【ライブレポート】ONE OK ROCK、まったく違う心と顔を持つ人間たちをひとつにする音楽
photo by Kosuke Ito
9月14日、東京・味の素スタジアム、<ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR>キックオフ。このツアーは日本、台湾、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、アメリカの7都市8公演で、アリーナ級の会場を回る大規模なものだ。ワールドワイドなバンドへと着々と歩を進める彼らが、PREMONITION=予感の名のもとにどんなパフォーマンスを見せてくれるのか。天気は快晴、昼はまだ暑いが夕方からは涼しい風が吹く、今日は絶好の野外ライブ日和だ。
午後5時40分、ステージ左右の超大型ビジョンが作動する。ライブシーンとTakaのコメントをコラージュした、日本から世界を目指すバンドのステイトメントを映像化したオープニング映像だ。爆音のSEが轟く中、中央ビジョンの向こう側から巨大リフトに乗ったToru、Ryota、Tomoyaが登場。大歓声を浴びて位置につくと、サイレンが鳴り響き、ガスマスクを装着したTakaがせりあがりで現れる。熱狂と興奮が最前列からスタンド最上段まで、波のように伝わる、スタジアムならではの大掛かりな演出に鳥肌が立つ。さぁ開演だ。
photo by Masahiro Yamada
オープニングは「Delusion:All」。重量感たっぷりのヘヴィなリズム、哀感漂うメロディ、強いメッセージを持つ、7月にリリースされたばかりの最新曲をいきなり投下し、続く「欠落オートメーション」はスラッシュメタルばりのスピードで一気に飛ばす。シンプルなロックンロール「Re:make」は、Toruのギターソロに合わせてドラゴン花火が噴き上がり、夕闇迫るスタジアムを美しく彩る。ビジョンに映る、リアルライブ映像にイラストやタイポグラフィを加えた映像がとてもアーティスティック。光と音と映像が一体となったスケールの大きな演出だ。
「今日はみなさんと楽しい夏の思い出を作りに来ました。お祭り騒ぎをする準備はできてますか?」──Taka
ステージ上空に花火の爆音が鳴り響き、ToruとRyotaがステージを走る。「じぶんROCK」は広い野外ステージが良く似合うスピードチューンで、「Save Yourself」もスタジアムにぴったりのアンセムだ。Takaのボーカルをしのぐほど、オーディエンスの大合唱とクラップの音が大きく鳴り響く。メンバーに負けず劣らず、オーディエンスもやる気満々だ。
photo by Masahiro Yamada
「楽しんでるかい? 気持ちいいわ、本当に。久々の屋外で、端のほうまできちきちで。みんな見えてるよ」──Toru
「35歳になって、一発目のライブなので、めちゃくちゃ気合入ってます。お互い最後まで楽しみましょう」──Ryota
「すごい景色。本当にありがとう。このツアーは本当に楽しみで、どうやったらみんなが楽しめるか、準備もいっぱいしてきました」──Tomoya
「久々の野外だから、自分の中でリニューアルしたくて、衣装も髪型も変えてみました。たぶん芝生と同じ色だと思う(笑)」──Taka
鮮やかなグリーンの髪色で決めたTakaが、「一緒に歌って騒いで帰ってください」と呼びかける。その言葉に応え、「Decision」のイントロから大合唱が起きた。「Renegades」のコーラスももちろん歌う。ONE OK ROCKの歌にはシンガロングできるメロディが多く、一体感を感じやすい。宇宙船の出発を告げるアニメーション映像に導かれた「Wonder」は、クラシックロックの香りがする明るい冒険のロックンロール。マゼンタ、イエロー、シアンに分割されたエフェクティブな映像が、なんともポップでサイケデリック。MCタイムでは、メンバーをキャラクター化した可愛らしいアバターもビジョンに初登場した。とにかくこのライブ、映像のクオリティとセンスがとても高い。
photo by Matty Vogel
「ここからさらにボルテージを上げて、楽しんでいきたいと思います。まだ体力残ってますね?」──Taka
花火の爆音を合図に、Takaがステージを右へ左へと突っ走る。全力で歌いながら「まだ行けるよな!」「声出せ!」と煽りまくる。なんというスタミナだろう。「キミシダイ列車」から「Make It Out Alive」へ、速く激しい曲が続いても息一つ切らさない。中盤のブレイクでは、オーディエンス全員を巻き込んだヘッドバンギングをリードする。ToruとRyotaもよく動く。この会場は普段はサッカースタジアムだが、ステージで躍動する4人がアスリートに見えてくる。
photo by Kosuke Ito
