/開演19:00

9/23(月・祝)広島・広島セカンドクラッチ 
開場16:30/開演17:00

9/27(金)北海道・札幌Sound Lab mole 
開場16:30/開演17:00

10/18(金)東京・東京国際フォーラム ホールC 
開場18:00/開演19:00

【料金・券種】
[東京公演以外] スタンディング(整理番号付き) 6,500円(税込)
[東京公演] 指定席 6,500円(税込)
お一人様4枚まで(分配可)
※未就学児のみでの入場不可。
※録音・録画機材(携帯電話)使用禁止
※営利目的の転売/譲渡禁止
※東京公演以外、別途ドリンク代

【オフィシャル最速先行】
受付期間:3/19(火)21:00〜3/31(日)23:59
抽選日:4/2(火)
当落発表:4/3(水)13:00
入金期間:4/3(水)13:00〜4/9(火)21:00
チケット販売サイト:イープラス
チケット販売URL:https://eplus.jp/eill/

【公演に関するお問い合わせ】
北海道公演
マウントアライブ:TEL 050-3504-8700
(平日 11:00〜18:00)

宮城公演
ノースロードミュージック:TEL 022-256-1000
(平日 11:00~16:00)

石川公演
サウンドソニック:TEL 076-291-7800
(祝日を除く平日 10:00~18:00)

東京公演
クリエイティブマンプロダクション:TEL 03-3499-6669
(月・水・金12:00~16:00)

愛知公演
サンデーフォークプロモーション:TEL 052-320-9100
(12:00~18:00)

大阪公演
サウンドクリエーター:TEL 06-6357-4400
(祝日を除く平日 12:00~15:00)

広島公演
キャンディープロモーション広島:TEL 082-249-8334
(祝日を除く平日 11:00~17:00)

福岡公演
BEA:TEL 092-712-4221
(平日 12:00〜16:00)

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