【ライヴレポート】DEZERT × Sadie、<This Is The “FACT”>大阪公演で鳴らした愛「関西で一番ヤバイ場所にしようや」
DEZERT主催ツーマンツアー<DEZERT Presents【This Is The“FACT”】TOUR 2024>の大阪公演が10月20日、大阪・BIGCATで開催された。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆DEZERT × Sadie 画像
同公演は東名阪3ヵ所で開催されるもの。東京公演にMUCC、すでに終了している名古屋公演にlynch.が迎えられるなど、先輩バンドとの競演であり、対バン相手の本拠地に乗り込む形で開催中だ。これは、12月27日に開催されるキャリア初の日本武道館ワンマンライヴへ向けての肩慣らしか、はたまたぶつかり稽古か。何より、大阪公演は千秋(Vo)が人生で初めてライヴを観たというSadieとの対バンであることは、BARKS対談で語られたとおり。思い入れの強さはもちろん、先輩バンドとのツーマンツアーで彼らが何を想い、得ることができるのか。この日の先にある日本武道館のステージにも思いを寄せつつ、ソールドアウトとなった会場には両雄のファンが数多く詰めかけた。
2015年の活動休止から、2023年6月に復活宣言。2024年春の東阪ライヴにて、約8年の時を経て完全復活を遂げたのがSadieだ。しかし、復活とは言えど、活動休止中にメンバー個々が別バンドの活動を始めていたこともあり、Sadieとしてのライヴ活動はまだ数える程度。しかも年内のライヴはこの日が最後になるなど、同ツーマンライヴが貴重なステージなのは言わずもがな。それもあってか、この日のセットリストは攻撃力高めのものばかりだ。
ファンを楽しませるのはもちろん、千秋少年の“憧れ”だけで終わらせない。バンドの進化を見せつけるため、1曲目に選んだのは「心眼」だ。「大阪! ひとつになろうか! 全員でかかってこい!」という真緒(Vo)の咆哮にも似たシャウトが響くなか、重低音が一気にフロアに降りかかる。
正直、活動休止していた8年という年月は小さくない。シーンの変化や、DEZERTをはじめとした若手バンドの台頭も大きいだろう。この日も、Sadieのライヴを初めて観る観客も少なくはなかった。ファーストインプレッションより、ファーストインパクトでその存在感を見せつけたいという思いからか、剣(G)、美月(G)、亜季(B)、景(Dr)の4人が打ち出すサウンドはとにかくタフで、初っ端から身体がヒリつく。
「Grieving the dead soul」ではオーディエンスの高速で振り回されるヘッドバンキングに満足気な表情を見せたかと思えば、「もっともっと首もってこい!」と、とにかく煽る真緒。うねるように鳴り響く重低音に絡む華やかなメロディ。激しさのなかにも“魅せる”を意識したSadieらしいナンバーに、誰もが歓喜の声を上げる。続く「MAD-ROID」では真緒のハイトーンボイス、アジテートするような美月のギターなど、急展開していくサウンドに心踊らされる。最初こそ様子見だったDEZERTファンが徐々にリズムを取り、頭を振り出す姿も見受けられ、たった数曲で喰いつかせるのはさすがのひと言に尽きる。そしてMCへ。
「DEZERTのファンの皆さま、初めまして。我々、8年ぶりの復活で、ある意味DEZERTの後輩バンドです」──真緒
と謙遜しつつ、武道館に向けて奮闘する後輩に向け、先輩として全力でライヴをすること、音楽でぶつかり合う機会があることに感謝の気持ちを伝えた。先述した通り、Sadieは年内のライヴ本数が少ないが、バンド復活をアナウンスした時には対バンのオファーが数多くあったらしい。その中から唯一、DEZERTを選んだのはバンドの熱烈な想いがあったからこそ。特に千秋からのアピールは凄まじかったらしく、この日のセットリストも千秋からの要望が色濃く反映されているらしい。
「under the chaos」がまさにそれだ。曲が始まった途端、千秋“少年”がステージに乱入するどころか、フロアの最前列でファンに交じってライヴを楽しむ光景はBARKSでの予告通り。やりたい放題だ。Sadieメンバーもやれやれといった感じで苦笑いしつつも、後輩とのステージを満喫している様子。相思相愛ぶりを楽しんだところで、ステージは後半に向けて、「Rosario-ロザリオ-」「Jealousy」と再び硬度の高いサウンドでオーディエンスにぶつかっていく。美月、剣の2人が濃厚な世界観を生み出し、そこに景の芯が太い怒濤のビート、亜季のどっしりしつつもゆらぎのあるベースラインが観客を興奮の坩堝へと誘い込む。その興奮度合いもヘッドバンキングの波の大きさでよくわかる。
「ほんとに千秋は厚かましい。勝手に出てきて、勝手に歌って…。ほんとに可愛くて仕方ない」と、真緒はさきほどの千秋とのステージを振り返りつつ、これからのSadieを、最新のバンドの姿を楽しんでほしいと、改めて復活に懸けた想いを語る。「もっともっとブチ込んだ姿を見せて! これじゃあDEZERTに顔向けできない。先輩の顔、立ててくれよ! かかってこい!」と、「陽炎」からラストスパートへと駆けていく。突き上がる拳の数は増え、オーディエンスの声もますます大きくなるばかりで、それをまだ足りないと言わんばかりに、なぎ倒すような勢いあるサウンドをぶつけていく5人。
