【インタビュー】aiko「このアルバムが出来上がったとき、ちゃんと歳を重ねてこられたんやなってすごく思えた」
aikoがニューアルバム『残心残暑』をリリースした。
まさに“残暑”を感じられるいまの季節にもぴったりの、エモーショナルさも感じられる作品。さまざまな恋愛模様に寄り添い、聴く人それぞれの心の不覚に刺さるラブソングが13曲収録されている。このようなアルバムを作ることができたのには、aiko自身の心の変化もあったという。
◆ ◆ ◆
◾︎恋愛観は10代と40代では確実に違うから
◾︎その時々の視点でこれからも曲を書き続けられたら
──今年の7月1日、aikoさんからたくさんの楽しい予定が発表されました。6年ぶりとなる野外フリーライブ<Love Like Aloha Vol.7>の開催に加え、16枚目となるニューアルバムのリリースと、10月からライブハウスツアー<Love Like Rock vol.10>がスタートすることが告げられ、ネット上はさながら“aiko祭り”と呼べる状況に。
aiko:みなさんの反応を見たことで、より気合いが入りました。あの発表をした時点では、アルバムの制作もまだ全然終わっていなかったので、スタッフのみなさんとも「発表してもたなー」「もう後戻りできないね」みたいなことをよく話してました(笑)。
──後戻りなんてするはずもないですし、aikoさんとしてはその状況を喜んでいたところもあったんじゃないですか。
aiko:そうですね。私はもう楽しむ側なので(笑)。発表したことを不安に思ったり、アルバムができひんかったらどうしようとかはまったく思っていなかったです。アロハの開催は匂わせもしていたので気づいていた方も多いと思うんですが、「え、アルバム⁉ ロックも⁉」って驚いてくれている方がたくさんいたのがすごく嬉しかったですしね。「頑張らなきゃ!」と強く思いつつ、今に至る感じです(笑)。
──その想いの結晶となるのがアルバム『残心残暑』。最高の仕上がりになりましたね。
aiko:ほんまにできましたね(笑)。このアルバムが出来上がったとき、ちゃんと歳を重ねてこられたんやなってすごく思えたんです。それぞれの曲の雰囲気もそうやし、アレンジに関してもやし、すべてにおいてそう感じることができたというか。マスタリングをするときに、エンジニアの方が私の歌い方とかサウンドのテイストをしっかり汲み取った上で1曲1曲の物語を考えてくださっていて。そういう現場を見たときに、自分の曲の聴いてもらい方がまた昔とはちょっと変わってきたような気がしたんです。今の自分が心から聴いて欲しいと思える曲を入れることができたことも含め、自分で言うのはめっちゃ気持ち悪いけど、すごく趣きのあるアルバムを作ることができたなって。そういうことを思えたアルバムになりました。
──今回はアレンジャーとして島田昌典さん、トオミヨウさん、川嶋可能さんが手腕を発揮されていますが、どの曲のアレンジもaikoさんから生まれた楽曲に対しての寄り添い方がハンパじゃないなと思いました。それはアレンジャーさんとの関係値もあるとは思いますが、それ以上にaikoさんが思い描く楽曲の完成形が以前にも増して、より鮮明に、より明確になっているからなのではないかなと思ったりもしたんですよね。
aiko:そうかもしれないですね。以前よりも自分の感覚を信じられるようになったところも大きいと思うんです。例えば「このピアノのフレーズ、1個目と2個目やったらどっちがいい?」っていう状況になったとき、昔だったら「私はこっちが好きやけど、みんなは違う方が好きやったらどうしよう」って気持ちになってしまうことがあったんです。でも今は自分の感覚を信じて、「こっちが好きです!」って堂々と言えるようになりました。長い時間、活動をすることができたおかげで、そういう感覚が勝手に染みついてきたんだとは思うんですけど、そうなったことで自分自身が助けられているところはすごくある気がしますね。
──あとは言葉の紡ぎ方により磨きがかけられている印象もありました。感情の機微を繊細に掬い取るのはaikoさんならではの筆致ですけど、ワードのチョイスや表現方法に斬新さを感じるところも多くて。例えば「好きにさせて」。タイトルになっているフレーズの奥深さたるや!
