【ライブレポート】なとり、初のホールワンマン最終公演「これからのなとりもたくさん愛してほしいなと思います」
なとり初のホールワンマンライブ<なとり 2nd ONE-MAN LIVE『劇場~再演~』>が10月19日、パシフィコ横浜国立大ホールで最終公演を迎えた。
◆ライブ写真
デビュー以来、自身の作品はもちろん、楽曲提供や他アーティストとのコラボも含め活躍の場を広げ続けてきたなとり。この日のライブ終盤、彼はこんなことを語った。
「『劇場』を経て音楽に対する考え方が変わってきた。今まで暗闇を、夜を見つめて曲を作ってきたけど、みなさんとかかわって、ちゃんと日向を見ながら、みなさんを救える曲を作っていきたいなと思うようになってきました。これからのなとりも、たくさん愛してほしいなと思います」
ライブやリリースを重ねてきたからこそたどり着いた今の心境も込めて届けられたツアーファイナル。それは、彼自身の成長と進化、そしてファンとともに積み重ねてきた日々の成果でもあった。
ノイズまみれの映像とともにスクリーンにタイトルが投影されると、「こんばんは、横浜!」という言葉とともに「金木犀」でライブをスタートしたなとり。後方からのライトに照らされた彼のシルエットが神々しく浮かび上がると、客席からは歓声と拍手が巻き起こった。バンドが生み出す生々しいグルーヴに身を委ねるように体を揺らしながら、その歌声にもどんどん熱が入っていく。
「遊ぼうぜ、横浜」と歌い始めた「Sleepwalk」ではオーディエンスの手拍子が鳴り渡るなかステージの前方を動き回りながら歌い、ホーンセクションの音色がスリリングに鳴り渡った「食卓」では妖しげなライトのなか凄みの効いた歌を響かせる。まさに「劇場」というコンセプトの通り、わずか3曲で会場はなとりの描くダークでインナーな世界にどっぷりと引きずり込まれてしまった。
筆者が彼のライブを観るのはほぼ半年ぶりだったのだが、リッチさを増したサウンドと渡り合うように楽曲ごとにさまざまな表情を見せていくその歌はこの半年で明らかに進化している。なとりといえば腹に響くような中低音域の歌声が印象的だが、ライブではとくにそこから一気にファルセットへと突き抜けていくダイナミックな動きにある種のカタルシスが宿る。声によってパッと光が広がるような鮮やかな瞬間が、この日のライブでも何度も訪れた。
「こんばんは、なとりです!」と「猿芝居」を終えて挨拶。「今日ツアーファイナルだけど、みんなぶっ飛ばせる?」とオーディエンスをけしかけ、「暴れようぜ」と新曲「DRESSING ROOM」を投下。「跳べるか?」の声にオーディエンスがジャンプで応える。なとり自身も体を激しく動かしてさらにヒートアップ。さらにサックスの華々しい音とともにド派手に始まった「EAT」を経てヘヴィなロックサウンドの「Catherine」へと、アグレッシブな楽曲を繰り出していった。
切なさとともに燃えるような情感が宿る「ラブソング」を終えると、なとり自身がアコースティックギターを弾いて「ターミナル」へ。メロディラインの上を滑るようなヴォーカルが気だるい鬱屈を描き出した。そしてそこから曲名を告げて「聖者たち」に入っていく。内側にも外側にも感情を爆発するようなこの曲を終えると、美しいピアノのソロを皮切りにバンドメンバーによるセッションが始まった。そこまでのムードをがらりと塗り替えるように鳴り響くスイングするサウンドが告げるのは「劇場」の幕開けだ。「ようこそ、劇場へ!」。なとりの言葉に一気に客席が盛り上がり、ここからライブは後半戦に突入していった。
メロウなR&Bチューン「フライデー・ナイト」では「みんな、歌おうぜ!」とシンガロングを誘うなとり。ステージ上を練り歩きながらキーボードのメンバーにマイクを向けたり、笑ったり。怒涛のように楽曲を畳み掛けた前半とは打って変わってリラックスした雰囲気が新鮮だ。そこで投下されるのがご存じ「Overdose」。なとりを世に知らしめた代表曲をオーディエンスと分かち合うと、なとりは「最高です!」と叫んだのだった。