メロウなギターサウンドと硬派なリズムが飴と鞭みたく降り注ぐ「クライモア」には観客も興奮を抑えきれず、フロアの熱気はさらに上昇。ラストは「そんなもんじゃねーよな! 首を捧げにこい!」と、「迷彩」でトドメだ。先輩バンドの貫禄、気迫を見せつけつつ、「DEZERT、Sadie、ひとつになれ!」とひと際大きなシャウトでフロアを圧倒し、ステージを後にした。
ループし続けるいつもの会場BGMが止まり、するりとメンバーがステージに入ってきた。Sacchan(B)、Miyako(G)、SORA(Dr)はいつもの調子のようだが、Sadieライヴでの興奮が抜けきれないままなのか、千秋(Vo)のハイテンションぶりは目に見えて明らか。かと思いきや、「虚構の真実へいこうか??」と「「眩暈」」では、すっと心地よい緊張感がフロアを駆け抜け、SORAの硬質なビートがドロリとした詞世界を明確に描き出していく。
「お前らの心臓の音、聴かせてくれ!」という言葉から続くのは新曲「心臓に吠える」。沸き上がる衝動をビートに換え、それでも興奮を抑えきれず拳でシンバルを叩くSORA、開放感あるサウンドなのに心の内側を抉るようなMiyakoのギターに目が離せない。Sacchanの細やかなベースラインもオーディエンスのヘッドバンキングをより一層激しくさせる。
「生きてる? たくさん一緒に生きてくれます? SadieとかDEZERTのファンでも関係なく、全員でいこうぜ!」と千秋。ステージの上では先輩も後輩も関係ない。魅せたもん勝ちなのがよくわかる。千秋の腹の底から絞り出すシャウトと、芯の強さを感じる清廉とした歌声、交互に繰り出すギャップに夢中になって見入ってしまう。
フロアがわっと波打った「MONSTER」では千秋が「BIG CAT、すでに最高やけどオレら次第で、あんたら次第で、もっと最高に!」と貪欲にオーディエンスとの一体感、さらなる高揚感を求めていく。続く「匿名の神様」ではSacchanの躍れるご機嫌なベースで特大の横モッシュが発生。千秋はポップなメロディに乗せて、皮肉たっぷりなリリックをまくし立てるようだ。
MCでは学生時代に初めて観たSadieのライヴを振り返った千秋。ライヴでのエピソードは明るいものだけど、学生時代は悲しい気持ちになることも多かったという。それでも、「いま良い青春を送れているからいいんじゃないでしょうか!」と、この日のステージをポジティヴに変換し、「いろんな人に想いを届けたい」と新曲「私の詩」へ繋いだ。輪郭のくっきりとしたビート、アグレッシヴなベースラインが言葉に説得力を持たせていく。ステージの照明はほの暗く、メンバーの表情がよく見えないからこそ、浸透率が高く、楽曲の世界観に浸ることができるのもいい。
続く「神経と重力」では、千秋の怪しげなギターリフが鳴った瞬間、ぐぐっとフロアの集中力が高まった。メンバー4人は緊張感を持ちながら、どこで爆ぜるか、互いにテンションを高めながら音を鳴らす。セッションというよりも音のぶつかり合い。気の抜けない時間が心地よい。千秋が吠えるたび、ギターがうなるたび、ぐっと空気が締まっていく。
ひりつく空気のなか、「暴れてやろう! 覚悟できてる?」と「「秘密」」からラストスパートへ。「「遺書。」」「「君の子宮を触る」」とキラーチューンを連投するが、Sadieファンへの配慮も忘れない。フロアの全方位を眺めつつ、千秋は「みんなと作り上げた文化があるんです! ぜひSadieファンにも歌ってほしい。鍛え上げたオレとファンの歌唱力!」と、シンガロングを求めた。この2曲はライヴに欠かせない定番曲で、いつだって大盛り上がり必至だが、必至だからこそタフさが欠かせないのも事実。学生時代の千秋少年が、ここ大阪でSadieのライヴを体感して感情を爆発させた時と同じように、今日この会場にもあの日の千秋少年がいるはずだ。その手応えを感じたのか、ライヴ中「楽しい!!」と思わず声に出していた千秋。とても素敵な笑顔を見せていた。
「青春を回収するのではなく、戦うのではなく、繋がるって本気で思った。どっちのバンドが好きな人も通じ合おうよ、気持ちを」と、改めて今回のツーマンツアーで感じた思いについて語り、集まった観客へ感謝の思いを伝える。また、「声が出なくなるまでDEZERTを続けていく。最後までやりたい。今年一年、(ファンから)ありがとうって言われたけど、オレらがありがとうって言える、そんなバンドになりたいし、武道館でも言いたい。13年作ってきた看板を叩きつける日が武道館。よかったら遊びに来て」と、武道館ワンマンに懸ける思いを熱弁した。
「お前らが、特別だって言えるように、最後まで4人でかき鳴らす。いつだってありがとうって言ってあげるから。今日が良い日だって言ってあげるから。伸ばしてくれたら、特別な手繋ぐから」と、ファンへ、そしてライヴへの思いを込め、ラストは「TODAY」へ。心の内側から照らし出すような言葉を受け止め、最後の音の瞬間まで漏らすまいと、より高く手を掲げるオーディエンスに向け、渾身の音を鳴らす4人の姿はなんとも頼もしかった。