aiko:これは、ダブルミーニングを使ったんです。相手のことが好きなんやけど、どこか良好な感じではなくて。「好きなのか、そうじゃないのかどっちなんやろう」みたいな状況を繰り返している中、でも自分はまだ好きという気持ちがあって諦めきれないから、“もう私の好きにさせて”という想いと、“あなたの事、こんなに好きにさせてからに!”という想いが共存しています。
──さらに、軽快で楽しい雰囲気のサウンドの中、ちょっとドキッとするフレーズを盛り込むのも実にaikoさんらしいところで。
aiko:“呪いのようにこびりついたらいい”って書いてますからね(笑)。こういう表現が好きなんだと思います。
──「ガラクタ」では、好きだった相手にもらったボールペンの先が固まってしまったことを、自分の状態と重ね合わせて“ガラクタ”と表現されています。このラインにも痺れましたね。
aiko:嬉しいです! スタッフの方にも褒めてもらいました(笑)。
──その後に出てくる“唇の未練を容赦しない”というラインも印象的ですよね。すごく強く心に響いてきます。
aiko:私はあんまりいろんな言葉を知らないんですよ。だから、“容赦しない”とかっていう子供の頃に覚えたインパクトの強い言葉がずっと心に残っていて。自然と歌詞に出てくるんだと思います。ちなみに最近覚えた言葉は“辟易”と“疲弊”です。
──今後、その言葉が歌詞に出てくることもあるのかもしれないですね。
aiko:“辟易”は難しいですね。“あんたには辟易やわー”みたいな感じですかね? でもいつか上手いこと使えるように頑張ります(笑)。
──「よるのうみ」で使われている“いつかは終わるのだから笑いたいの”というフレーズは、まさに年齢を重ねた今のaikoさんだから出てきたもののような気がします。
aiko:ありがとうございます。命が終わるということって、年齢を重ねたことですごく身近になってきているようにも思うし、それについて深く考えるようにもなりました。
──命は誰しも平等に有限。だからこそ笑っていたいわけですよね、aikoさんは。
aiko:そうですね。困難な状況に直面したときに抱く不安は、解決策を見つけるために必要なものだと思うけど、元気なうちに抱く不安ってちょっともったいないなと思うんです。だから私は常に楽しく生きていたい。常に笑っていたいんですよね。
──もうひとつ。この曲のサビでは“あなたであたしは知らない自分を見つける”と歌われています。その関係性はaikoさんとファンとの間にも成り立つような気がするんですよね。ファンの存在によって、ご自身のことをあらためて認識することもあったりします?
aiko:この間、お父さんから夜中に電話がかかってきて。そこで言われたんです。「お前の曲を聴いて、“明日も頑張って生きよう”と思ってくれる人たちがいることを絶対に忘れないようにしないといかん」って。そのとき、「私の曲を聴いて頑張ろうと思ってくれる人がいるなんて本当に凄すぎる! 嬉しすぎる。そっか、そうやんな。頑張るしかない!」って強く思いました。その人の日常の中で、その人が頑張ろうと思うためのお菓子のような存在になれたらいいなと私は思ってきたし、26年やってきてそうなれている自分がいるのかもなって、ちょっとだけ思えたところはありました。
──一方でaikoさんの場合は、そう思うことをおこがましいと考えてしまうタイプでもありますよね。
aiko:はい、そうです。だから私は、聴いてくれる方にそう思ってもらうことを欲しがるのではなく、音楽が好き、自分の曲をみんなに聴いて欲しいという気持ちだけでここまでやってきた感じなんですよね。とは言え、ファンの方に対しての執着も人一倍あったりもするわけで。Xとかで他のアーティストの方のライブに行ってたりするのを見ると、勝手に失恋したみたいな気持ちになりますから。ほんまに面倒くさい人間だと思います(笑)。恋愛でも若い頃は絶対に嫌われるタイプですよね。
──そこも年齢を重ねると許容できるようになるというか、愛おしく見えてきたりする部分もありそうですよね。
aiko:あると思います。10代の頃って重い人は絶対ムリみたいな感じじゃないですか。蛙化現象とかがまさにそうだと思うんですが。でも今の私からすると蛙化と言われるような相手の行動を見たら、もっと好きになると思います。「え、そんな一面もあるの? かわいい」みたいな(笑)。
──そういう年齢を重ねることで変化する恋愛観はおもしろいですよね。そこにこそずっと恋愛にフォーカスして曲を作り続けている意味があるというか。
aiko:そうだったらいいなと思います。デビューからの26年間で、「いつまで恋愛の曲書いてるの?」って言われたこともありましたけど、私はやっぱり恋愛にずっと興味があるんです。恋愛観は10代と40代では確実に違うから、その時々の視点でこれからも曲を書き続けられたらいいなと思いますね。今の私は重たい相手のほうが嬉しくなっちゃいます(笑)。
取材・文◎もりひでゆき
『残心残暑』
予約:https://aiko.lnk.to/16thalbum_CD
初回仕様限定盤A[CD+ LIVE Blu-ray](PCCA-15032/税込6,050円)
初回仕様限定盤B[CD+LIVE DVD](PCCA-15033/税込6,050円)
通常仕様盤[CD only](PCCA-15034/税込3,300円)
収録内容
[CD]
01. blue
02. skirt
03. 相思相愛
04. 好きにさせて
05. 鮮やかな街
06. ガラクタ
07. いつ逢えたら
08. blow
09. 願い事日記
10. 星の降る日に
11. アンコール
