【ライブレポート】松本孝弘、8年ぶりソロツアーファイナルで地元凱旋「ようやく完成させることができました」
B'zの松本孝弘が、5月11日の東京・BLUE NOTE TOKYO公演を皮切りに、5月26日の豊中市立文化芸術センター大ホール公演まで、全14公演のツアー<Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman->を開催した。BLUE NOTE TOKYO、Billboard Live TOKYO、Billboard Live OSAKA、豊中市立文化芸術センター大ホールといった4ヵ所で行われたソロツアーは、2016年の<Tak Matsumoto Tour 2016 -The Voyage->以来、コロナ禍を経て約8年ぶりとなる。その最終日のレポートをお届けしたい。
◆松本孝弘 画像
松本孝弘は2020年9月、約4年ぶりのソロアルバムであり、今回のツアータイトルにも冠されている『Bluesman』をリリースした。同アルバムは松本孝弘の中で、年を追うごとにJapanese Bluesmanへの思いが高まってきたことから作られた作品だが、形態としてのブルーズに捉われることなく、様々なアプローチでブルーズが表現されていることがポイントだ。結果、アルバム『Bluesman』は松本孝弘の豊かな発想力や、上質な楽曲とギタープレイを堪能できる作品として評価が高い。
アルバム『Bluesman』リリースに合わせて開催される予定だった全国ツアーは、残念ながら当時猛威を振るっていたコロナウィルス感染拡大の影響により中止に。松本孝弘のまた新たな魅力を味わえることを楽しみにしていた全国のリスナーが落胆したことはもちろん、松本孝弘本人も大きなフラストレーションを感じたであろうことは想像に難くない。
それから4年を経て、2024年5月11日から5月26日にかけて開催したツアー<Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman->は、いわゆる“リベンジツアー”であると同時に、約8年ぶりのソロツアーだ。さらに、そのツアーファイナルは松本孝弘が生まれ育った大阪府豊中市で2日間にわたって開催されるということで、ファンの気持ちの高まりは相当なもの。同ツアーは全公演が瞬く間にソールドアウト、もちろんファイナルを飾る豊中市立文化芸術センター大ホールも両日共に満員御礼となった。松本孝弘の“惹き寄せ力”の強さを改めて感じさせた<Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman->の最終公演の模様をお伝えしよう。
豊中市立文化芸術センター大ホールの場内が暗転、サポートを務めるSensationのメンバーがステージに登場してアッパーなサウンドを奏でる中、松本孝弘がステージに姿を現した。「帰ってきたで!」という松本孝弘の言葉に客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、ライブは華やかな「EPIC MATCH ~the match everyone wanted~」で幕開け。ブルージーかつキャッチーなシャッフルチューンの「Here Comes the Taxman」へと移る流れが、のっけからオーディエンスの気持ちを昂ぶらせた。
松本孝弘ならではのミッドレンジを押し出したリッチなトーンで紡がれていく上品で味わい深いギタープレイに耳を奪われると同時に、大賀好修(G)と織り成すビブラートの振れ幅やタイム感まで完璧にマッチしたハーモニー、躍動感と洗練感を湛えたギターサウンドは心地よさに満ちている。ライブが始まると同時に場内は松本孝弘の世界へと染まり、開演前は落ち着いた雰囲気だったオーディエンスの熱気はますます高まるばかり。「EPIC MATCH ~the match everyone wanted~」「Here Comes the Taxman」といった2曲聴かせた後、「こんばんは」と松本孝弘が挨拶を。
「4年前に完成するはずだった<Bluesman Tour>を、こういう完璧な形で、ようやく完成させることができました。しかも、最終日をホームタウン=豊中で迎えることができて、本当に嬉しいです。今日は『Bluesman』の曲ももちろんですけれど、懐かしい曲も演奏するので、最後まで楽しんでいっていただきたいと思います」──松本孝弘