「10月20日、SadieとDEZERTが繋がった最初の夜。覚えておいて」と、アンコールは前回の名古屋公演と同じくセッションへ。MCでは、千秋のSadieへの溢れる愛が止まらず、思わず真緒が「あとで飲みながら話そう」と制するシーンも。それでも「千秋の青春を回収、ということで大好きな曲をやらせてもらっていいですか」と披露したのは「サイコカルチャー」。DEZERT+真緒と美月という、スペシャルバンドでのステージに思わずガッツポーズを見せる千秋がなんとも可愛らしい。興奮を抑えきれない千秋がフロア最後方まで突き進んだと思ったら、それにつられて真緒までフロアに降り立った。無邪気にはしゃぐ後輩たちの姿に魅かれてか、剣も乱入して和気あいあいとした雰囲気に。
さらに千秋少年が初Sadieライヴで体験したという“思い出の水吹きかけ”も再現。最後には水かけ祭りになってステージはもはやカオス状態に…。それでもキメるところはばっちりと決めるのがさすがで、真緒と千秋のシャウトのぶつかり合いは圧巻だ。
「今日、関西で一番ヤバイ場所にしようや! オレたちのラブソング!」と、DEZERTでの「「殺意」」では、慣れあいではなく、ヒリヒリしたぶつかり合いを求めていた千秋の思いが伝わるボーカル同士のセッション。これにオーディエンスは大興奮だ。最後は手を握り合い、真緒がキスしたところで黄色い歓声が沸き起こり、ステージは終了。…と、思ったら千秋少年の興奮は止まらない。千秋がギターを弾き、予定外のアンコールとしてSadieの「迷彩」を披露した。まさかの展開にSadieメンバーが戸惑いつつ、可愛い後輩の無茶ぶりにもしっかり応えるSadieだった。
戦うのではなく、繋がることを意識したというツーマンライヴだったが、名古屋公演でのlynch.とのステージとはまた違う、“愛”の繋がりを感じるステージ。次の東京公演、MUCCとのステージではどんな“繋がり”を見せるのか。そして繋がりの先に、日本武道館ワンマンでどんなステージを見せてくれるのか、期待が高まる。
取材・文◎黒田奈保子
撮影◎Satoki Demoto
■<DEZERT Presents【This Is The “FACT”】TOUR 2024 VS Sadie>2024年10月20日(日)大阪BIGCAT SETLIST
01. 心眼
02. Grieving the dead soul
03. MAD-ROID
04. under the chaos
05. Ice Romancer
06. Rosario-ロザリオ-
07. Jealousy
08. 陽炎
09. クライモア
10. 迷彩
【DEZERT】
01.「眩暈」
02. 心臓に吠える
03. MONSTER
04. 匿名の神様
05. 私の詩
06. 神経と重力
07.「秘密」
08.「遺書。」
09.「君の子宮を触る」
10. TODAY
encore
en1. サイコカルチャー w/真緒・美月・剣 (Sadie)
en2.「殺意」w/真緒・美月 (Sadie)
en3. 迷彩 w/真緒・美月・剣 (Sadie)
▼SCHEDULE
10月05日(土) 名古屋DIAMOND HALL
vs lynch.
open16:15 / start17:00
10月20日(日) 大阪BIGCAT
vs Sadie
open16:15 / start17:00
11月15日(金) Zepp Shinjuku
vs MUCC
open17:00 / start18:00
https://www.dezert.jp/news/detail/28549
■<DEZERT PARTY Vol.15 / Vol.16>
11月1日(金) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
出演:DEZERT、ΛrlequiΩ、deadman、メリー、RAZOR
▼<DEZERT PARTY Vol.16>
11月2日(土) 東京・恵比寿LIQUIDROOM
出演:DEZERT、LM.C、Royz、Verde/(Shou)、vistlip
詳細:https://www.dezert.jp/news/detail/32692
■<AKi × DEZERT「BORDERLINE」>
open17:00 / start18:00
▼チケット
スタンディング ¥7,700(税込・ドリンク代別)
※4歳以上有料
■<DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」>
OPEN 17:30 / START 18:30
(問) SOGO TOKYO 03-3405-9999
▼チケット
全席指定 ¥6,600(税込)
※未発表音源「オーディナリー」CD付き
※営利目的の転売禁止
※未就学児童入場不可
特設サイト https://dezert-budokan.com/
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