12. よるのうみ
13. 赤い手で
[Blu-ray/DVD]
aiko Live Tour「Love Like Pop vol.24」
セットリスト
01. 飛行機
02. 青空
03. 荒れた唇は恋を失くす
04. アップルパイ
05. 恋のスーパーボール
06. 名のないハート
07. 明日もいつも通りに
08. ばいばーーい
09. 宇宙で息をして
10. もっと
11. 58cm
12. えりあし
13. アタック!24メドレー
14. 星の降る日に
15. キラキラ
16. ねがう夜
17. のぼせ
18. ジェット
19. ストロー
特典映像: Love Like Pop vol.24 behind the scenes
副音声:aiko Commentary
<フリーライブ「Love Like Aloha vol.7」>
会場:サザンビーチちがさき
特設サイト:https://www.aiko.com/lla_2024/
【早期予約特典】「Love Like Aloha vol.7」、16thアルバム「残心残暑」予約購入者限定抽選申込み
シリアルナンバー配布対象期間:
実店舗:2024年7月9日(火)開店時〜2024年7月31日(水)閉店時まで
※2024年7月9日(火)より前に実店舗でご予約購入の場合の応募券のお渡し方法につきましては、各店舗へお問い合わせください。
受付期間:2024年7月1日(月)~2024年7月31日(水)23:59
抽選結果確認:2024年8月8日(木)18:00
<aiko Live Tour「Live Like Rock vol.10」>
10月3日(木) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
10月4日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
10月11日(金) 【香川】festhalle 18:00/19:00
10月12日(土) 【香川】festhalle 16:30/17:30
10月25日(金) 【愛知】Zepp Nagoya 17:30/18:30
10月26日(土) 【愛知】Zepp Nagoya 16:30/17:30
11月6日(水) 【広島】HIROSHIMA CLUB QUATTRO 18:00/19:00
11月7日(木) 【広島】HIROSHIMA CLUB QUATTRO 18:00/19:00
11月22日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
11月23日(土) 【大阪】Zeep Osaka Bayside 16:30/17:30
12月4日(水) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
12月5日(木) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
12月11日(水) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
12月12日(木) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
2025年
1月12日(日) 【宮城】SENDAI GIGS 16:30/17:30
1月13日(月・祝) 【宮城】SENDAI GIGS 16:30/17:30
1月17日(金) 【北海道】Zepp Sapporo 18:00/19:00
1月18日(土) 【北海道】Zepp Sapporo 16:30/17:30
1月24日(金) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
1月25日(土) 【福岡】Zepp Fukuoka 16:30/17:30
2月7日(金) 【新潟】NIIGATA LOTS 18:00/19:00
2月8日(土) 【新潟】NIIGATA LOTS 16:30/17:30
2月14日(金) 【愛知】Zeep Nagoya 17:30/18:30
2月15日(土) 【愛知】Zeep Nagoya 16:30/17:30
2月21日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
2月22日(土) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 16:30/17:30
2月28日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
3月1日(土) 【東京】Zepp Haneda 16:30/17:30
3月14日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
3月15日(土) 【東京】Zepp Haneda 16:30/17:30
3月28日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
3月29日(土) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 16:30/17:30
チケット スタンディング(整理番号アリ) / 2F指定席 / (一部会場 2F立ち見あり)
7,500円(税込)
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