という彼の言葉に、オーディエンスは温かい拍手と歓声を贈った。続けて、「それでは『Bluesman』からではなく、懐かしくもない曲をやります(笑)」という言葉と共に、新曲「BATTLEBOX」(NTTドコモ Lemino『Lemino BOXING』テーマソング)を躍動感を湛えてプレイ。柔らかみのある哀愁が心に染み入る「Wanna Go Home」やノスタルジックな雰囲気の「Long Distance Call」、南の島の美しい風景を喚起させる「Island of peace」や「花火」などが相次いで届けられた。
松本孝弘は幅広い曲調はもとより、曲中の場面転換に合わせてファットなディストーションサウンドや艶やかなクランチトーン、メロウなクリーントーンなどを細やかに使い分け、さらにプレイのニュアンスもフレキシブルに変えるというハイレベルなギターワークを披露。ギターで情景を描く彼の力量は圧倒的で、心震わす瞬間が幾度となく訪れる。松本孝弘ならではの秀でた表現力が遺憾なく発揮されて、まるでシンガーがいるかのようなエモーショナルで表情豊かなライブ空間を築いていることが印象的だった。
もうひとつ、今回のライブを観て改めて感じたことだが、松本孝弘のギタートーンには些か不思議なところがある。ピッキングはしっかりと強いながら、アタックがしなやかで、カチカチパキパキした音ではない。特にクリーントーンで演奏する際にそれが顕著で、フィンガーピッキングかと思いきやピック弾き(指弾きも混ぜるが基本はピック)だったりして、えっ!と驚かされるシーンが何度もあった。ピックで指弾きのように柔らかいトーンを出せるのは松本孝弘の大きな強みのひとつであり、その音色が各国のプロフェッショナルなアーティストや多くのリスナーを魅了していることも頷ける。
ライブは終始、心地よい雰囲気で進んでいき、アーバンな「Tokyo Night」のあと、再び松本孝弘のMCが入った。
「20年前にリリースした『THE HIT PARADE』(2003年11月発表)という昭和歌謡曲のカバーアルバムがありまして。その続編をようやく、20年経って作ろうかなと思いまして。もうほとんどできているので、たぶん夏頃には届けられるんじゃないかな。その中で唯一、1曲だけインストゥルメンタルの曲を入れているんですけれども。昔、『俺たちの勲章』というドラマがありまして。そのテーマソングがカッコよくてさ。オリジナルは吉田拓郎さんの「あゝ青春」(1977年)という曲なんですけれども、それをトランザムという日本のロックバンドがインストゥルメンタルでカバーしていたものが、そのドラマのテーマ曲として使われていたんです。当時、僕はまだギターを弾いていなかったけど、そのギターの音に本当に惹かれたというか、感服してね。その曲を聴いて1〜2年後にはギターを弾き始めました。その「俺たちの勲章テーマ」を聴いてください」──松本孝弘
同曲の抒情的な世界は味わい深く、『THE HIT PARADE』第2弾にはB'zの稲葉浩志やGLAYのTERU、倉木麻衣、LiSAといった豪華な顔ぶれが参加しているということで、本当にリリースが楽しみだ。収録全10曲は、昭和歌謡曲への深いリスペクトと松本孝弘が織り出すギターサウンドが新たな魅力を引き出すことに成功しているとのことだ。
切ない耽美感を纏った「Waltz in Blue」、アジア感が香る「華」などで世界観をさらに深めたのち、ライブは「THE WINGS」から後半戦へ。ここではフュージョンに通じる洗練感を活かしたサウンドからホットなシーンに切り替わる展開が光る「Rainy Monday Blues ~ 茨の道」、ステージ前方を覆う紗幕に投影された鮮やかな浮世絵のグラフィックと共に届けられたアッパーな「Ups and Downs」、旅客機をモチーフにした映像と飛翔感を纏ったサウンドの取り合わせが絶妙な新曲「GLORIOUS 70」などが畳みかけるように演奏された。
気持ちを引き上げるサウンドと効果的な演出を組み合わせたアプローチにオーディエンスのボルテージはさらに高まり、場内の熱気はMAXに。本編ラストソングとなった「BOOGIE WOOGIE AZB 10」で、客席が一体感と華やかさに溢れた盛り上がりを見せ、「BOOGIE WOOGIE AZB 10」を演奏し終えた松本孝弘がステージを去ると同時に、客席から盛大なアンコールと手拍子が湧き起った。
