【ライブレポート】Revoの紡いできた歴史を味わう<Revo’s Halloween Party 2024>「君たちも一員だぞ!」
Sound Horizon、Linked Horizonを主宰するサウンドクリエーターRevoによる<Revo’s Halloween Party 2024>が、11月23日・24日の2日間にわたり、神奈川・ぴあアリーナMMにて行われた。
◆ライブ写真
前回の<Halloween Party>が行われたのが、2013年10月のこと。TVアニメ『「進撃の巨人」Season 1』前期オープニング主題歌「紅蓮の弓矢」の大ヒットを受けて、一般層にも人気と知名度が急上昇、ターニングポイントとなった年だ。それからじつに11年ぶりとなるこの日のライブは、今年10月にメジャーデビュー20周年を迎えたSound Horizonの楽曲、Linked Horizonが担当したTVアニメ『進撃の巨人』の関連曲、ゲーム『BRAVELY DEFAULT』シリーズの楽曲、Revo名義の楽曲たちが総勢40名ほどの出演者と共に披露され、Revoが音楽で創り上げてきた世界が、いかに人間愛に満ちたものであるかを再認識できるものだった。このレポートでは、24日のライブの模様をお届けする。
会場に入ると、巨大なステージの左右には緑が生い茂り古びた建物があり、さらにその前には「マルメロガレット」「五平餅」などの屋台が並んでいる。舞台上モニターには長野県松本市にある「浅間温泉」の看板が。BGMで流れるパイプオルガンの音とのギャップが異世界感を醸し出していた。
開演が近づくと、注意事項のアナウンスに続きシンクロライトリストバンドの作動チェックが行われた。さらに「Halloween ジャパネスク ’24」の振付練習が呼び掛けられて、開演前にして早くも会場が一体となった。入れ替わりで影ナレで前説が始まり、「皆様こんばんは。“あじさいの湯 いざか屋”の女将でございます(深見梨加)」「若女将でございます(灰野優子)」「板長でございます(JIMANG)」と、『ハロウィンと朝の物語』の登場人物たちが登場して「浅間でハロウィンへようこそ!」とご挨拶。「初めての催しで色々と大変だったのですが、みなさまのおかげで“浅間でハロウィン”大盛況です!」と感謝した。
ライブ前半は、『ハロウィンと朝の物語』の世界観を曲順ごとに表現したもの。暗転するとアイク・ネルソンがステージ上から英語のナレーションを行い、階段からダンサーと共に“ハロウィン関係者”が登場して「物語」からライブがスタート。間奏でYUKI(Gt.)、西山毅(Gt.)、河合英史(Key.)、吉田篤貴 EMO strings、Ken☆Ken(Dr.)、長谷川淳(Ba.)がメンバー紹介されながらソロを取り、迫力のサウンドが総立ちの客席に広がっていく。“ハロウィン関係者”は花道を歩きアリーナのオーディエンスに向かい歌い上げる。ストレートなヘヴィメタルに乗せた「小生の地獄」では跪いてスポットを浴びながらパフォーマンス。ステージにはキッズアンバサダーの3人(松岡夏輝、本屋碧美、山崎杏)を含む街の人々が加わり、ミュージカルさながらの演出を見せた。
灰野がボーカルを取った「あずさ55号」では、疾走する曲に合わせてビジョンに中央線を走る列車からの車窓が映し出され、塩尻などホームの駅名も映し出され、やがて浅間温泉がある松本へとたどり着いた。コロナ禍を経て地元のためにハロウィンのお祭りを企画しようというストーリーと共に曲は進んでいき、「《光冠状感染症狂詩曲》」では派手なラテンサウンドで歌い踊り、ミディアムテンポの「あの日の決断が奔る道」では、Revoと灰野がデュエットしながら思いの丈を語る。「皐月の箱庭」では、山崎演じる皐月(と書いてメイ)が自己紹介的な歌詞で、両親はおらず「変なおじさんと2人 温泉旅館に居候」していることを明かしながら熱唱。終盤は“ハロウィン関係者”と力強くデュエットして、最後はコメディタッチで曲を締めた。「Halloween ジャパネスク ’24」でムードがガラリと変わり、開演前の振付けのレクチャーを受けてオーディエンスは一斉にサビで歌い踊る。ライトが色とりどりに客席を埋め尽くした。
