【ライブレポート】あなたの好きなaikoはどれ?どんな季節に、どんな場所でも、“aikoというエンターテインメント”
「いつまで続くの、この暑さ!」と毎日文句を言っていたのはわずか数日前。気づけば9月も終わりの方。“残暑お見舞い”の時期もすっかり過ぎ、空は高くなり、暑かった夏が嘘の様に思える今日この頃。
◆ライブ写真
8月28日にリリースしたaikoの16枚目のオリジナルアルバム『残心残暑』というタイトルが、ヒリヒリと心に染み渡る季節も過ぎ、ちょっと肌寒さを感じる秋風を受けながら聴く『残心残暑』が、夏色から秋色に変わり、夏に聴いたときとはまた違う寄り添い方になってきた。
“ヒリヒリ”から“じんわり”に変わった感じ。こんなにも聴く景色や季節、聴く体温や心情で聞こえ方を変化させるアルバムを創れるなんて、aikoはやっぱりすごい。
aikoの楽曲には、季節外れも、賞味期限も、時期外れも無い。聴きたいと思ったときにいつでも側にあって、どんなときでも側にいてくれて、どんな心情のときもピッタリと寄り添ってくれるのだ。
aikoのライブもそうである。
観たい場所、聴きたい場所を選んで、自分の見たいaikoに会いに行けるのだ。ホールやアリーナをライブ場とする<Love Like Pop>、ライブハウスを拠点とする<Love Like Rock>、そして、不定期野外フリーライブである<Love Like Aloha>と、aikoは自らがエンターテインメントする場所を選び変えては、その全てで“全力のaiko”を届け続けて来ている。そのどれもが“aiko”なのだが、aikoを語るには、全部のaikoに触れてみて欲しい。自分が好きなaikoはどれなのか? そんな風にライブを楽しませてくれるのも“aikoというエンターテインメント”なのである。
2024年8月30日。
aikoは6年ぶりに<Love Like Aloha vol.7>を開催することを発表した。
<Love Like Aloha>は2003年8月30日の 片瀬西浜・鵠沼海水浴場を始まりとし、<Love Like Aloha Vol.2>からはサザンビーチちがさきに場所を移し、<Love Like Aloha Vol.6>までは不定期ながらも毎回8月30日に開催してきたことから、今回の発表を受けた茅ヶ崎に住む地元住民達からも、久しぶりにaikoが茅ヶ崎に帰ってくるとあって、“おかえり”ムードが漂っていたのだった。
地元住民にもあたたかく“おかえり”と迎え入れてもらえる空気感を作っているのは間違いなくaiko本人だ。何故ならば、aikoはこの場所に<Love Like Aloha>の拠点を移してからは、毎回必ずと言っていいほど、ライブ会場となる浜辺沿いのマンションから横断幕を作って応援してくれる地元住民ファンに向かってライブ中に話しかけ、コミュニケーションを取り、街全体の人々をaikoが放つあたたかなオーラで包み込んできたからである。
もちろん、aikoを一目見ようと集まって来てくれた人達もそう。男子も女子もそうでない人も全員、その場に足を運んでくれた人達を一人残らず幸せにして来たからである。つまり、<Love Like Aloha>は、“不定期野外フリーライブ”であり、“初めてaikoを観た人達はaikoの沼に落ち、aikoファン達はさらにaikoが好きになる日”なのである。
<Love Like Aloha vol.7>も、間違いなくそんなライブとなった。当日、6年ぶりとは思えない“いつもの光景”と感じたのも、aikoが“おかえり”な雰囲気を作ってくれているからだろう。
サザンビーチちがさきの浜辺をaikoの登場を待つファン達が埋め尽くす中、aikoはメインステージの中央からポップアップで勢いよく登場し、オーディエンスを沸かせた。野外のフリーライブなのに、こんな大掛かりな仕掛けを企んでいたのか。aikoは「58cm」を全力で歌い切ると、曲の終わりに心の中にあった言葉を吐き出した。
「今日は絶対最後までやります! よろしくお願いしまーーす!」
“さすがaiko! こうこなくっちゃ!”と言わんばかりにオーディエンスからは“うぉ〜!”という歓声が返された。「ストロー」「帽子と水着と水平線」「荒れた唇は恋を失くす」と、aikoは花道に飛び出し、花道の先端に立つと、オーディエンス1人1人に触れたいという想いを込めて精一杯手を伸ばしながら、力の全てで歌って届けた。間髪入れずに届けられていく曲の中で、歌い、走り、手を伸ばし、想いを届けようと全力を尽くすaikoに、オーディエンスはクラップを送った。とにかく両者とも楽しそうである。
aikoはMCで今日のライブが開催出来たことと、集まってくれたことを言葉でしっかりと伝えると、いつもの距離感0の友達との会話の様な温度でオーディエンスと会話をしていくaiko。もうこの時点で集まった人達の脳内からは普段の嫌な出来事はすっ飛んでいた。みんなそんな清々しい笑顔をaikoに向けた。
劇場版『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』の主題歌だった「相思相愛」をaikoが歌い始めるとフロアからは歓喜の声が漏れて響いた。初めてaikoを観る人にとっては、知ってる曲を生歌で聴けるというのは、本当にすごく貴重なことなのだろう。それだけで沼ってしまうほどの威力があると言ってもいい。しかしaikoはそこからさらにメドレーを用意していたのである。これは、新規ファンにも古参ファンにもご褒美でしかない。
メドレー1曲目は「涙のキッス」。この“サザンビーチちがさき”の名前の由来でもあるサザンオールスターズの桑田佳祐からお祝いのお花が届いたという話から、サザンオールスターズの代表曲「涙のキッス」に繋げるといった、この場所でしか聴くことの出来ない特別も用意してくれていたのである。
「アンドロメダ」「ボーイフレンド」「雲は白リンゴは赤」と、テンポ良く次々とヒット曲が届けられていったのだが、メドレーの終盤になると、ピタリと止んでいた雨がポツポツと降り始め、やがて防ぎようのない大粒の雨が降り始めたのだった。しかし、その状況で逆に火が付いたのか、aikoもオーディエンスもガムシャラに盛り上がり、客席は波打ったのだった。