「楽しんでる? 今日はツアーファイナルなんですけど、最後まで置いてけぼりになるんじゃねえぞ!」とパワフルに観客を煽りつつ、この日のライブが記念すべき10回目であることを告げたなとり。ここに来るまでにたくさんのコラボもやらせてもらった、と振り返ると、Kobo Kanaeruに提供した「HELP!!」のセルフカヴァーを披露する。ドラムやホーンの見せ場も盛り込まれたこの曲に続いて、聞こえてきたイントロにすぐさま客席から歓声が上がる。こちらも話題となったimaseとのコラボ曲「メロドラマ」だ。さらに「IN_MY_HEAD」では観客の振り回すタオルが鮮やかに会場を彩る。間奏ではスクリーンに観客へのメッセージも映し出される文字通りのライブチューンに、会場の熱は最高潮だ。続く「絶対零度」まで、一切アクセルを緩めることなく、ライブはクライマックスへと駆け上っていった。
「エウレカ」を経て胸を締め付けるようなセンチメントを描く「Cult.」を終えると、ライブはいよいよ最後の曲。その前になとりがあらためて口を開いた。「すごくいい景色です。今日は来てくれてありがとう」。そして「大事なお知らせ」として2026年2月19日に日本武道館でワンマンライブを開催することを発表すると、客席中から祝福の言葉と拍手が飛ぶ。
尊敬するアーティストのライブを観た場所であり、友達との約束の地でもある武道館に立つ感慨を語り、次のフェーズに進んでいく決意を新たにするなとり。「これから僕はたくさんの変化を繰り返して、みなさんを置いてきぼりにするかもしれない。でもみなさんのことは愛し続けています」。そう観客と「約束」を交わすと、ラストチューン「糸電話」へ。ブライトなメロディとサウンドが、これからのなとりを照らすように鳴り響いたのだった。
そして鳴り止まないアンコールに応えてステージに戻ってきたなとり。「ここからは新しいフェーズのなとりを」と言いつつ、自由な感じでバンドメンバーに話を振ったりして場を和ませる。「みんながいてくれるという環境が本当に嬉しくて。素晴らしいことだなとしみじみ思っております」となとり。こうしたひとつひとつの実感が、なとりの表現を変えてきたし、これからも変えていくのだろう。
そして椅子に座ったまま、アコースティックギターに合わせて「夜の歯車」が歌われる。オーガニックなサウンドに観客の声を重なり、あたたかな空気が会場を包み込む。願いのように書かれたこの曲が文字通り「あなた」となとりをつなぐ1曲として歌われたフィナーレは、彼が歩んできた道のりの正しさを証明するようだった。
来年春には全国Zeppツアー、そしてその先ではこの日発表になった武道館と、なとりの挑戦は続いていく。ライブアクトとしても進化し続ける彼のこれからを、今から楽しみに待ちたいと思う。
文◎小川 智宏
写真◎タマイシンゴ
<なとり 2nd ONE-MAN LIVE 『劇場~再演~』>10/19 セットリスト
02. Sleepwalk
03. 食卓
04. 猿芝居
05. DRESSING ROOM ※新曲
06. EAT ※新曲
07. Catherine
08. ラブソング
09. ターミナル
10. 聖者たち
11. 劇場
12. フライデー・ナイト
13. Overdose
14. HELP!! ※セルフカバー
15. メロドラマ
16. IN_MY_HEAD ※新曲
17. 絶対零度
18. エウレカ
19. Cult.
20. 糸電話
EN. 夜の歯車
<なとり ONE-MAN LIVE at 日本武道館 2026>
※開場・開演時間は変更となる場合がございます。
お問合せ:DISK GARAGE
問合せフォーム https://www.diskgarage.com/form/info
<なとり Zepp Tour 2025>
2025年5月17日(土) 大阪 Zepp Osaka Bayside
2025年5月18日(日) 福岡 Zepp Fukuoka
2025年5月23日(金) 東京 Zepp DiverCity(TOKYO)
2025年6月1日(日) 北海道 Zepp Sapporo
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