「久しぶりだな!」と語り掛けた“ハロウィン関係者”が山崎と共にアリーナ客席に降りて、ファンと触れ合う場面も。ステージに戻ると、山崎がワルツ調に合わせて哀愁漂う旋律を歌い、ステージに崩れ落ちた。すると、アリーナ後方から男女が登場して山崎を背負ってステージへと向かい、指切りをしてステージ奥に消える。しかし目が覚めると山崎を背負っていたのは“ハロウィン関係者”だった。再び歌い出す山崎。曲が終わると、「Fine」の文字がビジョンに映し出され、『ハロウィンと朝の物語』のセクションが終了となり、盛大な拍手が送られた。なお、終演後この曲が「約束の夜」というタイトルであることがオフィシャルサイトで公開された。
MCでは、浅間温泉の仲間がステージに集合。「浅間温泉」~「浅間でハロウィン」~「朝までハロウィン」がファンから「ダジャレじゃん!」と言われていることに“ハロウィン関係者”が言及。タイトルを考えたのは若女将であることを明かすと、「でも、楽しければいいじゃない!」とアピール。また、“ハロウィン関係者”のむちゃぶりに応えて深見が『美少女戦士セーラームーン』のセーラーヴィーナスのセリフを決め、拍手喝采となった。
後半は、Linked Horizonのアルバム『ルクセンダルク大紀行』より「風の行方[Vocalized Version]」からスタート。Ceuiがアニエス・オブリージュをイメージした衣装で登場してバイオリンの美しい音色と共に、柔らかな歌声を響かせる。「キミが生まれてくる世界」では、Joelleがステージへ。深見の語りを交えて、圧巻のハイトーンボイスで魅了した。「少女曰く天使」では石川由依が『リヴァイアサン』のあかねに扮して、軽快なバンドの演奏の中で爽やかに歌い上げる。教会の鐘の音とパイプオルガンが鳴り響き、「母は鳥に導かれて帰り 私は彼の手を取っている」とのセリフを挟んで、西山の歪んだギターソロが炸裂して、歌声に力が漲る。オルゴールの音から、南里侑香が『GUNSLINGER GIRL』のヘンリエッタをイメージした衣装で「Lui si chiama...」で哀しさ漂う歌唱を披露した。
栗林みな実がステージへ。曲は、Sound Horizonの4th Story CD 『Elysion~楽園幻想物語組曲~』からロックチューン「Ark」だ。2ビートのラウドな演奏に乗ってステージを行き交いながらパワフルに歌い上げ、総立ちの客席を熱狂させた。「エルの楽園[→ side:A →]」では、山崎をメインボーカルに、10人の子どもたちによる「すずかけ児童合唱団」がコーラスを担当。合唱指導の伊東えりが圧倒的な歌唱力で美声を響かせる場面も。
曲が終わりMCで登場した“ハロウィン関係者”は、「これが令和のSound Horizonだ」と誇らしげに語ると、「諸君もなんとなくわかってきたと思う。楽しいハロウィンの顔をした、地獄のコンサートなんではないかと。今日の目的は、ハロウィンを楽しむことではない。20年分のあらゆる楽曲で、君たちを全員、殺しに行く!」そう宣言すると、地鳴りのような大歓声が上がった。また、車椅子に乗ったアイク・ネルソンを紹介するトークでは、「今、井上あずみさんも大変だけど、復帰しようと頑張ってくれていると思う。いつか、アイクと井上あずみさんとまたみんなで、一緒にやりたいね。10年、20年やったんだから、40年、50年やっていけば、そういう日も来るじゃないかなと思うよ」と未来への希望を語る。アイクは「I’m going to do my best !」と力強く応えて客席から温かい拍手が送られた。
「小生、疲れてるんだ。なんせ、松本の駅前まで歩いたからな。でもなんか、変なところに迷い込んでしまったな。知らない路地裏に迷い込んだような、猫ちゃんがいっぱいいるようないないような……」と呟くと、ワーッと歓声が集まって、「西洋骨董屋根裏堂」へ。深見、灰野、石川、山崎がボーカルリレーして、栗林、Joelle、Ceui、南里が猫に扮して登場する豪華絢爛な1曲となった。MCを挟んでの「黄昏の楽園」では、すずかけ児童合唱団が再登場。ビジョンに映し出されたTVアニメ『進撃の巨人』の映像をバックにした、無垢な歌声と綺麗なハーモニーは心が洗われるようだ。曲がいったん終わると、雅楽が鳴り響き石碑がビジョンに映し出される大神選択画面を経て、メロトロンの音が流れ出す。清廉なハーモニーを聴かせて、赤ん坊の泣き声と共に曲を終えた。
