【ライブレポート】PENICILLIN 千聖生誕ライブ。ギターヒーローここに在り

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ギターヒーローここに在り。エレキギターの歴史を紐解けば、その始まりは約90年前にまでさかのぼるというが、それでいて昨今のギターを取り巻く状況はなかなかに厳しい。 サブスク文化の隆盛により、タイパ重視の風潮からギターソロ不要論なるものが流布することになったり。

◆ライブ写真

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』のヒットを受けて、久しぶりにエレキギターの売上げが伸びたと一時的に話題になるも、今夏には老舗国産ギターメーカーが倒産。また、今年10月に入ってからは米国の有名ギタープレイヤー向け雑誌が遂に紙媒体での発刊停止を発表してしまった。

だが、安心して欲しい。そのような状況にあっても、日本ではPENICILLINの千聖という生粋のギターヒーローが30年以上にもわたり、シーンの最前線で相棒のVシェイプギターを弾き倒し続けてくれている。ロックギターの持つ醍醐味、ロックギターの持つ可能性、そしてロックギターの持つ色気。千聖はそれらを体現するギターヒーローであり、彼の放つ魅力はこのたび恵比寿LIQUID ROOMにて開催されたPENICILLINの2デイズライヴ<千聖 BIRTHDAY LIVE「ROCK×ROCK -Happy 20th-」>でも、すこぶる派手に発揮されていくことになったのだ。(※ちなみに、この「ROCK×ROCK」というタイトルは千聖のバースデーライヴとして定番化している)


「昨日と今日は千聖くんのバースデーライヴです。このタイトルどおり20回目になるので、今回初めて来るという人はあまりいらっしゃらないと思いますが、あらかじめ“ROCK×ROCK”に関する注意点を申し上げておきますね。ライヴの途中、ほんとは今年で53歳なのに“永遠の18歳”みたいな異次元トークが起こる場合がありますが(笑)、千聖くんは普通の人と時空が違うんですよ。地球上では生まれて53年経ってるらしいんですけど、その違う時空では18からその先には行かないらしいんです。そういう事態に対して、みなさんどうか『何言ってんだ、こいつら』とは思わないでください。そこもチケット代に含まれておりますので。だって、再放送のように毎年してるこういう話がなくなったら逆に寂しくないですか?普通に『このたび53歳になりまして、そろそろ老眼も…』みたいな話はつまんないでしょ? 千聖くんはエンタテイナーなんですよ。というわけで、ややこしいですが『18歳、おめでとうございます!』」(HAKUEI)

第二夜の冒頭、フロントマン・HAKUEIが述べたこの言葉に対してすかさずサンプリングパッドを使い、“ドラゴンクエストのレベルアップ音”で楽しい茶々を入れてみせたのはドラマー・O-JIRO。きっちりと“仕込んで”あるところに千聖への愛を感じるではないか。


「いやー、ちょっと複雑だなぁ。ずーっと18歳って言い続けてきてるのは現実を見たくないからっていのもあるんだけど、今の話でHAKUEIが53歳って連発するもんだから、イイ感じで現実を突きつけられる感じになっちゃった(笑)」(千聖)

「いいじゃないですか。概念としては18歳のままだけど53年経っちゃってる、っていう話でしょ。のび太はいつまで小4なの、しんちゃんだっていつまでお尻出してんの、っていう話に近いと思います(笑)」(HAKUEI)

ひとたび演奏が始まれば、純粋にカッコ良いライヴバンドでしかないPENICILLINがみせる、こうした砕けたMCもギャップ萌え民にはたまらないところであるに違いない。


実際、今回のライヴでも千聖のヘヴィかつトリッキーなプレイが楽曲を彩っていた「number53 -僕ラハ53番目ノヒト-」(※2002年発表のアルバム『No.53』収録曲。千聖の地球年齢53歳にかけて演奏された)や、ほぼメタルギターと言っていい刺激的なギターワークが炸裂していた「快感∞フィクション」、ソロパートのみならず歌裏でも千聖の華麗な指さばきを堪能することが出来た本編ラストの「Blue Impulse」と、終始ギターがバンド全体を牽引していくような楽曲たちが多く演奏されていったことによって、PENICILLINのそれこそロックな部分が何時も以上に色濃く感じられたようにも思う。

なお、本編終了後にはフロアからアンコールの掛け声のかわりに“ハッピーバースデー千聖”の歌声が沸き起こり、それを受けるかたちで千聖は映画『トップガン』のメインテーマ「Top Gun Anthem」(※オリジナルは千聖のリスペクトしているスティーブン・スティーブンス)を披露。これもまたギターヒーローの名にふさわしい一場面であった。


「みんな、ほんとありがとね。おかげさまで今年も無事に誕生日を迎えることが出来ました!(中略)11月21日からは<PENICILLIN 2024 WINTER TOUR>も始まりますので、これからもよろしくお願いします!!」(千聖)


めでたいケーキセレモニーなどもはさみつつ、このロックな2日間をきっちりと締めくくったのはダブルアンコールでのワイルドなアグレッシヴチューン「FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE」だったが、とにかく<千聖 BIRTHDAY LIVE「ROCK×ROCK -Happy 20th-」>はギターヒーロー・千聖の才覚をあらためて鮮烈に感じられる素晴らしい時間だったと言えよう。ギターヒーローここに在り、とはまさにこのこと。


そんな千聖がステージ上で言っていたとおり、11月からは<PENICILLIN 2024 WINTER TOUR>が始まり、そこではここまでのライヴでは未発表となっている最新シングル「No」が披露されていくことになるそうだが、なんと横浜1000CLUBでのツアーファイナルはHAKUEIの誕生日となるため、特別に<HAKUEI Birthday LIVE SUPER HEART CORE’24>と題されて行われるという。ロック魂を熱く燃やし続けるPENICILLINの2024年は、いよいよここから佳境を迎えていくことになりそうだ。

文◎杉江由紀
写真◎折田琢矢

セットリスト

【10/5 】
1.NEW FUTURE
2.KISS
3.CRASH
4.SOL
5.ボニー&クライド
6.ひび割れたHOLY NIGHT
7.one star
8.number53 -僕ラハ53番目ノヒト-
9.anti beauty
10.Japanese Industrial Students
11.heart beat
12.Rosetta
13.スペードKING
14.Time Machine
En.1
15.Guitar Solo〜TOPGUN AMTHEM
16.Limelight
17.天使よ目覚めて
En.2
18.Desire

【10/6 】
1.パライゾ
2.anti catastrophe
3.JULIET
4.ボニー&クライド
5.花
6.prison
7.one star
8.number53 -僕ラハ53番目ノヒト-
9.ネオグラマラス
10.heart beat
11.KISS
12.Just a kiss on your 3rd eye
13.快感∞フィクション
14.Blue Impulse
En.1
15.Guitar Solo〜TOPGUN AMTHEM
16.永遠と花束を
17.NEW FUTURE
En.2
18.FOR BEAUTIFUL MAD HUMAN LIFE

<PENICILLIN 2024 WINTER TOUR「No No No」>

※すでに終了した公演は割愛

12月7日(土) 弘前KEEP THE BEAT SOLD OUT!!
開場14:30
開演15:00
HAKUEI Birthday LIVE ~SUPER HEART CORE’24~
12月15日(日) 横浜1000 CLUB
開場16:45 開演17:30

【チケット絶賛発売中】
・イープラスeplus.jp/penicillin2024/
・チケットぴあt.pia.jp ・ローソンチケットl-tike.com
[問]サイレン・エンタープライズ 03-3447-8822

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