メドレー明けに届けられたのは新曲「よるのうみ」。オーディエンスは携帯のライトを照らし、aikoはその光に誘われる様にアカペラの「カブトムシ」を返したのだった。空撮でヴィジョンに映し出された携帯の光で埋め尽くされた浜辺は、言葉に出来ないほど幻想的な景色だった。そこから新曲の「skirt」も届け、新曲をこの場で早くも聴けてしまった喜びに涙するファンもいたほどだった。しかし、この日aikoからのサプライズはまだまだ続いたのである。
aikoはこの日、ライブのラストに海側から打ち上げ花火を用意していたらしいのだが、雨の影響を受け、打ち上げることが叶わなかったのだという。残念そうにみんなにその事実を打ち明けたaikoは、「だからね、「花火」歌います!」と、セットリストには入っていなかった「花火」をアンコールと打ち上げ花火代わりに集まってくれたオーディエンスに届けたのだった。
「花火」という曲が存在する奇跡。これもaikoの魔法だろうか。雨も上がり、美しく「花火」のメロディがオーディエンスを包み込み、この日のライブは幕を閉じた。いつもながら、最高の時間だった。“aiko、ありがとう”そんなオーディエンスの声がaikoの去ったステージに向かって飛び交っていた。
いつか人生を振り返ったとき、この日、ずぶ濡れで観たaikoのライブを心から懐かしく感じ、そして、きっとその記憶からもまた、元気をもらうんだろうな。そして、夏に聴いたら夏の肌触り、秋に聴いたら秋の肌触りで脳内に再生されるんだろうな。そしてきっとまた、aikoに会いたくなるんだろうな。
ますは、10月3日から始まる<Love Like Rock vol.10>(10月3日のZepp Hanedaから2025年3月29日のZepp Osaka Baysideまで9ヶ所32公演で開催)で、また会える日を楽しみにするとしよう。
取材・文◎武市尚子
写真◎岡田貴之、石川浩章
セットリスト
02. ストロー
03. 帽子と水着と水平線
04. 荒れた唇は恋を失くす
05. 相思相愛
06. ハニーメモリー
07. メドレー
・涙のキッス
・アンドロメダ
・ボーイフレンド
・雲は白リンゴは赤
・あなたは優しい
・KissHug
・果てしない二人
・透明ドロップ
・milk
・みんなのうた
・be master of life
08. よるのうみ
09. アップルパイ
10. skirt
11. 愛の病
12. キラキラ
13. 夏が帰る
14. 星の降る日に
15. 花火
<aiko Live Tour「Live Like Rock vol.10」>
10月3日(木) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
10月4日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
10月11日(金) 【香川】festhalle 18:00/19:00
10月12日(土) 【香川】festhalle 16:30/17:30
10月25日(金) 【愛知】Zepp Nagoya 17:30/18:30
10月26日(土) 【愛知】Zepp Nagoya 16:30/17:30
11月6日(水) 【広島】HIROSHIMA CLUB QUATTRO 18:00/19:00
11月7日(木) 【広島】HIROSHIMA CLUB QUATTRO 18:00/19:00
11月22日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
11月23日(土) 【大阪】Zeep Osaka Bayside 16:30/17:30
12月4日(水) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
12月5日(木) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
12月11日(水) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
12月12日(木) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
2025年
1月12日(日) 【宮城】SENDAI GIGS 16:30/17:30
1月13日(月・祝) 【宮城】SENDAI GIGS 16:30/17:30
1月17日(金) 【北海道】Zepp Sapporo 18:00/19:00
1月18日(土) 【北海道】Zepp Sapporo 16:30/17:30
1月24日(金) 【福岡】Zepp Fukuoka 18:00/19:00
1月25日(土) 【福岡】Zepp Fukuoka 16:30/17:30
2月7日(金) 【新潟】NIIGATA LOTS 18:00/19:00
2月8日(土) 【新潟】NIIGATA LOTS 16:30/17:30
2月14日(金) 【愛知】Zeep Nagoya 17:30/18:30
2月15日(土) 【愛知】Zeep Nagoya 16:30/17:30
2月21日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
2月22日(土) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 16:30/17:30
2月28日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
3月1日(土) 【東京】Zepp Haneda 16:30/17:30
3月14日(金) 【東京】Zepp Haneda 18:00/19:00
3月15日(土) 【東京】Zepp Haneda 16:30/17:30
3月28日(金) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 18:00/19:00
3月29日(土) 【大阪】Zepp Osaka Bayside 16:30/17:30
チケット スタンディング(整理番号アリ) / 2F指定席 / (一部会場 2F立ち見あり)
7,500円(税込)
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