Takaが観客を座らせ、ToruのアコースティックギターとTakaの歌だけで聴かせた「Wherever you are」は、サッカーで言えばハーフタイムのお楽しみかもしれない。Takaによると、昨日のリハーサル時に「この気持ちいい場所と時間帯にはアコースティックが似合う」と思いつき、急遽アレンジを変更したらしい。何も言わずとも、いつのまにかスマホのライトがまたたく星のようにスタジアム全体を輝かせている。Takaがマイクを客席に向けてコーラスをうながす。素晴らしい光景だ。
ToruのエレクトリックギターとTakaの歌でしっとりと始まった「Take what you want」に、TomoyaとRyotaのリズム隊が加わった瞬間、まばゆい光があふれ出してスタジアムの空気が一変した。いつの間にかオーディエンスがみんな立ち上がっている。Ryota、Tomoya、Toruが激しい楽器バトルを繰り広げるインストを経てTakaが「カラス」を歌いだす、ここからライブは後半だ。「Neon」から「The Beginning」へ、夜の訪れと共に照明がさらにまぶしく、レーザービームが輝きを増す。「The Beginning」もまた、激しいヘッドバンギングを内包したエモーショナルなナンバー。破壊力がすさまじい。
「自分が動き出せばきっと周りも変わる。そう信じて生きていってほしいと思います。そんなことを、僕らは音楽を使って伝えたいんです」──Taka
photo by Masahiro Yamada
今回の大規模なワールドツアーは序章にすぎない。これからも大きなチャレンジをし続ける。時に嫌われようと、愛を持って、世界の平和のために言わなければいけないことがある。――落ち着いた静かな口調だからこそ、TakaのMCには強い説得力が宿る。これだけ多くのファンの支持を受けるバンドになった責任を背負い、世界に打って出る覚悟がにじむ。僕たちはいつもひとつです――そう言って歌った「We are」に重なるオーディエンスの大合唱に、「行ってこい」という強いエールを感じる。ラストは「Mighty Long Fall」から「Stand Out Fit In」へ、ヘッドバンギングで煽り、しゃがみこんでジャンプするパフォーマンスで盛り上げながら、力強い一体感でオーディエンスをひとつにする。まったく違う心と顔を持つ人間たちを、ONE OK ROCKの音楽がひとつにしている。
photo by Matty Vogel
そしてアンコール1曲目ではなんと、制作中のアルバムからの新曲が聴けた。明るい開放感あふれる曲調と、Takaのファルセットボイスが印象に残るキャッチ―な1曲だ。さらに「久々すぎて歌詞を覚えてない」と笑いながら「Let's take it someday」を歌い、恒例の全員ジャンプを決める。そんな長く幸せな時間の最後を飾るのは「Wasted Nights」だ。無為な時を過ごすのはもうやめだ。サビの英詞をオーディエンスが大合唱する。キャノン砲が炸裂し、金銀のテープが空高く舞う。そしてクライマックス、Takaが素晴らしいロングトーンを決めた瞬間に夜空に高々と打ち上げられた盛大な花火。それはフィナーレというよりは、始まりの合図。日本から世界へ出て行くバンドを後押しする祝砲だ。
photo by Masahiro Yamada
広いステージの端から端まで、ゆっくり歩きながら手を振る4人にあたたかい拍手と大歓声が降り注ぐ。ビジョンに映る4人とも、ゆるぎない自信と開放感と緊張感を兼ね備えたいい顔をしている。ワールドツアーを終えて戻ってきた4人がどんな表情をしているのか、また確かめに来ようと思う。ONE OK ROCKの挑戦を、とことんまで見届けてみようと思う。
文◎宮本英夫
<ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR>
09/15 - TOKYO - AJINOMOTO STADIUM
09/21 - KAOHSIUNG(高雄)- KAOHSIUNG NATIONAL STADIUM(高雄國家體育場)
10/05 - DUSSELDORF - MITSUBISHI ELECTRIC HALLE
10/07 - PARIS - ZENITH
10/11 - LONDON - OVO ARENA WEMBLEY
10/18 - TORONTO - COCA-COLA COLISEUM
10/23 - LOS ANGELES - KIA FORUM
◆<ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR>オフィシャルサイト
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