【ライブレポート】INORAN、“爆幸”なバースデーライブのツアーが開幕
INORAN(Vo , G)にとって約1年ぶり、毎年恒例となっている9月29日のバースデーライブを中心としたソロツアー<INORAN BIRTHDAY CIRCUIT '24>が東京・LIQUIDROOMでスタートした。誕生日当日のオフィシャルファンクラブ「NO NAME?」限定公演に先立ち、9月28日に開催された、本ツアー初日の模様をレポートする。
◆INORAN 画像
ジャジーなSEに乗せて、大きな拍手が沸き起こる中、メンバーのYukio Murata(G/my way my love)、u:zo(B)、Ryo Yamagata(Dr)が登場、最後にINORANが自ら拍手しながらステージに姿を現した。歌い始めた1曲目は、日本語詞が美しくファンにも人気が高いミディアムナンバーで、近年演奏されているアレンジとは異なる、オリジナルアレンジで披露されるのは久しぶりのこと。この時点で既に、セットリストの新鮮さを確信した。ツアーは10月13日 京都・磔磔、14日 大阪・umeda TRADと続くので、具体的な曲名を書くのは避けるが、世界中で争いが絶えない今の時代にこそ響く、この曲に込められた痛切なメッセージが伝わってくる幕開けだった。
このメンバーでは初めてプレイされる非常にレアな選曲も含まれ、極めて新鮮な流れになっていた冒頭のセクションを終えると、「素晴らしくハッピーな、“爆幸(バクコウ)”な時間を、このメンバーとスタッフとお前らと過ごしたいと思うので、最後までよろしくお願いします!」とファンに語り掛けたINORAN。後に続くMCで“わんぱくメニュー”と本人が表現した、アッパーな曲たちを連打するセクションでは、考えるよりもまずは感じろ!と言わんばかりの、ライブハウスならではの熱い盛り上がりを存分に味わうことができた。
9枚目のオリジナルアルバム『Dive youth,Sonik dive』(2012年)、10枚目の『BEAUTIFUL NOW』(2015年)からの選曲が、セットリストの比率としては高いが、単純にテンポが速いとか激しいとかではない、エモーショナルでエッジの効いた、INORANバンドならではのロックンロールを体感させてくれる。また、とっておきのレア曲もセットリストには潜んでいる。中でも、初期の名曲「Come closer」(2001年/2ndアルバム『Fragment』収録)には驚かされた。ポップなメロディと音の輝き、瑞々しさは20年以上経った今も衰えることなく、青春そのもののような眩いイメージを思い起こさせた。
今回初の試みとして、Tシャツがチケット代わりになる“プレミアムチケット”を導入。そのブルーのTシャツを着用したファンが集うフロアを見渡し、INORANは「海みたいでいいよ」と詩的に表現し、「一体感があって、良くない?」とも問い掛ける。
もう一つ重要なポイントなのが、東京2Daysの試みとして、トヨタ自動車のサポートで、水素エネルギーによって発電した電気によるライブを実現した、というトピックがある。敷地内に乗り入れた燃料電池自動車「クラウンFCEV」から供給される、出来立てのフレッシュな電気をステージ上の楽器に供給。2Daysのクリアーなサウンドづくりに貢献していたのである。
LUNA SEAのライブでは、世界に先駆けて2017年からこの取り組みを推進しており、後にU2のライブにも波及したが、INORANソロライブでは今回が初。LUNA SEAのアンサンブルの中で担うフレーズとはまた違った、エキセントリックに咆哮するようなギターリフをINORANが掻き鳴らした瞬間、身体の深部まで響いてくる轟音の心地良さに、思わず鳥肌が立った。「いわば実験の場ですから。俺たちが、君たちが盛り上がらないと!」とINORANはファンを煽りつつ、「いい音でしょ? 爆音が心地いいだろ?」と問い掛けていた。
「このバンドのツアー、1年に1回だけど、でも本当に毎回心待ちにしていて」とINORANは語り、このバンドとスタッフでつくり上げるライブへの強い想いを語った。「みんながこうやって来てくれて…毎日生きている中で、冒険というか、旅というか、新しい面を見られるのも、みんなのお陰だと思う」とファンを筆頭に、自分を取り巻く人々との絆に感謝を述べる。「その全ての意味を込めて、次の曲を贈ります」との言葉から「Thank you」を届けた。
ここで終わっても良いほどに満ち足りたムードだったが、さらに曲を放ち、熱いコール&レスポンスを繰り返しながら、INORANはファンとの心の距離を縮めていった。メンバーの鳴らす音も、留まることを知らず昂っていくばかりである。全身から振り絞るようなINORANの力強い歌声は、生きている中で誰しも味わう喜怒哀楽、言葉にならない様々な感情の震えそのもののように感じられ、それを轟音で浴びるカタルシスがあった。
「今日から始まるツアー、とことん楽しみたいと思います。京都も大阪も来るよな? (LUNA SEAの)東京ドーム来る人? 明日来る人?」と問い掛けていくと、勢いよく手を挙げる楽しそうな観客たち。その様子をうれしそうに見つめ、INORANは「合格!」と言って明るく笑った。「今日のライブは53歳最後のライブ。次に会った時は、一つ大人になってるからな。子どものINORANを楽しんでいただけた? また会おうぜ、サンキュー!」と挨拶をしてステージを去った。
新作を引っ提げたツアーではないものの、セットリストの構成が新鮮で、発見の多いライブだった。特にレア曲の披露はファンに大きな喜びをもたらすものでもあった。LUNA SEAとしては35周年を記念した過去最大規模のツアーの真っ只中。INORANソロとしては、Billboard Liveで継続的に開催しているアコースティックライブシリーズも存在するが、このバンド形態のライブには、このメンバーとだからこそ生まれるミラクルがあり、熱と興奮があり、そこでしか出会えないINORANの姿がある。東京2Daysで体感した想いを携えて、次なる京都、大阪ではどのようなライブを繰り広げるのだろうか?
京都公演は、既にチケットが完売しているが、ツアーファイナルである、10月14日大阪・umeda TRAD公演は、まだチケットを手に入れられるとのこと。そこでしか出会えない、2024年の、いま最も新しいINORANの在りようを会場で確かめていただきたい。
取材・文◎大前多恵
撮影◎Yoshifumi Shimizu(写真は9月29日LIQUIDROOM公演より)
<INORAN BIRTHDAY CIRCUIT '24>
10月13日(日) 京都 磔磔【SOLD OUT】
OPEN 16:30 / START 17:00
10月14日(月・祝) 大阪 umeda TRAD
OPEN 16:30 / START 17:00
チケット料金
通常チケット・スタンディング¥7,800(税込)
※ドリンク代別 / 3歳以上有料
プレイガイド
●イープラス https://eplus.jp/inrn-bc24/
●ローソンチケット https://l-tike.com/inrn-bc24/
Lコード 東京公演:73834/京都・大阪公演:54855
●チケットぴあ https://w.pia.jp/t/inrn-bc24/
Pコード 東京公演:275232/京都・大阪公演:279254
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