不穏な嵐の音とカラスの鳴き声が空から降ってくると、“ハロウィン関係者”がステージ上階に現れて『Moira』から登場人物の双子の悲哀を描いた「死せる乙女その手には水月-Παρθενοs-」へ。深見、栗林とRevoの歌声が交差する。大声で笑いながら“ハロウィン関係者”が1人跪き「大切な人を殺したやつがいる! 私が取るべきは……」と叫んで暗転した。アコースティックギターの音色に乗せて、Ceuiが「美しきもの」を歌い出す。間奏で吹くハーモニカ(後に“ハロウィン関係者”に絶賛されていた)が心地良く響く。バックに流れる映像は、タンポポが咲き誇る夏から雪が舞う冬へ。最後は赤く染まる空と共にハーモニカのピュアな音が鳴り、「そこにロマンはあるのかしら」とセリフで余韻を残した。続く「輪廻の砂時計」では、ゆったりとしたサウンドで歌う南里のボーカルと、YUKIがフライングVで弾くヘヴィなギターとの対比が、アンビバレントな感情を掻き立てた。
「ゆりかご」では灰野、山崎、石川がステージへ。灰野が双子の亡骸を抱えて歌う演出が切ない。JIMANGが歌う「黄昏の賢者」でダンサブルに、サビで振り合わせをしながら盛り上がるオーディエンス。客席が青と紫の2色に分断される瞬間も。すずかけ児童合唱団の歌声が、Revoの歌声と重なり「暁の鎮魂歌」へと続く。灰野、栗林、Joelle、石川、Ceui、南里がステージの階段に陣取ってコーラスを取り、曲が終わると“ハロウィン関係者”は「ありがとうございます。みんな、信じられないかもしれないけど、Revoです!」と、この日初めてRevoを名乗ったものの、すぐさま「すまん、嘘ついた。初めてこの曲を披露したのがちゃんとしたRevoじゃなくて申し訳ないね(笑)」と自虐的にコメントして和ませた。
MCを挟んでライブはクライマックスヘと向かう。Joelleが窓越しの月をバックにしっとりと歌う「忘れな月夜」では、プログレッシブな組曲のように展開が変わる中、JIMANGが激しくセリフで罵倒するシーンが強烈だ。サイケデリックな音像から続いたのは、Linked Horizon『真実への進撃』から、TVアニメ『進撃の巨人』でミカサ役の声を演じた石川が歌う「13の冬」。ミカサをイメージしたヘアスタイルと衣装で、歌う姿はグッと求心力があった。少しの余韻の後で、ステージにはスコップを持ったダンサーたちが並ぶ。JIMANGが『Moira』の登場人物に扮して登場。「人生は入れ子人形 -Матрёшка-」が始まると、大歓声の中で大盛り上がり。ポルカ調のリズムに合わせて、ステージ上もギラギラと電飾が輝き、すずかけ児童合唱団が歌い、栗林、Ceui 、Joelle、南里は手を取り合ってダンスして、賑やかなエンターテイメントショーとなった。
3時間に渡ったライブの最後は、Revoが登場して「Halloween ジャパネスク ’24」のトラックに乗せてメンバーを紹介。最後に名前を呼ばれたJIMANGから「Linked Horizon、Sound Horizon、Revo!」と紹介されたRevoは「Revo's Halloween Party、君たちもその一員だぞ!最後にもう1回Halloweenしようぜ!」と呼び掛けて「Halloween ジャパネスク ’24」を大合唱。「ラブ&ピース!」と声を合わせて、エンディングへ。「最後に、国家を斉唱したい」と、「栄光の移動王国-The Glory Kingdom-」をステージ、客席の全員で大合唱した。
「すべての人に思いを込めて、20年分の“ありがとう”を送りたいと思います。みんな本当にありがとう!」と、出演者一同が一列に並び、「1秒1年で20秒」のお辞儀をして、フィナーレを迎えた。出演者を見送った後で1人ステージに残ったRevoは、アリーナ客席に降り、サングラスを外して歩きながら感謝を伝えて歩き、ステージに戻ると、「クソサンキューな!」と微笑ましい悪態をつきながら、万雷の拍手を背にステージを後にした。
取材・文◎岡本貴之
写真◎江隈麗志、藤村聖奈
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