そのアンコールに応えて再びステージに立った松本孝弘は、自身が“アンタ あの娘の何なのさ!”といったセリフを語って客席を大いに沸かせた「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」、日本人であれば誰もが知るであろうギターの旋律とスリリングなギターソロをフィーチュアした「#1090 -Million Dreams-」をプレイ。ミュージックステーションのテーマとしても知られる「#1090 -Million Dreams-」で場内の盛り上がりは最高潮となり、同曲が終わると同時に、それまで着席していたオーディエンスが総立ちになって、熱烈な拍手を伴うスタンディングオベーションを見せたことが強く心に残った。
約8年ぶりのソロツアーでさらに魅力を増した姿を披露してみせた松本孝弘。ミュージシャンシップの高さとエンターテメント性を巧みに融合させたライブは、体感したすべてのオーディエンスが贅沢な時間を過ごすことができたという満足感を得られたに違いない。
<Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman->を終えた松本孝弘は、『THE HIT PARADE』第2弾のリリースに加え、今秋にはTMG(TAK MATSUMOTO GROUP)再始動ツアーと新音源リリースも控えている。
取材・文◎村上孝之
(c)VERMILLION
(c)Dynamic Planning・TOEI ANIMATION
■<Tak Matsumoto Tour 2024 -Here Comes the Bluesman->5月26日(日)@豊中市立文化芸術センター大ホール SETLIST
02. Here Comes the Taxman
03. BATTLEBOX
04. Wanna Go Home
05. Long Distance Call
06. Island of peace
07. 花火
08. Tokyo Night
09. 俺たちの勲章テーマ
10. Waltz in Blue
11. 華
12. THE WINGS
13. Rainy Monday Blues ~ 茨の道
14. Ups and Downs
15. GLORIOUS 70
16. BOOGIE WOOGIE AZB 10
encore
17. 港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ
18. #1090 -Million Dreams-
■邦楽カバーアルバム第二弾『THE HIT PARADE II』
▼収録曲 ※順不同
「銃爪」featuring 稲葉浩志
[original:世良公則&ツイスト]
「落陽」featuring TERU (GLAY)
[original:吉田拓郎]
「ブルーライト・ヨコハマ」featuring 倉木麻衣
[original:いしだあゆみ]
「木蘭の涙」featuring GRe4N BOYZ
[original:スターダスト☆レビュー]
「六本木心中」featuring LiSA
[original:アン・ルイス]
「時の過ぎゆくままに」featuring 上原大史(WANDS)
[original:沢田研二]
「傷だらけのローラ」featuring 新浜レオン
[original:西城秀樹]
「Yes-No」featuring 山本ピカソ(青いガーネット)
[original:オフコース]
「白い冬」 featuring KEISUKE(Z), YUJIRO(Z)
[original:ふきのとう]
「俺たちの勲章テーマ」Tak Matsumoto
※詳細は後日発表
https://bz-vermillion.com/news/240512.html
■<TMG LIVE 2024>
09月20日(金) 愛知・Zepp Nagoya
09月23日(月) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
09月24日(火) 東京・Zepp Haneda(TOKYO)
09月28日(土) 北海道・Zepp Sapporo
10月02日(水) 福岡・Zepp Fukuoka
10月06日(日) 大阪・Zepp Osaka Bayside
10月07日(月) 大阪・Zepp Osaka Bayside
10月12日(土) 東京・東京ガーデンシアター
https://takmatsumotogroup.com/tour/
▼TMG are...
Guitar:Tak Matsumoto
Bass & Vocal:Jack Blades
Vocal:Eric Martin
Drums:Matt Sorum
Guitar:Yukihide “YT” Takiyama
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